「建て替えができない土地なんて、どこも買ってくれないですよね」。実務をしていた当時、この一言で話を終わらせてしまう方に何度も出会いました。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用のコンサルティング営業をしていた人間です。空き家や空き地を見つけては登記事項証明書を取り、所有者を訪ねて回る仕事をしていました。前面の道が細く、建て替えのできない土地は、住宅地のなかにいくらでも紛れています。
再建築不可物件とは、いま建っている建物を取り壊すと、同じ場所に新しい建物を建てられなくなる土地のことなんです。法律上の用語ではなく、不動産の現場で使われてきた呼び名ですね。
そして、ここが誤解されやすいところなんです。建て替えができないことと、売買ができないことは別の話になります。建築基準法が制限しているのは建てる行為であって、所有権を人に譲る行為ではありません。
結論から言うと、再建築不可物件の売却で結果が変わるのは、価格交渉のうまさではなく売り先の選び方です。隣の土地の所有者、専門の買取業者、仲介で探す個人、収益物件として買う投資家、そして相続した土地なら国。この5つは、価格も期間もまるで違う相手なんですね。
そして売り先を選ぶには、その前に前面の道が建築基準法上の何にあたるのかを役所で確かめる必要があります。この調査を飛ばしたまま査定だけ集めても、出てきた数字の意味が読めません。
この記事では、売却できる理由と止まりやすい理由、売る前の調査、5つの売り先、再建築不可を外す方法、価格の決まり方、未接道の土地との違い、税金、進め方の順にたどっていきます。法令と制度は、e-Gov法令検索・国土交通省・国税庁・法務省で確認したものだけを載せました。2026年8月時点の内容としてお読みください。
再建築不可物件は売却できるのか?まず押さえる3つの前提

再建築不可物件は売却できます。取引そのものを禁じる法律は存在しません。
ただし買い手の顔ぶれが限られるため、普通の中古住宅と同じ売り方をすると止まるという性質を持っています。まず前提を3つ整理させてください。
前提1|建築基準法が制限しているのは建てる行為だけ
建築基準法は、建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならないと定めています(第43条1項)。これが接道義務と呼ばれるものです。
この条文が向いている先は、あくまで建築という行為になります。売買契約や所有権移転登記を止める規定ではありません。つまり、いま建っている家に住み続けることも、その状態のまま人に売ることもできるわけです。
なお「再建築不可」という言葉自体は法令用語ではないという点も、知っておくと役に立ちます。役所の窓口で「うちの土地は再建築不可ですか」と聞いても、その言葉では話が通じないことがあるんですね。
窓口で通じるのは「前面の道路の種別を教えてください」「この地番の接道の状況を知りたいのですが」といった聞き方になります。
また、売るときに買い手へ黙っていられる事柄でもありません。宅地建物取引業者は、契約が成立するまでの間に、建築基準法などの法令に基づく制限のうち政令で定めるものを、重要事項として説明する義務を負っています(宅地建物取引業法35条1項)。再建築ができないことは、買い手に必ず伝わる前提で進めるものだと考えてください。
前提2|接道義務がかからない区域もある
接道義務を含む建築基準法第3章の規定は、都市計画区域及び準都市計画区域内に限り適用されると決められています(第41条の2)。
区域の外では、そもそも接道義務がかかりません。道に接していないように見える家が建っている地域があるのは、この線引きがあるからです。
田畑や山林に囲まれた集落、市街地から離れた別荘地などが、この区域の外にあたることがあります。都市計画区域の内か外かで、同じような見た目の土地でも扱いが正反対になるわけですね。
自分の土地がどちらに入るのかは、市区町村の都市計画課で確認してください。区域の外なら、そもそも再建築不可という前提が成り立たない可能性があります。
前提3|条例で2メートルより厳しくなる場合がある
地方公共団体は、一定の建築物について、条例で接道の幅員や長さの制限を付加できます(第43条3項)。対象となるのは、特殊建築物、階数3以上の建築物、政令で定める開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積1,000平方メートル超の建築物、そして袋路状道路にのみ接する延べ面積150平方メートル超の建築物(一戸建ての住宅を除く)です。
2メートル接していれば全国どこでも安心、という話にはならないんですね。
袋路状道路、いわゆる行き止まりの道にしか接していない土地は、この上乗せに当たりやすい類型になります。自分の土地がどの条例の対象になるのかは、建築指導課で条例の名前まで聞いておくと確実です。
| 押さえること | 根拠 | 確認先 |
|---|---|---|
| 敷地は道路に2メートル以上接する | 建築基準法43条1項 | 市区町村の建築指導課 |
| 接道義務は都市計画区域・準都市計画区域内のみ | 建築基準法41条の2 | 市区町村の都市計画課 |
| 条例で制限が上乗せされることがある | 建築基準法43条3項 | 市区町村の建築指導課 |
| 売買そのものは制限されない | 建築基準法に規定なし | ― |
なぜ再建築不可物件の売却は止まりやすいのか|4つの理由

売却できるはずの土地が、実際には長く売れ残ることがあります。理由は買い手の側にあり、大きく4つに分けられるんですね。
理由1|住宅ローンが通りにくいから
金融機関は、担保として評価しにくい不動産への融資に慎重になります。再建築不可の土地は、返済が滞ったときに売って回収する見込みが立てにくいため、住宅ローンの対象から外れることがあるんです。
買い手が現金を用意できる人に限られると、そもそも候補者の母数が一気に減ります。これが売却の期間に直結しました。
もっとも、金融機関の判断は一律ではありません。土地の評価がゼロでも、購入する人の収入や他の資産を見て融資が付く場合はあります。買い手が付かないのではなく、買い手が自分で資金の目処を立てられるかどうかにかかっているという理解が近いですね。
そのため、価格を下げる前にやれることがあります。前面の道の種別や接道の実測値、43条2項の認定や許可の可能性といった材料をそろえて渡すことです。買い手が金融機関に説明できる状態にしておくと、話が前に進む確率が変わってきますよ。
理由2|仲介の不動産会社が動きにくい構造があるから
不動産会社の収益は仲介手数料です。価格の低い物件は手数料も小さくなり、そのうえ再建築不可の説明には手間がかかります。
同じ会社でも担当者によって対応が変わるのは、この構造から来ています。実務で協業していたときも、「建築の案件につながるなら手伝うよ」と動いてくれる人もいれば、最初から請け負わないと切る人もいました。会社の看板ではなく、目の前の担当者がどう考えるかで結果が変わるんです。
なおこの点については、空き家の仲介手数料に特例が設けられました。国土交通省は、物件価格が800万円以下の宅地建物(低廉な空家等)の仲介について、依頼者の一方から受け取れる報酬の上限を30万円の1.1倍以内まで認めると示しています。令和6年7月1日以降の取引が対象です。
安い物件ほど不動産会社が動きにくいという問題への対応ですね。ただし原則より高い手数料になり得るため、媒介契約を結ぶときにあらかじめ合意しておくことが重要だと国土交通省も明記しました。
出典:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
理由3|買い手が将来の出口を読めないから
買った土地をあとで手放せるかどうかは、買い手にとって重い判断材料になります。再建築不可のままだと、次に売るときも同じ制約を引き継ぐわけです。
そのため買い手は、リフォームして貸す、隣地とまとめる、といった具体的な使い道を描ける人に絞られていきます。使い道が描ける人にとっては、価格が下がっているぶん妙味のある土地にもなるんですね。
つまり、売り手がやるべきことは価格を下げ続けることではありません。この土地でどんな使い方ができるのかを、材料とともに示すことになります。
理由4|リフォームの範囲に建築確認がからむから
建て替えができないなら大規模に直して使おう、と考える買い手は多くいます。ところが建築基準法は、6条1項1号・2号に当たる建築物について、建築するときだけではなく大規模の修繕・大規模の模様替をするときにも建築確認を必要としました。
2号に入るのは、2以上の階数を有する建築物、または延べ面積が200平方メートルを超える建築物です。木造2階建ての戸建てはここに含まれます。
国土交通省も「木造戸建の大規模なリフォームは建築確認手続きが必要」と整理しました。フルリフォーム前提で買おうとした人が、この段階で止まることがあります。
一方で、防火地域および準防火地域の外であれば、増築・改築・移転にかかる部分の床面積の合計が10平方メートル以内のときは建築確認の規定が適用されません(第6条2項)。小さな手直しまで一律に止まるわけではない、ということなんですね。
どこまでが大規模の修繕にあたるかは判断が分かれる領域です。買い手がリフォームを前提にしているなら、その計画で確認申請が要るかどうかを設計事務所に見てもらうところまでが、話をまとめる材料になります。
出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」

売れない理由を物件のせいだと考えてしまうと、打つ手がありません。でも4つの理由を並べてみると、どれも「買い手が誰か」で説明がつくんですね。
ローンが使えないなら現金の買い手を、出口が読めないなら出口を持っている買い手を探せばいい。売れないのではなく、探している相手が違っただけという場面を、当時から何度も見てきました。
再建築不可物件の売却前に何を確かめるか|役所と登記で調べる4つのこと

査定を頼む前にやることがあります。自分の土地がなぜ再建築不可なのかを、記録で特定する作業です。ここが決まらないと、売り先も価格も決められません。
確認1|前面の道は建築基準法上の道路にあたるのか
建築基準法は、道路を幅員4メートル以上のものと定義しています。特定行政庁が指定する区域内では6メートルです。そのうえで、道路法による道路、都市計画法や土地区画整理法などによる道路、この章の規定が適用されるに至った際に現に存在した道、2年以内に事業が執行される予定として特定行政庁が指定した道路、そして位置指定道路を挙げました(第42条1項)。
つまり、私道は位置指定を受けていなければ道路ではありません。目の前が舗装されていても、法律上は道路に接していない扱いになる土地があるわけです。
調べ先は市区町村の建築指導課になります。道路種別を記した図面を備えている自治体が多く、窓口で地番を伝えれば教えてもらえますよ。
見るのは3点です。前面の道が42条何項の道路にあたるのか、幅員は何メートルとして扱われているのか、そして道路として指定された年月。この3つがわかると、自分の土地がどの型で止まっているのかが決まります。
なお私道の場合は、誰が所有しているかも登記で確かめておいてください。通行や水道管の埋設について隣接する所有者の承諾が要ることがあり、この承諾書があるかどうかは売却の場面で効いてきますよ。
確認2|2項道路ならセットバックはどこまで必要か
幅員4メートル未満の道でも、建築基準法が適用されるに至った時点で現に建築物が立ち並んでいて、特定行政庁が指定したものは道路とみなされます。この場合、その中心線から水平距離2メートルの線が道路の境界線とみなされるという扱いです(第42条2項)。
いわゆるセットバックですね。道の反対側が崖地や川、線路敷地などに沿っている場合は、崖地等の道の側の境界線から道の側に水平距離4メートルの線が境界線になります。片側だけで4メートルを負担する形です。
さらに、土地の状況によりやむを得ない場合には、中心線から2メートル未満1.35メートル以上、崖地等から4メートル未満2.7メートル以上の範囲で、特定行政庁が別に指定できると定められました(第42条3項)。数字は一律ではないということなんです。
すでにセットバックが済んでいる土地もあります。道の一部だけ幅が広がっていたり、隣家の塀のラインが自分の家より奥に下がっていたりしたら、その可能性を疑ってみてください。過去に建て替えをした家の前だけ道が広いというのは、住宅地でよく見かける景色です。
確認3|接している長さは実測で何メートルあるのか
図面の上では2メートル接しているように見えても、実測すると足りないことがあります。境界標が動いていたり、そもそも埋まって見つからなかったりするからです。
実務で担当した現場では、境界杭を探すために地面を掘って発見したこともありました。土地家屋調査士が入って測量に立ち会う場面も何度もあり、この作業を省くと解体や建て替えの段階で必ず揉めます。売却の場面でも同じで、接道の長さは価格の根拠そのものになります。
確認4|登記事項証明書で名義と地番はどうなっているか
売却は登記名義人が行います。親名義のまま、あるいは祖父名義のままになっている土地は、そのままでは売れません。
実務で登記簿を追いかけていたころ、三代前の名前が残ったままの土地に実際に行き当たったことがあります。世代をまたぐほど相続人が増え、話し合いの相手を探すところから始まることになるんですね。
抵当権が残ったままになっている土地もあります。借入はとうに返し終わっているのに抹消の登記だけしていない、という状態です。この場合は金融機関から書類をもらって抹消の手続きを取る必要があり、時間がかかることもありますよ。
名義が複数人に分かれている場合の進め方は、共有名義の土地売却は何から始めるか|全員の同意が要る場面と、反対されたときの4つの出口にまとめました。
| 調べるもの | どこで | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 道路種別図 | 市区町村の建築指導課 | 前面の道が42条何項の道路か |
| 都市計画図 | 市区町村の都市計画課 | 都市計画区域内か、用途地域は何か |
| 公図・地積測量図 | 法務局 | 地番の形状と接道の位置関係 |
| 登記事項証明書 | 法務局 | 名義人・持分・抵当権の有無 |

役所で調べるのは気が重い、という方は多いです。ただ建築指導課の窓口は、所有者本人が地番を持って行けば、たいてい丁寧に教えてくれます。
そしてこの4つがそろっている売主は、不動産会社から見て話が早い相手になります。査定の精度も上がりますし、後から前提が崩れて価格が下がる事故も減るんですね。
再建築不可物件は誰に売るのか|5つの売り先

ここからが本題です。再建築不可物件の売却は、誰に売るかで価格も期間もまったく変わります。
売り先1|隣の土地の所有者に売る
いちばん相性がいい相手は隣地の所有者です。買った土地を自分の敷地とまとめれば、接道の条件が改善して建て替えができるようになる場合があります。
隣地にとっては、土地が広がり資産価値も上がる話になります。再建築不可の土地でも、隣地の所有者にとってだけは価値が跳ね上がるという構造なんですね。
進め方としては、いきなり価格を提示するのではなく、手放すことを考えている旨を伝えて反応を見るところから始まります。関係がこじれている場合は、不動産会社を間に立てたほうが話が進みやすくなりますね。
声をかける相手は一軒とは限りません。両隣、裏、道を挟んだ向かい。どこの土地とくっつけば接道の条件が変わるのかは、公図を見ながら考えると当たりが付きます。
買ってもらえない場合でも、土地の一部だけを買ってもらう、逆に一部を買わせてもらうという話に発展することがあります。全部か無かで考えないほうが、道は広がりますよ。
売り先2|再建築不可を扱う買取業者に売る
不動産会社が自ら買主になる形です。仲介と違って買い手を探す期間が要らないため、話が決まってから決済までが短くなります。
一方で、価格は仲介より下がるのが普通なんです。会社は買った土地を活用するか転売して利益を出す立場なので、その利益とリスクの分が査定額から引かれるわけですね。
急いで現金化したい、相続税の納付期限が迫っている、といった事情があるなら合理的な選択になります。
会社ごとの見極め方は訳あり物件買取業者の選び方|元コンサルが先に見る5つのポイントと契約前の確認事項で整理しています。
買取を選ぶときに見ておきたいのが、契約不適合責任の扱いです。買主が不動産会社であれば、この責任を免除する契約にできる場合があり、売ったあとに雨漏りや土地の不具合が見つかっても追いかけられずに済むという利点が生まれます。個人に売る場合との大きな違いなので、条件として書面で確かめておいてください。詳しい価格の決まり方は再建築不可物件の買取はどこまで下がる?価格の決まり方と、売る前に確かめる4つの可能性にまとめました。
売り先3|仲介で現況のまま個人に売る
住み続けられる状態の家なら、そのまま住みたい個人が買い手になり得ます。建て替えができないぶん価格が抑えられるため、現金で家を持ちたい層とかみ合うことがあるんです。
ただし住宅ローンが使いにくい以上、買い手は現金を用意できる人に限られます。期間は長めに見ておく必要がありますね。
不動産会社に仲介を頼むときは、媒介契約の種類を選ぶことになります。1社だけに任せる専任の形と、複数社に同時に頼める一般の形があり、買い手の母数が少ない物件では複数社に当たれる形が向く場面が多いです。ただし専任にすると会社側が広告費をかけやすくなるという面もあるため、担当者と相談して決めてください。
売り先4|投資家に収益物件として売る
貸して家賃を得る前提で買う相手です。この場合、判断材料は建て替えの可否ではなくその家が借り手を集められるかどうかに移ります。
土地活用の提案をしていたころ、駅から遠い土地に単身者向けの間取りを建てても入居が付かない、という計算を何度もしました。逆に大学や病院が近ければ話は変わります。出口が入居者である以上、見るべきは立地と賃料の回収年数です。
投資家に売る場合、いま人が住んでいる状態のまま引き渡す形も選べます。家賃が入っている実績があると、買い手は数字で判断できるようになるからです。空き家のまま売るより、貸してから売るほうが手取りが増えるという土地は確かに存在しますよ。
売り先5|相続した土地なら国に引き取ってもらう
相続または相続人に対する遺贈で取得した土地に限り、国庫に帰属させる制度があります。ただし条件は厳しいものです。
建物がある土地は申請そのものができません。境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲に争いがある土地も却下事由に入ります。審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、取下げ・却下・不承認でも返還されません。
承認された場合には負担金の納付が必要です。原則は20万円ですが、市街化区域や用途地域が定められた区域内の宅地は面積に応じた計算になり、20万円では済まない場合が出てきます。
| 売り先 | 価格の目安 | 期間 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 隣の土地の所有者 | 高くなり得る | 交渉次第 | 隣地が接道の改善につながる |
| 買取業者 | 仲介より下がる | 短い | 期限がある・現況のまま手放したい |
| 仲介で個人へ | 中間 | 長め | 住める状態の家が建っている |
| 投資家 | 賃料次第 | 中間 | 借り手が見込める立地 |
| 国庫帰属 | 収入はなく負担金が出る | 長い | 相続した更地で買い手がいない |

5つ並べてみると、価格がいちばん高くなりやすいのは隣地の所有者です。ところが実際の相談では、隣地に声をかける前に買取の査定を取り始める方がほとんどでした。
隣に一度も聞かないまま売ってしまうのは、いちばん高く買う可能性のある相手を外して交渉を始めるようなものです。関係が悪くないなら、順番として先に置いてみてください。
再建築不可を外してから売るという道|4つの方法

売り先を選ぶ前に、そもそも再建築不可の状態を解消できないかを検討する価値があります。外れれば、普通の土地として売れるからです。
方法1|セットバックで幅員4メートルを確保する
2項道路に接している場合、道路境界とみなされるのは中心線から2メートル後退した線でした。後退した部分には建物も塀も置けませんが、この後退によって接道の条件を満たせるケースが出てきますよ。
敷地は狭くなります。それでも建て替えができる土地に変われば、価格は大きく動くんです。
なお、道の向かい側が崖地や川に沿っている場合は、自分の側だけで4メートル分を負担する形になります。同じ2項道路でも、負担する面積は向かいの状況次第で変わるという点は押さえておいてください。
方法2|43条2項1号の認定を受ける
敷地が幅員4メートル以上の道(道路に該当するものを除く)に2メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数で、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めるものは、接道義務の適用を受けません(第43条2項1号)。
この認定の道にあたるのは、農道その他これに類する公共の用に供する道と、政令の基準に適合する道です。建築物の側にも条件があり、政令基準の道に接する場合は一戸建ての住宅や長屋などで、かつ延べ面積500平方メートル以内と定められています。
1号は建築審査会の同意が要りません。次に説明する2号より手続きが軽いという違いがあります。
方法3|43条2項2号の許可を受ける
敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の省令基準に適合する建築物で、特定行政庁が支障がないと認め、建築審査会の同意を得て許可したものも適用を受けません(第43条2項2号)。
省令の基準は3つあります。敷地の周囲に公園・緑地・広場等の広い空地があること、敷地が幅員4メートル以上の農道等に2メートル以上接すること、そして敷地が避難および通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する通路に有効に接することです。
3つ目の運用は自治体ごとの包括同意基準で決まります。同じような土地でも、市区町村が違えば結論が変わり得るということなんですね。
実際の手続きは、建築指導課への事前相談から始まります。図面を持って行き、包括同意基準に当てはまりそうかどうかを確かめてから正式な申請に進む流れです。申請してみないとわからない、という状態のまま売却の予定を立てないようにしてください。
ここで見落としてはいけない点がひとつあるんです。条文は「次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない」と書かれています。認定も許可も建築計画ごとに判断されるため、一度許可が下りても、次の建て替えが自動的に通るわけではありません。
方法4|隣の土地を買う、または通路を確保する
隣接する土地の一部を買い取って接道を作る方法です。売り先1の逆向きの取引になります。
買えない場合でも、通行と掘削の承諾を書面で得ておくと、買い手の不安がひとつ減ります。承諾の内容は、人が通ること、車が通ること、水道やガスの管を通すために道を掘ること、の3つに分けて書いておくと後から揉めにくくなりました。なお建築基準法は、私道の変更や廃止によって接道に抵触することとなる場合、特定行政庁が変更や廃止を禁止または制限できると定めました(第45条1項)。私道が突然使えなくなる、という不安への一定の歯止めになっています。

4つのうちどれを狙うかは、費用と手間をかけた分だけ価格が上がるかどうかで決めてください。測量と申請に百万円単位をかけても、土地の評価がそれ以上に上がらないなら、外さずに売ったほうが手元に残ります。
制度を知らないまま進めて損をする人を、当時から何度も見てきました。逆に言えば、知ってさえいれば選べるということです。まず建築指導課で、自分の土地が認定や許可の対象になり得るかだけでも聞いてみてください。
再建築不可物件の売却価格はどう決まるのか|3つの見方

価格の話は、相場という一つの数字では説明がつきません。見方を3つに分けると整理しやすくなりますよ。
見方1|買い手が回収できる金額から逆算される
買取業者や投資家は、買ったあとの使い道から逆算して価格を決めます。リフォームして貸すなら工事費と想定家賃、隣地とまとめるなら測量費と申請の見込みが、そのまま査定の中身になるわけです。
「相場の何割」という数字が先にあるのではなく、回収計画の結果として価格が出てくるという順番なんですね。同じ土地でも、買い手の持っている出口が違えば金額が変わります。
見方2|公的なデータで自分でも調べられる
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産取引価格情報、地価公示、都道府県地価調査、レインズ由来の成約価格情報を見られます。近隣で実際に成立した価格の水準を、自分で確かめられるということです。
再建築不可の土地そのものの成約事例は多くありません。それでも普通の土地がいくらで動いている地域なのかを知っておくと、提示された金額の位置がわかります。
使い方は簡単で、地図から自分の土地の周辺を選び、取引時期と種類を指定するだけです。同じ町丁で、似た面積の土地がいくらで取引されたかが一覧で出てきます。ここで得た水準を頭に置いてから査定を受けると、話の聞き方が変わりますよ。
見方3|査定額そのものより根拠を見る
複数社に査定を頼むと、金額に幅が出ます。ここで高い数字に飛びつくと、あとから条件を理由に減額される展開になりがちです。
実務で見てきた限り、信頼できるのは金額の大きさではなく、その金額をどう説明できるかでした。買ったあと何をするつもりなのか、どの費用を見込んでいるのか。この2点を答えられる会社かどうかで判断してください。
もうひとつ見ておきたいのが、査定額に条件が付いているかどうかです。境界の確定が前提、越境の解消が前提、といった条件が後から出てくると、実際に手元へ入る金額は下がります。条件を先に書面で出してもらうと、比較が公平になりますよ。

「相場より高く買います」という言葉には、根拠が付いていないことがあります。目隠しをしたまま交渉のテーブルにつくと、出てきた数字を評価するものさしを持てません。
不動産情報ライブラリで近隣の水準を見てから査定を受ける。この順番にするだけで、話の主導権がだいぶ変わりますよ。
未接道の土地売却は何が変わるのか|3つの違い

同じ再建築不可でも、建物が建っていない未接道の土地は事情が変わります。3つに整理しました。
違い1|住むという使い道が使えない
建物が残っていれば、現況のまま住みたい個人が買い手になり得ます。更地の未接道にはその選択肢がありません。
そのため買い手は、隣地の所有者か、資材置き場・駐車場・家庭菜園といった非建築の用途で使う人に絞られます。未接道の土地売却で隣地への打診が最優先になるのは、この理由からです。
非建築の用途を狙う場合、車が入れるかどうかが分かれ目になります。人ひとりが通れる幅しかない土地は資材置き場としても使いにくく、買い手がさらに絞られてしまうんですね。
違い2|農道に接している土地には別の道がある
43条2項1号の認定の対象となる道には、農道その他これに類する公共の用に供する道が含まれます。田畑に囲まれた土地は、道路には接していなくても農道に2メートル以上接している場合があるわけです。
この場合、建築審査会の同意を得ずに認定を受けられる可能性が出てきます。未接道イコール打つ手なし、とは限らないということなんですね。
違い3|国庫帰属を検討できる土地でもある
建物があると国庫帰属の申請はできません。裏返せば、更地の未接道の土地は、この制度を検討できる数少ない類型になります。
ただし境界が明らかでない土地は却下されます。申請を考えるなら、測量と境界の確定が前提になると考えてください。
担保権や使用収益権が付いている土地、他人による利用が予定されている土地も申請できません。地上に管理を邪魔する物がある場合や、地下に除去が必要な物が埋まっている場合は、申請できても不承認になり得ます。古い基礎や浄化槽が残っていないかは、申請の前に見ておいてください。

未接道の土地を相続した方から、「草刈りだけ毎年続けている」という話をよく聞きました。管理を続けているのは立派なことですが、その費用は毎年出ていきます。
手放すか持ち続けるかの境界線は、思い入れではなく回収の計算です。年間の維持費と、隣地に打診したときに見込める金額。この2つを並べてから決めても遅くありません。
再建築不可物件を売却したときの税金|使える3つの制度

売れたあとに手元へ残る金額は、税金の扱いで変わってくるんです。該当しそうな制度を3つ挙げます。個別の税額計算は税理士の領域なので、ここでは要件の枠だけを整理しますね。
制度1|相続した空き家の3,000万円特別控除
被相続人の居住用財産を相続した人が売った場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
主な要件は次のとおりです。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始の直前に被相続人が居住し、他に居住者がいなかったこと、売却代金が1億円以下であること。期間は相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までで、特例そのものの適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡とされています。
令和6年1月1日以後の譲渡では、その家屋を取得した相続人が3人以上いる場合の控除額は2,000万円になりました。
建物の扱いにも条件が付きます。譲渡のときに耐震基準を満たしているか、家屋の全部を取り壊してから敷地を売るかのどちらかです。ただし令和6年1月1日以後の譲渡については、譲渡の翌年2月15日までに耐震改修や取壊しを終えた場合でも適用できる形に変わりました。買主が引き渡し後に解体する段取りでも間に合う、ということですね。
手続きの面では、市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要になります。取得に日数がかかる書類なので、売却の日程を組むときは早めに動いてください。
出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
制度2|相続税を払っているなら取得費加算
相続や遺贈で取得した財産を売ったとき、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例です。譲渡所得が圧縮されるぶん、税額が下がります。
要件は、相続または遺贈で財産を取得していること、その人に相続税が課税されていること、そして相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡することです。実質的に相続から3年10か月という期限になります。
注意点として、この特例は空き家の3,000万円特別控除とは併用できません。どちらが有利かは金額次第なので、両方に当てはまりそうなら試算してから選ぶことになります。
加算できる金額には上限があり、特例を適用しないで計算した譲渡益の額を超えることはできません。譲渡した財産ごとに計算する仕組みなので、複数の不動産を相続している場合は、どれを先に売るかでも結果が変わってきますね。
出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
制度3|低未利用土地の100万円控除
都市計画区域内にある低未利用土地等を譲渡した場合、長期譲渡所得から100万円を控除できる制度があります。使われていない土地を流通させる目的で作られたものです。
金額の要件は、建物等の対価を含めて500万円以下。ただし市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域のうち用途地域が定められた区域、所有者不明土地対策計画を作成した市町村の区域では800万円以下まで広がります。売った年の1月1日で所有期間が5年を超えていること、売ったあとにその土地が利用されることも要件です。
ここは書き方に注意が必要な論点になります。国税庁のページ上の適用期限は令和7年12月31日のままですが、令和8年度税制改正の大綱で適用期限を3年延長することが決まっています。ページの更新が追いついていない状態なので、実際に使うときは税理士か税務署で現在の期限を確かめてください。
もうひとつ独特なのが、売ったあとにその土地が利用されることという要件です。買い手が使う予定であることを確かめる書類が必要になるため、売買契約の段階で不動産会社に伝えておいてくださいね。
出典:国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」
| 制度 | 控除額 | 主な期限 |
|---|---|---|
| 空き家の3,000万円特別控除 | 最高3,000万円(相続人3人以上なら2,000万円) | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日 |
| 取得費加算 | 相続税額のうち一定額 | 相続開始の翌日から申告期限の翌日以後3年 |
| 低未利用土地の100万円控除 | 100万円 | 国税庁ページは令和7年12月31日/大綱で3年延長が決定 |

税金の話は売却が決まってから考える、という順番にしている方が多いです。ところが空き家の3,000万円特別控除には、建物を取り壊して売るか、耐震基準を満たしてから売るかという分岐があります。
先に解体してしまうと選べなくなる道があるということなんですね。売り方を決める前に、使えそうな制度があるかどうかだけ先に確認しておいてください。
再建築不可物件の売却はどう進めるか|5つのステップ

最後に、実際に動くときの順番を並べておきますね。
ステップ1|登記事項証明書で名義と権利関係を確認する
法務局で登記事項証明書を取り、名義人と持分、抵当権の有無を確かめます。親名義のままなら相続登記が先です。
名義がそろっていない状態で買い手を探し始めると、契約の直前で止まります。
ステップ2|役所で道路と区域を調べる
建築指導課で道路種別を、都市計画課で都市計画区域と用途地域を確認してください。ここで、なぜ自分の土地が再建築不可なのかが特定できます。
セットバックの必要があるのか、43条2項の認定や許可の対象になり得るのかも、この段階で聞いておくといいですよ。
ステップ3|境界と越境の状況を見る
境界標の位置を確認し、塀や樹木が隣地にまたがっていないかを見ます。図面と現況が食い違っていれば、土地家屋調査士に相談することになります。
境界が確定していない土地は、国庫帰属を考える場合には申請できません。売り先の選択肢を狭めないためにも、早めに手を付ける価値があります。
越境が見つかった場合は、撤去まで求めずに覚書を交わす方法もあります。将来の建て替えのときに解消する、という取り決めを書面にしておく形です。買い手にとっては、越境があること自体より、扱いが決まっていないことのほうが不安になります。
ステップ4|隣の土地の所有者に打診する
いちばん高く買う可能性がある相手なので、順番として先に置きました。買う意思がない場合でも、通行と掘削の承諾について話をしておくと、あとの売却で効いてきます。
ステップ5|同じ条件で複数社に相談する
隣地で決まらなければ、仲介と買取の両方に声をかけてください。このとき、ステップ1から3で調べた内容を同じ資料として渡すのが大事なんです。前提がそろっていないと、出てきた金額を比べられません。
相談先の会社については、宅地建物取引業の免許を番号まで確認しておくと安心です。免許は2以上の都道府県に事務所を設ける場合は国土交通大臣、1つの都道府県のみなら都道府県知事が与え、有効期間は5年と定められています。国土交通省の検索システムを使えば、商号から実際に確かめられますよ。
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」/国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」

このステップを全部やると、そこそこの手間になります。それでも順番を守った売主は、結果として高く売れていました。
理由は単純で、買い手が判断できる材料をそろえている土地は、値引きの理由が減るからです。わからないことが多い土地ほど、買い手はリスクの分を価格から引きます。調べる手間は、そのまま価格に返ってきますよ。
再建築不可物件の売却に関してのよくある質問

再建築不可物件は本当に売買できるのですか?
できます。建築基準法が制限しているのは建築という行為であり、所有権の移転を禁じる規定はありません。ただし住宅ローンが使いにくいため、買い手は現金を用意できる人や事業として買う会社に偏ります。
解体してから売ったほうが高くなりますか?
一概には言えません。更地にすると住むという使い道が消え、買い手が隣地所有者や非建築用途の人に絞られます。一方で相続した空き家の3,000万円特別控除は、取り壊して敷地を売る形でも適用され得るため、税額まで含めると結論が変わる場合もあるんです。解体費用と特例の両方を並べて判断してください。
隣の人に売りたいと言ったら足元を見られませんか?
その心配はあります。だからこそ、先に不動産情報ライブラリで近隣の水準を確かめ、役所で道路の状況を調べてから話すのが順番になります。交渉に不安があるなら、不動産会社を間に立てて進める方法もありますよ。
まとめ

再建築不可物件の売却は、価格交渉の技術ではなく売り先の選び方で結果が決まります。
- 建築基準法が制限しているのは建てる行為だけで、売買そのものは止められていない
- 止まりやすい理由は、住宅ローン・仲介の構造・出口の読みにくさ・リフォームの建築確認の4つ
- 動く前に、道路種別・区域・接道の長さ・登記の4つを記録で確かめる
- 売り先は、隣地所有者・買取業者・仲介で個人・投資家・国庫帰属の5つ
- セットバックや43条2項の認定・許可で、再建築不可そのものを外せる場合がある
- 相続した土地なら、空き家の3,000万円特別控除・取得費加算・低未利用土地の100万円控除を先に確認する
まず今日できることは、登記事項証明書を1通取ることと、市区町村の建築指導課に地番を伝えて道路種別を聞くことです。この2つがそろうと、自分の土地がどの売り先に向いているかが見えてきます。








実務をしていた当時、「再建築不可だから価値はゼロですよね」と最初におっしゃる方に本当によく会いました。ところが登記事項証明書と公図を並べて役所で調べ直すと、前面の道が位置指定道路として認められていた、というケースが出てくるんです。
再建築不可かどうかは、思い込みではなく役所の記録で決まります。まず調べるところから始めてみてください。