「建て替えができない土地なんですけど、これって売れるものなんでしょうか」。実務をしていた当時、この質問を何度も受けたんです。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用のコンサルティング営業をしていました。空き家を見つけては登記事項証明書を取り、所有者を追いかけて提案に回るという仕事です。その道中で出会った土地の中には、前の道が狭すぎて建て替えができない家がいくつもありました。
再建築不可物件とは、いま建っている家を壊すと、同じ場所に新しい建物を建てられない土地のことをいいます。理由のほとんどは、建築基準法が求める「道路に2メートル以上接すること」を満たしていない点にあるんですね。
こうした土地は住宅ローンが付きにくく、一般の買主が手を出しにくいため、再建築不可物件の買取という選択肢が浮かびます。買主を探す期間がまるごと消える代わりに、価格は市場の水準より下がるという取引です。
結論から言うと、買取に申し込む前にやることが2つあります。ひとつは、その土地が本当に再建築不可なのかを役所で確かめること。もうひとつは、セットバックや建築基準法43条2項の認定・許可で制限を外せないかを見ることなんです。ここを飛ばして査定だけ取ると、外せたはずの条件のまま安い価格で手放すことになります。
この記事では、再建築不可物件の買取と仲介の違いから、接道でつまずく3つの型、価格の決まり方、再建築不可を外せる4つの可能性、買取以外の出口、リフォームの制限、業者の選び方、売ったときの税金まで順にたどります。法令と制度は、e-Gov法令検索・国土交通省・国税庁・法務省で確認したものだけを載せました。2026年8月時点の内容としてお読みください。
再建築不可物件の買取とは?仲介で売るのと何が違うのか

再建築不可物件の買取とは、建て替えができない土地と建物を、不動産会社が自社で直接買い取る取引をいいます。あなたの取引相手は、探してもらう誰かではなく、目の前の会社そのものになります。
仲介はこれと立て付けが違います。不動産会社は買主を探してくる立場で、契約が成立して初めて仲介手数料という報酬が入る仕組みです。
買取業者と仲介の不動産会社は何が違うのか
買取では、業者が自分の資金で土地と建物を買います。買ったあとに直して貸すのか、隣地とまとめて売るのか、出口を自分で作るところまでが仕事になるわけですね。
仲介の場合、不動産会社が負うリスクはほぼ時間だけです。買主が見つからなければ、動いた時間がそのまま持ち出しになります。
同じ「不動産会社」という看板でも、収益の作り方がまったく違うため、あなたに向けてくる関心の向きも変わってきます。仲介の担当者は買ってくれる人を探しますが、買取業者はその土地で自分が利益を出せるかを見ているんです。
再建築不可の物件は、なぜ仲介で止まりやすいのか
再建築不可の土地は、金融機関の担保評価が付きにくい土地です。建て替えができない土地は、将来売るときの換金性が読めないため、住宅ローンの審査が通らないことが起こります。
買主が現金を用意できる人に限られると、そもそも候補の数が一気に減るんですね。募集を出しても内見が入らない状態が半年、1年と続くのは珍しいことではありません。
さらに仲介手数料は物件価格に連動します。説明すべきことが多くて手間が重い物件ほど、時間あたりの採算が合わなくなるという関係が、構造として先にあるんですね。
国土交通省もこの問題を制度の側から動かしました。令和6年7月1日以降、価格800万円以下の「低廉な空家等」については、依頼者の一方から受け取れる媒介報酬の上限を33万円(税込)まで引き上げています。手数料が少なすぎて誰も動かない状態を変えるための特例です。
ただし原則より高い手数料になり得るため、国土交通省は媒介契約を結ぶときにあらかじめ合意しておくことが大切だと明記しました。
出典:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
買取と仲介はどう使い分けるのか
どちらか一方を選び切る必要はありません。先に仲介で3か月ほど反応を見て、動かなければ買取へ切り替えるという順番が取れます。
この順番なら、市場に買主がいるかどうかを確かめてから判断できました。反応がゼロだった期間そのものが、価格を決めるための情報になるからです。
一方で、時間に制限がある場合は先に買取を当たったほうが楽になります。相続税の納付期限が近い、施設の費用が毎月出ていく、遠方で管理に通えない。こうした事情があるなら、期間の短さがそのまま価値になりますよ。
| 比べる項目 | 再建築不可物件の買取 | 仲介で買主を探す |
|---|---|---|
| 取引の相手 | 不動産会社そのもの | 会社が探してきた個人・法人 |
| 価格 | 市場の成約水準より下がる | 条件が合えば市場水準に近づく |
| かかる期間 | 数週間から2か月ほど | 買主が見つかるまで読めない |
| 買主の資金 | 事業者の自己資金 | 住宅ローンが付かず現金の人に限られる |
| 仲介手数料 | 原則かからない | 成約時に発生 |
| 引き渡し後の責任 | 交渉次第(免責を求められることが多い) | 契約の内容による |
なぜ「再建築不可」になるのか|接道でつまずく3つの型

再建築不可という言葉は、法律の条文に出てくる用語ではありません。建築基準法が求める道路との関係を満たさないため、建築確認が下りない状態を、業界の中でそう呼んでいるだけなんです。
根拠になる条文は、建築基準法第43条第1項になります。建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならないと定めています。ここでつまずく型は、大きく3つに分かれるんですね。
型1|敷地が道路に2メートル接していない
前面が建築基準法上の道路であっても、接している長さが2メートルに足りなければ建築確認は下りません。旗竿地で通路部分の幅が1.8メートルしかない、というのが典型です。
隣の土地との境界がずれていて、実測すると2メートルを割っていたという例もあります。登記の地積と現地の実測が一致しない土地は、思っているより多いんですね。
なお建築基準法第43条第3項は、地方公共団体が条例で制限を上乗せできると定めています。3階建て以上や延べ面積1,000平方メートル超の建築物などでは、2メートルでは足りない自治体もあるということです。
型2|前面の道が建築基準法の「道路」に当たらない
道はあるのに、それが法律上の道路に当たらないという型になります。建築基準法第42条第1項は、道路を幅員4メートル以上のものと定義したうえで、道路法による道路、都市計画法などによる道路、この章の規定が適用された時点で現に存在した道、位置指定道路などを列挙しています。
ここに当てはまらない通路は、いくら舗装されていても道路ではありません。私道であっても、位置指定を受けていなければ同じ扱いになるんです。
ただし救済の規定があります。建築基準法第42条第2項は、規定の適用時点で既に建築物が立ち並んでいた幅員4メートル未満の道で、特定行政庁が指定したものを道路とみなすと定めました。この場合、道路の中心線から水平距離2メートルの線が道路の境界線とみなされます。いわゆるセットバックです。
型3|そもそも接道義務がかからない区域もある
建築基準法第41条の2は、第3章の規定を都市計画区域と準都市計画区域内に限って適用すると定めています。接道義務は第3章に置かれた規定なので、この区域の外では第43条がそのまま働きません。
山間部や農村部の土地で「道に接していないのに家が建っている」ケースは、この区域外にあることが理由の場合があります。区域の内か外かは、市区町村の都市計画課で確認できますよ。
自分の土地が本当に再建築不可なのかを、伝聞ではなく役所で確かめる。ここが出発点になります。不動産会社の担当者が口頭で言った内容と、役所の回答が食い違った例を僕は実際に見ました。

実務をしていた当時、空き家を見つけると法務局で登記事項証明書を取り、所有者を追いかけて訪問していました。地図を見ながら現地を歩くと、公図の道と実際の道の位置がずれている土地に何度も出会います。
そういう土地ほど、隣の家との境界も曖昧なままでした。塀がどちらの持ち物なのか、木の枝が越境しているのはどこからなのか、誰も答えられない状態です。
役所と法務局で紙を1枚ずつそろえるだけで、話がまったく別の解像度になりました。
再建築不可物件の買取価格はどこまで下がるのか

買取価格は、業者が再販するまでにかかる費用とリスクを、査定額から先に引いた残りになります。だから「相場の何割」という比率だけを見ても、あなたの土地に当てはまるとは限りません。
ここでは価格の中身を分解したうえで、自分で確かめられる材料を挙げます。数字を持たずに交渉のテーブルにつくと、根拠のわからない金額をそのまま受け取ることになるからです。
買取価格はどうやって決まるのか
業者が差し引くのは、おおむね次の項目になります。
- 建物の解体費、または残置物の撤去とリフォームの費用
- 境界を確定させるための測量費
- 保有している間の固定資産税と都市計画税
- 隣地との交渉や、認定・許可の申請にかかる手間と時間
- 再販できるまでの期間と、売れ残るリスク
再建築不可の土地では、このうち隣地との交渉と、許認可が下りるかどうかの不確実性が重く効きます。業者は「たぶん通る」を価格に織り込めないため、通らなかった場合を前提に金額を組み立てるんです。
言い換えると、この不確実性をあなたの側で先に減らせれば、価格の下げ幅は小さくできます。役所での確認と境界の整理が、そのまま金額に返ってくるということですね。
相場は自分でどこまで調べられるのか
公的に確かめられる材料は3つあります。
1つ目は、国土交通省の不動産情報ライブラリです。不動産取引価格情報、地価公示、都道府県地価調査、成約価格情報を無料で閲覧できます。同じ町丁目で、同じくらいの面積の土地がいくらで動いたのかを見てください。
2つ目は、固定資産税の課税明細書に載る固定資産税評価額です。土地の評価額は地価公示価格等の7割を目途に付けられているため、逆算するとおおよその水準がつかめます。
3つ目は、複数社の査定です。1社だけでは、その数字が高いのか低いのか判断できません。同じ条件を書いた1枚の紙を作り、3社に同じ内容で出すのが実務として楽な方法になります。
「相場の◯割」という数字を鵜呑みにしない
インターネット上には、再建築不可物件の買取は市場価格の何割という数字が並んでいます。根拠として公表されている統計を、僕は見つけられませんでした。
再建築不可といっても中身はさまざまです。セットバックで解決する土地と、四方を他人の土地に囲まれた土地では、業者にとっての難易度が違います。同じ「再建築不可」の一語でくくった比率には、意味がないと考えたほうが安全ですね。
見るべきなのは比率ではなく、査定額とその内訳です。解体費をいくらで見たのか、測量費をいくら見込んだのか、再販の想定価格はいくらか。ここを説明できる会社と、できない会社に分かれます。

実務をしていた当時、相場観を持たずに交渉へ入る所有者の方をたくさん見てきました。目隠しをしたままカードゲームのテーブルに座るようなもので、提示された数字が妥当なのか判断できません。
僕が現場で気をつけていたのは、価格そのものより先に「その数字はどう作ったのか」を聞くことでした。答えられる相手なら、こちらの材料次第で数字が動きます。
根拠を言語化できない査定額は、交渉の起点にすらならないと思っています。
買取に出す前に確かめたい、再建築不可を外せる4つの可能性

再建築不可は、永久に固定された属性ではありません。道路との関係が変われば、建築確認が下りる土地に戻ります。
ここでは条文と省令で確認できる4つの道筋を挙げますね。どれも最終判断は特定行政庁が行うため、事前相談が前提になる点だけ先に押さえてください。
可能性1|セットバックで幅員4メートルを確保する
前面の道が建築基準法第42条第2項の指定を受けた道であれば、道路の中心線から2メートル後退した線が道路の境界線とみなされます。後退した部分に建物や塀を建てられなくなる代わりに、接道の条件を満たせるんですね。
道の向かい側が崖地や川、線路敷地の場合は扱いが変わります。条文は、その境界線から道の側へ水平距離4メートルの線を道路の境界線とみなすと定めました。自分の側だけで4メートルを負担する形になるということです。
セットバックが必要かどうかは、建築計画概要書や道路種別の調査で確認できます。役所の建築指導課で道路の種類を聞くのが確実な手順になりますよ。
可能性2|建築基準法43条2項1号の認定を受ける
建築基準法第43条第2項第1号は、幅員4メートル以上の道に2メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数で、特定行政庁が支障がないと認めるものについて、接道義務を適用しないと定めています。
道の基準は建築基準法施行規則第10条の3が定めました。農道その他これに類する公共の用に供する道であること、または政令の基準に適合する道であることのいずれかです。
建築物の側にも基準があります。同条第3項は、農道等に接する場合は住宅以外の用途、政令基準の道に接する場合は一戸建ての住宅・長屋などとしたうえで、延べ面積500平方メートル以内という上限を置きました。
この1号は「認定」で、建築審査会の同意は要りません。手続きの負担は次の2号より軽くなります。
可能性3|建築基準法43条2項2号の許可を受ける
第2号は、敷地の周囲に広い空地を有する建築物などについて、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したものを、接道義務の対象外とする規定です。
省令が定める基準は3つあります。敷地の周囲に公園・緑地・広場などの広い空地があること、幅員4メートル以上の農道等に2メートル以上接すること、または避難と通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する通路に有効に接することです。
3つ目の「通路」に該当するかどうかは、自治体ごとの包括同意基準で運用されています。同じ条件でも、市区町村が変われば結論が変わり得るということなんですね。
注意したいのは、この許可が建築計画ごとに出るものだという点です。条文は「次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない」と書いています。一度許可が下りたからといって、次の建て替えが自動的に通るわけではありません。
| 比べる項目 | 43条2項1号(認定) | 43条2項2号(許可) |
|---|---|---|
| 建築審査会の同意 | 不要 | 必要 |
| 接する道の条件 | 幅員4メートル以上の道(農道等・政令基準に適合する道) | 広い空地に接する・農道等に接する・十分な幅員の通路に有効に接する |
| 建築物の用途 | 農道等なら住宅以外/政令基準の道なら一戸建て住宅・長屋など | 省令の基準に当てはまる建築物 |
| 規模の上限 | 延べ面積500平方メートル以内 | 条文・省令に面積の上限なし |
| 手続きの重さ | 軽い | 重い(自治体ごとの包括同意基準で運用) |
可能性4|隣の土地を買う、または借りて通路をつくる
物理的に接道を作ってしまう方法です。隣地の一部を買い取って通路の幅を2メートルにする、あるいは通行地役権を設定してもらうという進め方になります。
費用はかかりますが、土地の評価そのものが変わります。再建築可能になった土地は住宅ローンの対象に戻るため、買主の母数が一気に広がるからです。
隣地の所有者にとっても悪い話とは限りません。境界を確定させ、越境の状態を整理する機会になります。交渉に入る前に測量士や土地家屋調査士へ相談し、図面を持って話すのが実務の順番になりました。

実務をしていた当時、担当した現場で境界杭が見つからず、重機で掘り返して探したことがあります。塀の下から出てきたときは、立ち会っていた全員で息を吐きました。
境界が決まらないと、隣地の一部を買う話も、通路を作る話も前に進みません。解体や建て替えで揉める原因の多くが、ここに集まっていました。
土地の話は、線が決まってからでないと金額の議論に入れないんです。
建て替えができない土地はどうやって手放すのか|残っている出口5つ

買取業者に断られたとしても、手放す道が閉じたわけではありません。再建築不可の土地には、一般の売却とは別の出口が用意されています。
順番として、隣地への打診を先にするのが合理的です。その土地をいちばん高く評価できる相手が、隣に住んでいることがあるからですね。
出口1|隣地の所有者に売る
隣の土地と一体になれば、接道の条件を満たす整形地に変わることがあります。買う側にとっては、自分の土地の価値が上がる投資になるわけです。
不動産会社を通した一般の募集より、高い金額で決まる例があります。隣地の所有者は、あなたの土地の使い道を具体的に描ける唯一の相手だからなんですね。
打診する前に、法務局で隣地の登記事項証明書を取っておいてください。名義人が既に亡くなっていて相続登記が済んでいない場合、話し合いの相手が複数になります。
出口2|現況のまま個人に売る
再建築不可でも、いま建っている家に住めるなら買い手はいます。相場より安く手に入る住まいを探している層や、店舗・事務所として使いたい層です。
現金で買える価格帯まで下がっていることが、かえって成立の条件になります。住宅ローンを使わない取引であれば、金融機関の担保評価は関係ありません。
ただし売主としての説明責任は残ります。建て替えができないという事実は、必ず書面で伝えてください。告げずに売れば、あとから責任を問われる話になります。
出口3|建物を残して貸す方法もある
建物が使える状態なら、賃貸として保有し続ける選択肢があります。再建築不可の土地でも、既存の建物を使う分には制限がかかりません。
判断の軸は立地です。借り手のニーズがない場所でリフォーム費を投じても、回収年数が現実的な数字になりません。駅から遠い土地なら、単身者向けの間取りではなく、戸建て賃貸としての価値を見たほうが筋が通ります。
家賃と、投じる費用と、回収までの年数。この3つを紙に書いて、成り立たなければ手放す側へ振り切るのが早いです。
出口4|解体して非建築の用途で使う
建物を壊すと、建築物ではない使い方が残ります。駐車場、資材置場、家庭菜園の貸し出しといった用途です。
ただし解体には注意点が2つあります。ひとつは税金なんですね。固定資産税の賦課期日は1月1日と定められているため、年内に更地にすると翌年から住宅用地特例が外れます。もうひとつは舗装です。アスファルトや土間コンクリートで固めると、将来の売却時に撤去費が乗ってきますよ。
とりあえず更地にする判断は、あとから戻せません。先に出口を決めてから壊す順番にしてください。
出口5|相続した土地なら国庫帰属制度を検討する
相続または相続人に対する遺贈で取得した土地なら、相続土地国庫帰属制度を使える場合があります。令和5年4月27日に始まった制度で、制度開始前に相続した土地も対象です。
ただし却下事由が明確に置かれています。建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染がある土地、そして境界が明らかでない土地は申請できません。
費用は審査手数料が土地1筆あたり14,000円、承認された場合の負担金は原則20万円です。市街化区域内や用途地域が定められた区域内の宅地では、面積に応じた計算式で算定されるため、20万円を超えます。

土地活用の営業をしていた当時、「とりあえず駐車場にしておけば管理も楽だし小銭も入る」という相談を何度も受けました。実際に提案したことも、止めたこともあります。
止めた理由は舗装でした。アスファルトで固めた土地を将来売るとき、撤去費が買主から差し引かれます。砂利敷きなら撤去は簡単ですが、コンクリートは別の話になるんですね。
将来の自分に解体費の請求書を予約しないよう、舗装の種類は先に決めておいてください。
リフォームで残すなら知っておく建築確認のルール

再建築不可の土地で建物を活かす場合、リフォームの規模に上限があります。建築確認が下りない土地では、確認申請が必要な工事もできないからです。
ここは近年の法改正で扱いが変わった論点なので、古い記事の情報のまま判断すると危険なところになります。
どこまでのリフォームで建築確認が必要になるのか
建築基準法第6条第1項は、同項第1号・第2号に掲げる建築物について、建築するときに加えて、大規模の修繕・大規模の模様替をするときにも建築確認を受けなければならないと定めています。
第2号は「2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超える建築物」です。つまり2階建ての木造住宅は、この第2号に当たります。
国土交通省も、木造戸建ての大規模なリフォームは建築確認手続きが必要になったと明記しました。柱や梁、屋根、外壁の過半をやり直す工事は、この「大規模」に当たり得ます。
出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」
平屋と2階建てで何が変わるのか
同じ第6条第1項でも、第3号に当たる建築物には大規模の修繕・模様替の規定がかかりません。都市計画区域内などにある、第1号・第2号以外の建築物です。
平屋で延べ面積200平方メートル以下の住宅は、ここに入ります。国土交通省の資料も、平家かつ延べ面積200平方メートル以下の建築物以外は、構造によらず構造規定等の審査が必要になったと整理しました。
再建築不可の物件で「フルリフォームして貸す」という出口を描くなら、建物が平屋か2階建てかで結論が変わります。着工してから確認申請が必要だと分かる展開だけは避けてください。工事を止めることになります。

実務をしていた当時、「この土地に何を建てれば儲かりますか」と聞かれると、僕は先に借りる人の顔を思い浮かべていました。出口が見えない土地への投資は、負動産を大きくするだけだからです。
再建築不可の物件も同じ考え方でいけます。直したあとに誰が使うのか、いくら払うのか、何年で戻るのか。ここが埋まらないなら、直さずに手放すほうが早いことが多いんですね。
リフォーム費は、回収年数まで書いて初めて判断材料になります。
再建築不可物件の買取業者を選ぶときに先に見る4つのこと

価格の高さで選ぶと、契約後に条件を下げられたときに逃げ場がなくなります。選ぶ順番は、資格の確認から入るのが安全です。
一般的な訳あり物件の業者選びは訳あり物件買取業者の選び方にまとめました。ここでは再建築不可に固有の見方だけを挙げます。
見る点1|宅地建物取引業の免許を番号まで確認する
不動産の売買を業として行うには、宅地建物取引業の免許が必要です。買い取る側も例外ではありません。
免許番号は、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで照会できます。番号を名乗らない相手、名乗っても照会に出てこない相手とは、その先へ進まないでください。
免許の有効期間は5年です。更新のたびに括弧内の数字が増えるため、(1)なら5年未満の会社だと分かります。
見る点2|再建築不可を扱った実績と、その後の出口
再建築不可の土地は、買ったあとの出口を作れる会社でないと値段が付きません。隣地と交渉した経験、43条2項の許可を取った経験、セットバックで再建築可能に戻した経験。この3つのどれかを持っているかを聞いてください。
「うちは何でも買います」という答えしか返らない場合、実際には転売先が決まっているだけの可能性があります。買った土地をどう再販するのかを具体的に語れるかが、実力の見分け方になりました。
自治体ごとの運用に慣れているかどうかも効きます。43条2項2号の包括同意基準は市区町村で違うため、その地域で申請した経験があるかは価格に直結する要素です。
見る点3|査定額の根拠をどう説明してもらうか
査定額を聞いたら、内訳を確認してください。再販の想定価格、解体費、測量費、保有中の税金、利益の見込み。この5つを言えるかどうかで会社が分かれます。
数字を出さずに「相場ですから」とだけ答える相手は、交渉の余地を残しません。内訳が出れば、こちらが減らせる項目を提案できます。境界の確定を売主側で済ませておく、といった交渉です。
見る点4|価格以外の条件を書面で出せるか
比べるべきなのは金額だけではありません。引き渡しの時期、残置物の扱い、契約不適合責任をどうするか、測量費をどちらが負担するか、越境物の処理をどこまで求められるか。
この5項目を横に並べた表を作ってください。金額が2番目でも、条件を合わせると手元に残る金額が1番になることは普通に起こります。
査定額ではなく、最後に手元へ残る金額で比べる。この習慣がつくと、選ぶべき相手は自然に絞られていきますよ。

再建築不可の土地を扱える会社は、地域によって数えるほどしかありません。実務をしていた当時も、難しい案件の相談先はいつも同じ顔ぶれでした。
だからこそ、1社に断られた時点で諦める必要はないんです。その会社の得意な出口と、あなたの土地の条件が合わなかっただけという場合があります。
断られた理由を聞いておくと、次の会社に相談するときの材料になります。
再建築不可物件を売ったときの税金|使える3つの制度

売却で利益が出ると、譲渡所得として所得税と住民税がかかるんですね。再建築不可の物件は取得費が古くて分からないことが多く、そのままだと利益が大きく計算されてしまうんです。
取得費が不明な場合、または実際の取得費が譲渡価額の5%より少ない場合は、譲渡価額の5%を取得費にできます。3,000万円で売って取得費が不明なら、150万円を取得費として計算する形です。
制度1|相続した空き家の3,000万円特別控除
相続または遺贈で取得した被相続人の居住用家屋とその敷地を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売った場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
主な要件は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始の直前に被相続人が住んでいて他に居住者がいなかったこと、売却代金が1億円以下であること、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることです。
耐震基準を満たすか、家屋を取り壊して敷地を売ることも求められます。令和6年1月1日以後の譲渡なら、譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しが済んでいれば足りるんです。
取得した相続人が3人以上の場合、控除額は2,000万円までになります。人数によって金額が変わる点は見落としやすいところですね。
出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
制度2|相続税を払っているなら取得費加算
相続で取得した財産を売る場合、その相続で相続税が課税されていれば、納めた相続税のうち一定額を取得費に加算できます。
期限は、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。申告期限が相続開始から10か月後なので、実質的に相続から3年10か月という理解になります。
この特例は、空き家の3,000万円特別控除とは併用できません。どちらが有利かを試算してから選ぶ必要があります。
出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
制度3|低未利用土地の100万円控除
都市計画区域内にある低未利用土地等を、建物等の対価を含めて500万円以下で売った場合、譲渡所得から100万円を控除できます。市街化区域内などの一定の区域では、金額要件が800万円以下に広がるんですね。
売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること、親子や夫婦などの特別な関係者への売却ではないこと、売却後に土地が利用されることが要件です。再建築不可の安い土地は、この控除の射程に入ることがあります。
国税庁のページには適用期限が令和7年12月31日までと書かれていますが、令和8年度税制改正の大綱で3年の延長が決まりました。制度の期限を見るときは、タックスアンサーと直近の税制改正大綱の両方を突き合わせてください。
出典:国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」
| 制度 | 主な対象 | 控除額 | 押さえる期限 |
|---|---|---|---|
| 空き家の3,000万円特別控除 | 昭和56年5月31日以前に建築された、被相続人の居住用家屋とその敷地 | 最高3,000万円(相続人3人以上は2,000万円) | 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日/制度は令和9年12月31日まで |
| 相続財産を譲渡した場合の取得費加算 | 相続税が課税された財産 | 納めた相続税のうち一定額を取得費に加算 | 相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで |
| 低未利用土地の100万円控除 | 都市計画区域内の低未利用土地等 | 100万円(譲渡所得が100万円未満ならその額) | 令和8年度税制改正の大綱で3年延長 |
空き家の3,000万円特別控除と取得費加算は併用できません。どちらが有利かは、譲渡益の大きさと納めた相続税の額で入れ替わるんですね。
なお税額の計算そのものは個別の事情で変わります。適用の可否と金額は税理士に確認してください。

実務をしていた当時、制度を知らないまま動いて損をした方を何人も見ました。売る順番、壊すタイミング、契約書に書く一文。この3つで手取りが数百万円変わることがあります。
僕が扱っていた頃の制度知識は、いまから数年前のものです。だから記事を書くときは毎回、国税庁と国土交通省の一次情報を開き直すようにしました。
「知らなかった」という言葉は、そのまま金額として返ってくるんですね。
買取を申し込む前に何をそろえるか|進め方のステップ4つ

査定を依頼する前に手元の情報を整えておくと、価格の精度が上がります。業者が不確実性を織り込む幅が小さくなるからです。
必要な紙は、法務局と役所で1日あればそろいます。
ステップ1|登記事項証明書で名義と地番を確認する
法務局で、土地と建物の登記事項証明書を取ってください。名義が親や祖父母のままなら、先に相続登記が必要になります。
抵当権が残っている場合も、抹消の手続きが要りますよ。名義と権利の整理が終わっていない物件は、契約の直前で止まります。手続きの内容は司法書士に相談してください。
相続の手続きが遅れたときに何が起こるかは、不動産の相続で手続きが遅れるとどうなる?4つの期限とペナルティにまとめました。
ステップ2|役所で道路の種類をどう調べるか
市区町村の建築指導課で、前面の道が建築基準法上の何号道路に当たるのかを聞いてください。42条2項道路の指定を受けているのか、そもそも道路ではないのかで、その後の選択肢が変わります。
同時に、都市計画区域の内か外か、用途地域は何か、建ぺい率と容積率はいくつかも確認できるんですね。窓口では、公図と住宅地図を持っていくと話が早く進みますよ。
過去に43条2項の許可を取った履歴があるかどうかも、この窓口で分かることがあります。
ステップ3|境界と越境の状況を見る
境界標が現地にあるかを確認してください。見当たらない場合、確定測量が必要になる可能性があります。
越境も確認する項目です。隣家の屋根や樹木の枝がこちらへ出ている、こちらの塀が隣地に入っている。越境があるまま契約すると、引き渡し前に解消を求められることが起こります。
境界と越境の状態を先に把握しておけば、査定の段階で条件として提示できるんです。土地の話は線が決まってからだ、というのはここに関わってきます。
ステップ4|同じ条件で複数社に査定を依頼する
3社に、まったく同じ内容の資料を渡してください。地番、面積、道路の種類、境界の状態、残置物の有無、希望する引き渡し時期。この6項目を1枚にまとめておくと、比較できる査定額が返ってきます。
会社ごとに違う情報を渡すと、金額の差が条件の差なのか実力の差なのか分からなくなってしまうんです。比較の前提をそろえるのは、売主側の仕事なんですね。
比べ終わったら、選ばなかった会社にも結果を伝えてください。連絡をそのままにしておくと、査定の続報が届き続けます。

しょうたさん、結局いくら残るんですか。実務をしていた当時、いちばん多かった質問がこれでした。
揉めたくて揉めている人はいませんし、できるならお金は手元に少しでも多く残ったほうがいい。5万円でも10万円でも、それが当たり前の感情だと思っています。
だから比べるのは査定額ではなく、税金と諸費用を引いたあとに残る金額です。
再建築不可物件の買取に関してのよくある質問

再建築不可の物件でも住宅ローンは使えますか?
金融機関によりますが、通らないことが多い分野です。建て替えができない土地は担保としての評価が付きにくく、返済が滞ったときの換金性が読めないためになります。
ノンバンクのリフォームローンや、金利の高い商品なら通る例もあります。買主が現金で買える価格帯に落ちるかどうかが、成約するかどうかの分かれ目になりました。
再建築不可の物件は解体してから売ったほうがいいですか?
多くの場合、解体しないほうが有利です。更地にすると新しい建物を建てられない土地になり、使い道が駐車場などに限られてしまうからですね。
固定資産税の面でも不利になります。賦課期日は1月1日と定められているため、年内に壊すと翌年から住宅用地の特例が外れます。解体する場合は、滅失登記の必要書類は?相続した家を解体したときの手続きと1か月の期限も確認してください。
買取業者に断られた土地は、もう手放せませんか?
そんなことはありません。隣地の所有者への打診、現況のまま個人へ売る方法、相続した土地なら国庫帰属制度と、まだ道が残っています。
断られた理由を聞いておくと、次に相談するときの材料になりますよ。出口を作れる会社が地域に限られているだけで、土地そのものに値段が付かないわけではないからです。
まとめ

長くなったので、要点を整理しますね。
- 再建築不可の原因のほとんどは接道。建築基準法第43条第1項が敷地は道路に2メートル以上接することを求めている
- 前面の道が42条2項道路なら、セットバックで条件を満たせる可能性がある
- 43条2項1号は認定、2号は建築審査会の同意を得た許可。1号は延べ面積500平方メートル以内などの基準がある
- 買取価格は、解体費・測量費・保有中の税金・許認可の不確実性を引いた残り。不確実性を先に減らせば下げ幅は小さくなる
- 買取以外にも、隣地への売却、現況のまま個人へ売る、貸す、非建築の用途、国庫帰属制度という出口がある
- 2階建ての木造住宅は大規模の修繕・模様替でも建築確認が必要。フルリフォーム前提の出口は先に確認する
- 相続した空き家なら3,000万円の特別控除、相続税を払っているなら取得費加算、500万円以下なら低未利用土地の100万円控除
僕が実務をしていた当時から、この分野でつまずく理由はほとんど変わっていません。土地が悪いのではなく、調べれば分かることを調べないまま査定を受けてしまうことなんです。
今日できる一歩は、業者に電話することではありません。市区町村の建築指導課に行き、前の道が何号道路なのかを聞く。そこが決まれば、価格の話はずっと具体的になりますよ。
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実務をしていた当時、グループ会社の売買部門と一緒に動く場面がありました。そこで見たのは、同じ会社でも担当者によって難しい物件への向き合い方が180度変わるという現実です。
「建築の案件につながるなら手伝うよ」と一緒に汗をかいてくれた人もいれば、話を聞いた時点で請け負わないと切った人もいました。会社の看板ではなく、目の前の担当者がどう考えているかで結果が変わったんですね。
だから僕は、会社名よりも「誰が担当につくか」を先に確かめる癖がつきました。