長男は実家をどうする?継ぐ義務の有無と、継がないときの決め方

長男は実家をどうする?継ぐ義務の有無と、継がないときの決め方

長男だから実家は継ぐもの、と言われてきたけれど、実家に戻って住む予定はない。そんな長男の方に向けて、長男が実家を継ぐか継がないかの決め方と、継がないときの実家の扱いを整理した記事です。

僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用の営業をしていました。

長男と実家について検索すると、継ぐ義務は法律に無いという解説と、個人の相談や体験談が上位に並びます。この記事では、長男に期待されがちな役目を一つずつ分けて、誰が担えるのかまで踏み込みました。

結論:長男だから実家を継がなければならない、という決まりは法律にありません。迷ったら「継ぐ」をひとまとめにせず、名義を持つ人・住む人・家を見に行く人を分けて考え、誰も見に行かない家にしないことを先に決めてください。継がないと決めたら、売る・兄弟姉妹が住む・貸す・持ち続けるのどれにするかを、税の特例と相続の期限を確かめてから選びます。

扱うのは、継ぐ義務の有無、近所や親戚の目との向き合い方、兄弟姉妹と親への伝え方、継がない実家の行き先の4つです。兄弟で相続するときの分け方の詳しい手順は、別の記事にまとめてあります。

法令と制度の記述は、e-Gov法令検索の条文と、国税庁・法務省・裁判所の案内で確かめました。2026年10月時点の内容としてお読みください。

長男は実家を継ぐ義務がある?法律に長男だけの決まりは無い

長男は実家を継ぐ義務がある?法律に長男だけの決まりは無い

長男だから実家を継がなければならない、という定めは、民法の相続の決まりの中にありません。子が何人かいるときの相続分は等しく、長男にだけ課された役目も、法律には見当たらないのです。実家を誰が受け取るかは、遺言が無ければ、相続人どうしの話し合いで決まります。

長男が相続する分は、弟や妹と同じ

親が亡くなると、その子は相続人になります(民法887条1項)。子が何人かいるときは、それぞれの相続分は等しい、と民法900条4号に定められています。長男だからといって、受け取る分が増えるわけではありません。

親の一方が健在なら、配偶者の相続分が2分の1で、残りの2分の1を子どもたちが等しく分けます。相続分の数え方は、空き家を兄弟で相続したら?揉めない分け方と3,000万円控除を人数分使う条件で詳しく扱いました。

実家を誰が受け取るかは、相続人全員の話し合いで決められます(民法907条1項)。長男以外の兄弟姉妹が受け取る形も、実家を売って代金を分ける形も、全員が合意すれば選べます。

長男に期待されがちな役目を、法律の決まりで分ける

「長男が継ぐ」という言葉には、いくつもの役目がひとまとめに入っています。役目ごとに法律の決まりを確かめていくと、長男だけに求められている役目は見当たりません。

長男に期待されがちな役目法律の決まり担える人
実家を相続して名義を持つ子の相続分は等しい。誰が受け取るかは、遺言か相続人全員の話し合いで決める(民法900条4号・907条1項)相続人の誰でも
実家に住む長男が住まなければならない、という定めはない住める人。誰も住まない選び方もある
親の暮らしを支える直系血族と兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある(民法877条1項)子の全員
お墓と仏壇を受け継ぐ相続とは別の決まり。亡くなった人の指定があればその人、無ければ慣習に従い、慣習が明らかでなければ家庭裁判所が定める(民法897条)亡くなった人が指定した人、慣習で決まる人、または家庭裁判所が定めた人。条文に「長男」の文字はない
空き家になった実家の手入れ空き家の所有者や管理者は、周りの生活環境に悪い影響を及ぼさないよう、適切な管理に努める(空家法5条)所有者。分け方が決まるまでは相続人の全員が共有する(民法898条1項)。見回りは家族や管理を頼んだ先も担える

この表のとおり、どの役目を誰が担うかは、家族の中で分けて決められます。継ぐか継がないかを一言で決める前に、役目ごとに考えてみてください。

継ぐか継がないかを家族で話す前に、実家がいくらで売れそうかを知っておくと、同じ数字を見ながら話し合えます。無料査定のご依頼と、住まずに持つ間の0円空き家管理のご相談は、お問い合わせからご連絡ください。

長男が実家を継ぐか迷うとき、近所の目には手入れの段取りで応える

長男が実家を継ぐか迷うとき、近所の目には手入れの段取りで応える

「近所づきあいもあるのだから」と親や親戚に言われ、継がないと言い出しにくい長男の方もいるでしょう。近所との関係を守るために長男ができることは、実家に戻って住むことに限りません。誰が家を見に行き、手入れの費用を誰が出すかを決めておけば、住む人と名義を持つ人が別でも、手入れの止まった家にしない形を選べるのです。

近所の方が悲しんでいたのは、手入れが途絶えたこと

土地活用の営業で空き家を訪ねていた当時、隣家の方の話の中に、悲しいという言葉がありました。持ち主が子の代に替わってから家の手入れが途絶え、困りごとが起きていることに向けた言葉です。

近所の方がふだん目にするのは、家の外まわりの手入れの様子になります。長男が継ぐかどうかの結論より先に、手入れが途切れない段取りを家族で決めておくことが、近所に対して長男ができることだと考えてください。

名義を持つ人と、家を見に行く人は分けて決められる

長男が実家を継ぐかどうかを決めるとき、名義を持つ人と家を見に行く人を、同じ人にしなければならないわけではありません。役目ごとに担う人を書き出してみると、長男が全部を背負わない形も見えてきます。

役目長男が担う形ほかの人が担う形
名義を持つ長男が相続する弟や妹が相続する/売って代金を分ける
家を見に行く長男が通う(通える間隔を先に決める)近くに住む兄弟姉妹が通う/管理を頼む先に任せる
手入れと税金の費用名義を持つ長男が払う兄弟姉妹で分担し、割合を決めておく
住む長男が戻って住む住みたい兄弟姉妹が住む/誰も住まない

分担を決めたら、話し合った日付と一緒に文書に残しておきましょう。持ち続ける間の費用の出し方は、空き家の維持費はいくら?削ってよい費用と相続後に払う人にまとめました。

周りの目を気にしてもしかたがない、という考え方もありますよね。ただ僕は、周りからどう思われるか、どう支えてもらえるかは大事なことだと考えています。継がないと決めるときも、その決め方で、親戚や近所との関係を損なわないかどうかまで考えてみてください。

長男が実家を継がないと決めたら、兄弟姉妹と親に伝える順番

長男が実家を継がないと決めたら、兄弟姉妹と親に伝える順番

長男が実家を継がないと決めたら、伝える前に自分が担えることを書き出し、代わりの形を添えて、兄弟姉妹と親に話していきましょう。実家を誰が受け取るかは、長男1人ではなく、相続人の全員で決める事柄です。

自分が担えることと、担えないことを先に書き出す

「継げない」とだけ伝えると、聞いた家族は、実家がこの先どうなるのかを思い描けません。住めない理由に加えて、年に何回なら見に行けるか、費用をいくらまでなら出せるかまで書き出しておくと、代わりの形を一緒に考えてもらいやすくなります。

書き出しておきたいのは、次の4つです。

  • 実家に住めるかどうかと、その理由
  • 年に何回、実家を見に行けるか
  • 税金や手入れの費用を、いくらまで出せるか
  • 実家を売ることに賛成か、反対か

兄弟姉妹には、住みたい人と家を見に行ける人がいるかを聞く

兄弟姉妹の中に、実家に住みたい人や、近くに住んでいて家を見に行ける人がいれば、長男が名義を持たない形も選べます。住む人が実家を受け取り、ほかの兄弟姉妹にはお金で調整する分け方もあるので、最初にそれぞれの希望を出し合ってください。分け方の決め方は、実家を兄弟で相続するなら|分け方の決め方と共有を避ける理由で扱いました。

兄弟姉妹の間で意見が分かれ、話し合いがまとまらないこともあるでしょう。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。こじれそうだと感じたら、早めに弁護士へ相談してください。

親が元気なうちなら、実家を誰に渡したいかを聞いておく

親が健在なら、実家をこの先どうしたいか、誰に渡したいかを、親の口から聞いておきましょう。親の希望を遺言に残してもらえば、相続のときに家族が迷う場面を減らせます。遺言では、相続分や遺産の分け方を指定できると、民法に定められています(民法902条・908条)。

ただ、遺言を書くことも、家を売る契約を親本人が結ぶことも、親に判断する力があるうちにしかできません(民法3条の2・963条)。親の判断する力が落ちてからの売り方は、認知症の親の不動産売却はできる?売れる条件と代金が入るまでの流れにまとめました。

家族で話し合う場に、実家を売った場合の値段の目安を持っていくと、継ぐか継がないかの話が具体的になります。無料査定と、0円空き家管理のご相談は、お問い合わせでお受けしています。

継がないと決めたことに、後ろめたさを抱えている長男の方もいるでしょう。ただ、こうして実家のことを調べている時点で、周りや近所に迷惑をかけたくないと考えている方だと、僕は思っています。その気持ちを、伝え方と、家を見に行く段取りで形にしていきましょう。

長男が継がない実家の行き先と、先に確かめる税の特例と期限

長男が継がない実家の行き先と、先に確かめる税の特例と期限

長男が実家を継がないときの主な行き先は、売って代金を分ける、兄弟姉妹が受け取って住む、貸す、相続人で持ち続ける、の4つです。どれを選ぶかで、使える税の特例と、守る期限が変わります。期限を先に並べてから選んでください。

実家の行き先向いている場面先に確かめること
売って代金を分ける誰も住む予定がない相続した空き家の3,000万円控除を使えるかと、売る期限
兄弟姉妹が受け取って住む実家に住みたい兄弟姉妹がいるほかの兄弟姉妹への渡し方。住むと、相続した空き家の3,000万円控除は使えない
貸す借り手が見込める場所にある貸す前の修繕の費用。貸すと、相続した空き家の3,000万円控除は使えない
相続人で持ち続ける当面は決めきれない見回りと費用の分担を文書にする。売るなら、3,000万円控除の売る期限が近づいていく(相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日と、制度の期限の2027年12月31日の早いほう)

貸す・誰かが住むと、相続した空き家の3,000万円控除は使えない

親が1人で暮らしていた家を相続して売るときは、要件を満たせば、売って得た利益から、相続して売った人ごとに最高3,000万円を差し引ける特例があります。ただし、この特例は、相続の時から売る時まで、その家を貸したり、事業に使ったり、誰かが住んだりしていないことが要件の1つです。兄弟姉妹がしばらく住む、人に貸す、と決める前に、売る可能性があるならこの特例との関係を確かめてください。

ほかにも、建物が昭和56年5月31日以前に建てられたこと、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどが要件で、制度は2027年(令和9年)12月31日までの売却が対象です(国税庁No.3306)。2024年(令和6年)1月1日以後の売却で、その家と土地を相続した人が3人以上なら、1人あたりの上限は2,000万円になります。要件の全体は、空き家の3,000万円控除は何が変わった?|2026年8月の要望での変更点と対象外の5つの出口を解説で扱っています。税額の計算は、税理士か税務署に確かめてください。

継がないことと、相続放棄は別の手続き

実家を継がないために、相続放棄を考える長男の方もいるでしょう。ただ、相続放棄をすると、実家だけではなく預貯金なども含めて、初めから相続人でなかったことになります(民法939条)。放棄は、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申し出る手続きです(民法915条1項・938条)。

実家を受け取らないだけなら、遺産分割の話し合いで、ほかの相続人が受け取る形にすれば足ります。子の全員が放棄すると、亡くなった親の親や兄弟姉妹が、次の順で相続人になる点にも気を付けてください(民法889条1項)。放棄を考えている間に家に手を付けてよいかは、親の死後の家の処分費用はいくら?内訳と先に出るお金の減らし方にまとめました。

実家を受け取った人は、3年以内に相続登記を申請する

相続で実家の所有権を取得した人には、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の2第1項)。先に法定相続分での相続登記や、相続人であることを申し出る相続人申告登記をした後で遺産分割がまとまったときは、分割の日から3年以内に、その内容での登記も申請しなければなりません(同条2項・76条の3第4項)。相続人申告登記で登記の義務を果たしたとみなされるのは、3年の期限内に申し出た相続人に限られます(76条の3第2項)。長男が自分の分だけを申し出ても、弟や妹の義務は残ります。長男が実家を継がない場合も、名義の手続きを誰が進めるのかまで、話し合いの中で決めておきましょう。

期限の数え方は、相続登記が未了の実家は売却できるか|2027年3月の期限までに動く順番と、決めきれない人の5つの出口で扱いました。

継がないと決めてから、兄弟姉妹の話し合いがまとまるまでの間の見回りも、0円空き家管理でご相談いただけます。売る形を考えている方には、無料査定で実家の値段の目安をお伝えしますので、お問い合わせからご連絡ください。

まとめ

まとめ

長男だから実家を継がなければならない、という決まりは法律にありません。子の相続分は等しく、実家を誰が受け取るかは、遺言が無ければ相続人全員の話し合いで決まります。

迷ったら、「継ぐ」を、名義を持つ・住む・家を見に行く・費用を出す、という役目に分けて考えてください。近所の方の目に入るのは家の外まわりの手入れなので、継がない場合も、誰が見に行くかを先に決めておくことが大切です。

継がないと決めたら、売る・兄弟姉妹が住む・貸す・持ち続けるのどれにするかを、3,000万円控除の要件と相続登記の期限を確かめてから選んでください。相続放棄は実家だけを手放す手続きではない点にも、注意しておきましょう。

よくある質問

よくある質問

質問1|長男が実家を継がないのは、親不孝になりますか?

法律の上では、長男に実家を継ぐ義務はありません。子の相続分は兄弟姉妹で等しく、実家に住むことや名義を持つことを長男の役目と定めた条文も無いのです。親不孝かどうかを心配するより、家の手入れが途絶えないよう、代わりの形を添えて親に伝えてください。

質問2|長男が実家を相続して、住まずに持ち続けてもよいですか?

持ち続けることはできます。相続で取得したら3年以内に相続登記を申請し、毎年の固定資産税と手入れの費用を払っていくことになります。いずれ売るつもりなら、相続した空き家の3,000万円控除は、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件で(制度は2027年12月31日までの売却が対象)、貸したり誰かが住んだりしても使えなくなります。持ち続ける間の使い方と売る時期を、先に決めておいてください。

質問3|実家を継がないために、相続放棄をすればよいですか?

相続放棄は、実家だけを手放す手続きではありません。預貯金なども含めて初めから相続人でなかったことになり、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申し出る必要があります。実家を受け取らないだけなら、遺産分割でほかの相続人が受け取る形にできるので、迷ったら弁護士か司法書士に相談してください。

出典

出典:e-Gov法令検索「民法」

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」

出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

出典:裁判所「相続の放棄の申述」

相続の分け方や放棄は弁護士か司法書士へ、税金は税理士か税務署へ、それぞれ確かめるのが確実です。

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら