旗竿地が売れないのは竿の幅で決まる|止まる4つの理由と、売れないと決める前に確かめる4つのこと

旗竿地が売れないのは竿の幅で決まる|止まる4つの理由と、売れないと決める前に確かめる4つのこと

道路から細い通路、いわゆる竿の部分で奥に入る旗竿地の家や土地を持っていて、不動産会社に「旗竿地は売れにくいですよ」と言われたまま、売却が止まっている方に向けた記事です。

2016年から6年間、僕は大手の不動産・建築会社で、地主の方々を相手に土地有効活用のコンサルティング営業をしていました。旗竿地の売買そのものを担当した実話はありませんが、竿の幅を決める境界標を探した現場や、仲介会社の内側の事情は当時の現場で実際に見ています。

結論から言うと、旗竿地が売れないと言われるとき、止まっている場所は3つのどれかになります。買い手がまだ現れていないのか、建て替えができるかどうかの判断で止まっているのか、価格が折り合わないのか。旗竿地では2つ目の比重が大きく、その判断は竿の幅と長さという測れる数字で決まるわけです。

竿の幅は、建築基準法の2メートルだけでは足りない地域があります。東京都では、竿の長さが20メートルを超えると原則として3メートル以上の幅が要る、と条例で定められているんですね。逆に、2メートルに届かないと思い込んでいた竿が、境界標を確かめたら届いていたということも起こります。

この記事では、3つの状態と4つの理由から、確かめること、売り先、価格、コスト、共有の竿、建て替えを可能にする方法、国庫帰属、税金、進め方の順に見ていきますね。

法令と制度は、e-Gov法令検索・東京都例規集・国税庁・法務省などで確認したものだけを載せました。2026年9月時点の内容としてお読みください。再建築不可の物件全般の売り先は、再建築不可物件の売却は売り先で決まる|5つの出口と、動く前に確かめる道路の調べ方に分けて書いています。

旗竿地が売れないと言われるとき、何が起きているのか|3つの状態

旗竿地が売れないと言われるとき、何が起きているのか|3つの状態

同じ「売れない」でも、旗竿地の場合は中身が3つに分かれるものです。どこで止まっているかを先に切り分けないと、測れば済む話に何か月も使ってしまいかねません。

状態1|売りには出ているが、買い手がまだ現れていない

広告は出ているのに問い合わせが少ない、内見まで進まない状態です。奥まった土地を好む買い手は一定数いるのに、その層に届く売り方ができていないという見方になります。

宅地建物取引業法は、専任媒介契約なら2週間に1回以上、自分で見つけた相手とも契約できない特約付きの専任媒介契約(専属専任媒介契約)なら1週間に1回以上、業務の処理状況を依頼者に報告するよう定めています。反響の数字が出てこないなら、そこが最初の確認点になります。

出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」

状態2|建て替えができるかどうかの判断で止まっている

「竿の幅が足りないので建て替えできません」と言われて、そこから先に進んでいない状態です。

建て替えの可否は、意見ではなく数字で決まります。竿の実測幅、竿の長さ、前面道路の種別、自治体の条例。4つを役所と現地で確かめれば、原則としての答えが出るわけです。

状態3|価格が折り合わない

業者から数字は出ているものの、売主のほうが納得できていない状態ですね。旗竿地の値段は、隣の整形地と同じ物差しでは付きません。

先にやるのは値下げではなく、その数字が竿の面積と建て替え可否をどう見た結果なのかを聞くことになります。

状態起きていること最初の一手
1 買い手が現れない届く層に届いていない報告で反響の数字を確かめる
2 建て替えの判断で止まる意見だけで数字が無い竿の幅と長さを測る
3 価格が合わない竿の見方がそろっていない差し引かれた項目を聞く

実務をしていた当時は、地主の方々と土地の使い道を一緒に考える仕事をしていました。土地の価値は面積だけでは決まらず、形と道路との関係で大きく変わる、というのが僕の考えです。

旗竿地は、竿の数字が1つ決まるだけで、売れる相手と値段の両方が動きます。まず自分が3つのどこで止まっているのかを、紙に書き出すところから始めましょう。判断に迷うところが出てきたら、お問い合わせからご相談ください。

なぜ旗竿地は売れないと言われるのか|4つの理由

なぜ旗竿地は売れないと言われるのか|4つの理由

旗竿地が止まる理由は、4つに分けられます。前の2つが法律と条例の話で、残りは暮らしやすさと、お金を出す側の都合の話になるんですね。

理由1|竿の幅が2メートルに届かず、接道義務を満たさないから

建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならない、と建築基準法は定めています。旗竿地の場合、道路に接しているのは竿の先端だけです。竿の幅がそのまま「接している長さ」になるので、幅が2メートルに届かなければ、原則として新しく建てられません。

ただし、この条文が縛るのは建てる行為までで、旗竿地を売ること自体は縛っていないんです。それに、この規定は都市計画区域と準都市計画区域の中でしか働かず、区域の外なら接道義務そのものがかかりません。

出典:e-Gov法令検索「建築基準法」

理由2|幅2メートルはあっても、条例で3メートルが求められることがあるから

2メートルあれば必ず建てられる、とも言い切れないんですね。建築基準法は、地方公共団体が条例で敷地や道路との関係に制限を付加できると定めています(40条・43条3項)。

東京都建築安全条例は、敷地が路地状部分のみで道路に接する場合、路地状部分の幅員をその長さに応じた幅以上にするよう求めています。路地状部分の長さが20メートル以下なら2メートル、20メートルを超えると3メートルです。耐火建築物と準耐火建築物以外で延べ面積が200平方メートルを超える建物では、それぞれ3メートルと4メートルに読み替えられます。さらに、路地状部分の幅員が4メートル未満の敷地には、原則として階数3以上の建物を建てられません(3条の2)。

条例の中身は自治体ごとに違うので、東京都は一例と考えて、自分の土地の自治体の定めは役所の建築指導課で確かめてください。

出典:東京都例規集「東京都建築安全条例」

理由3|車が入らず、日当たりが限られ、工事の費用が上がるから

竿の幅が2メートルぎりぎりだと、人は通れても車を停める場所はありません。奥の敷地は隣家に囲まれることが多く、日当たりと風通しは道路に面した土地より限られます。

建て替えができる旗竿地でも、竿を通れない工事車両や重機は使えず、資材を人の手で運ぶ分だけ手間が増えます。解体費と建築費の見積もりが整形地より高く出るのは、この手間の分です。買主はその差を織り込んで価格を見ます。

理由4|住宅ローンが付きにくく、仲介の採算も合いにくいから

金融機関が担保として見るのは、その土地を将来どれだけ売りやすいかになります。建て替えができない旗竿地は、その将来が読みにくい分だけ評価が下がりやすいんです。住宅金融支援機構の【フラット35】も、技術基準で原則として一般の道に2メートル以上接することを求めています。

出典:住宅金融支援機構「対象となる住宅・技術基準|【フラット35】」

仲介の不動産会社の側にも事情があって、収入は成約したときの仲介手数料になります。価格が低く調査に手間のかかる物件は、動かす労力のわりに実らない案件になりがちです。実務をしていた当時、同じ会社の中でも担当者によって対応が大きく変わるのを実際に見てきました。断られた理由が旗竿地そのものではなく、その担当者の事情だったということも起こり得るわけです。

理由何が起きるか売主にできること
1 幅2メートル未満原則として建て替え不可竿の幅を実測する
2 条例の付加2メートルでも足りない場合がある自治体の条例を確かめる
3 車・日当たり・工事費買主が費用を織り込む見積もりを先に取る
4 ローンと採算買主と会社が絞られる扱いに慣れた会社に替える

「旗竿地」という言葉は法令用語ではありません。東京都の条例では「路地状部分」、国税庁の通達では「不整形地」と、場面によって呼び方が変わります。

役所の窓口では「竿」ではなく「路地状部分の幅員と長さ」と言い換えると、話が一度で通ります。言葉をそろえるだけで、返ってくる答えの精度が変わるものです。

旗竿地が売れないと決める前に確かめる4つのこと

旗竿地が売れないと決める前に確かめる4つのこと

塀の内側で測った数字を信じて止まっている例があるので、ここは4つを順番どおりに進めてください。

確認1|竿の幅は、境界標を基準に実測で何メートルあるのか

竿の幅は、塀と塀の間を測った数字ではなく、土地の境界を示す境界標と境界標の間の距離です。塀は境界線の内側にも外側にも建つので、塀を基準にした数字は当てになりません。

境界標の調査や境界に関する測量のためなら、必要な範囲で隣地を使用できると民法は定めています(住家に立ち入るには居住者の承諾が要ります)。

出典:e-Gov法令検索「民法」

実務をしていた当時、解体の現場で境界杭が土の下に埋まっていて、専門家に掘り出してもらってようやく見つかった場面に立ち会った経験があります。測量の立ち会いにも出ていたので、杭の位置ひとつで敷地の線が動くことを、そこで実感しました。塀の内側で測って1.9メートルだった竿が、境界標で測ると2メートルを超えていた、という結果は起こり得ます。境界そのものが分からないときは、法務省の筆界特定制度で筆界の位置を特定する道もあるんですね(所有権の範囲までは決まりません)。

出典:法務省「筆界特定制度」

確認2|前面の道路は建築基準法上の道路か、後退が要る道か

竿の先が接している道が、建築基準法上の道路でなければ、幅が足りていても接道義務は満たせません。私道でも、特定行政庁から位置の指定を受けていれば道路になります。

幅員4メートル未満でも、適用時に建築物が立ち並んでいて特定行政庁が指定した道は道路とみなされます。中心線から水平距離2メートルの線が道路の境界線とみなされるので、竿の先端はその線まで後退することになるんですね。後退した部分は敷地面積に入りません。

出典:e-Gov法令検索「建築基準法」

確認3|自治体の条例と、43条2項の認定・許可の可能性はどうか

確認1で幅が、確認2で道路の種別が分かったら、自治体の条例に当てはめる番です。

幅が足りない場合でも、道が終わりではありません。建築基準法43条2項には、特定行政庁が支障がないと認める認定(1号)と、建築審査会の同意を得た許可(2号)があります。認定も許可も建築計画ごとの判断なので、一度通っても次の建て替えが自動で通るわけではありません。外し方の中身は再建築不可物件が売れないときに見る3つの状態|止まる4つの理由と、状態ごとの抜け方に書きました。

確認4|隣の竿との関係はどうなっているか

旗竿地が2つ並んで、竿同士が隣り合っていることがあります。見た目は1本の通路でも、登記の上では2筆に分かれていたり、1筆を共有していたり、一方が他方の竿を通っていたりするんです。

公図と登記事項証明書で、竿の地番と所有者を先に確かめてください。他人の土地を通っているなら、通行地役権が登記されているか、口頭の承諾だけなのかで買主の見方が変わります。地役権は要役地の所有権とともに移転し、承役地の登記には目的と範囲が記録されるので、買主は登記で通れる範囲を確かめられるんですね。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」

確認見るもの分かること
1 竿の幅境界標・測量図2メートルに届くか
2 道路の種別役所の建築指導課42条の道路か・後退の要否
3 条例と43条2項条例・建築指導課建て替えの可否と外す道
4 隣の竿との関係公図・登記事項証明書地番・所有者・地役権

4つとも、所有者ご本人が半日あれば確かめられるものです。調べてから相談するのと、調べてもらうために相談するのとでは、返ってくる答えの精度が変わります。

竿の実測幅と道路の種別を書いた紙が1枚あるだけで、業者の答えは「売れにくい」から具体的な数字に変わります。

旗竿地が売れないときに変える3つの売り先

旗竿地が売れないときに変える3つの売り先

買い手が現れない状態1の方に、いちばん効くのがこの章です。旗竿地は相手を替えると、答えが変わります。

売り先1|竿の隣、または奥の隣地の所有者に声をかける

竿に接している隣地の所有者にとって、その竿を買い足せば自分の敷地の間口が広がるわけです。奥の隣地の所有者から見れば、旗の部分と自分の土地をまとめて、形の整った1つの土地にできる場合もあるでしょう。まとめれば整形地になる相手にとって、旗竿地の価値はほかの誰よりも高くなります。

順番は、先に業者の数字を手に入れてから隣地に声をかける、が基本です。相場の見当を持たずに交渉に入ると、根拠の分からない数字をそのまま受け入れることになりかねない、と僕は考えています。声のかけ方の順番は狭小土地の買取業者はどう選ぶか|出口で変わる3つのタイプと、業者に当たる前に隣地へ声をかける順番を読んでみてください。

売り先2|旗竿地や再建築不可を扱う買取業者に売る

仲介ではなく、その会社自身が買主になる形です。竿の幅が足りない土地を、隣地との交渉や認定の手続きまで含めて引き受ける会社もあります。その代わり、価格は仲介で売る場合より低くなりやすい点は押さえておいてください。

相手が宅建業の免許を持っているか、行政処分を受けていないかは、国土交通省の検索システムで誰でも調べられます。買取価格の決まり方は再建築不可物件の買取はどこまで下がる?価格の決まり方と、売る前に確かめる4つの可能性で扱いました。

出典:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」

売り先3|建て替えできる旗竿地なら、条件を整えて一般の買主に売る

竿の幅が条例の基準を満たし、建て替えができる旗竿地なら、売り先は一般の買主で構いません。道路から奥まっていて静かなこと、整形地より価格が抑えられることを価値と見る買主もいます。

効くのは、建て替えできる根拠を先にそろえておくことです。竿の実測幅、道路の種別、条例への当てはめを紙にして広告に添えると、買主が自分で調べる手間と不安が減ります。

売り先向いている場面気をつける点
1 隣地の所有者まとめれば整形地になる先に業者の数字を持つ
2 買取業者竿の幅が足りない・期間を区切りたい免許と処分歴を確認する
3 一般の買主建て替えができる根拠を紙にして添える

隣地に声をかけるときは、所有者ご本人が出向いて事情を話すほうがよい、というのが僕の考えになります。竿は隣地と長く接していて、日ごろの関係がそのまま交渉の土台になるからです。

変えるのは旗竿地そのものではなく、話を聞く相手のほうです。同じ資料を性質の違う3者に渡してみると、返ってくる答えにどれだけ幅があるかが見えてきます。

旗竿地が売れない価格になるのはなぜか|3つの引き算

旗竿地が売れない価格になるのはなぜか|3つの引き算

価格で折り合わない状態3の方に向けて、旗竿地の値段の中身を分解していきます。旗竿地の価格は感覚ではなく、引き算で決まるものです。

引き算1|竿の面積は、家を建てる場所にならないから

登記上の面積には竿も含まれていますが、家を建てられるのは旗の部分だけです。買主は、竿の面積を「使えない面積」として値段から差し引きます。

税の物差しでも同じ考え方が採られていて、国税庁の財産評価基本通達は、不整形地の価額を整形地として計算した価額に不整形地補正率を乗じて評価すると定めているんです。接道義務を満たしていない宅地は無道路地として、通路に相当する部分の価額をさらに差し引きます。相続税のための物差しなので売値そのものではありませんが、路地の分を引くという考え方の裏づけにはなるはずです。

出典:国税庁「(不整形地の評価)」

引き算2|建て替えができるかどうかで、土台の数字が変わるから

建て替えができる旗竿地とできない旗竿地では、出発点の金額が違います。できない場合、買主の出口は隣地とまとめるか、現況のまま使うかに絞られ、その出口の価格から逆算されるわけです。

つまり、旗竿地に「相場の何割」という一律の答えは無い、ということですね。数字を受け取ったら、建て替えできる前提なのか、できない前提なのかを最初に聞いてください。

引き算3|工事の費用と、手続きの期間が引かれるから

竿を通れない重機の代わりに人の手で運ぶ費用、測量と境界の確定、残置物の撤去、認定や許可を取るならその手続きにかかる期間。買主が負担するものは、一つ残らず価格から差し引かれます。

引かれる項目を竿の分から順に自分で書き出しておけば、業者の数字を自分で検算できるようになります。同じ地域の整形地がいくらで動いているかは、国土交通省の不動産情報ライブラリで誰でも調べられるので、先に見ておいてください。

出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」

引き算引かれるもの売主の確認点
1 竿の面積建てられない部分竿の面積を自分で出す
2 建て替え可否出口の価格からの逆算どちらの前提の数字か
3 工事費と期間運搬・測量・手続き項目を1つずつ聞く

竿の分を引いた数字が低いこと自体は、不当ではありません。問題は、竿の面積と建て替え可否をどう見たのかを説明されないまま、受けるか断るかだけを迫られることにあります。

「この数字は竿の面積と建て替え可否をどう見ていますか」と一言聞いてみてください。竿の面積が何平方メートルで、建てられる前提かどうかまで即答できる相手なら、あとの話も進めやすくなるはずです。竿の見方で引っかかったら、お問い合わせからご相談ください。

旗竿地を売れないまま持ち続けると何が起きるのか|3つのコスト

旗竿地を売れないまま持ち続けると何が起きるのか|3つのコスト

売らない判断も選択肢のひとつになります。ただし、旗竿地には竿があるぶん、持ち続けるコストが1つ多いんです。

コスト1|固定資産税と維持費は毎年出ていく

固定資産税の納税義務者は土地・家屋の所有者で、課税は毎年1月1日時点の状態で決まります。住宅が建っている土地には課税標準の特例があり、200平方メートル以下の部分は評価額の6分の1、それを超える部分は3分の1が課税標準の上限です。建物を壊して更地のまま1月1日を迎えると、この特例が外れます。

出典:総務省「地方税制度|固定資産税の概要」

壊して駐車場に、という発想には旗竿地ならではの落とし穴があり、竿の幅が狭ければ車が入れないので駐車場になりません。アスファルトや土間コンクリートで舗装した土地には、将来建物を建てるときに舗装をはがす費用が別途かかる、と実務をしていた当時はお客様に説明していました。

コスト2|竿の管理と通行をめぐる摩擦は、所有者に向かう

竿は、隣地と長く接した細い土地です。草が伸びれば隣家に迷惑がかかり、塀が傾けば竿を通る人に危険が及びます。

隣の土地が、自分の竿を通らなければ公道に出られない袋地なら、通行を止めることはできません。他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るために囲んでいる土地を通行できると民法が定めているからです。隣も自分の竿を持つ旗竿地で、便宜上こちらの竿を通っているだけなら、地役権か承諾の問題になり、確認4で見た登記の中身が効いてきます。通行の範囲や車の乗り入れをめぐる争いは、法律の領域になります。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。

コスト3|名義が世代を越えると、売主が確定しなくなる

3つの中で、旗竿地の売却をいちばん長く止めるのがこれです。所有者が亡くなっても登記をそのままにしておくと、相続人は次の世代へ広がっていきます。実務をしていた当時、登記事項証明書を取って所有者を追いかけていて、三代前の名義のまま止まっている土地に実際に当たったことがありました。

相続登記は現在、取得を知った日から3年以内の申請が義務になっています。令和6年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その期限は令和9年3月31日です。旗竿地は、売れないから放置されるのではなく、放置されるうちに売れなくなるという順番をたどります。

出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

コスト何が起きるか引き金
1 税と維持費特例が外れると負担が増える1月1日時点で更地
2 竿の管理隣地との摩擦・通行の争い草・塀・境界の放置
3 名義の拡散売主が確定しない相続登記をしないこと

持ち続けるか手放すかは、気持ちより先に計算で決めるべきだ、というのが僕の考えです。実務をしていた当時、建てる提案では回収年数を先に出して、そのうえでお客様に判断してもらっていました。

旗竿地でも同じで、税金と竿の手入れを含めて年間いくら出ていくかを先に出してください。

旗竿地の竿が共有名義だと売れないのか|3つの決まり

旗竿地の竿が共有名義だと売れないのか|3つの決まり

隣の旗竿地と1本の竿を分け合い、竿だけが共有名義になっている土地があります。共有だから売れない、というわけではありませんが、決まりを知らないと止まりかねません。

決まり1|共有者は持分に応じて竿の全部を使える

民法は、各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができると定めています。竿の半分しか通れない、ということにはなりません。

共有者には善良な管理者の注意をもって使う義務もあるので、竿を物置代わりに塞ぐ使い方はこの規定に触れかねません。

決まり2|舗装のやり直しや門扉の設置は、同意の範囲が決まっている

共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要ですが、形状または効用の著しい変更を伴わないものは除かれます。管理に関する事項は、持分の価格の過半数で決めるんですね。

共有者の所在が分からないときは、裁判所の裁判で、その共有者以外の同意で変更や管理を決められる仕組みがあります。

決まり3|自分の持分は、他の共有者の同意なく売れる

旗の部分と竿の持分をあわせて売ることは、他の共有者の同意がなくてもできます。買主は竿の共有者になり、決まり1と2をそのまま引き継ぐわけです。

ただし、買主から見ると、竿を分け合う相手が誰なのか、これまでの使い方に約束事があるのかは価格の材料になります。共有名義の土地を売る進め方そのものは共有名義の土地売却は何から始めるか|全員の同意が要る場面と、反対されたときの4つの出口で扱いました。

決まり民法の定め旗竿地での意味
1 使用持分に応じて全部を使える通路として全体を通れる
2 変更と管理変更は同意・管理は過半数舗装や門扉は先に相談
3 持分の売却同意なく売れる買主が共有者を引き継ぐ

共有の竿で起きる摩擦は、権利の問題より先に、日ごろの使い方の問題として表れます。車を停める、荷物を置く、草を刈らない。小さなことの積み重ねが、売る段階で「あの人とは話したくない」に変わりかねません。

共有者との関係が良いうちに、竿の使い方を書面に残しておくと、売るときの材料になります。揉めてしまってからの整理は、弁護士の領域です。

旗竿地が売れない状態を抜ける|建て替えを可能にする3つの方法

旗竿地が売れない状態を抜ける|建て替えを可能にする3つの方法

竿の幅が足りない旗竿地を、建てられる土地に変える道になります。時間と費用はかかりますが、抜けられれば一般の買主に売れます。

方法1|隣地から竿に沿った部分を買い足して幅を確保する

竿に接する隣地の所有者から、竿に沿った細い部分を買い取り、自分の竿に加える方法です。足りないのが数十センチメートルでも、条例の幅に届けば建て替えの可否が変わります。

手続きは、隣地を分筆し、その部分の所有権を移し、自分の竿と合筆する順番になります。不動産登記法は、所有者が異なる土地や、所有権以外の権利の登記がある土地は合筆できないと定めているので、抵当権が残る隣地の一部は、そのままでは合筆できません。登記の手続きは司法書士と土地家屋調査士の領域です。

方法2|隣の旗竿地と竿を合わせて、幅を確保する

旗竿地が2つ並んでいて、竿が1.5メートルずつという場合、2本を合わせれば3メートルになります。竿の部分を互いに共有にするか、互いに通行地役権を設定して幅を確保する方法です。

隣の所有者にとっても建て替えの可否が変わる話なので、利害が一致しやすいのが特徴になります。ただし、隣の竿を自分の敷地の一部として数えられるかは自治体の運用によるので、先に建築指導課で可否を聞いてください。共有にした場合は、7章の決まりがそのまま付いてきます。

方法3|43条2項の認定・許可を受ける

幅員4メートル以上の道に2メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数で特定行政庁が支障がないと認めたものは、接道義務の適用を受けません(1号の認定)。建築審査会の同意を得た許可(2号)もあります。

認定も許可も、建築計画ごとの判断です。売主が先に建築指導課で可能性を聞いておくと、その情報がそのまま価格の材料になります。

方法相手・手続き押さえる点
1 隣地から買い足す分筆・所有権移転・合筆抵当権が残ると合筆不可
2 隣の竿と合わせる共有または地役権自治体の運用を先に聞く
3 認定・許可建築指導課・建築審査会建築計画ごとの判断

方法1と2は、隣地の所有者が首を縦に振るかどうかで決まるものです。こちらの都合だけを話しに行くと、話は進みません。

相手にとって何が得になるのかを先に考えてから、声をかけてください。

旗竿地が売れないときの国庫帰属という道|3つの条件

旗竿地が売れないときの国庫帰属という道|3つの条件

竿の幅が足りず、隣地も買取業者も動かないとき、相続した土地に限って残る出口が国庫帰属になります。ただし、旗竿地の竿がそのまま引っかかる条件があるんです。

条件1|相続または遺贈で取得した土地であること

この制度を使えるのは、相続か、相続人に対する遺贈で土地を受け取った人だけになります。自分で買った旗竿地は対象外で、逆に制度が始まる前に相続した土地なら申請できるんです。

竿を隣と共有している旗竿地なら、旗の部分の所有者だけでは申請できません。共有地の申請は共有者の全員が共同して行う決まりなので、隣の共有者の協力が要るわけです。

条件2|却下される土地に当たっていないこと

却下事由、つまり申請の入口で止められる土地は5種類あります。建物が残っている土地、担保権や使用収益権が付いている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染のある土地、そして境界が明らかでない土地です。

旗竿地で気をつけたいのは3つ目と5つ目になります。隣が自分の竿を通路として使っているなら、他人の利用が予定されている土地として却下の対象です。竿の境界が明らかでない場合も同じで、確認1の境界標の話がここでも効いてきます。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」

条件3|承認されない土地にも当たっていないこと

入口を通っても、承認されない土地があるんです。一定の勾配・高さの崖がある土地、管理や処分を阻害する有体物が地上や地下にある土地、隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理や処分ができない土地などが並びます。

旗竿地の竿に関わるのは3つ目で、隣との通行をめぐる争いが残ったままだと承認されません。審査手数料は土地一筆ごとに14,000円で、却下や取り下げになっても戻ってこないお金です。

条件内容旗竿地で見落としやすい点
1 取得の原因相続または遺贈竿が共有なら全員で申請
2 却下事由建物・通路・境界不明ほか隣が竿を通っていると却下
3 不承認事由崖・有体物・争訟ほか手数料は返還されない

国庫帰属を、売れない旗竿地の最後の受け皿と考えるのは早すぎます。建物の解体と竿の境界確定に費用をかけ、手数料を払っても、隣との争いが残っていれば承認されません。

それでも、この出口があると知っているだけで、隣との竿の関係をどこまで整理しておくべきかの見当が付きます。申請するなら、通路の使い方と境界の2つを先に片づけておいてください。

旗竿地を売ったときの税金|確かめる3つの制度

旗竿地を売ったときの税金|確かめる3つの制度

売れたあとの手取りに効いてくる章です。詳しい要件は制度ごとのページに譲り、使える制度の名前だけ押さえておきますね。

制度1|低未利用土地等の100万円控除

令和2年7月1日から令和10年12月31日までの譲渡が対象で、都市計画区域内の一定の低未利用土地等を500万円以下(一定の区域内では800万円以下)で売ったとき、譲渡所得から100万円を差し引けます。所有期間は売った年の1月1日で5年超、市区町村長の確認書も必要です。

竿の分だけ価格が下がる旗竿地こそ、500万円以下という線に収まりやすい土地になります。使えるかどうかは、値段が決まった段階で税理士に名前を出して確かめてください。

出典:国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」

制度2|相続した空き家の3,000万円特別控除

相続や遺贈で受け取った、亡くなった方が住んでいた家とその敷地を、令和9年12月31日までに売る場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。昭和56年5月31日以前に建築されていること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどが要件になります。

令和6年1月1日以後の譲渡では、取得した相続人が3人以上だと控除額が2,000万円に下がります。何が変わったか、どんな場面で対象外になるかは空き家の3,000万円控除は何が変わった?|2026年8月の要望での変更点と対象外の5つの出口を解説を読んでみてください。

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

制度3|譲渡所得の区分と、取得費加算の特例

土地や建物を売ったときの譲渡所得は、給与などとは分けて計算する分離課税です。売った年の1月1日現在で所有期間が5年を超えるかどうかで長期と短期に分かれ、相続で引き継いだ場合は亡くなった方の取得日から数えるのが原則になります。

出典:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」

相続税を納めていれば、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合に、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。空き家の3,000万円控除と取得費加算は併用できず、どちらか一方を選ぶことになります。

出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

制度効くところ期限
1 低未利用土地の100万円控除500万円以下の土地令和10年12月31日まで
2 空き家の3,000万円控除相続した親の家令和9年12月31日まで
3 分離課税・取得費加算所有期間と相続税申告期限の翌日以後3年

不動産を売るとき、手元に残る額を左右するのは、動く前に制度の名前を知っているかどうかです。制度を知らないまま進めて損をしているケースは多いのではないかと僕は考えています。

旗竿地だから特例は関係ない、と思い込むのがいちばんもったいないんですね。名前が出れば、あとは税理士が要件を確かめてくれます。

旗竿地が売れないときの進め方|5つのステップ

旗竿地が売れないときの進め方|5つのステップ

ここまでの内容を、実際に動く順番に並べ直しました。飛ばさずに上から進めてください。

ステップ1|止まっている場所を3つに切り分ける

買い手が現れないのか、建て替えの判断で止まっているのか、価格が合わないのか。1章の表に自分の旗竿地を置いてみてください。竿の幅で止まっている人が広告の出し方を変えても、何も動きません。

ステップ2|竿の幅・道路の種別・条例・隣の竿の4点を紙にする

境界標を基準にした竿の幅と長さ、道路の種別、条例への当てはめ、隣の竿との関係を1枚にまとめます。竿の幅と長さを同じ数字で伝えるからこそ、3者の答えを横に並べて比べられるようになります。

ステップ3|性質の違う3者に、同じ資料で聞く

隣地の所有者、旗竿地を扱う買取業者、建て替えできるなら一般の買主を探す仲介。旗竿地では、この3方向のうち少なくとも2つに当たるのが目安です。

ステップ4|幅が足りなければ、抜ける道の可能性を役所に聞く

隣地からの買い足し、隣の竿との合わせ方、43条2項の認定や許可。竿の実測幅と長さを持って建築指導課へ行き、どの道に見込みがあるかだけでも聞いてくるのがこの段階です。

ステップ5|期限を決めて、出口を切り替える

隣地の返事を待つ期限、買取業者に切り替える期限を、動き出す前に日付で決めてください。物差しは、税金と竿の手入れを含めて毎年出ていく費用です。通路の権利そのものが論点になる土地は袋地の売却は「通る権利」の中身で決まる|通行権の3つの種類と5つの売り先、動く前に確かめる3つのことで扱っています。

ステップやること押さえる点
1 場所を切り分ける3つの状態に当てはめる打ち手が変わる
2 紙にする竿の幅・道路・条例・隣の竿全員に同じ紙を渡す
3 3者に聞く隣地・買取業者・仲介1社で決めない
4 抜ける道を聞く買い足し・合わせ・認定可能性は価格の材料
5 期限を切る出口の切り替え毎年の費用で決める

竿の測量や解体に進むなら、近隣への挨拶は業者任せにしないでください。所有者ご本人が業者と一緒に回り、手放す経緯を自分の口で説明すると、近隣の方に事情を分かってもらいやすくなると僕は考えています。

竿の境界は隣地と長く接しているので、境界標の話が出た時点で土地家屋調査士を先に入れてください。

旗竿地が売れないことに関してのよくある質問

旗竿地が売れないことに関してのよくある質問

旗竿地は、本当に売れないのですか?

旗竿地だから売れない、ということはありません。建築基準法が縛っているのは建てる行為であって、売買を禁じる条文はどこにも無いんです。前面の道が建築基準法上の道路で、竿の幅が2メートル以上あり、自治体の条例の幅も満たしていれば、建て替えができる普通の土地として売れます。まず竿の幅を境界標で測ってください。

竿の幅が1.8メートルしかありません。もう建て替えは無理ですか?

原則として接道義務を満たさないので、そのままでは建てられません。ただし、塀の内側で測った数字なら、境界標で測り直すと変わることがあります。隣地から不足分を買い足す方法、隣の竿と合わせる方法、43条2項の認定や許可の可能性も残っているんですね。数字が確定してから、抜ける道を建築指導課に聞いてください。

旗竿地は解体して更地にしてから売ったほうがいいですか?

更地にしても竿の幅は変わらないので、建てられない事実はそのままです。そのうえ、建物のないまま1月1日を迎えると、住宅用地の課税標準の特例まで外れてしまいます。旗竿地は重機が入らず解体費が高く出やすいうえに、税負担まで増える結果になり得るので、解体は買主が決まってからにするか、時期を選んで判断してください。見積もりも、買主の側で取ってもらうほうが確実です。

まとめ

まとめ

旗竿地が売れないと言われたら、まず止まっている場所を3つに切り分けてください。買い手が現れていないのか、建て替えの判断で止まっているのか、価格が合っていないのか。旗竿地では2つ目の比重が大きく、その答えは竿の幅と長さという測れる数字で決まります。

止まる理由は、竿の幅が2メートルに届かないこと、2メートルあっても条例で3メートルなどが求められること、車と日当たりと工事費の問題、住宅ローンと仲介の採算、の4つです。このうち前の2つは、境界標で測り直し、役所で条例に当てはめれば答えの大半が決まります。

動く前に、竿の実測幅・道路の種別・条例への当てはめ・隣の竿との関係の4点を紙にして、隣地の所有者、買取業者、仲介の3方向に同じ資料で当たってください。幅が足りなければ、買い足し・合わせ・認定という抜け道の可能性を役所に聞いておくと、価格の材料になるんですね。

持ち続けるなら、税金と竿の手入れを含めて年間いくら出ていくかを先に出しておきます。相続した土地なら国庫帰属という出口もありますが、隣が竿を通路として使っていると却下の対象になる点は覚えておいてください。

再建築不可の物件全般の売り先は再建築不可物件の売却は売り先で決まる|5つの出口と、動く前に確かめる道路の調べ方に、同じ「売れない」の切り分けは再建築不可物件が売れないときに見る3つの状態|止まる4つの理由と、状態ごとの抜け方にまとめています。個別の税額計算は税理士、登記の手続きは司法書士、隣地や共有者との争いは弁護士の領域です。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。旗竿地のどこから手をつけるか迷ったときは、お問い合わせからご連絡ください。

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら