「不動産屋に持っていったら、これは再建築不可だから売れませんと言われました」。相続の相談で、この言葉を聞くことは何度もありました。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地有効活用のコンサルティング営業をしていた人間です。空き家を見つけては登記事項証明書で所有者を追いかけ、売る・建て替える・貸す・駐車場にする、のどれが合うかを提案する仕事をしてきました。
結論から言うと、再建築不可物件が売れないと言われるとき、止まっている場所は3つのどれかになります。買い手がまだ現れていないのか、頼んだ相手が動いていないのか、価格が合っていないのか。この3つは原因も打ち手も違うのに、まとめて「売れない」の一言で語られてしまいます。
そして、売れない理由のうち、法律で決まっている部分は実はそれほど多くありません。建築基準法が制限しているのは建てる行為だけで、売買そのものを禁じる条文はないからです。「売れない」の中身には、法律の話と、市場の話と、相手の都合の話が混ざっています。
この記事では、再建築不可物件が売れないときの3つの状態、止まる4つの理由、決める前に確かめる4つのこと、状態ごとに変える売り先、外して売る3つの方法、価格の決まり方、持ち続けたときのコスト、国庫帰属という出口、税金、進め方の順にたどっていきますね。
法令と制度は、e-Gov法令検索・国土交通省・法務省・国税庁で確認したものだけを載せました。2026年9月時点の内容としてお読みください。売り方そのものの全体像は、再建築不可物件の売却は売り先で決まる|5つの出口と、動く前に確かめる道路の調べ方に分けて書いています。
再建築不可物件が売れないと言われるとき、何が起きているのか|3つの状態

同じ「売れない」でも、中身は3つに分かれるんですね。どこで止まっているかを先に決めないと、打つ手が的外れになってしまうんです。
状態1|売りには出ているが、買い手がまだ現れていない
広告は出ていて、問い合わせも数件あるのに、契約まで進まない状態になります。この場合、物件そのものが売買できないわけではありません。買い手の母数が少ないところに、その母数へ届く売り方をしていないだけの可能性があります。
確かめるのは、何人が見て、何人が問い合わせ、何人が現地を見たかという数字になります。媒介契約を結んでいれば、宅地建物取引業法で売主への業務の報告が義務づけられているので、報告の中身を見せてもらってください。
報告の頻度は、媒介契約の種類によって決まっているんです。専任媒介契約なら2週間に1回以上、専属専任媒介契約なら1週間に1回以上、業務の処理状況を報告することが法律で定められています。報告が来ていないなら、まずそこを確かめてください。
状態2|不動産会社に断られた、または預けたまま動いていない
「うちでは扱えません」と言われた、あるいは預けたきり連絡がない状態です。ここで止まっている人が、体感ではいちばん多かったですね。
断られた理由は、物件の欠陥とは限りません。その会社が再建築不可を扱った経験を持っていないだけということも起こります。扱う会社を替えるだけで話が進むこともあるので、1社の返事を全体の答えにしないでください。
状態3|買い手はいるが、価格が折り合わない
数字は出ているのに、売主が納得できない状態です。この場合は、そもそもの物差しがずれていることが多くなります。再建築不可の土地は、隣の普通の土地と同じ物差しでは値段が付きません。
先にやるのは値下げではなく、その数字がどの出口を前提にしているのかを聞くことです。前提が違えば数字が違うのは当たり前で、比べるには前提をそろえる必要があります。
| 状態 | 起きていること | 最初の一手 |
|---|---|---|
| 1 買い手が現れない | 母数へ届いていない | 反響の数字を報告で確認する |
| 2 断られた・動かない | 扱った経験がない会社 | 扱う会社に替えて聞き直す |
| 3 価格が合わない | 物差しがそろっていない | 数字の前提を聞き取る |
なぜ再建築不可物件は売れないと言われるのか|4つの理由

止まる理由は4つに整理できます。法律の話は1つ目だけで、残りは市場と相手の都合の話になるんですね。
理由1|建て替えができないので、買主の使い道が限られるから
建築基準法は、建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならないと定めています。この接道義務を満たさない敷地では、原則として新しく建てられません。ただし条文が制限しているのは建てる行為であって、売買を禁じているわけではないんです。
そのうえで、この制限は都市計画区域と準都市計画区域の中でしか働きません。区域の外にある土地なら、道に接していなくても接道義務はかかりません。自分の土地がどちらなのかを知らないまま「売れない」と思い込んでいる方は少なくありませんでした。
理由2|住宅ローンが付きにくく、現金で買える人しか残らないから
金融機関は、担保になる不動産の価値を将来の売りやすさから見ます。建て替えができない土地は、その将来が読みにくいぶん、担保としての評価が下がりやすくなるんです。
結果として、買主は現金で買える人か、事業として買う会社に絞られます。買主の母数が減れば、買い手が現れるまでの時間は当然長くなるわけです。売れないのではなく、届く相手が少ないというのが正確な言い方になります。
理由3|仲介の不動産会社にとって採算が合いにくいから
仲介の不動産会社の収入は、成約したときの仲介手数料です。価格が低く、買主が限られ、調査に手間がかかる物件は、動かす労力のわりに実らない案件になります。
実務をしていた当時、同じ会社の中でも担当者によって対応が変わるのを何度も見てきました。断られたのは物件の問題ではなく、その相手の事情だったということが起こり得るんです。だからこそ、複数の相手に当たる意味があります。
そのうえ、価格が低い物件ほど、調べる手間は変わらないのに手数料だけが小さくなるんです。宅地建物取引業では受け取れる報酬の額に上限が定められているので、会社の側で単価を上げて帳尻を合わせることもできません。
出典:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和四十五年十月二十三日建設省告示第千五百五十二号)」
理由4|大きなリフォームにも建築確認が要る場合があるから
建て替えができないなら直して使えばいい。買主がそう考えるのは自然なことなんですね。ところが、大規模の修繕や大規模の模様替も建築確認の対象になる建築物があります。木造2階建ての戸建ては、2以上の階数を有する建築物としてここに入るんです。
国土交通省の整理では、都市計画区域等の中では平家かつ延べ面積200平方メートル以下の建築物以外は構造によらず審査が必要とされ、木造戸建ての大規模なリフォームは建築確認手続きが必要と明記されています。直して使う出口も無条件ではないという点は、買主のほうが先に知っていることが多いですね。
出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」
| 理由 | 何が起きるか | 売主にできること |
|---|---|---|
| 1 建て替え不可 | 使い道が限られる | 区域と道路を先に確かめる |
| 2 ローンが付きにくい | 買主が現金層に絞られる | 届く相手を選んで当たる |
| 3 採算が合いにくい | 会社が動きにくい | 扱う会社に替える |
| 4 リフォームにも確認 | 直して使う出口も条件つき | 200平方メートルと階数を確認 |

再建築不可という言葉は、実は法令用語ではありません。接道義務を満たさない結果として建て替えができない状態を、業界がそう呼んでいるだけなんです。
言葉の輪郭がぼんやりしているぶん、実際より広い意味で使われがちになります。自分の土地が本当にその状態なのかは、言葉ではなく道路の種別で確かめてください。
再建築不可物件が売れないと決める前に確かめる4つのこと

思い込みで止まっている例が本当に多いので、ここは順番どおりに進めてください。かかる費用は数百円から数千円です。
確認1|そもそも接道義務がかかる区域なのか
建築基準法の接道義務は、都市計画区域と準都市計画区域の中だけで適用されます。役所の都市計画課で、土地の所在地がどの区域に入るかを聞けば、その場で分かるんです。
区域の外なら、道に接していなくても建築基準法上の接道義務はかかりません。この一点を確かめただけで「売れない物件」ではなくなる土地は実際にあります。
確認2|前面の道が建築基準法上の道路にあたらないか
道路と呼べるのは、幅員4メートル以上(特定行政庁が指定する区域内では6メートル)で、道路法による道路・都市計画法等による道路・この規定が適用されるに至った際に現に存在した道・位置指定道路などに当たるものです。私道でも位置指定を受けていれば道路になります。
さらに、適用時に建築物が立ち並んでいた幅員4メートル未満の道で特定行政庁が指定したものは、道路とみなされます。この場合は中心線から水平距離2メートルの線が道路の境界線とみなされるので、後退させれば建てられる土地ということになるんですね。
私道が前面の道になっている場合は、その私道の扱いも見ておいてください。建築基準法は、私道の変更や廃止で接道に抵触することとなる場合、特定行政庁が変更や廃止を禁止または制限できると定めています。私道が突然使えなくなるという不安は、この条文でかなり整理できるんですね。
確認3|接している長さは実測で何メートルあるのか
公図と現況がずれている土地は珍しくありません。1.8メートルだと思っていたら実測で2メートルを超えていた、という例もあります。逆に、条例で幅員や接する長さの制限が付加されていることもあるんですね。
地方公共団体は、特殊建築物や階数3以上の建築物などについて、条例で制限を付加できるとされています。2メートルで足りるかどうかは全国一律ではないので、役所の建築指導課で確かめてください。
確認4|名義と共有関係で売主が確定しているか
売る話の前に、売る権利を持つ人が確定していなければ契約はできません。実務をしていた当時、登記事項証明書を取って所有者を追いかけると、三代前の名義のまま止まっている土地に何度も当たりました。
相続登記は現在は申請が義務づけられています。名義が世代を越えるほど相続人の数は増え、全員の同意を取るのが難しくなります。共有になっている場合の進め方は共有名義の土地売却は何から始めるか|全員の同意が要る場面と、反対されたときの4つの出口にまとめました。
| 確認 | 調べる場所 | 分かること |
|---|---|---|
| 1 区域 | 役所の都市計画課 | 接道義務がかかるか |
| 2 道路の種別 | 役所の建築指導課 | 42条の道路かどうか |
| 3 接する長さ | 現地の実測・公図 | 2メートルに届くか |
| 4 名義 | 法務局の登記事項証明書 | 売主が確定しているか |

この4つは、どれも所有者本人が半日あれば回れるものです。実務をしていた当時、所有者の方が役所で聞いてきた紙を持って戻ってこられると、そこから話が一気に進みました。
業者に渡す紙が1枚あるだけで、返ってくる答えの精度が変わります。調べてから相談するのと、調べてもらうために相談するのとでは、進み方がまるで違うんですね。
再建築不可物件が売れないときに変える3つの売り先

状態2で止まっている人に、いちばん効くのがここです。相手を替えると答えが変わります。
売り先1|隣の土地の所有者に声をかける
隣地の所有者にとって、その土地は自分の敷地を広げる材料になります。買い足すことで接道が生まれたり、建てられる建物が大きくなったりする場合、その土地の価値はほかの誰にとってよりも高くなるんです。
順番としては、業者から数字をもらってから声をかけてください。相場の見当を持たずに交渉に入ると、こちらの足元だけが見える形になります。
声のかけ方も結果を左右します。実務をしていた当時、所有者ご本人が隣に出向いて事情を説明された場面では、話が前に進みやすかったんですね。手紙を1枚入れておくだけでも、いきなり業者から連絡が行くよりは受け止め方が違います。
売り先2|再建築不可を扱う買取業者に売る
自分で買主になる会社です。仲介と違って買主を探す期間がなく、契約不適合責任の免責を前提にする会社も多くあります。その代わり、価格は仲介より低くなるのが普通です。
免許の有無と処分歴は、国土交通省の検索システムで自分で確認できます。買取の価格がどう決まるかは再建築不可物件の買取はどこまで下がる?価格の決まり方と、売る前に確かめる4つの可能性に書きました。
出典:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」
売り先3|現況のまま使う買主に売る
住むためではなく、資材置場や駐車場、家庭菜園、隣接地の管理用地として使う買主もいます。この層は建て替えの可否をそもそも問題にしません。
ただし、更地にして貸す・駐車場にするという発想には落とし穴があります。実務をしていた当時、アスファルトや土間コンクリートで舗装した土地は、将来売るときに舗装の解体費が別途かかることを説明していました。砂利敷きなら撤去が容易です。
| 売り先 | 向いている状態 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 1 隣地の所有者 | 隣が建て替えを考えている | 先に業者の数字を持つ |
| 2 買取業者 | 期間を区切りたい | 免許と処分歴を確認する |
| 3 現況利用の買主 | 建物を残したままでよい | 舗装は将来の解体費になる |

売り先を替えるという発想は、相談に来られた方からはあまり出てきませんでした。1社に断られると、物件の問題だと受け止めてしまうからなんですね。
替えるのは物件ではなく、聞く相手です。同じ資料を、性質の違う3者に渡してみてください。
再建築不可を外して売れない状態を抜ける3つの方法

土地の状態そのものを変える道です。時間と費用はかかりますが、抜けられれば普通の土地として売れます。
方法1|後退させて幅員4メートルを確保する
前面の道が指定を受けたみなし道路なら、中心線から2メートルの線が境界線とみなされるんですね。後退した部分は敷地面積に算入されませんが、建てられる状態に戻ることに変わりはありません。
なお、道の向かい側が崖地・川・線路敷地などの場合は、その側の境界線から道の側に水平距離4メートルの線が境界線とみなされます。この場合は片側だけで負担する形になります。
方法2|43条2項1号の認定を受ける
幅員4メートル以上の道(道路に該当するものを除く)に2メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数で、特定行政庁が支障がないと認めたものは、接道義務の適用を受けません。農道その他これに類する公共の用に供する道が対象に入ります。
この認定には建築審査会の同意が要らないので、次の許可より手続きが軽くなります。ただし建築物の側にも基準があり、延べ面積500平方メートル以内という上限が定められています。
方法3|43条2項2号の許可を受ける
敷地の周囲に広い空地を有する建築物などで、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したものも、接道義務の適用を受けません。基準の3つ目にある「十分な幅員を有する通路に有効に接する」の運用は、自治体ごとの包括同意基準で決まります。
ここで必ず添えておきたいことが1つあるんです。条文は「次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない」と書いており、認定も許可も建築計画ごとに判断されます。一度許可が下りたからといって、次の建て替えが自動的に通るわけではないんです。
| 方法 | 手続き | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 1 後退 | 役所への確認と測量 | 後退部分は敷地面積に入らない |
| 2 43条2項1号の認定 | 建築審査会の同意は不要 | 延べ面積500平方メートル以内 |
| 3 43条2項2号の許可 | 建築審査会の同意が必要 | 運用は自治体ごとに違う |

この3つは、買主が自分で調べて動く場合もあります。売主が先に役所へ行って可能性を聞いておくと、その情報がそのまま価格の材料になるんですね。
「認定の可能性があると建築指導課で言われた」の一言は、数字を押し上げる材料になります。ただし可能性の話であることは、買主にも正確に伝えてください。
再建築不可物件が売れない価格になるのはなぜか|3つの引き算

状態3で止まっている方に向けた章になります。価格は感覚ではなく引き算で決まるものです。
引き算1|買主の出口の価格から逆算される
買取業者の数字は、その会社が最後に売る、あるいは使うときの価格から逆算されます。隣地とまとめて売るのか、現況で貸すのか、認定を取って建てるのか。出口が違えば、同じ土地でも土台になる金額が変わります。
だから「相場の何割」という一律の答えは存在しません。数字を受け取ったら、どの出口を前提にしたのかを聞いてください。
引き算2|手を入れる費用と、期間の分が引かれる
測量、境界の確定、残置物の撤去、建物を残す場合の補修。買主が負担する費用は、そのまま価格から引かれます。認定や許可を取る前提なら、その手続きにかかる期間の分も見込まれるわけです。
引かれる項目を先に自分で並べておくと、数字の妥当性を自分で検算できるようになります。項目を1つずつ聞ける売主に、根拠のない数字は出しにくいものです。
引き算3|比べる材料は、自分でも取れる
近隣の取引価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリで誰でも調べられます。再建築不可の土地そのものの取引事例は多くありませんが、同じ地域の普通の土地がいくらで動いているかを知っておくだけで、話の土台が変わります。
国税庁の路線価図も土台になる材料です。相続税の計算に使う数字ですが、道ごとに単価が振られているので、地域の中での高い安いを読むのに向いています。
出典:国税庁「路線価図の説明」
実務をしていた当時、相場を持たずに交渉の席につく方は多くいました。僕は業者が根拠のない数字を出しているとまでは言いません。こちらが根拠を聞いていないだけ、ということが大半だからです。
| 引き算 | 引かれるもの | 売主の確認点 |
|---|---|---|
| 1 出口からの逆算 | 買主の想定利益 | どの出口が前提か |
| 2 費用と期間 | 測量・撤去・手続き | 項目を1つずつ聞く |
| 3 比べる材料 | — | 近隣の取引価格を先に見る |

数字が低いこと自体は、必ずしも不当ではありません。問題は、なぜその数字なのかを説明してもらえないまま、受けるか断るかを迫られることなんですね。
「この数字はどの出口を前提にしていますか」と一言聞いてみてください。答えが具体的な相手ほど、あとの進み方も安定します。数字の見方でつまずいたら、お問い合わせからご相談ください。
再建築不可物件を売れないまま持ち続けると何が起きるのか|3つのコスト

売らない判断も選択肢のひとつです。ただし、その判断には毎年の費用がぶら下がります。
コスト1|固定資産税と維持費は毎年出ていく
固定資産税は、その年の1月1日時点の状態で課税されるんです。建物が建っている住宅用地には課税標準の特例があり、200平方メートル以下の部分は6分の1、それを超える部分は3分の1に軽減されます。都市計画税の特例はそれぞれ3分の1と3分の2です。
建物を壊して更地にすると、この特例が外れます。解体を考えるときに1月1日との関係を見るのは、このためなんですね。
出ていくのは税金だけではありません。草刈り、火災保険、電気や水道の基本料金、遠方なら往復の交通費もかかります。金額は物件ごとに違うので、まずは1年分の領収書を集めて合計を出してみてください。
コスト2|管理が行き届かないと、特例が外れる引き金になる
空家等対策の推進に関する特別措置法は、そのまま放置すれば著しく保安上危険となるおそれのある状態などにある空家等を特定空家等と定めています。2023年の改正では、放置すれば特定空家等になるおそれのある管理不全空家等の区分も設けられました。
引き金になるのは指定ではなく勧告です。特定空家等または管理不全空家等として勧告を受けた家屋の敷地は、住宅用地の課税標準の特例から除かれます。特定空家等はそのあと命令、行政代執行へ進む場合がありますが、管理不全空家等について定められているのは指導と勧告までです。
出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」
出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
コスト3|名義が世代を越えると、売主が確定しなくなる
3つのうち、いちばん重いのがこれなんですね。所有者が亡くなったまま登記を動かさないと、相続人は次の世代へ広がります。実務をしていた当時、登記簿に三代前の名前が残っている土地に当たったことがありました。隣の方でさえ、もう誰の土地か分からない状態でした。
売れないから放置するのではなく、放置するから売れなくなるという順番になっていきます。境界が絡む場合の整理は土地の境界線のはみ出しがあっても買取で売れる|越境の5つの売り先と、動く前に確かめる図面の見方にまとめました。
| コスト | 毎年出ていくもの | 引き金 |
|---|---|---|
| 1 税と維持費 | 固定資産税・都市計画税・管理費 | 1月1日時点の状態 |
| 2 特例の除外 | 課税標準の特例がなくなる | 勧告を受けること |
| 3 名義の拡散 | 手続きの手間と費用 | 相続登記をしないこと |

持ち続けるか手放すかは、気持ちではなく計算で決めるものだと考えています。実務をしていた当時、建てる提案をするときは、必ず回収年数を出してから判断してもらっていました。
空き家でも同じで、年間いくら出ていくかを出してから決めてください。数字を出すと、迷っていた時間そのものが費用だったことが見えてきます。
再建築不可物件が売れないときの国庫帰属という道|3つの条件

売り先がどうしても見つからないとき、相続した土地には別の出口があります。
条件1|相続または遺贈で取得した土地であること
相続土地国庫帰属制度を使えるのは、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人です。売買など自分の意思で取得した土地は、基本的に対象になりません。制度が始まった2023年4月27日より前に相続した土地も対象です。
共有の場合は、共有者の全員が共同して申請する必要があります。相続以外の原因で持分を取得した共有者がいる場合でも、相続で取得した共有者がいれば、全員で申請できます。
条件2|却下される土地に当たっていないこと
申請自体ができない土地が、却下事由として定められているんです。建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染されている土地、境界が明らかでない土地の5つになります。
再建築不可の土地で気をつけたいのは3つ目です。通路として他人が使うことが予定されている土地は、却下の対象になります。建物が残っている場合も先に解体が必要なので、費用の順番が変わってきます。
条件3|承認されない土地にも当たっていないこと
申請できても承認されない土地というものもあるんですね。一定の勾配・高さの崖があって管理に過分な費用や労力がかかる土地、管理や処分を阻害する有体物が地上にある土地、除去しなければならない有体物が地下にある土地、隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理や処分ができない土地などです。
費用の面も先に見ておいてください。審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、取り下げても却下されても返還されません。承認された場合は、さらに負担金を納めた時点で所有権が国庫に帰属します。負担金の算定方法は、法務省のページに載っているので確かめておいてください。
| 条件 | 内容 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 1 取得の原因 | 相続または遺贈 | 共有は全員で申請 |
| 2 却下事由 | 建物・担保権・他人の利用ほか | 通路は却下の対象 |
| 3 不承認事由 | 崖・有体物・争訟ほか | 手数料は返還されない |

この制度は、売れない土地の受け皿として万能ではありません。建物を壊し、境界を確定し、費用を払って、なお承認されない場合もあるからです。
それでも、選択肢として知っているかどうかで判断の幅は変わります。制度を知らずに損をする場面を実務でいくつも見てきたので、名前だけでも覚えておいてください。
再建築不可物件を売ったときの税金|確かめる3つの制度

売れたあとに効いてくる部分になります。詳しい要件は制度ごとの記事に譲り、ここでは在庫の確認だけしておきますね。
制度1|低未利用土地等の100万円控除
都市計画区域内にある一定の低未利用土地等を500万円以下(一定の区域内では800万円以下)で売った場合、譲渡所得から100万円を控除できます。売った年の1月1日で所有期間が5年を超えていることなどが要件です。
価格が低い土地ほど効く制度なので、再建築不可の土地とは相性がよくなります。適用できるのは令和2年7月1日から令和10年12月31日までの譲渡で、市区町村長の確認書が必要です。
出典:国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」
制度2|相続した空き家の3,000万円特別控除
相続または遺贈で取得した被相続人の居住用家屋とその敷地を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までに売った場合、要件に当てはまれば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。昭和56年5月31日以前に建築され、区分所有建物登記がされておらず、相続開始の直前に被相続人以外が住んでいなかったことが必要です。
令和6年1月1日以後の譲渡で取得した相続人が3人以上の場合は、控除額は2,000万円になります。この控除の変更点と対象外になる場面は空き家の3,000万円控除は何が変わった?|2026年8月の要望での変更点と対象外の5つの出口を解説に詳しくまとめました。
出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
制度3|相続登記の免税措置と取得費加算
相続登記の登録免許税には免税措置があります。相続税を納めている場合は、相続財産を一定期間内に売却したときの取得費加算の特例も使えるんですね。譲渡所得そのものの計算のしかたは、国税庁のページに整理されています。
どちらも売却の前後で手続きの時期が決まっているので、動く前に確認しておいてください。個別の税額計算は税理士の領域になります。
出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
出典:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
| 制度 | 効くところ | 期限 |
|---|---|---|
| 1 低未利用土地の100万円控除 | 500万円以下の土地 | 令和10年12月31日まで |
| 2 空き家の3,000万円控除 | 相続した親の家 | 令和9年12月31日まで |
| 3 免税措置・取得費加算 | 登記と相続税 | 手続きの時期が決まっている |

不動産の売却では、動く前に制度を知っているかどうかで手元に残る額が変わるんです。実務をしていた当時、知らずに進めて損をされた方を何人も見てきました。
売る前に、使えそうな制度の名前だけでも税理士に伝えてください。名前が出れば、あとは向こうが要件を確かめてくれます。
再建築不可物件が売れないときの進め方|5つのステップ

ここまでを順番に並べます。上から順に進めてください。
ステップ1|止まっている場所を3つのどれかに決める
買い手が現れないのか、相手が動かないのか、価格が合わないのか。1章の表に自分を当てはめます。ここを飛ばすと、関係のない手当てに時間を使うことになります。
ステップ2|区域・道路・接する長さ・名義の4点を紙にする
役所と法務局で3章の4点を確かめ、1枚の紙にまとめます。かかるのは半日と数千円です。この紙が、以降すべての相談の共通資料になります。
同じ紙を全員に渡すからこそ、返ってきた答えを横に並べて比べられるわけです。
ステップ3|性質の違う3者に、同じ資料で聞く
隣地の所有者、再建築不可を扱う買取業者、現況で使う買主。この3方向のうち2つ以上に当たってください。1社の返事を全体の答えにしないという原則は、ここで守られます。
業者選びの見方そのものは訳あり物件買取業者の選び方|元コンサルが先に見る5つのポイントと契約前の確認事項に整理しました。似た構造の狭小地については狭小土地の買取業者はどう選ぶか|出口で変わる3つのタイプと、業者に当たる前に隣地へ声をかける順番が参考になります。
ステップ4|外す道があるかを役所に確かめる
後退で足りるのか、43条2項の認定や許可の可能性があるのか。建築指導課に相談し、可能性の有無だけでも聞いておきます。可能性があるなら、それは価格の材料になります。
ステップ5|期限を決めて、出口を切り替える
いつまでに売れなければ次の売り先へ移るのかを、先に決めておきます。判断の物差しは、毎年出ていく費用です。通路が絡む土地の考え方は袋地の売却は「通る権利」の中身で決まる|通行権の3つの種類と5つの売り先、動く前に確かめる3つのことに書きました。
| ステップ | やること | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 1 場所を決める | 3つの状態に当てはめる | 打ち手が変わる |
| 2 紙にする | 区域・道路・長さ・名義 | 全員に同じ紙を渡す |
| 3 3者に聞く | 隣地・買取業者・現況利用 | 1社で決めない |
| 4 外す道を聞く | 後退・認定・許可 | 可能性は価格の材料 |
| 5 期限を切る | 出口の切り替え | 毎年の費用で決める |

解体や測量に進む場合は、近隣への挨拶を業者任せにしないでください。実務をしていた当時、所有者ご本人が業者と一緒に回って、手放す経緯を自分の口で説明された現場は、近隣の納得が段違いでした。
境界の話が出てきたら、土地家屋調査士などの専門家を先に入れてください。塀の帰属や埋まった境界杭は、当事者だけでは決着しないことが多いんです。
再建築不可物件が売れないことに関してのよくある質問

再建築不可物件は、本当に法律で売買が禁じられているのですか?
禁じられていません。建築基準法が制限しているのは建てる行為で、売買を禁じる条文はないんです。実際に、再建築不可の物件は市場で取引されています。売れないのではなく、買主の母数が少なく、扱う会社が限られるという状態だと考えてください。
不動産会社に断られたら、もう売却はあきらめるしかないですか?
1社の返事は、その会社の事情を含んだ返事です。再建築不可を扱った経験がない会社なら、断るのが自然な判断になります。扱う会社を替え、隣地の所有者にも声をかけたうえで判断してください。順番としては、先に役所で道路と区域を確かめておくと話が早く進みます。
建物を壊して更地にすれば売れるようになりますか?
更地にしても接道の状態は変わらないので、建てられない事実は残るんです。そのうえ、1月1日時点で建物がなければ住宅用地の課税標準の特例が外れます。解体費を先に出したのに税負担が増えるという結果になり得るので、解体は買主が決まってから、または時期を選んで判断してください。
まとめ

再建築不可物件が売れないと言われたら、まず止まっている場所を3つに切り分けます。買い手が現れていないのか、頼んだ相手が動いていないのか、価格が合っていないのか。この3つは打ち手が違うので、まとめて扱うと空回りします。
止まる理由は、建て替えができないこと、住宅ローンが付きにくいこと、仲介会社の採算が合いにくいこと、大きなリフォームにも建築確認が要る場合があること、の4つです。このうち法律の話は1つ目だけで、残りは相手の事情と市場の話になります。だから相手を替えると答えが変わるんですね。
動く前に、区域・道路の種別・接している長さ・名義の4点を紙にしてください。そのうえで、隣地の所有者、再建築不可を扱う買取業者、現況のまま使う買主の3方向に同じ資料で当たります。後退や43条2項の認定・許可で外せる可能性があるなら、それは価格を押し上げる材料になります。
持ち続ける判断をするなら、毎年出ていく額を先に出してください。勧告を受けると住宅用地の課税標準の特例から外れますし、名義を動かさないまま世代を越えると、売る権利を持つ人そのものが確定しなくなります。相続した土地なら、国庫帰属という出口も選択肢に入るんですね。
売り方そのものの全体像は再建築不可物件の売却は売り先で決まる|5つの出口と、動く前に確かめる道路の調べ方に、買取価格の決まり方は再建築不可物件の買取はどこまで下がる?価格の決まり方と、売る前に確かめる4つの可能性にまとめています。個別の税額計算は税理士、登記の手続きは司法書士、相続人同士の争いは弁護士の領域です。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。どこから手をつけるか迷ったときは、お問い合わせからご連絡ください。








実務をしていた当時、「売れない」と言って相談に来られた方の話をよく聞いてみると、実際には1社に声をかけて断られただけ、ということが本当に多かったんです。断られた記憶は強く残るので、それが結論のように感じられるんですね。
まず、自分が3つのどこで止まっているのかを紙に書き出してください。ここが決まると、次に会うべき相手が決まります。判断に迷うところがあれば、お問い合わせからご相談ください。