空き家を兄弟で相続したら?揉めない分け方と3,000万円控除を人数分使う条件

空き家を兄弟で相続したら?揉めない分け方と3,000万円控除を人数分使う条件

親が住んでいた家に、もう誰も住まない。兄弟で話し合うことになったものの、どう切り出せばいいのか分からない。ここで止まっている方がとても多いんです。

僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用のコンサルティング営業をしていました。地主さんの相続対策を担当していた当時、現金なら半分ずつで終わる話が、家だと終わらないという場面を何度も見ています。

兄弟で空き家を相続するときにいちばん怖いのは、揉めることそのものではありません。決まらないまま時間が過ぎて、使えたはずの制度が次々と閉じていくことです。

相続税の申告は10か月、相続登記は3年、空き家の3,000万円特別控除は3年を経過する日の属する年の年末。どれも待ってくれません。

この記事では、誰がいくつ持分を持つのかという出発点から、共有名義が危ない条文上の理由、4つの分け方の選び方、そして兄弟それぞれが3,000万円控除を使える条件までを整理していきます。

空き家を相続する兄弟の持分は法律でどう決まるか

空き家を相続する兄弟の持分は法律でどう決まるか

分け方の議論に入る前に、法律上の出発点を揃えておきましょう。ここがずれたまま話し合うと、あとで全部やり直しになります。

母が健在なら、配偶者が2分の1・子で2分の1を分ける

父が亡くなって母が健在という、いちばん多いケースから確認します。民法900条1号は、子および配偶者が相続人であるときは、子の相続分および配偶者の相続分は各2分の1と定めていますね。

兄弟が2人なら、母が2分の1、兄弟がそれぞれ4分の1ずつです。実家は母のものだと思い込んで話を進めると、ここでずれます。

父母とも亡くなっているなら、子だけで均等に分ける

二次相続と呼ばれる場面です。民法900条4号により、子が数人あるときは各自の相続分は相等しいとされています。

兄弟2人なら2分の1ずつ、3人なら3分の1ずつ。長男だから多い、という決まりは法律にはありません。

相続人持分
母+子2人母2分の1/子は各4分の1
母+子3人母2分の1/子は各6分の1
子2人のみ各2分の1
子3人のみ各3分の1

出典:e-Gov法令検索「民法」

相続分は目安であって、全員が合意すれば自由に決められる

大事なのはここです。法定相続分は話し合いがまとまらなかったときの基準であり、これに従う義務はありません。

民法907条1項は、共同相続人はいつでも、その協議で遺産の全部または一部の分割をすることができると定めています。全員が納得すれば、1人が実家をすべて取得する形も成立しますね。

遺言があれば、まずそちらが優先される

親が遺言を残していないかを先に確認してください。公正証書遺言なら公証役場で検索でき、自筆証書遺言なら法務局の保管制度を使っていることがあります。

遺言の内容に不満がある場合でも、兄弟が子の立場で相続するなら遺留分があります。民法1042条は、兄弟姉妹以外の相続人に遺留分を認めています。

現場で話がこじれるとき、原因はたいてい金額ではありませんでした。

「自分の取り分がいくつなのか」を、それぞれが違う前提で理解したまま話しているんです。母の持分を数えていない人、長男が多く取ると思い込んでいる人。同じ数字を見ていない状態で交渉が始まるので、噛み合いようがありません。

だからお伝えしたいのは、最初の1回は分け方の話をしないことです。相続人が誰で、持分がいくつで、財産に何があるか。この3つを紙に書いて全員で共有するところまでで、1回目は終わらせてください。

土地の評価額の考え方は固定資産税評価額から相続税の目安がわかる?プロが教える不動産評価のカラクリと『負動産』を手放すベストな選択肢にまとめました。数字を揃える段階で使えます。

兄弟の共有名義がいちばん危ないと言われる条文上の理由

兄弟の共有名義がいちばん危ないと言われる条文上の理由

とりあえず全員の名義にしておく。手続きは楽ですが、この選択が何を意味するのかを条文から確認しておきましょう。

相続した時点で、実家はすでに共有になっている

意外に知られていないのがこの点です。民法898条1項は、相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属すると定めています。

つまり遺産分割が終わるまで、実家はすでに兄弟の共有状態です。共有名義にするかどうかを選ぶのではなく、分けないと共有のままになるという順番になります。

売る・壊すには全員の同意が要る

民法251条1項により、各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができません。売却や解体はこの変更にあたります。

兄弟3人のうち1人が反対すれば、その時点で止まりますね。持分の多い少ないは関係ありません。

貸す・修繕は持分の価格の過半数で決められる

一方、管理にあたる行為は違います。民法252条1項は、共有物の管理に関する事項は各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するとしていますね。

賃貸に出す場合の期間にも上限があり、建物なら3年、土地なら5年を超えない賃借権の設定までが管理の範囲です。全部が全員一致というわけではない点は押さえておいてください。

やりたいこと必要な同意
売る・解体する(変更)共有者全員
貸す・修繕する(管理)持分の価格の過半数
現状を保つ手入れ(保存)単独でできる

共有者が亡くなると、持分が次の世代へ移っていく

いちばん重いのがこれです。共有者の1人が亡くなれば、その持分はその人の相続人へ移ります。兄弟から甥や姪へ、さらにその子へ。

相続が起きるたびに権利者が増えていく構造なので、時間が経つほど話し合いの相手が増えます。顔を知らない親族に連絡を取ってハンコをもらう、という段階まで来ると事実上動かせません。

話がまとまらないときは裁判所の共有物分割になる

出口もあります。民法258条1項により、共有物の分割について協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求できます

裁判所は現物分割か、債務を負担させて持分を取得させる方法を命じることができ、それも難しい場合は競売を命じます。ただしここまで来ると、時間も費用も関係も大きく削られますね。

共有名義の怖さは、決断できないことではありません。決断しないという結論が、時間の経過とともに自動で選ばれてしまうことです。

現場で聞いていたのは、共有者の1人が亡くなった後の話でした。相続が起きるたびに権利者が甥や姪の世代まで増えていき、顔も知らない親族と話し合うことになる。そうなると面倒が先に立って、誰も手をつけない土地ができあがるわけです。

僕自身は、揉めるくらいなら売って現金で分けたほうがいいと考えています。親御さんが、自分の家のせいで子どもたちが争うことを望んでいるとは思えません。

ただし、ここから先には線が引かれていると考えてください。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。すでに意見が割れているなら、弁護士に相談してください。

兄弟で空き家を分ける4つの方法

兄弟で空き家を分ける4つの方法

分け方は4種類です。それぞれ向いている場面が違うので、順番に見ていきましょう。

方法1|換価分割(売って現金にしてから分ける)

実家を売却し、その代金を兄弟で分ける方法です。1円単位で公平に配れるため、誰も住まない・使わない実家ではこれが第一候補になります。

進め方は2つあります。法定相続分などで共同相続登記をしてから全員で売る形と、換価の便宜のために代表者1人の名義で登記してから売る形です。

後者を選ぶ場合、国税庁は、その登記が単に換価のための便宜のものであり、代金が取り決めどおりに実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはないと示しています。遺産分割協議書に「換価分割であること」「誰の名義で登記するか」「分配割合」を必ず書いてください。

出典:国税庁「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」

方法2|代償分割(1人が取得して現金を渡す)

兄弟の1人が実家を取得し、ほかの兄弟へ現金を支払う方法です。住み続けたい人がいる場合には最善の選択になります。

条件は、取得する側にまとまった現金があること。ここが用意できないと成立しません。評価額をいくらと見るかで揉めやすいので、複数社の査定を先に取っておいてください。

方法3|現物分割(土地を分けてそれぞれの名義にする)

敷地が広い場合に、分筆してそれぞれが単独で取得する方法です。持分の共有が残らないのが利点になります。

一方で、無理に切ると間口が狭くなって使いにくい土地が生まれます。接道の条件を満たせなくなると建て替えができなくなるため、分筆の線を引く前に確認が必要です。間口が評価と使い勝手に与える影響は間口狭小補正率とは?評価額の下げ方と間口が狭い土地の出口にまとめました。

方法4|共有分割(持分を決めて全員の名義にする)

前の章で見たとおり、問題の先送りになりやすい方法です。それでも選ぶなら、維持費の負担割合と、いつまでに結論を出すかを書面で決めておいてください。

期限を切らない共有は、次の相続まで動きません。

方法向いている場面注意点
換価分割誰も住まない・使わないとき売れないと分割が完了しない
代償分割住み続けたい人がいて資力もあるとき取得する側に現金が要る
現物分割敷地が広く、分けても価値が落ちないとき接道と形状の確認が要る
共有分割原則として避けたい期限と負担を書面で決める

選び方で迷ったら、順番を逆にしてみてください。

分け方を先に決めるのではなく、その家がいくらで売れそうかを先に確かめるんです。数字が出ると、代償分割にいくら要るのかも、換価分割で1人あたりいくら入るのかも、同じ土俵で比べられるようになります。

売買の部門と一緒に仕事をしていた当時、正直に感じていたことがあります。金額の小さい土地や権利に問題のある土地は、担当者から見ると手間の割に実入りの薄い案件になります。だから最初から安い値段で出して、早く終わらせようという力が働きやすい構造なんです。

査定は必ず複数社から取ってください。1社の数字だけで分配額を決めると、あとで全員が損をします。

兄弟の人数が効く「空き家の3,000万円特別控除」

兄弟の人数が効く「空き家の3,000万円特別控除」

売って分けると決めたなら、ここが手取りをいちばん大きく動かします。兄弟で相続したからこそ効く仕組みがありますね。

相続人がそれぞれ控除を受けられる

被相続人が住んでいた家屋とその敷地を売った場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。

大きいのは、相続人が複数いる場合、要件を満たせば各相続人がそれぞれ控除を受けられる点です。兄弟2人で共同相続して一緒に売れば、合わせて最高6,000万円分の枠になります。

相続人が3人以上なら1人2,000万円に下がる

ただし上限は一律ではありません。令和6年1月1日以後に行う譲渡で、被相続人居住用家屋およびその敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は、1人あたり2,000万円までとなります。

兄弟3人なら1人2,000万円で合計6,000万円。人数が増えても総額が伸びない設計です。

主な要件を先に確認する

要件は細かく、ひとつでも外れると使えません。主なものを並べます。

要件内容
建築時期昭和56年5月31日以前に建築された家屋
建物の種類区分所有建物登記がされている建物でないこと
相続直前の状況被相続人以外に居住していた人がいなかったこと
相続後の用途相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供していないこと
売却期限相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
金額売却代金が1億円以下
相手親子や夫婦など「特別の関係がある人」への譲渡でないこと

適用期限は令和9年12月31日までの譲渡です。耐震基準を満たすか、家屋を取り壊すことも要件になりますが、令和6年1月1日以後の譲渡では、譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修や取壊しが済めば適用できます。買主側で解体してもらう形が取れるようになりました。

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

老人ホームに入っていた場合も対象になり得る

「最期は施設だったから使えない」と諦めている方が多い部分です。要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合、一定の要件を満たせば、入所直前まで住んでいた家屋が被相続人居住用家屋に該当します

入所後に事業や貸付けに使っていないことなどが条件になります。該当しそうなら必ず確認してください。

出典:国税庁「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」

兄弟の1人へ売る形にすると使えなくなる

要件の最後にある「特別の関係がある人」には、生計を一にする親族なども含まれます。兄が弟から持分を買い取る形にすると、この控除は使えません。

代償分割を選ぶときは、この点を織り込んで手取りを比べてください。

この控除で本当に効くのは、取得費が分からない家を売るときです。

親が昔買ったときの契約書が残っていない実家は珍しくありません。取得費が不明だと譲渡価額の5%を取得費とみなす扱いになるため、売った金額のほとんどが利益として計算されます。

そこに3,000万円の控除が乗るかどうかで、手元に残る額がまるで変わりますね。制度を知らないまま進めた分は、そのまま税金として返ってくるわけです。

僕が現場にいた当時から言われていたことですが、不動産は動く前に調べたかどうかで結果が決まります。兄弟のうち誰か1人でいいので、売る前に税理士に要件を当ててもらってください。

兄弟の話し合いが長引くと閉じていく4つの期限

兄弟の話し合いが長引くと閉じていく4つの期限

兄弟の相続でいちばん多い失敗は、揉めることではなく止まることです。止まっている間に何が閉じるのかを並べます。

期限1|相続税の申告は10か月。未分割だと特例が使えない

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。分割がまとまっていなくても、この期限は延びません。

協議が成立していない場合は法定相続分で取得したものとして申告することになりますが、このとき小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が使えない申告になります。いったん高い税額で納めることになるわけです。

救いもあります。申告期限から3年以内に分割できれば、修正申告や更正の請求でこれらの特例を適用できますね。更正の請求は、分割のあったことを知った日の翌日から4か月以内という別の期限があるので注意してください。

出典:国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」

期限2|相続登記は3年。怠ると10万円以下の過料

2024年4月1日から相続登記が義務になりました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。

制度が始まる前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。分割がまとまらない場合は、単独で申し出られる相続人申告登記を使えば申請義務を果たしたものとして扱われます。

出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

期限3|空き家の3,000万円控除は3年目の年末まで

前の章で見た売却期限です。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。

遺産分割で1年、売却活動で半年。話し合いが長引くと、あっという間に近づきます。しかも売れて初めて完了するので、買い手が見つからなければ間に合いません。

期限4|10年を過ぎると特別受益と寄与分を主張できない

2023年4月1日から施行された民法904条の3により、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割には、特別受益と寄与分の規定が適用されません

「兄は生前に住宅資金の援助を受けていた」「自分は何年も介護をした」という主張が通らなくなり、法定相続分で機械的に分けることになります。

例外もあります。10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産の分割を請求していた場合などは、この制限を受けません。

期限の話をすると、脅されていると感じる方がいます。そうではありません。

期限は、話し合いを前に進めるための締め切りとして使えるものなんです。「10か月後に申告がある」「3年目の年末までに売れないと控除が消える」という共通の事実があると、感情の対立が日程の相談に変わります。

現場で見ていて思うのは、兄弟の話し合いには司会役が要るということでした。誰か1人が段取りを持たないと、全員が様子を見て何も決まりません。

いちばん近くに住んでいる人でも、いちばん時間のある人でも構いませんね。日程を切る役を1人決めるところから始めてください。

空き家の売却に反対する兄弟がいるときにできること

空き家の売却に反対する兄弟がいるときにできること

ここからは、すでに意見が割れている場合の話になります。

まず分け方ではなく数字を揃える

反対の理由が「安く売られるのが嫌だ」なら、査定を複数社から取れば解けることがあります。理由が「思い出の家だから」なら、金額では動きません。

何に反対しているのかを言葉にしてもらうところから始めてください。分け方の議論はその後です。

代償分割で引き受けられるかを確かめる

残したい人がいるなら、その人が代償分割で取得できるかを確認します。必要なのは、ほかの兄弟の持分に見合う現金です。

用意できないなら、残したいという希望は維持費の負担とセットで考えることになります。誰が固定資産税を払い、誰が草を刈るのか。ここまで具体化すると、話が現実に近づきます。

持分だけを売る方法はあるが、関係は壊れる

自分の持分だけなら、ほかの兄弟の同意がなくても第三者へ売れます。持分は各自の財産だからですね。

ただし現実には、買い手は共有持分の専門業者に限られ、価格は大きく下がります。しかも残った兄弟は、見知らぬ相手と共有することになります。関係は元に戻りません。最後の手段として知っておく程度にしてください。

まとまらないなら家庭裁判所の手続きがある

協議が調わないときは、民法907条2項により、各共同相続人が家庭裁判所に遺産の分割を請求できます。実務では調停から始まるのが一般的です。

個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。まず弁護士に相談して、現状で取り得る選択肢を整理してもらってください。

反対している兄弟が悪いわけではない、という前提だけは崩さないでほしいんです。

揉めたくて揉めている人は誰もいません。できるなら1円でも多く手元に残したい。当たり前の感情だと思います。

そのうえで現実的な話をすると、兄弟間で意見が割れている物件は、普通の不動産会社が扱いたがりません。話がまとまらない案件は仲介手数料になるまでの距離が遠いからです。仲介に出しても動かないまま時間だけが過ぎます。

そういう物件は、そのままの状態で買い取る業者に査定だけ出してみてください。現金でいくらになるかという1つの数字が出ると、止まっていた話が動くことがあります。まとめて手放す選択肢はいらない負動産を絶対に放置してはいけない理由とは?プロが教える最強の手放し方6選!にまとめました。

空き家を兄弟で相続したときのよくある質問

空き家を兄弟で相続したときのよくある質問

兄弟の1人が実家に住み続けています。家賃はもらえますか?

民法249条2項により、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、ほかの共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います

金額や支払い方は当事者間で決めることになります。すでに争いになっているなら、弁護士に相談してください。

相続放棄をすれば空き家の管理から解放されますか?

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。不動産だけを選んで放棄することはできません。

注意したいのは放棄した後です。民法940条1項により、放棄の時にその財産を現に占有している場合は、相続人などに引き渡すまで保存する義務が残ります。放棄すれば直ちに手が離れるわけではありません。

兄弟の1人が認知症です。話し合いはできますか?

判断能力が失われている状態では、遺産分割協議に参加できませんね。成年後見の手続きが必要になります。

対策が打てるのは診断が確定する前までです。親が健在なうちに家族信託などを検討していれば違った、という場面を現場で見てきました。今できることは、手続きの窓口を早く確認することです。

空き家を解体して駐車場にするのは有効ですか?

慎重に考えてください。住宅が建っている土地には固定資産税の住宅用地の特例が適用されていますが、更地にすると翌年度からこの特例が外れます。

さらに、アスファルトや土間コンクリートで舗装すると、将来の建築や売却のときに別途解体費がかかります。土地の固定資産税の仕組みは【2026年最新】土地の固定資産税の計算方法とは?放置で税金6倍の罠と抜け出すための解決策で確認できますね。

子がいない兄が亡くなり、兄弟姉妹が相続人になりました。持分はどうなりますか?

被相続人に子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。配偶者がいるときは配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を分け合います。

兄弟姉妹が数人いれば各自の相続分は等しく、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹は、双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です。なお民法1042条により、兄弟姉妹に遺留分はありません。

空き家を売った代金を分けると、贈与税がかかりますか?

換価分割として進めていれば問題になりません。代表者1人の名義で登記した場合でも、それが換価のための便宜であり、代金が取り決めどおり分配されるなら贈与税の課税は問題にならないと国税庁が示しています。

前提は、遺産分割協議書にその内容が書かれていることです。口頭の約束だけでは、外形上は贈与と区別がつきません。

質問を並べて見えてくるのは、兄弟の相続でつまずくのは制度ではなく段取りだということです。

誰が相続人かを確かめずに分け方を話す。売れる値段を知らずに分配額を決める。書面を作らずに登記だけ進める。どれも、あとから全員が損をする形で返ってきます。

僕は2人兄弟の次男です。だから当事者としても思うのですが、実家を巡って兄弟で争うのは、親への最大級の親不孝だと感じます。

順番と書面。この2つを守れば、兄弟の相続はいちばん公平に終わらせられますよ。

まとめ

まとめ

空き家を兄弟で相続したときの分け方を整理してきました。要点をまとめます。

  • 出発点は持分の確認。母が健在なら母2分の1・子で2分の1を分ける(民法900条1号)
  • 相続分は目安。全員が合意すれば自由に決められる(民法907条1項)
  • 分けないと共有のまま。売る・壊すには全員の同意が要る(民法251条1項)
  • 分け方は4つ。誰も住まないなら換価分割、住みたい人がいて資力もあるなら代償分割
  • 空き家の3,000万円控除は相続人ごとに使える。ただし相続人が3人以上なら1人2,000万円
  • 兄弟へ売る形にすると、この控除は使えない(特別の関係がある人への譲渡)
  • 期限は4つ。申告10か月/登記3年/控除は3年目の年末/10年で特別受益と寄与分が消える

いちばん大事なのは順番です。分け方を決める前に、その家がいくらで売れそうかを兄弟全員で確かめておきましょう。同じ数字を見たところから、話し合いは前に進みます。

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら