相続などで実家や土地の共有持分を持つことになり、他の共有者と足並みがそろわないので、自分の持分だけでも処分したいと考えている方に向けて書きました。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地有効活用のコンサルティング営業をしていた人間です。当時のお客様の中心は土地を持つ地主の方々で、空き家や空き地を見つけては登記事項証明書を取り、所有者を訪ねて回る仕事をしていました。名義の欄に複数の名前が並ぶ土地の話も、お客様から伺うことがあったんです。
結論から言うと、共有持分は自分ひとりの判断で処分できます。土地の全部を売るには共有者全員の同意が要りますが、自分の持分だけなら、他の共有者の同意は要りません。ただし、持分の処分には4つの出口があり、どれを選ぶかで手元に残る金額と、他の共有者との関係の残り方が変わってきます。
そして、持分の放棄や相続放棄のように「手放せば無関係になれる」と思われがちな道にも、それぞれ条件と副作用があるんです。知らないまま進めると、手放したはずの土地の税金や管理が自分に残ることがあります。
この記事では、共有持分の処分とは何を手放すことなのか、処分を考えることになる3つの場面、4つの出口、相続放棄との違い、国庫帰属が使える条件、買取価格が下がる理由、手放す前に確かめる4つのこと、税金、登記と費用、進め方、残された側の対応の順に見ていきましょう。
法令と制度は、e-Gov法令検索・法務省・裁判所・国税庁などで確認したものだけを載せました。2026年9月時点の内容としてお読みください。共有者全員で土地の全部を売る手順は、共有名義の土地売却は何から始めるか|全員の同意が要る場面と、反対されたときの4つの出口に分けて書いています。
共有持分の処分とは何を手放すことなのか|先に押さえる3つのこと

実家を兄弟で持ち合っているとき、それぞれの「何分の一」が共有持分です。この持分だけを手放す話と、土地全体を売る話は、必要な同意も、相手も、値段の付き方も違います。分けずに相談に行くと、話が途中で振り出しに戻ってしまうんです。
押さえること1|持分は、自分ひとりで処分できる権利
民法は、所有者は法令の制限内で自由にその所有物の使用・収益・処分をする権利を持つと定めています(206条)。共有持分もこの所有権の一部なので、自分の持分を誰かに譲るのに、他の共有者の同意は要りません。
一方で、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要です(251条1項)。土地そのものを売って所有権を手放す行為は、この変更にあたるものとして扱われてきました。持分の処分と全体の売却で必要な同意が違うのは、2つの条文の違いから来ています。
押さえること2|土地の全部を売る話とは、相手も値段も別になる
土地の全部を売る場合、買い手は土地を自由に使える普通の買主です。持分だけを売る場合、買い手はその土地を他の共有者と持ち合う立場を引き継ぐことになります。
だから持分の買い手は、他の共有者か、持分の買取を専門にする会社にほぼ限られます。値段も、土地全体の価格に持分割合を掛けた額より低くなるのが通常です。理由は6章で分解しますね。
押さえること3|処分しても、共有関係そのものは残る
自分の持分を第三者に売っても、共有という状態は消えません。共有者の顔ぶれが入れ替わるだけになります。持分を放棄した場合は、その持分は他の共有者に帰属します(255条)。
つまり、どの出口を選んでも、残った共有者にとっては何かが変わる出来事なんです。自分が抜けたあとの共有関係を、他の共有者がどう受け止めるかまで考えて出口を選ぶ必要があります。
| 押さえること | 中身 | 効いてくる場面 |
|---|---|---|
| 1 単独で処分できる | 持分の譲渡に同意は不要(206条) | 足並みがそろわないとき |
| 2 相手と値段が別 | 買い手は共有者か専門業者 | 査定を頼むとき |
| 3 共有関係は残る | 放棄なら他の共有者に帰属(255条) | 出口を選ぶとき |
なぜ共有持分の処分を考えることになるのか|止まる3つの場面

持分だけを手放したい、という話は、土地よりも人の事情から始まります。整理すると、動けなくなる場面は3つに分けられるんです。
場面1|売りたい人と残したい人で、足並みがそろわない
兄は実家を残したい、弟は売ってお金に換えたい。この形になると、土地の全部を売る道は閉じます。全員の同意が要るからです。
ここで大事なのは、揉めたくて揉めている人はいないという点になります。少しでも多くお金を手元に残したい、という当たり前の気持ちが、出口の違いとしてぶつかっているだけなんです。持分の処分は、この膠着を自分の側から解く手段のひとつになります。
場面2|共有者の一人が住んでいて、対価の話ができていない
親の家に兄弟の一人が住み続け、他の共有者は何も受け取っていない、という形があります。民法は、各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用ができると定め、使用する共有者は別段の合意がなければ、自己の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負うとしています(249条1項・2項)。
住んでいる側に対価の支払い義務があること自体は、条文に書かれています。ただ、いくらが相当かは個別の話で、ここが揉め事の入口になります。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。
場面3|固定資産税だけが、自分のところに来ている
共有名義の不動産の固定資産税は、共有者が連帯して納付する義務を負います(地方税法10条の2第1項)。持分割合で分けた額だけ払えばよい、という仕組みではありません。市町村は、共有者の誰にでも全額を請求できるんです。
代表者に届いた納税通知書を、その人がずっと立て替えている。この状態が続くと、持分を手放したい気持ちは強くなります。なお、共有者が管理の費用など共有物に関する負担を1年以内に履行しないときは、他の共有者は相当の償金を支払ってその持分を取得できます(民法253条2項)。
| 場面 | 何が起きているか | 条文 |
|---|---|---|
| 1 足並みがそろわない | 全体売却の同意が取れない | 民法251条 |
| 2 一人が住んでいる | 対価の話が置き去り | 民法249条2項 |
| 3 税金が偏っている | 連帯納税義務で一人が立て替え | 地方税法10条の2 |

揉めるくらいなら売ってお金で分けるほうが合理的だと、僕は考えています。親が残した家が原因で子どもたちが争うことを、親が望んでいたとは考えにくいからです。
ただし、その「売って分ける」が全員の同意で止まっているなら、持分の処分は次善の手になります。どちらの言い分が正しいかではなく、自分がどの出口なら納得できるかを先に決めてください。
共有持分の処分の4つの出口とは|第三者に売る・共有者に売る・放棄する・分割を求める

出口は4つに分かれます。出口1と3は自分の意思で始められ、出口2と4は相手や裁判所が絡みます。手元に残るお金と、他の共有者との関係の残り方は、出口ごとに違うものだと押さえておいてください。
出口1|持分だけを第三者に売る
他の共有者の同意なしに、自分の持分を専門の買取業者などに売る道です。手続きの上ではいちばん早く、自分ひとりで完結します。
代わりに、価格は土地全体の価格に持分割合を掛けた額より下がります。買主にとっては、他人と持ち合う土地の一部を買う取引だからです。買う側から見た値段の決まり方は、訳あり物件買取はいくらで決まるのか|「訳」ごとに引かれる4つの額と、仲介より手取りが残る3つの場面にも通じます。
出口2|他の共有者に買い取ってもらう
共有関係をきれいに終わらせやすいのが、この道になります。買う側は土地をまとめられ、売る側は現金を受け取れるので、双方に理由がある取引です。
値段の物差しは、土地全体の価格に持分割合を掛けた額が出発点になります。そこから、これまで払ってきた固定資産税や、住んでいた側の使用の対価をどう精算するかで調整が入るんですね。
出口3|持分を放棄する
民法255条は、共有者の一人が持分を放棄したとき、その持分は他の共有者に帰属すると定めています。放棄すれば土地から離れられますが、代金は1円も入りません。しかも、放棄した持分は国や自治体ではなく、他の共有者のものになります。
税金の側から見ると、別の顔もあるんです。国税庁の通達は、共有者の一人が持分を放棄したとき、他の共有者がその持分に応じて贈与により取得したものとして取り扱うとしています。放棄した本人ではなく、持分が増えた側に贈与税の問題が生じ得るわけです。放棄の登記は、放棄した人と持分を受け取る共有者が共同で申請する形なので、相手が動かなければ進みません。その場合は、裁判で登記を命じてもらう手続き(不動産登記法63条1項)まで要ることになります。ここは弁護士・司法書士の領域です。
出口4|共有物分割請求で、共有そのものを終わらせる
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(256条1項)。話し合いがまとまらない、または話し合いができないときは、裁判所に分割を請求できると258条1項が定めています。
裁判所が命じられる方法は、土地を現物で分ける方法と、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法です(同2項)。どちらもできないとき、または分割で価格が著しく減少するおそれがあるときは、競売が命じられます(同3項)。自分が持分を手放して代金を受け取る形、つまり他の共有者に買い取らせる形も、この裁判の中で命じられ得るわけですね。
ただし、相続で持ち合っている遺産共有の状態では、共同相続人の間で遺産分割をすべきときは、この分割はできません(258条の2第1項)。相続開始から10年を経過すれば可能になります(同2項)。それでも、遺産分割の請求が出ていて、相続人が裁判所から通知を受けた日から2か月以内に異議を申し出れば止まります(同2項ただし書・3項)。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。
| 出口 | 相手 | 手元に残るお金 | 押さえる点 |
|---|---|---|---|
| 1 第三者に売る | 買取業者など | 低め | 同意不要・関係への影響が大きい |
| 2 共有者に売る | 他の共有者 | 中くらい | 相手の合意が要る |
| 3 放棄する | 他の共有者に帰属 | ゼロ | 受け取る側に贈与税の問題 |
| 4 分割請求 | 裁判所 | 内容による | 遺産共有は先に遺産分割 |

4つの出口を並べて分かるのは、多くの場合、放棄がいちばん割に合わない出口になるという点です。お金は入らず、登記には相手の協力が要り、相手には贈与税の問題が残ります。
手放したい気持ちが強いときほど、放棄ではなく出口2から順に当たってください。相手にとっても、知らない業者が共有者になるより、身内から買うほうが受け入れやすいものです。
共有持分の処分と相続放棄は何が違うのか|3つの分かれ目

「相続放棄と何が違うのか」という疑問が、ここで出やすくなるんです。ただ、相続放棄と持分の処分は、使える時期も、手放す範囲も、まるで違う制度になります。
分かれ目1|相続開始を知ってから3か月以内かどうか
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述して行います(民法915条1項・938条)。放棄した人は、その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされます(939条)。
この3か月を過ぎ、すでに持分を相続している状態なら、選べるのは持分の処分の側です。相続開始の前後で、手段そのものが入れ替わると考えてください。
分かれ目2|土地だけを手放せるか、財産の全部か
相続放棄は、被相続人の権利も義務も一切受け継がない選択です。土地だけを放棄して、預金は受け取る、という選び方はできません。
持分の処分なら、その土地の持分だけを手放し、ほかの財産はそのままにできます。どちらが合うかは、土地以外に何を受け取るのか次第ですね。
分かれ目3|放棄したあとにも、管理の責任が残ることがある
相続放棄をした人でも、放棄の時にその財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければなりません(940条1項)。
実家に住んでいたり、鍵を管理していたりする人が放棄しても、引き渡すまで責任は続くわけです。相続人になる人が全員放棄すれば相続人がいない状態になり、清算人の選任を家庭裁判所に請求する流れになります(952条1項)。
| 分かれ目 | 相続放棄 | 共有持分の処分 |
|---|---|---|
| 1 時期 | 知った時から3か月以内 | 相続したあといつでも |
| 2 範囲 | 財産の全部 | その土地の持分だけ |
| 3 残る責任 | 占有していれば保存義務 | 売却・放棄で移転 |

不動産の売却は、動く前に制度を知っているかどうかで手元に残る額が変わるものです。制度を知らないまま進めて損をしているケースは多いのではないかと、僕は考えています。
相続放棄の3か月は、迷っている間に過ぎます。親が亡くなって実家の共有が見えた時点で、放棄するのか、相続して持分を処分するのかを先に決めることになります。どちらが合うかは財産全体の話なので、迷ったら弁護士に相談してください。
共有持分の処分で国庫帰属はなぜ使いにくいのか|3つの条件

相続した土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度は、共有持分だけを持つ人にも門が開いているんです。ただし、持分単独では申請できません。条件は3つです。
条件1|共有者の全員が共同して申請すること
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律は、土地が数人の共有に属する場合、承認申請は共有者の全員が共同して行うときに限りできると定めています(2条2項)。自分の持分だけを国に渡す申請は、制度上できないんです。
同じ項には、救いも書かれているんですね。売買などで持分を取得した共有者が混じっていても、相続等で持分を取得した共有者がいれば、全員で共同して申請できます。
出典:e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」
条件2|建物がある土地は、なぜ申請できないのか
承認申請ができない土地として、建物の存する土地が真っ先に挙がっています(2条3項1号)。担保権や使用収益権が設定されている土地、境界が明らかでない土地なども同じ扱いです。
実家の共有持分を持っている方にとっては、ここが壁になります。建物を取り壊す行為は共有物の変更にあたり、共有者全員の同意が要るからです。全員がそろわない状態では、そもそも申請の入口に立てません。
条件3|手数料と負担金は、共有者で分けて用意する
承認されると、国有地の種目ごとに管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して算定した負担金を納付します(10条1項)。通知を受けた日から30日以内に納めないと、承認は効力を失います(同3項)。審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、却下や不承認でも返還されません。
国に引き取ってもらう道は、共有者全員で足並みをそろえられる場合の、しかも建物を片づけたあとの出口です。持分の処分を考えている段階で使える手段ではないと押さえておいてください。
| 条件 | 中身 | 持分単独の人にとって |
|---|---|---|
| 1 全員共同 | 共有者全員での申請に限る(2条2項) | 単独では不可 |
| 2 建物なし | 建物の存する土地は却下(2条3項) | 解体に全員の同意が要る |
| 3 費用 | 手数料14,000円・負担金は10年分 | 全員で分担する |

「国が引き取ってくれる制度ができた」という話だけが先に広まって、共有者全員で申請するという条件を知らないまま期待している方がいるのではないでしょうか。制度の名前と条件は、いつもセットで覚えておいてください。
共有者の一人でも反対していれば、国庫帰属は選択肢から外れます。その場合に残るのは、3章の4つの出口です。
共有持分の買取業者はなぜ価格が下がるのか|3つの理由

持分だけを第三者に売るとき、提示される額は土地全体の価格に持分割合を掛けた額より下がります。業者が意地悪をしているわけではなく、買う側の立場に3つの制約があるからにほかなりません。
理由1|買主は、土地を自由に使えないから
持分を買った業者は、共有者の一人になるだけです。持分に応じた使用はできますが(249条1項)、建物の取り壊しや土地全体の売却といった変更には、他の共有者の同意が要ります(251条1項)。
買ったあとに何もできない期間が長くなるほど、買主はその分を値段から引くことになります。土地全体の買主と同じ物差しで測れない理由は、まずここにあるんですね。
理由2|業者の出口が、他の共有者か裁判所に限られるから
持分を買った業者が利益を出す方法は、他の共有者に売る、他の共有者の持分を買い集めて土地全体にする、共有物分割請求で清算する、のいずれかになります。どの道も、相手との交渉か裁判所の手続きを通ります。
時間と費用が読みにくい取引ほど、買う側は安全側に値段を置きます。売主から見れば、その読みにくさがそのまま値引きになって返ってくるわけです。他人の権利が絡んだまま売るという構造は、底地売却は誰に売るかで金額が変わる|5つの売り先と、動く前に確かめる契約書の見方と同じになります。
理由3|買い手そのものが少ないから
持分を買う会社は限られていて、競争が起きにくい市場です。比べる相手がいなければ、提示された額が高いのか安いのかを判断する物差しがありません。
だからこそ、1社の返事で決めず、複数の業者に同じ資料で聞いてください。免許の有無と行政処分の履歴は、国土交通省の検索システムで自分で確認できます。業者の見極め方は、訳あり物件買取業者の選び方|元コンサルが先に見る5つのポイントと契約前の確認事項に整理しました。
出典:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」
| 理由 | 買主の制約 | 売主にできること |
|---|---|---|
| 1 使えない | 変更に全員の同意が要る | 他の共有者に先に声をかける |
| 2 出口が限られる | 交渉か裁判所を通る | 遺産共有かどうかを先に伝える |
| 3 買い手が少ない | 競争が起きにくい | 複数社に同じ資料で聞く |

相場を知らないまま交渉の席につくと、根拠の分からない数字をそのまま受け入れることになりかねないと、僕は考えています。共有持分には分かりやすい取引事例が少ないので、なおさらです。
「この額は、何をいくら引いた結果ですか」と聞いて、項目で答えられる会社を選んでください。数字の見方でつまずいたら、お問い合わせからご相談ください。
共有持分を処分する前に何を確かめるか|4つのこと

出口を選ぶ前に、手元でそろえておく事実が4つあります。確認1〜3は法務局と手元の書類で確かめられ、確認4は相手との話し合いが要るものです。
確認1|登記事項証明書で、名義と持分割合を見る
法務局で登記事項証明書を取り、権利部に誰が何分の何を持っているかを確かめます。実務をしていた当時、登記事項証明書を取って所有者を追いかけていて、三代前の名義のまま止まっている土地に実際に当たったことがありました。名義が亡くなった親のままなら、自分の持分はまだ登記の上に現れていません。
相続登記は、相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が義務になっています。令和6年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その期限は令和9年3月31日です。
確認2|遺産共有か、通常の共有かを切り分ける
相続したまま遺産分割をしていない状態を、遺産共有と呼びます。この状態では、共同相続人の間で遺産分割をすべきときは共有物分割の裁判ができず、原則として相続開始から10年を経過するまで待つことになります(258条の2)。
遺産共有なら、持分の処分の前に遺産分割協議を通す道を先に考えることになります。遺産分割で自分が土地を取らず、代わりに他の財産や代償金を受け取る形にできれば、持分を安く売る必要がなくなるからです。
確認3|固定資産税を、誰がどう払ってきたか
納税通知書が誰に届き、誰が払ってきたかを、振込の記録で確かめてください。連帯納税義務がある以上、代表者が立て替えている状態は起こり得ます。
立て替えた分の精算は、持分を売る値段や、共有者に買い取ってもらう条件の中に入れる話になります。整理する前に金額を出しておくと、交渉が具体的になりますよ。
確認4|住んでいる共有者への対価をどう扱うか
共有者の一人が住んでいるなら、持分を超える使用の対価をどうするかを、売る前に決めておくのが先です。条文上は償還義務がありますが(249条2項)、金額は合意で決める部分になります。
買主となる業者は、この対価の請求を引き継ぐ前提で値段を出すことが考えられます。売る前に整理しておくほうが、住んでいる共有者との関係を壊さずに済みます。
| 確認 | 見るもの | 分かること |
|---|---|---|
| 1 名義と持分 | 登記事項証明書 | 誰が何分の何か・相続登記の要否 |
| 2 共有の種類 | 遺産分割協議書の有無 | 遺産共有か通常の共有か |
| 3 税の負担 | 納税通知書・振込記録 | 立て替えの精算額 |
| 4 使用の対価 | 住んでいる人との合意 | 償還の扱い |

確認1〜3は法務局と手元の書類で数日あればそろいます。確認4は相手との話し合いが要るので、先に着手してください。持分の処分は「誰に、いくらで、どう精算するか」の話なので、事実がそろっていないと相談先も答えようがありません。
業者に渡す紙が1枚あるだけで、返ってくる数字の精度が変わります。とくに確認2の遺産共有かどうかは、使える出口そのものを左右するので、最初に切り分けてください。
共有持分の処分でかかる税金はどうなるか|3つの制度

持分を売って代金を受け取れば、その部分に譲渡所得の税金がかかります。共有だからといって特別な税金があるわけではなく、自分の持分の分だけを自分で申告する形だと押さえてください。
制度1|譲渡所得は、自分の持分の分だけ計算する
土地や建物を売ったときの譲渡所得は、給与などと分けて計算する分離課税になります。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで長期と短期に分かれ、相続で取得した場合の所有期間は、被相続人の取得の日から数えるのが原則です。
共有の場合は、売却代金も取得費も譲渡費用も、自分の持分に応じた分で計算します。個別の税額計算は税理士の領域になります。
出典:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
制度2|3,000万円控除は、共有者ごとに判定する
国税庁は、共有のマイホームを売った場合、居住用財産の3,000万円特別控除を受けられるかどうかは共有者ごとに判定し、控除額は共有者全員で3,000万円ではなく、適用を受けられる共有者1人につき最高3,000万円と説明しています。
相続した空き家を売る場合の空き家の3,000万円特別控除も、要件を満たす相続人ごとに使える仕組みです。ただし、令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続で取得した相続人が3人以上なら、上限は2,000万円になります。親子や夫婦など特別の関係がある人に売った場合は使えず、生計を一にする親族もこの関係に含まれます。
家屋の耐震改修や取り壊しは共有物の変更にあたるため、持分だけを先に売る形では、他の共有者の同意なしに要件を満たすのは難しくなるんです。持分単独の売却でこの特例が使えるかは、税理士に確かめてください。変更点は空き家の3,000万円控除は何が変わった?|2026年8月の要望での変更点と対象外の5つの出口を解説にまとめました。
出典:国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」
出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
制度3|相続税を納めていれば、取得費加算の道がある
相続税が課税された財産を、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。
この特例と空き家の3,000万円特別控除は併用できません。どちらが有利かは持分ごとに答えが変わるので、売る前に税理士へ制度の名前を伝えておいてください。
出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
| 制度 | 効くところ | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 1 分離課税 | 自分の持分の分だけ | 所有期間は被相続人から通算 |
| 2 3,000万円控除 | 共有者ごとに判定 | 相続人3人以上なら2,000万円 |
| 3 取得費加算 | 相続税を納めた財産 | 3,000万円控除と併用不可 |

持分だけを売るときは金額が小さくなりがちなので、税金のことは後回しにされやすいものです。けれど、控除が使えるかどうかで手取りが変わるのは、持分の売却でも同じなんです。
「持分だけだから特例は関係ない」と思い込むのがいちばんもったいないんですね。名前が出れば、あとは税理士が要件を確かめてくれます。
共有持分の処分の登記はどう動くのか|費用と3つの確認

持分を売っても放棄しても、最後は登記が動くことになります。登記が動かないと、固定資産税の通知はこれまでどおり届き続けてしまいます。
確認1|持分の移転登記は、原因で税率が変わる
土地の所有権の移転登記にかかる登録免許税は、売買なら不動産の価額の1,000分の20で、令和11年3月31日までに登記を受ける場合は1,000分の15です。相続、法人の合併または共有物の分割なら1,000分の4、贈与などその他の原因なら1,000分の20になります。
国税庁の税額表では売買・相続・共有物の分割以外を「その他」にまとめており、放棄による移転はここに当たるのが通常です。放棄だから安く済むとは限りません。課税標準は固定資産課税台帳の価格が原則で、個別の計算は司法書士や登記所で確かめてください。
確認2|相続登記が済んでいないと、持分は動かせない
名義が亡くなった親のままなら、先に相続登記を入れて自分の持分を登記の上に現す必要があります。相続人申告登記という簡易な手続きもありますが、権利関係を公示するものではないので、売却や抵当権の設定には相続登記が必要です。
持分を処分する前提として、相続登記は避けて通れない工程になります。登記手続きの代行は司法書士の領域なので、ここから先は司法書士に相談してください。
確認3|登記は共同申請が原則で、相手の協力が要る
不動産登記法は、権利に関する登記の申請は、登記権利者と登記義務者が共同してしなければならないと定めています(60条)。持分を売る場合は買主と、放棄する場合は持分を受け取る共有者と一緒に申請することになります。
放棄は自分ひとりの意思でできても、登記は相手が動かなければ進みません。相続や法人の合併による移転は登記権利者が単独で申請できますが(63条2項)、放棄はこの例外に入っていません。相手が協力しないときは、登記を命じる確定判決を得て単独で申請する道が残りますが(63条1項)、ここは弁護士・司法書士の領域です。
| 確認 | 中身 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 1 登録免許税 | 売買20/1,000(令和11年3月31日まで15/1,000)・相続4/1,000・その他20/1,000 | 放棄は「その他」 |
| 2 相続登記 | 知った日から3年以内・過去分は令和9年3月31日 | 申告登記では売れない |
| 3 共同申請 | 権利者と義務者で申請(60条) | 放棄も相手の協力が要る |

登記は「最後に司法書士がやってくれるもの」と後回しにされがちですが、共有持分の処分では順番が逆です。名義が動かせる状態になっているかどうかで、そもそも売れるかどうかが決まります。
登記事項証明書を取った日が、持分の処分の実質的なスタートです。売る話より先に、登記の状態を整えてください。
共有持分を処分するときはどう進めるか|5つのステップ

ここまでの話を、順番に並べ直しました。上から順に進めてください。
ステップ1|登記事項証明書と納税通知書をそろえる
7章の4点を1枚の紙にまとめます。名義、持分割合、遺産分割の有無、固定資産税の負担、住んでいる人の有無です。この紙が、以降すべての相談の共通資料になります。
ステップ2|遺産共有なら、先に遺産分割の話をする
遺産分割が済んでいないなら、持分を売る前に、自分が土地を取らない代わりに何を受け取るかを協議します。遺産分割で抜けられれば、持分を安く売る必要がなくなるからです。協議が進まないときの家庭裁判所の手続きは、弁護士の領域になります。
ステップ3|他の共有者に先に声をかける
第三者に売る前に、他の共有者に買い取る意思があるか、あるいは全員で土地の全部を売る気があるかを聞きます。あとから「勝手に売った」と受け取られないための順番です。全員で売る手順は共有名義の土地売却は何から始めるか|全員の同意が要る場面と、反対されたときの4つの出口にまとめました。
ステップ4|第三者に売るなら、複数の業者に同じ資料で聞く
持分の買取を扱う業者に、ステップ1の紙を渡して数字をもらいます。免許と処分歴を確認し、引かれた項目を説明できる会社だけを残すのがここでの仕事です。訳あり物件全体の売り先の地図は訳あり物件の売却は「訳」の中身で売り先が決まる|4種類の訳と5つの出口、動く前に整える3つのことに書きました。共有持分は、権利関係が「訳」になっている物件だと考えてください。
ステップ5|話がまとまらないなら、分割請求は弁護士へ
他の共有者が買い取らず、第三者への売却も価格が合わないなら、共有物分割請求を検討する段階です。裁判所が他の共有者に持分を取得させ、代金の支払いを命じる形もあり得ます。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあるので、ここからは弁護士に相談しましょう。
| ステップ | やること | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 1 紙にする | 名義・持分・分割・税・居住 | 全員に同じ紙を渡す |
| 2 遺産分割 | 土地を取らない形を協議 | 抜けられれば安売り不要 |
| 3 共有者に聞く | 買取か全体売却か | 順番が関係を守る |
| 4 業者に聞く | 複数社・同じ資料 | 免許と内訳で絞る |
| 5 弁護士へ | 共有物分割請求 | 賠償分割もあり得る |

持ち続けるか手放すかは、気持ちではなく計算で決めるものだと僕は考えているんです。実務をしていた当時、建てる提案をするときは、回収年数を出してから判断してもらっていました。
共有持分なら、自分が払い続ける固定資産税の年額と、いま手放して入る額を横に並べるだけで判断材料になります。持分割合が小さいほど、持ち続ける理由は薄くなっていくものです。
他の共有者が共有持分を処分したらどうするか|残された側の3つの対応

逆の立場の話も押さえておきます。ある日、見知らぬ会社から「あなたの土地の持分を取得しました」と連絡が来る場面です。慌てる必要はありませんが、放置もできません。
対応1|登記事項証明書で、誰が何を取得したかを確かめる
まず法務局で登記事項証明書を取り、権利部に新しい共有者の名前と持分割合が入っているかを見ます。相手が本当に共有者になっているかを、相手の手紙ではなく登記で確かめるのが最初の一手です。
相手が宅地建物取引業者なら、免許と処分歴も国土交通省の検索システムで確認しておきましょう。
対応2|買うか、売るか、分けるかを決める
新しい共有者からは、あなたの持分を買いたい、または自分の持分を買ってほしい、という申し出が来るはずです。申し出に応じる義務はありませんが、相手にも分割請求の権利がある点は押さえておいてください(256条1項)。
選べるのは、相手の持分を買い取って土地をまとめる、自分の持分を相手に売る、全員で土地の全部を売って分ける、の3つになります。どれが合うかは、その土地を自分がこれからも使うかどうか次第です。
対応3|話し合いに応じないまま放置しない
放置していると、相手は裁判所に共有物分割を請求できます。現物分割も賠償分割もできないと判断されれば、競売が命じられることもあるんです(258条3項)。
競売になると、土地全体が市場で売られ、代金を持分で分ける形になります。自分の希望する条件で終わらせたいなら、話し合いの席に早く着くほうが有利です。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。
| 対応 | やること | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 1 確かめる | 登記事項証明書・免許 | 手紙ではなく登記で見る |
| 2 決める | 買う・売る・全体で売る | 相手にも分割請求権 |
| 3 放置しない | 話し合いに応じる | 競売の可能性 |

実務をしていた当時、グループの売買部門と一緒に動くと、同じ会社でも担当者によって対応が大きく変わるのを実際に見てきました。持分を買った会社の担当者も、話の持って行き方で対応が変わる相手だと考えておくと、構えすぎずに済みます。
先に自分の希望を決めてから席に着けば、相手の提示に振り回されません。土地を残したいなら買い取りの資金、手放すなら売る条件を、連絡が来た時点で整理しておいてください。
共有持分の処分に関してのよくある質問

共有持分だけを売るとき、他の共有者に知らせる義務はありますか?
法律上、持分の譲渡に他の共有者の同意や事前の通知を求める条文はありません。自分の判断だけで売ることは可能です。ただし、売ったあとは知らない会社が共有者になるので、関係を残したいなら、先に買い取る意思があるかを聞いておく順番をおすすめします。
持分を放棄すれば、固定資産税から解放されますか?
放棄した持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。ただし、固定資産税は毎年1月1日時点の登記簿上の所有者に課されるので、翌年の1月1日時点で登記簿上の所有者から外れるまで、連帯納税義務はそのまま残ります。登記は持分を受け取る共有者と共同で申請する形なので、相手の協力が前提になるんです。受け取る側には贈与税の問題も生じ得るため、放棄は相手と話してから決めてください。
共有者の一人が認知症のとき、共有持分の処分はできますか?
自分の持分を第三者に売るだけなら、他の共有者の判断能力は関係ありません。一方で、その共有者に買い取ってもらう、または全員で土地の全部を売るには成年後見人の選任が必要になり、居住用の不動産を処分するには家庭裁判所の許可も要ります(民法859条の3)。判断能力が失われる前にしか打てない手があるので、進め方は共有名義の土地売却は何から始めるか|全員の同意が要る場面と、反対されたときの4つの出口の認知症の章を先に読んでください。
まとめ

共有持分の処分は、土地の全部を売る話とは別の手続きです。自分の持分だけなら他の共有者の同意は要らず、出口は第三者に売る、他の共有者に売る、放棄する、共有物分割を求める、の4つになります。
放棄は、代金が入らず、持分は他の共有者に帰属し、受け取る側に贈与税の問題が残る出口です。手放したい気持ちが強いときほど、他の共有者に買い取ってもらう道から順に当たってください。相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内の制度で、すでに持分を相続した人には使えません。国庫帰属は共有者全員での申請が条件なので、持分単独では入口に立てないんです。
動く前に、登記事項証明書で名義と持分割合を確かめ、遺産共有か通常の共有かを切り分け、固定資産税の負担と住んでいる共有者への対価を整理してください。そのうえで、複数の業者に同じ資料で聞き、引かれた項目を説明できる会社だけを残すのが順番です。
税金は自分の持分の分だけ計算し、3,000万円の控除は共有者ごとに判定されます。登記は共同申請が原則で、相続登記が済んでいないと持分は動かせません。
訳あり物件全体の売り先は訳あり物件の売却は「訳」の中身で売り先が決まる|4種類の訳と5つの出口、動く前に整える3つのことに、共有者全員で売る手順は共有名義の土地売却は何から始めるか|全員の同意が要る場面と、反対されたときの4つの出口にまとめています。個別の税額計算は税理士、登記の手続きは司法書士、共有者との争いは弁護士の領域です。どこから手をつけるか迷ったときは、お問い合わせからご連絡ください。








実務をしていた当時、共有名義の土地の揉め事は、お客様や相談者の方から伺う話として耳にすることがありました。僕自身がその売買を担当したわけではないので中身には踏み込みませんが、共有の話は「全員がうんと言うまで動けない」という前提で止まりがちです。
持分の処分は、全員の同意を待たずに自分から動ける手段です。まず自分の持分割合と、抜けたあとに誰が残るのかを紙に書き出してください。整理の途中で迷ったら、お問い合わせからご相談ください。