不動産の相続で手続きが遅れるとどうなる?4つの期限とペナルティ

不動産の相続で手続きが遅れるとどうなる?4つの期限とペナルティ

親が亡くなってから、気づけば半年が過ぎている。不動産の名義もそのまま。この状態、実はかなり多いです。

僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用のコンサルティング営業をしていました。空き家を見つけると登記簿謄本を取って所有者を追いかけていた当時、名義が何代も前で止まったままの土地を数えきれないほど見てきたんです。

最初に整理しておきます。相続の手続きには期限が4つあって、遅れたときに何が起きるかは期限ごとにまったく違いますね。お金で済むものもあれば、権利そのものを失うものもあるわけです。

しかも2024年4月からは相続登記が義務になりました。放置していること自体が法律違反になる時代です。

この記事では、4つの期限とそれぞれのペナルティ、納められないときに使える制度、間に合わないときの逃げ道までを順番に整理していきますね。数字は国税庁と法務省の公表資料から取っています。

不動産の相続で遅延が命取りになる4つの期限

不動産の相続で遅延が命取りになる4つの期限

まず全体像を持ちましょう。日付の順に並べます。

期限何の手続きか遅れるとどうなるか
3か月相続放棄・限定承認原則として単純承認とみなされ、借金も引き継ぐ
4か月準確定申告延滞税・加算税がかかる
10か月相続税の申告・納付延滞税・加算税がかかり、特例が使えなくなる
3年相続登記10万円以下の過料の対象になる

期限1|相続放棄・限定承認は3か月

相続を放棄するなら、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要がありますね。

この期間を過ぎると、原則として単純承認したものとみなされます。プラスの財産もマイナスの財産も、すべて引き継ぐという意味です。借金があるかどうかわからないなら、まずここを調べるのが先になります。

期限2|準確定申告は4か月

亡くなった方に確定申告が必要な所得があった場合、相続人が代わりに申告します。これが準確定申告で、期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。

不動産を貸していた方が亡くなったケースでは、この手続きが必要になることが多いわけなんですね。

期限3|相続税の申告・納付は10か月

相続税の申告と納付の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内になります。期限日が土日祝なら翌開庁日です。

1月6日に亡くなったなら11月6日が期限、という数え方をします。申告に加えて納付も同じ日が期限という点に注意してください。

出典:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」

期限4|相続登記は3年

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。

見落とされやすいのが、過去の相続にも遡って適用されるという点です。2024年4月1日より前に相続を知っていた未登記の不動産については、2027年3月31日が期限になりました。

出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

営業で空き家を見つけると、僕はまず登記簿謄本を取って所有者を追いかけていましたね。提案書を届ける先が、そこにしかなかったからです。

そこで何度も見たのが、三代前の名義がそのまま残っている土地でした。親名義くらいなら近所の方が「◯◯さんの土地だよ」と教えてくれます。ところが世代をまたぐと、隣の人ですら誰の土地か知らない。

こうなると、提案書どころか苦情を伝える先すらなくなるわけです。名義の放置は、誰からも助けてもらえない土地を作る行為だと当時から感じていました。

相続登記の義務化は僕が現場を離れたあとにできた制度ですが、放置の危険性は制度ができる前から変わっていません。

相続税の納付が遅延するとどうなるか|延滞税と加算税

相続税の納付が遅延するとどうなるか|延滞税と加算税

10か月を過ぎた場合の話をします。かかるのは延滞税と加算税の2つです。

延滞税は本税にだけかかる

延滞税は、税金が期限までに納付されない場合に、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて自動的に課される利息にあたるものです。

ここで知っておきたいのが、延滞税は本税だけを対象として課され、加算税には課されないという点になります。ペナルティにさらにペナルティが乗ることはないわけです。

2026年の割合は2.8%と9.1%

延滞税の割合は2段階で、しかも毎年変わります。令和8年(2026年)の割合を並べますね。

期間令和8年の割合原則
納期限の翌日から2か月を経過する日まで年2.8%年7.3%と「延滞税特例基準割合+1%」の低いほう
納期限の翌日から2か月を経過した日以後年9.1%年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」の低いほう

2か月を境に割合が3倍以上に跳ね上がります。参考までに令和4年から令和7年までは2.4%と8.7%でした。

つまり遅れるにしても、2か月以内に納めるかどうかで負担がまるで違うということです。全額が用意できないなら、一部だけでも先に納めておくと延滞税の対象が減ります。

出典:国税庁「No.9205 延滞税について」

加算税は延滞税とは別に乗る

期限までに申告しなかった場合や、申告した税額が少なすぎた場合には、延滞税とは別に加算税がかかりますね。

  • 無申告加算税:期限までに申告しなかった場合
  • 過少申告加算税:申告した税額が少なかった場合
  • 重加算税:事実を隠したり仮装したりした場合

重加算税はほかの加算税に代えて課される、いちばん重い扱いになります。財産を隠していたと判断されるとここに入るわけです。割合は状況によって変わるため、税務署か税理士に確認してください。

「払えないから申告もしない」という選択、これがいちばん高くつきます。

申告と納付は別の手続きです。お金が用意できなくても、申告だけは期限内にできます。申告さえしておけば無申告加算税は避けられますし、次に説明する猶予の制度も使えるわけです。

僕が現場で見てきた限り、手続きから逃げた人ほど最終的な負担が大きくなっていました。税務署は待ってくれませんが、相談には乗ってくれます。

期限が近いのに払えそうにないなら、黙って過ぎるのを待つのではなく、先に相談してください。

相続税を納められないときに使える猶予制度

相続税を納められないときに使える猶予制度

現金が用意できない場合の受け皿があります。国税庁が公表している制度です。

換価の猶予は財産の差押えを止める

税金を一度に納めることで事業の継続や生活の維持が難しくなる場合、原則として1年以内の期間に限り、換価(売却)の猶予が認められることがあります。

要件は5つです。

  1. 一度に納付すると事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがあると認められること
  2. 納税について誠実な意思を有すると認められること
  3. その国税以外の国税の滞納がないこと
  4. 納期限から6か月以内に申請書が提出されていること
  5. 原則として担保の提供があること

4つ目の期限が重要です。納期限から6か月を過ぎると、申請そのものができなくなります。

納税の猶予は事情がある場合に使える

災害・盗難・病気・廃業・事業の著しい損失といった事実がある場合には、納税の猶予が認められることがあります。こちらも原則1年以内です。

猶予が認められると、財産の差押えが猶予されるほか、猶予期間中の延滞税の全部または一部が免除されます。

担保が要らない場合もある

猶予の申請には原則として担保が必要ですが、次のいずれかに当てはまるときは不要です。

  • 猶予を受ける金額が100万円以下である場合
  • 猶予を受ける期間が3か月以内である場合
  • 担保として提供できる種類の財産がないといった事情がある場合

猶予を受けた国税は、原則として猶予期間中の各月に分割して納付します。やむを得ない理由があれば、当初の期間とあわせて最長2年まで延長が認められることもあるわけです。

出典:国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」

猶予の制度、存在を知らない方がとても多い印象なんですね。

税務署から督促状が届いても放置すると、財産の差押えという段階に進みます。不動産を持っている方にとっては、これがいちばん怖い展開になるわけです。

一方で、申請さえすれば分割で納められる道が用意されています。担保も、100万円以下なら要りません。

僕が現場で見ていた実感として、相続税が払えない理由のほとんどは「相続したのが不動産だけで現金がない」というものでした。売って納税資金を作るにも時間がかかります。猶予を使って時間を稼ぐという発想は、選択肢として持っておいてください。

遺産分割の遅延で相続税の特例が使えなくなる

遺産分割の遅延で相続税の特例が使えなくなる

話し合いがまとまらない場合の逃げ道です。ここを知らないと、使えるはずの特例を失います。

そのままだと特例が使えない

相続税を大きく下げる特例には、遺産分割が済んでいることが条件になっているものがありますね。代表格が次の2つです。

  • 小規模宅地等の特例(宅地の評価額を大幅に下げる)
  • 配偶者の税額軽減(配偶者が取得した財産の一定額まで課税されない)

分割が決まっていないと、これらを使わずに計算した税額を納めることになります。

法定相続分で仮に申告して納める

間に合わないときは、法定相続分で分けたものとして仮の申告をして、いったん納付します。期限内に申告と納付を済ませることで、延滞税と無申告加算税を止められるわけです。

分割見込書を出しておく

このとき必ず添えるのが「申告期限後3年以内の分割見込書」なんですね。この書類を出しておくと、あとで分割が決まった段階で特例を適用し直せます。

出し忘れると特例が復活しません。税額に数百万円の差が出ることもある1枚なので、税理士に依頼する場合も提出されているか確認してください。

分割が決まったら更正の請求をする

申告期限から3年以内に遺産分割が成立したら、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。ここで特例を適用し直して、納めすぎた税金が戻る流れです。

先代名義の不動産が絡む場合の手順は先代名義の不動産と相続税申告|祖父名義でも申告は必要?で詳しく整理しました。

分割が決まらない理由の多くは、金額そのものではありませんでした。

誰がどれを取るかで折り合いがつかない。とくに不動産は分けにくいので、ここで止まります。現金なら半分ずつで終わる話が、土地だと終わらないわけです。

ただし、ここから先には線があります。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがありますね。すでに意見が割れているなら、弁護士に相談してください。

僕が言えるのは、期限は待ってくれないという事実だけです。話がまとまらなくても、仮の申告と分割見込書で時間は作れます。手続きだけは先に進めておいてください。

不動産の相続登記が遅延するとどうなるか

不動産の相続登記が遅延するとどうなるか

税金とは別の期限です。2024年から義務になりました。

3年以内に申請しないと過料の対象

不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しない場合、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になります。

ただし「期限を過ぎたら即座に10万円」ではありません。実際は登記官が催告書を送り、それでも登記されない場合に裁判所へ通知され、そこで過料の裁判が行われる流れです。

過去の相続は2027年3月31日が期限

繰り返しになりますが、ここがいちばん見落とされます。2024年4月1日より前に発生した相続でも、義務の対象です。

その場合の期限は2027年3月31日。何十年も名義を放置してきた土地ほど、この日付が効いてきます。

間に合わないなら相続人申告登記

遺産分割がまとまらず3年に間に合わない場合の受け皿が、相続人申告登記です。相続が開始したことと自分が相続人であることを登記官に申し出れば、申し出た本人については義務を果たしたものとみなされます。単独で申し出られるのが利点になります。

ただし限界もあるわけです。これは権利関係を公示するものではないため、売却や抵当権の設定はできません。遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に改めて登記が必要になります。

登録免許税の免税は2027年3月末まで

急ぐ理由がもう1つあります。相続登記には2つの免税措置があり、どちらも令和9年3月31日で期限を迎えるからです。

免税措置内容
数次相続の免税相続で土地を取得した人が登記をしないまま亡くなった場合、その人を名義人とする登記は登録免許税がかからない
少額土地の免税不動産の価額が100万円以下の土地について、相続による所有権移転登記は登録免許税がかからない

義務の期限と免税の期限が同じ日に重なっています。放置してきた土地ほど、この2つが同時に効く可能性が高いわけです。

登記を放置していた方の理由は、たいてい「面倒だった」でした。

ただ僕が現場で見てきた限り、放置している間に事情が悪くなるほうが圧倒的に多いんです。相続人が増える。認知症で判断能力が失われる。書類が集まらなくなる。

とくに怖いのが判断能力の問題でした。グループに信託系の会社があった当時、家族信託の手続きを進めている途中で診断が確定してしまい、間に合わなかった事例を知っています。対策は診断が下りる前にしか打てません。

面倒だと感じるいまが、いちばん簡単な状態です。

不動産の相続と税金の遅延に関して、よくある質問

不動産の相続と税金の遅延に関して、よくある質問

相続税の申告期限は延長できますか?

原則としてできません。ただし遺産分割が間に合わない場合は、法定相続分で仮の申告をして、分割見込書を添えるという方法があります。

申告そのものを遅らせるのではなく、内容をあとから直すという考え方になります。

相続放棄の3か月を過ぎてしまいました。もう無理ですか?

原則として単純承認とみなされますが、借金の存在を知らなかったなど事情によっては認められる余地がありますね。

個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。時間の勝負になるので、早めに弁護士へ相談してください。

延滞税はいつまで増え続けますか?

納付する日までです。日数に応じて計算されるため、1日でも早く納めるほど負担は軽くなります。

なお猶予が認められた場合には、猶予期間中の延滞税の全部または一部が免除されます。

相続登記の「正当な理由」とは何ですか?

数次相続で相続人が極めて多数にのぼり戸籍の収集に時間がかかる場合や、遺言の有効性が争われている場合などが例として示されていますね。

「忙しかった」「知らなかった」は正当な理由になりません。間に合わないなら相続人申告登記を使ってください。

固定資産税を滞納するとどうなりますか?

市町村の税金なので相続税とは別ですが、こちらも延滞金がかかり、督促を経て財産の差押えに進みます。

なお相続登記をしていなくても、現に所有している人には固定資産税が課されますね。「名義が親のままだから払わなくていい」とはなりません。

不動産を売って納税資金を作る場合、間に合いますか?

売却には買主探しから決済まで数か月かかるのが一般的です。10か月の期限から逆算すると、動き出しは早いほどよいという結論になります。

急いで安く手放すことにならないよう、複数の窓口に同時にあたってください。負動産の手放し方はいらない負動産を絶対に放置してはいけない理由とは?プロが教える最強の手放し方6選!にまとめました。

質問を見ていて感じるのは、遅延の問題は「知らなかった」ではなく「先送りした」から起きているということです。

期限が4つもあると、どれから手をつけるか迷います。ただ順番ははっきりしていて、3か月の相続放棄がいちばん先です。ここを逃すと選択肢が消えます。

次が10か月の申告と納付。登記は3年あるので、時間としてはいちばん余裕があるわけです。にもかかわらず、放置されるのは決まって登記でした。

期限の短い順に手をつけてください。それだけで、取り返しのつかない事態はほぼ避けられますよ。

まとめ

まとめ

不動産の相続には、3か月・4か月・10か月・3年という4つの期限がありました。

要点を整理します。

  • 3か月を過ぎると相続放棄ができなくなり、借金も引き継ぐ
  • 10か月を過ぎると延滞税と加算税がかかる。令和8年の延滞税は2か月まで年2.8%、以後年9.1%
  • 払えないときは換価の猶予・納税の猶予が使える。ただし換価の猶予は納期限から6か月以内の申請が条件
  • 分割が間に合わないときは法定相続分で仮申告+分割見込書出し忘れると特例が復活しない
  • 相続登記は3年以内。過去の相続は2027年3月31日が期限で、登録免許税の免税措置も同じ日に終わる

どの期限も、遅れてから取り返すより先に動くほうが安く済みますね。まずは相続がいつ発生したのかを確認して、4つの期限を紙に書き出すところから始めましょう。

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら