田舎の土地が売れないときは、買い手から逆算する|地目で変わる5つの壁と、当てる相手の決め方

田舎の土地が売れないときは、買い手から逆算する|地目で変わる5つの壁と、当てる相手の決め方

相続で田舎の土地を持つことになった。売りに出してみたけれど、半年たっても問い合わせが1件もない。地元の不動産会社に電話したら、やんわり断られた。そうした方に向けた記事です。

2016年から6年間、僕は大手の不動産・建築会社で、地主の方を相手に土地有効活用のコンサルティング営業をしていました。田舎の土地の売却そのものを担当した実話はありませんが、値段の付きにくい土地が会社の中でどう扱われるのかは、実務をしていた当時の現場で見ています。

結論から書きますね。田舎の土地が売れないとき、先に決めるのは値段ではなく「誰に当てるか」です。買い手の顔が決まっていないまま広く売り出しても、その広告は誰にも届きません。

田舎の土地には、都市部の土地と違って「とりあえず探している人」がいないんです。買う理由を持った人が、地域の中に数えるほどしかいない。だから、その数人に届く形に売り方を組み替えるところから始めます。

この記事でははじめに、「売れない」という言葉の中身を3つに分けましょう。そのあとで地目ごとの壁、買い手の種類、持ち続ける費用、動かす手順、売る以外の出口、近づいてくる勧誘、期限のある制度の順に進めますね。

法令と制度は、e-Gov法令検索・農林水産省・法務省・国税庁・総務省・国民生活センターで確認したものだけを載せました。2026年9月時点の内容としてお読みください。田舎の空き家を建物ごと処分する順番は、田舎の空き家処分はどの順番で動くか|値段が付かない4つの理由と、7つの出口の当たり方に分けて書いています。

田舎の土地が売れないという言葉には、3つの中身がある

田舎の土地が売れないという言葉には、3つの中身がある

同じ「売れない」でも、起きていることは3つに分かれるものです。どれなのかを決めないまま値段を下げても、効かない場所を触り続けることになるんですね。

見分ける材料は3つだけです。この3か月の問い合わせ件数、現地を見に来た人の数、不動産会社が預かってくれたかどうか。この並びで、どの中身なのかはほぼ決まります。

中身1|問い合わせがそもそも来ていない

売り出してから3か月で問い合わせが0件なら、値段の話にすら入っていません。買い手の候補に情報が届いていない状態です。

田舎の土地では、これがいちばん多い形になります。ポータルサイトに載せても、その地域の土地を探している人が月に何人いるかという話だからですね。届いていないものを値下げしても、届く量は変わりません。

中身2|問い合わせは来るが、契約まで進まない

現地を見に来る人はいるのに、そのあと連絡が途絶える。この場合は、届いてはいるものの、見た人が降りる理由が現地か書類のどちらかにあります。

降りる理由は、境界が分からない、道が細い、隣家との木が越境している、といった現地の条件に集中しがちです。買い手が降りた理由を、不動産会社に毎回聞いて記録してください。3件も集まれば、直すべき場所は見えてきます。

中身3|そもそも不動産会社に預かってもらえない

「うちでは扱えません」と言われる、あるいは連絡が返ってこない。この状態では、売り方の土俵にまだ乗っていません。

仲介の報酬は成約したときの仲介手数料なので、金額の小さい土地ほど、1件あたりの手間に対して見合わなくなります。実務をしていた当時、社内で案件が回されるとき、金額の小さい土地は後回しになっていく様子を見ていました。同じ会社でも、担当者によって受け方がまるで違ったのも覚えています。

中身見分け方手を打つ場所
1 届いていない3か月で問い合わせ0件買い手の種類と当て方
2 見て降りられる現地は見られるが連絡が途絶える境界・道・越境などの現地条件
3 預かってもらえない断られる・返事が来ない依頼先と契約の形

断られたことを、土地そのものの評価だと受け取る必要はありません。断りの多くは、その会社がその仕事の型を持っていないという話です。

実務をしていた当時も、同じ物件を「建築の相談につながるなら手伝うよ」と引き受けてくれる担当者と、「請け負いません」と即答する担当者が同じ社内にいました。断られたら、次は別の型を持つ相手に当て直すところから始めてください。

田舎の土地が売れない理由は地目で変わる|5つの壁

田舎の土地が売れない理由は地目で変わる|5つの壁

田舎の土地とひとことで言っても、登記簿の地目によって、越えなければならない壁がまるで違います。まず自分の土地がどれなのかを確かめるところからです。

壁1|農地は、買える人が法律で絞られている

農地または採草放牧地について所有権を移転するときは、当事者が農業委員会の許可を受けなければならないと定められています(農地法3条1項本文)。つまり、買いたいという人が現れても、その人が許可を受けられなければ契約は完了しません。

相続で取得する場合は許可が要りませんが、売買には許可が要るという非対称がここにあります。相続したときは何の手続きもなく自分のものになったのに、手放すときになって初めて壁が現れる、という形になるわけです。

さらに、農地を農地以外のものにする転用には、都道府県知事等の許可が要ります(同法4条1項本文)。そして農用地区域内にある農地については、その転用の許可をすることができないと定められています(同条6項1号イ)。いわゆる「青地」では、宅地にして売るという出口が法律の側で閉じているということですね。

出典:e-Gov法令検索「農地法」

農林水産省も、農業振興地域制度について、市町村が農業上の利用を確保すべき土地として指定した区域では農地転用は禁止されると説明しています。相談先は都道府県・市町村の農振担当部署と農業委員会です。

出典:農林水産省「農業振興地域制度及び農地転用許可制度」

壁2|山林は、境界と面積が確かめられない

山林で止まる理由は、権利ではなく現地の側にあります。どこからどこまでが自分の土地なのかを、地図と現地で一致させられないことが多いからです。

登記簿の面積と実際の面積が大きく違う「縄伸び・縄縮み」も珍しくありません。買い手は、範囲が確かめられない土地には値段を付けられないものです。なお山林には森林法の届出という別の手続きも付いてきます。売り方そのものは山林の売却は誰に・どう売るのか|売れにくい5つの理由と5つの売り先、国庫帰属で止まる3つの壁にまとめました。

壁3|原野・雑種地は、使い道が決まっていない

原野や雑種地は、農地のような許可はかかりません。その代わり、買った人が何に使えるのかが見えにくいという別の壁があります。

資材置き場、駐車場、太陽光といった候補は挙がるものの、その地域に需要がなければ候補のままで終わりますね。使い道が決まっていない土地は、使い道を決められる人にしか売れません。税金の側の扱いは雑種地の税金は4つの場面でかかる|取得・保有・相続・売却の全体像で整理しています。

壁4|宅地は、建てられるかどうかで分かれる

宅地なのに売れない場合、原因は「その土地に家を建てられるか」に集まるものです。道路に2メートル以上接しているか、市街化調整区域に入っていないか。この2点で買い手の数が大きく変わるわけです。

市街化調整区域なら、建てられるかどうかは条例や許可の型で決まります。役所で確かめる順番は市街化調整区域の買取業者はどう選ぶか|出口で分かれる3つのタイプと、業者に当たる前に役所で確かめる3つのことに書きました。

壁5|別荘地は、管理費が付いてくる

管理組合や管理会社のある別荘地では、所有しているだけで管理費や水道の負担金が発生します。買い手から見ると、土地を手に入れると同時に毎年の支払いも引き継ぐことになるわけです。

買い手が見ているのは土地の値段ではなく、引き継いだあとに毎年出ていく額のほうになります。滞納があれば、その精算も条件に入ってきますね。

地目・区分主な壁先に確かめること
農地権利移動に農業委員会の許可。青地は転用不可農業委員会で区域と許可の見込み
山林境界と面積が確かめられない公図・林地台帳・現地の境界
原野・雑種地使い道が決まらない地域に需要のある用途
宅地建てられるかどうか接道と区域区分
別荘地管理費などの負担が続く管理規約と滞納の有無

田舎の土地を買う人は5つに分かれる|誰に当てるかを先に決める

田舎の土地を買う人は5つに分かれる|誰に当てるかを先に決める

買い手の顔を決めると、当て方も資料も変わります。田舎の土地で「広く探す」が効かないのは、そもそも広い母集団が存在しないからなんです。

買い手1|隣地の所有者

田舎の土地でいちばん確度が高い相手は、隣で土地を持っている方になります。使い道がはっきりしていて、境界の問題も自分ごととして片づけられるからですね。

実務をしていた当時、空き家の情報を集めるために隣の家を訪ねて話を聞いて回っていました。そのとき、隣の土地の困りごとを何年も抱えたままにしている方に何度も行き当たったんです。声をかけられていないだけ、という状態は実際に起こります。

買い手2|地元で土地を使う事業者

農業法人、建設会社、運送会社、資材を置く必要のある事業者。地元で土地を使う側の会社は、面積と搬入経路が合えば話が早く進みます。

探し方は単純で、その地域で土地を使っていそうな会社を地図で拾い、土地の図面を持って当たるだけです。仲介に任せきりにせず、当てたい相手の名前を自分で挙げて不動産会社に渡すほうが早い場面もありますね。

買い手3|移住や二拠点を考えている個人

自治体の空き家バンクや移住相談の窓口を通じて探す相手です。時間はかかるものの、値段よりも環境で選ぶ人が多いという特徴があります。

ただし、この層が動くのは建物が残っている場合に偏りますね。更地だけを買って家を建てるとなると、建築費という別の負担が乗るからです。

買い手4|買取業者

業者に買ってもらう道になります。仲介と違って相手が自分で買うので、話は早く決まります。その代わり、業者側の出口が見えない土地は断られますし、値段も出口から逆算されるわけです。

タイプの見分け方と、有料の引き取りサービスとの違いは売れない土地の買取業者はどう探すか|3つのタイプの見分け方と、有料引き取りを買取と間違えない3つの確認に整理しました。

買い手5|自治体と国

自治体への寄付の打診と、相続土地国庫帰属制度が候補になります。どちらも「売る」ではないため、お金は入りません。積み上がる負担を止めるための出口という位置づけですね。

寄付を受け入れるかどうかの条件は自治体ごとに違います。担当課に、受け入れの条件と過去の実績を直接聞いてください。国の制度のほうは6章で扱います。

実務をしていた当時、土地をどう使うかを考えるときは、まず借りる人や買う人がその地域にいるかを数えて、そこから回収の年数を出していました。出口が見えない土地に費用を先に投じると、負担が大きくなるだけだからです。

売却も同じ考え方で組めます。先に買い手の顔を1つ決めて、その人が見たい資料だけをそろえる。広く薄く出すより、この順番のほうが動きます。誰に当てるかの整理からご相談されたい場合は、お問い合わせからどうぞ。

売れない田舎の土地を持ち続けると積み上がる3つの費用

売れない田舎の土地を持ち続けると積み上がる3つの費用

売れない状態を続けると、判断を先送りしているあいだにも負担は積み上がります。数字にしておくと、どこまで下げるかの線も決めやすくなるものです。

費用1|固定資産税

固定資産税は土地・家屋・償却資産に課され、標準税率は1.4%です。賦課期日は当該年度の初日の属する年の1月1日と定められています。

出典:総務省「地方税制度|固定資産税の概要」

評価額の低い田舎の土地では、免税点に当たる場合もありますね。同一市町村内でその人が所有する土地の課税標準となるべき額の合計が30万円に満たない場合は課することができない、というのが条文の書き方です(地方税法351条本文)。ただし同じ条のただし書きで、財政上その他特別の必要がある場合は条例で課することができるとされています。「安い土地は非課税」と言い切れるわけではないんですね。

出典:e-Gov法令検索「地方税法」

費用2|草木と境界の管理

草刈り、樹木の剪定、不法投棄の片づけ。現地から離れて住んでいると、これらは外注することになります。

年に何回、いくらで頼むのかを1年分の金額にしてみてください。この金額が、売却で妥協できる幅を決める材料になります。5年持ち続ける前提なら、5倍した額が判断の土俵に乗るわけです。

費用3|工作物や樹木で起きた損害の責任

土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害を生じたときは、占有者が賠償の責任を負い、占有者が必要な注意をしたときは所有者が賠償すると定められています(民法717条1項)。竹木の栽植または支持に瑕疵がある場合にも準用されます(同条2項)。

建物が無い土地でも、擁壁、古い塀、大きく育った樹木があれば責任は残るということです。実務をしていた当時、越境した枝の話は隣の方からよく聞きました。枝は隣の人が勝手に切れるものではないので、言えないまま我慢されていることが多いんです。

出典:e-Gov法令検索「民法」

費用発生のしかた1年分にする方法
固定資産税1月1日時点の所有者に毎年課税明細書の税額
管理の外注草刈り・剪定・片づけごと単価×年間の回数
損害の責任擁壁・塀・樹木があると継続撤去や補修の見積額

3つを足した年額が、そのまま「持ち続ける値段」になります。この数字を持ってから売却の条件を考えると、判断がぶれにくくなりますね。金額の出し方から相談したい場合は、お問い合わせからご連絡ください。

相場を持たないまま交渉の席につくと、出された数字が妥当なのかを自分では判断できません。これは田舎の土地に限らず、不動産の取引に共通する話だと僕は考えています。

持ち続ける年額は、自分で作れる唯一の物差しです。この額を先に出しておくと、提示された金額を「高い・安い」ではなく「何年分か」で見られるようになります。

田舎の土地が売れないときに動かす5つの手順

田舎の土地が売れないときに動かす5つの手順

ここまでを踏まえて、手をつける順番を書きますね。上から順に片づけていくと、途中で戻る回数が減ります。

手順1|登記事項証明書と公図で、何を持っているか確かめる

売る前に、いま自分が何を持っているのかを書面で確かめましょう。名義、地目、面積、抵当権の有無。ここがずれていると、あとの工程が全部やり直しになるからです。

実務をしていた当時、所有者を調べるために登記事項証明書をさかのぼる作業をよくしていました。世代をまたいで名義が動いていない土地は、本人も気がついていない場合があるんですね。名義が亡くなった方のままだったときの進め方は相続登記が未了の実家は売却できるか|2027年3月の期限までに動く順番と、決めきれない人の5つの出口に書いています。

権利に関する登記は、法令に別段の定めがある場合を除いて、登記権利者と登記義務者が共同でしなければなりません(不動産登記法60条)。相手の協力が要る手続きだということです。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」

手順2|地目と区域を役所で確かめる

2章の壁のうち、自分の土地にどれが当たるのかを役所で確かめます。農地なら農業委員会、区域区分なら都市計画の担当課が窓口です。

聞くことは3つに絞れます。農用地区域に入っているか、市街化調整区域かどうか、条例で建てられる区域に指定されているか。この3点の答えで、当てられる買い手の範囲が決まります。

手順3|境界と越境を確かめる

現地で境界杭を探し、見つからなければ隣の方と話をしましょう。ここを飛ばすと、買い手が見つかってから止まることになるからです。

実務をしていた当時、境界杭が見つからずに現地を掘って探したことがあります。測量に立ち会って、隣の方と一緒に位置を確認する場面もありました。杭が出てくるだけで、話が一気に前に進むことは実際にあります。

手順4|買い手の種類を決めて、当て方を変える

3章の5つから、当てる相手を1つ選びます。隣地の方なら手紙と図面、事業者なら面積と搬入経路の分かる資料、買取業者なら権利関係の書類、というように準備するものが変わるからです。

1つ試して動かなければ、次の相手に移りましょう。同時に全部へ当てるのではなく、1つずつ順に当てて反応を記録するほうが、原因が特定できます。

手順5|媒介契約の形を、当てる相手に合わせる

仲介に依頼する場合は、契約の形と報告の頻度を先に決めます。広く出すだけの契約にしておくと、3か月後に「反響がありませんでした」という報告だけが残ることになるからです。

依頼するときは、当てたい相手の候補と、いつまでに何をするかを書面で共有してください。何件当たって、どこで断られたのかを毎回残してもらうと、次の手が決まります。

この5つを1人で全部やるのは重いと感じられるところです。ただ、手順1と手順2は費用がほとんどかからず、しかも後の全部に効きます。

まず登記事項証明書を取って、役所に電話する。ここまで済ませておくと、どの不動産会社に相談しても話が具体的になりますし、断られる回数も減っていきますね。

売ることにこだわらない4つの出口

売ることにこだわらない4つの出口

値段を付けて売ることだけが手放し方ではありません。負担を止めるという目的なら、残っている道は4つあります。

出口1|隣地の方に譲る

相場より低い金額でも、隣の方に渡せるなら負担は止まりますね。境界の問題も同時に解消しますし、地域の関係も保てるという利点があるからです。

譲る金額が低い場合でも、税の制度が使える場合があります。低未利用土地等の100万円控除は、売った金額が建物等の対価を含めて500万円以下(一定の区域では800万円以下)であることが要件の1つです。要件と期限は8章にまとめました。

出口2|買取と有料引き取りを見分ける

買取は業者がお金を払って買う取引で、有料引き取りは所有者が費用を払って引き取ってもらう形です。お金の向きが逆なので、同じ言葉で比べてはいけません。

見分ける確認は2つです。契約書に自分が受け取る金額が書かれているか、そして引き渡しのあとに登記が相手へ移るか。物権の変動は登記をしなければ第三者に対抗できないと定められているため(民法177条)、登記が移っていない状態は残したくないところですね。

出口3|自治体への寄付を打診する

自治体が土地の寄付を受け入れるかどうかは、自治体ごとに方針が違います。受け入れる場合でも、使い道が決まっている土地に限るという条件が付くことが多いです。

期待しすぎずに、確かめる価値のある1本として当ててください。聞くのは無料ですし、断られてもその理由が次の判断材料になります。

出口4|相続土地国庫帰属制度

相続または相続人に対する遺贈で土地を取得した方が、法務大臣の承認を受けて土地を国に引き渡せる制度です。令和5年4月27日に始まりました。制度開始より前に相続した土地も対象になります。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」

ただし建物がある土地は申請そのものができませんし、境界が明らかでない土地や所有権について争いがある土地も同じです。手数料は土地1筆につき14,000円かかり、取り下げたときも承認されなかったときも戻ってきません。承認されたときは負担金を納めます。負担金は、市街化区域等の宅地・農地と森林を除く土地であれば20万円が原則です(施行令5条1項4号)。

出典:e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令」

出口お金の向き先に確かめること
隣地の方へ譲る受け取る(低額でも可)境界と、隣の方の使い道
買取受け取る業者の出口と、引き算の内訳
有料引き取り支払う登記が移るか、費用の内訳
国庫帰属支払う(手数料と負担金)建物の有無と境界

4つの出口のうち、いちばん見落とされているのは隣地の方だと感じています。声をかけるだけなら費用は発生しませんし、断られても失うものがないからです。

手紙を1通、図面を添えて出す。それだけで話が動いた例は、実務をしていた当時にも見ています。順番としては、業者に当たる前にここを済ませておくほうが得ですね。

田舎の土地が売れないときに近づいてくる3つの勧誘

田舎の土地が売れないときに近づいてくる3つの勧誘

売れない期間が長くなると、向こうから声がかかることもあるんですね。国民生活センターが2018年1月25日に公表した「原野商法の二次被害」の注意喚起に、典型的な型がまとめられています。

出典:国民生活センター「より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル-原野や山林などの買い取り話には耳を貸さない!契約しない!-」

勧誘1|先に費用を求めてくる買い取り話

「土地を高値で買い取る」という電話勧誘のあと、手続き費用や税金対策の名目で金銭を請求される型です。買い取るという話なのに、こちらが先に払う構図になっています。

受け取る側であるはずの取引で、先に支払いが出てくる話は相手を替えてください。同センターは、根拠がはっきりしない請求には支払わないよう助言しています。

勧誘2|「買いたい人がいる」という調査・整地の費用

購入したい人がいると持ちかけられ、調査や整地の費用を請求される型です。買い手の存在を確かめる方法がこちらにないまま、費用だけが先に出ていきます。

契約の前に、買い手が誰なのかを書面で示してもらってください。示せないなら、その買い手は確かめられないということです。

勧誘3|管理費の請求

管理を任せるという形で契約させ、そのうえで管理費を請求されます。実態のある管理が行われているかどうかを確かめにくい、という点が共通しているわけです。

同センターは、宅地建物取引業の免許を持っていても安易に信用しないよう助言しています。免許の有無は、その取引の中身を保証するものではないということですね。

この3つに共通するのは、こちらが先にお金を払う構造です。売るための取引なのに、支払いが先に来る。その一点だけ見ていれば、たいていは判断できます。

迷ったときは、その場で決めずに一度切ってください。急がせてくる相手ほど、時間を置くと連絡が来なくなるものです。

田舎の土地が売れないうちに確かめる、期限のある3つの制度

田舎の土地が売れないうちに確かめる、期限のある3つの制度

税の制度には期限があります。売れないまま年数が過ぎると、使えたはずの制度が外れてしまうんですね。

制度1|低未利用土地等の100万円特別控除

都市計画区域内にある一定の低未利用土地等を売った場合に、譲渡所得の金額から100万円を控除できる制度です。適用期間は令和2年7月1日から令和10年12月31日までとされています。

金額の要件は、建物等の対価を含めて500万円以下(一定の区域では800万円以下)です。売った年の1月1日で所有期間が5年を超えていること、売った後に土地が利用されることなども要件に入ります。

出典:国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」

制度2|空き家の3,000万円特別控除

相続した家屋とその敷地を売ったときに、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。適用期間は平成28年4月1日から令和9年12月31日まで。相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限もあります。

建物を取り壊して敷地だけを売る場合も対象になり得るので、田舎の土地として売り出している方にも関係します。要件の中身は空き家の3,000万円控除は何が変わった?|2026年8月の要望での変更点と対象外の5つの出口を解説にまとめました。

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

制度3|相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続税を納めた方が使える制度で、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡が対象です。実質的に相続から3年10か月という線になります。

空き家の3,000万円特別控除と一緒に使うことはできない決まりになっています。どちらを使うかで手元に残る額が変わるので、要件を両方満たしそうなら早めに比べておきましょう。

出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

なお譲渡所得の計算では、測量費や、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用が譲渡費用に含まれます。取得費が分からない場合は、譲渡価額の5%を取得費にできる扱いもありますね。

出典:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」

使えたはずの制度に手が届かないまま手放してしまう方は、想像より多いのではないか、と僕は考えています。税の制度の多くは、動いたあとで知っても取り返しのきかない形になっているんですね。

相続してから何年目なのかを、カレンダーで数えてみてください。期限のある制度は向こうから教えてくれるものではありません。個別の税額計算は税理士、登記の手続きは司法書士の領域になりますので、金額の判断はそれぞれの専門家にご確認ください。

田舎の土地が売れないことに関してのよくある質問

田舎の土地が売れないことに関してのよくある質問

田舎の土地が売れないとき、値段はどこまで下げてよいですか?

下げ幅の答えは、持ち続ける年額から決まってきますね。固定資産税と管理費を足した年額に、あと何年持つ見込みかを掛けた金額が、判断の土俵になるからですね。先に下限と時期を紙に書いてから下げてください。

相続した農地は、そのままでは売れないのでしょうか?

売れないわけではなく、買う人が農業委員会の許可を受けられる相手に限られるという意味になります。宅地などへ転用して売る道もありますが、農用地区域内の農地は転用の許可ができないと定められています。まず農業委員会で、自分の農地がどの区域なのかを確かめましょう。

買い手がまったく見つからない土地は、国に引き取ってもらえますか?

相続土地国庫帰属制度という道はありますが、誰でも使えるわけではありません。建物がある土地は申請できませんし、境界が明らかでない土地も対象外です。審査手数料は返還されないので、申請の前に法務局へ相談してください。

まとめ

まとめ

田舎の土地が売れないとき、最初に決めるのは値段ではなく、誰に当てるかです。買い手の顔が決まっていない広告は、下げても届く量が変わらないからですね。

順番も決まっています。登記事項証明書と公図で持ち物を確かめ、役所で地目と区域を確かめ、境界を確かめる。そのうえで買い手を1つ選び、その人に合わせて資料と契約の形を組み直します。

自分の土地の壁が農地の許可なのか、山林の境界なのか、宅地の接道なのかで、当たるべき相手は変わるものです。そして持ち続ける年額を出しておくと、提示された金額を何年分かで見られるようになります。

売ることにこだわらなければ、隣地の方へ譲る、買取に当てる、自治体へ寄付を打診する、国庫帰属を確かめる、という4つの出口が残ります。期限のある税の制度も、相続からの年数で外れるものがあるので早めに確かめておきたいところです。

どこから手をつけるか迷われたら、お問い合わせからご相談ください。土地の状況をうかがったうえで、当てる相手を決めるところからお手伝いします。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがありますので、その場合は弁護士におつなぎしますね。

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら