相続した実家や空き家に、家具や家電、生活用品が残ったままになっている方に向けた記事です。残置物撤去の費用が何で決まり、誰が払い、どう頼めばよいのかを順に整理します。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用の営業をしていました。この記事には、当時の実務の知識をもとに、撤去を頼む前に書き残しておきたいことも入れています。
先に結論を書いておきますね。残置物撤去の総額を決めた公的な基準はなく、物の量と種類、運び出しの条件、頼む作業の範囲で決まるので、見積もりで確かめるのが基本です。払う人は、相続した家なら相続人の間で決め、売るなら売買の条件で決まります。相続放棄を考えているなら、撤去を頼む前に弁護士に確かめてください。頼むときは、残す物と見つかった物の扱いを、打ち合わせの記録と契約に残しておきましょう。
なお、条文(民法・廃棄物処理法)はe-Gov法令検索で、相続放棄と遺言書の手続きは裁判所の案内で確かめました。ごみの扱いは環境省、費用の例は国土交通省の国土交通政策研究所、業者選びの注意は国民生活センター、家電の料金は家電リサイクル券センター、税は国税庁の案内です。2026年11月時点の内容としてお読みください。
残置物撤去の費用は、量と種類と運び出しの条件で決まる

残置物とは、建物の中や敷地に残された家具・家電・生活用品などのことです。撤去の総額を決めた公的な基準は無いので、何で金額が動くのかを知ってから見積もりを取りましょう。
ただし、運ぶ・処分する部分の料金には上限があります。市区町村の許可を受けた一般廃棄物の業者は、その市区町村が条例で定める手数料の額を超える料金を受け取ってはならない決まりです(廃棄物処理法7条12項)。国土交通省の国土交通政策研究所の報告書は、総務省行政評価局が2020年3月に公表した調査として、遺品整理のサービスを法令上定義したものはなく、業法のようなものもないと紹介しています。金額を1つに決められないのは、仕分けや運び出しの手間が、家ごとに違うからです。
費用を動かすのは、量・種類・状態・運び出し・作業の範囲
撤去の費用は、次の要素で動きます。
| 金額が動く要素 | 中身 |
|---|---|
| 物の量 | 部屋の数、物置や車庫、庭の物まで含むか |
| 物の種類 | 家電4品目、処分に手間のかかる物があるか |
| 物の状態 | 分けてあるか、散らかっているか |
| 運び出しの条件 | 階段の上り下り、前の道の幅、車を止められる場所 |
| 作業の範囲 | 仕分け、運び出し、処分、掃除まで頼むか |
同じ家でも、どこまで頼むかで金額は変わります。見積もりは、家の中を見てもらってから出してもらうほうが、あとで金額が増えにくいはずです。
公的な資料にある額の例が、国土交通省の国土交通政策研究所の報告書(2021年6月)です。単身の賃借人が亡くなった後の残置物の処理について、研究所が入手できた5つの見積もりの例では、1件あたり平均で約40万円でした。内訳は人件費・運搬費・梱包費・処分費・特殊作業費・鍵費などで、人件費と処分費がそれぞれ全体の3〜4割を占めています。処分費は1㎥あたりの単価で決まり、物の量が増えるほど大きくなる見積もりでした。賃貸の部屋の5つの例の平均なので、相続した一軒家の額の目安としては、そのまま使えません。一軒家の額を知りたいときは、撤去する範囲をそろえたうえで、複数の業者に家の中を見てもらって見積もりを取り、並べて比べましょう。物の量(㎥)と単価、作業の範囲を見積書に書いてもらうと、同じ条件で比べやすくなります。
家電4品目は、リサイクル料金と運ぶ料金が別にかかる
エアコン、テレビ(ブラウン管式と液晶・有機EL・プラズマ式)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は、家電リサイクル法の対象です。引き渡すときに、リサイクル料金と収集運搬料金がかかります。
リサイクル料金は、品目とメーカーで違います。家電リサイクル券センターの料金一覧なら、メーカー名から調べられるので見てみてください。業者に撤去を頼むなら、この4品目の料金が見積もりに入っているかを確かめましょう。
自分で出せる物は、市区町村のルールで先に出す
家庭から出る物は、その家がある市区町村が案内するルールで出すのが基本です。粗大ごみの出し方や料金も、市区町村ごとに違います。自分で出せる物を先に出しておけば、業者に頼む量を減らせるはずです。
まだ使える家具や家電は、古物商の許可を持つリユースの店に買い取りを頼む方法もあります。遠くに住んでいて通えないなら、全部を自分で出そうとせず、運び出しは業者に任せる分け方でもかまいません。
残置物撤去の費用を誰が払うかは、相続と売り方で決まる

相続した家の中の物は、家と同じく相続人が受け継ぐ財産です。誰が払うかは、相続人の間の取り決めと、家をどう売るかで決まります。
相続した家の物は、相続人の間で撤去と負担を決める
民法898条1項は、相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属すると定めています。遺産を分ける前の家の中の物は、相続人のひとりの判断だけで処分せず、相続人の間で扱いを決めておきましょう。
撤去を頼む前に、相続人の間で、何を撤去するのかと、費用を誰が立て替えるのかを決めておきましょう。家を売るなら、売った代金から精算するのかも一緒に決めておくと、あとの行き違いを防げます。費用の出どころの分け方は、空き家の片付け費用は誰が払う?4つの財布と減らす順番で説明しています。
相続人の間で考えが分かれたまま話し合いが進まない場合、個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。その場合は、弁護士へ相談してください。
相続放棄を考えているなら、撤去を頼む前に専門家に確かめる
相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。単純承認とは、亡くなった方の財産も借金もすべて受け継ぐことです。ただし、財産の価値を保つための保存行為は除かれています。
家財の撤去が「処分」に当たるかは事情で変わります。相続放棄を考えているなら、撤去を頼む前に弁護士に確かめましょう。相続放棄の申述の書類については、弁護士か司法書士に相談できます。相続放棄の申述は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所にする決まりです(裁判所)。
なお、相続放棄をした人も、放棄の時に相続財産を現に占有しているなら、ほかの相続人などに引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存する義務があります(民法940条1項)。相続放棄をすれば家の中の物と無関係になる、とは言い切れない点に注意してください。片付けと相続放棄の関係は、空き家の片付けは出口を決めてから始めるでも詳しく書きました。
売るなら、引き渡すときの状態を売買の条件で決める
家を売る場合は、引き渡すときに家の中を空にするのか、物を残したままでよいのかを、売買の条件として決めます。物を残したまま引き受ける買取なら、撤去の費用は買い取る値段の中で見込まれる形になります。
払わなくてよくなるのではなく、先に現金で払うか、値段から引かれるかの違いです。引かれる額は、撤去の見積もりと同じとは限りません。どちらが手元に残るかは、撤去の見積もりと、物を残したまま売る場合の値段を並べて比べましょう。売り先ごとの条件は、家の売却で荷物はそのままでいい?売り先ごとの条件と先に確かめる物にまとめています。
残置物撤去を頼む前に、残す物と見つかった物の扱いを書き残す

撤去の費用と払う人が決まったら、次は頼み方を決めましょう。撤去は、一度運び出された物を取り戻しにくい作業です。だから、頼む前に何を書き残しておくかが大切になります。
当時の実務の知識から、残したい物の扱いは記録と契約に入れるのがよいと考える
土地活用の営業をしていた当時の実務の知識から言うと、家の中の物をそのままの状態で引き受ける不動産会社や片付けの業者はある、と考えています。全部いらないのであれば、丸ごと任せてもよいでしょう。任せた手間の分はお金で払うことになりますが、自分の時間と手間はその分省ける、というのが僕の見方です。
ただ、残したい物があるなら、口で伝えるだけで終わらせないでください。何を残すか、見つかった物をどうするかは、打ち合わせの記録を取り、契約の中身に入れておくのがよい、というのが僕の考えです。
撤去を頼む前に書き残しておく項目を、国民生活センターの呼びかけも合わせて、表に整理しました。
| 書き残すこと | 中身の例 |
|---|---|
| 残す物 | 仏壇、写真、書類など。品目と置き場所で書く |
| 撤去する範囲 | 家の中だけか。物置、車庫、庭の物も含むか |
| 見つかった物の知らせ方 | 現金や書類が出てきたら、作業を止めて誰に連絡するか |
| 作業の前後の確かめ方 | 作業の前後に写真を撮るか。立ち会えるか |
| 追加の費用 | 増えるときは、作業の前に知らせてもらうか |
国民生活センターは、大切な書類等を残す約束だったのに、アルバムなどまで処分された相談の例を紹介しています。同じ案内の呼びかけは、残す物と処分する物を明確に分け、作業時はできるだけ立ち会うことです。契約に入れる項目のくわしい書き方は、残置物撤去業者は4つの業種に分かれていると親の死後の家の処分費用はいくら?で書きました。
撤去の前に、遺言書・通帳・権利証を探しておく
撤去を頼む前に、家の中から先に探しておきたい物があります。遺言書、通帳、不動産の権利証や登記の書類、印鑑などです。撤去が始まってからでは、運び出された物の中までは探せません。
家の中で遺言書を見つけたら、公正証書による遺言などでなければ、家庭裁判所で検認を受けます(民法1004条1項・2項、裁判所)。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いのうえで開ける決まりなので、その場で開けないでください(民法1004条3項)。先に探す物の詳しい説明は、空き家の片付けは出口を決めてから始めるにあります。
片付けと買取をまとめて頼むなら、見つかった物の扱いまで決める
片付けと、使える物の買取をまとめて引き受ける業者もいるでしょう。ここからは、実例があるわけでも、そういう話を聞いたわけでもなく、僕が考えていることです。まとめて引き受けてもらうと手間は減りますが、その分の費用は上乗せされうると考えています。長く空き家だった家だと、持ち主自身も、中に何があるかを知らないこともあるでしょう。価値のある物が出てきても、持ち主が知らないまま扱われるおそれもあるのではないか、というのが僕の見方です。
ここからは、その見方をふまえた進め方の整理になります。まとめて頼むなら、撤去の費用と買い取る物の値段を分けて書いた見積もりをもらい、どの物を買い取り、どの物を処分するのかを契約で分けておきましょう。撤去だけの見積もりを別の業者からも取って比べれば、上乗せがあるかも分かりやすくなります。買い取る物の一覧を受け取っておけば、何が買い取られたのかも後から確かめられるはずです。物を買い取る業者には古物商の許可が要るので、許可証も確かめてください(国民生活センター)。
残置物撤去の頼み先は、許可と見積もりで選ぶ

頼み先を選ぶときは、ごみを運ぶ許可があるかと、見積もりの中身の2つを見ましょう。業者が家庭の廃棄物を回収するには、市区町村の許可か委託が要ります。
家庭の廃棄物を回収できるのは、一般廃棄物の許可か委託のある業者
家庭から出る廃棄物を回収するには、市区町村の一般廃棄物処理業の許可か、市区町村からの委託が要ります(環境省)。産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可だけでは、家庭の廃棄物は回収できません。
許可があるかは、その家がある市区町村の窓口に問い合わせて確かめられます。照らし合わせ方と、許可の無い業者の見分け方は、残置物撤去業者は4つの業種に分かれているにまとめました。
見積もりは複数から取り、作業の中身と追加の料金を確かめる
国民生活センターは、電話で頼んだら作業の後に当初より高い料金を言われ、見積書ももらっていなかった相談の例を紹介しています。同じページの呼びかけは、複数の業者から見積もりを取り、作業日、作業の中身、料金、支払い方法、解約料を確かめてから契約することです。
見積書は、作業の中身ごとの金額が分かる形でもらいましょう。追加の料金が出る条件も、契約の前に聞いておくと安心です。
解体と一緒に頼むなら、家財の処分は持ち主の責任と知っておく
家を壊す予定なら、解体の業者に家の中の物もまとめて頼めると考える方もいるでしょう。環境省の通知では、解体の前に建物の持ち主が残した物の処理の責任は、その持ち主にあるとされています。
解体で出る木くずやがれきは産業廃棄物であることが多い一方、家庭が残した物は一般廃棄物になると、同じ通知は書いています。解体の前に、持ち主が残置物を適正に処理する必要があるということです。解体の業者に頼むときも、家の中の物を誰がどう処分するのかを、見積もりの段階で確かめてください。解体を頼む前の段取りは、実家の解体を頼む前に|境界・近所への挨拶・壊す時期に書きました。
まとめ

残置物撤去の費用と頼み方をまとめます。
- 撤去の総額を決めた公的な基準は無い。量・種類・状態・運び出し・作業の範囲で決まるので、見積もりで確かめる。公的な資料の例(賃貸の部屋・5つの例)は平均約40万円
- 家電4品目は、リサイクル料金と収集運搬料金が別にかかる
- 相続した家の物は、相続人の間で撤去と費用の負担を決める
- 相続放棄を考えているなら、撤去を頼む前に弁護士に確かめる
- 売るなら、引き渡すときの状態を売買の条件で決める
- 残す物と見つかった物の扱いは、打ち合わせの記録と契約に残す
- 頼み先は、一般廃棄物処理業の許可か市区町村の委託を確かめ、見積もりは複数から取る
今日できるのは、家の中の写真を撮り、残したい物を書き出すことです。相続人が何人かいるなら、その一覧を家族で見ながら、撤去する範囲を決めるところから始めてください。
よくある質問

質問1|残置物を撤去しないで、家を売ることはできますか?
物を残したまま引き受ける買取の会社なら、撤去しないで売れる場合があります。その場合、撤去の費用は買い取る値段の中で見込まれる形です。仲介で個人に売るなら、引き渡しまでに家の中を空けるかどうかを、売買の条件で決めることになります。売り先ごとの条件は、家の売却で荷物はそのままでいい?を見てください。
質問2|残置物撤去の費用は、家を売ったときの税金の計算で引けますか?
国税庁が譲渡費用の例として挙げているのは、仲介手数料、印紙税で売主が負担したもの、土地を売るために建物を取り壊したときの取壊し費用など、売るために直接かかった費用です。家財の撤去の費用は、この例には並んでいません。引けるかどうかは事情で変わるので、申告の前に税務署か税理士に確かめてください。
質問3|遠くに住んでいて、撤去に立ち会えないときはどうすればよいですか?
国民生活センターは、作業時はできるだけ立ち会うよう呼びかけています。立ち会えないなら、残す物を品目と置き場所で書き出し、作業の前後に写真を送ってもらう約束を契約に入れておきましょう。立ち会えない前提での業者の選び方は、空き家の片付け業者は立ち会えない前提で選ぶにまとめています。
出典
出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
出典:環境省「廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!」
出典:環境省「建築物の解体時等における残置物の取扱いについて(通知)」
出典:国民生活センター「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」








撤去を頼む前に、残す物と見つかった物の扱いを、打ち合わせの記録と契約に残しておいてくださいね。