私道の掘削承諾書は要る?もらう相手と書く中身、建て替え前の確認

私道の掘削承諾書は要る?もらう相手と書く中身、建て替え前の確認

私道に面した土地や家を持っていて、建て替えや売却の前に、私道の掘削承諾書が要るのかを知りたい方に向けた記事です。誰からもらうか、何を書いてもらうか、建て替えのときに一緒に確かめることを順に整理します。

僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用の営業をしていました。この記事には、当時、私道に面した土地の建て替えの計画に関わった経験も入れています。

先に結論を書いておきますね。私道の掘削承諾書は、民法が変わった今も、水道やガスの工事、住宅ローン、売買の場面で求められることがあります。私道の持分があっても要らないとは限らないので、掘る場所と通る道の持ち主を登記で確かめ、工事の範囲と承継まで書いてもらいましょう。もらえないときは、売るなら契約の特約、工事なら民法の通知で進められるかを、工事の会社や弁護士と確かめることになります。建て替えるなら、前の道がセットバックの要る道かどうかも、承諾書の相談と同じ時期に確かめておくと、計画を組み直す範囲が早く見えてきます。

なお、条文(民法・建築基準法・建築基準法施行令・不動産登記法)はe-Gov法令検索で、相続登記の期限は法務省の案内で確かめました。2026年11月時点の内容としてお読みください。

私道の掘削承諾書とは?民法が変わった後も求められる理由

私道の掘削承諾書とは?民法が変わった後も求められる理由

前の道が私道なら、水道やガスの管を引き込む・取り替えるときに、その道を掘ることになります。掘削承諾書は、その工事を私道の持ち主が認めたことを、書面で残しておくものです。

掘削承諾書は、私道を掘って管を通すことを持ち主が認める書面

私道の掘削承諾書は、私道の持ち主が、上下水道やガスの管を埋める・引き込む・取り替えるために道を掘ることを認める書面です。人や車が通ることの承諾とあわせて、「通行・掘削承諾書」として1枚にまとめることもあります。

法律で決まった書式はありません。出してほしいと言われる相手は、場面によって次のように変わります。

  • 水道やガスの工事を受け付ける事業者
  • 家を建てる・買うためのお金を貸す金融機関(自分や買う人が借りる場合)
  • 土地や家を買う人と、間に入る不動産会社

要るかどうかは、相手と工事の中身で変わります。建てる会社や不動産会社に、計画の早い段階で聞いておきましょう。

民法では、承諾が無くても管を通せる場合がある

2023年4月1日に施行された民法の改正で加わった決まり(213条の2)により、今の民法では、承諾をもらえなくても管を通せる場合があるのです。同条1項によると、他人の土地に設備を置かないと電気・ガス・水道水などの供給を受けられない土地の持ち主は、その供給に必要な範囲で、他人の土地に設備を置けるという決まりです。置く場所と方法は、他の土地の損害がいちばん少ないものを選び(同条2項)、前もって目的・場所・方法を、その土地の持ち主と今使っている人に通知しなければなりません(同条3項)。設備を置いた人は、その土地の損害に対して償金を払います(同条5項)。

この決まりがあっても、事業者や金融機関、買う人から承諾書を求められる場面は残ります。理由は次の3つです。

  • この決まりが認めているのは、設備を置く・使うことと、そのための工事で土地を使うことまでです(同条1項・4項)。人や車がふだん私道を通ることは、この決まりの対象ではありません
  • 通知をしても、持ち主が工事に反対していれば、話がこじれることがあります。無理に進めれば争いになりかねず、話し合いがつかなければ、裁判の手続きで決めることになって時間がかかることもあります
  • 事業者や金融機関、買う人にとっては、通る・掘ることに持ち主が同意している書面があるほうが、あとで争いになる心配が少なくなります

持ち主から承諾書をもらえるなら、もらっておくほうが、工事も売却も進めやすいでしょう。持分ごとに誰の同意が要るかは私道の共有持分は、売る前に承諾の範囲を確かめるの1章で、この決まりと前もっての通知は同じ記事の3章で詳しく書いています。

民法の改正より前の当時の1件は、持分があり承諾ももらいに回った

土地活用の営業をしていた当時、建築・土地活用の提案の中で、私道に面した土地に担当として関わりました。件数は2〜3件です。そのうちの1件は、敷地の持ち主に私道の持分があり、通行や掘削の承諾ももらいに回った件でした。この1件の計画の中身は、3章で書きます。

この件は、上の213条の2や共有の決まりの見直しが2023年4月1日に施行されるより前の話です。今の決まりのもとでも同じになるとは限らないので、ここからは今の民法に沿って整理します。今の民法でも、持分があればどの工事も1人で決められるわけではありません。1つの地番を何人かで持つ私道なら、民法249条1項により、各共有者は持分に応じた使用ができます。ただ、形や働きを大きく変える工事には、ほかの共有者の同意が要り(民法251条1項)、管理にあたる事項は持分の価格の過半数で決めます(民法252条1項)。反対に、1人でできるとされる工事もあり、その目安は、私道の共有持分は、売る前に承諾の範囲を確かめるの1章で、法務省のガイドラインの概要をもとに整理しています。私道が地番ごとに別の人の持ち物になっている形では、自分の地番の外を掘るなら、その地番の持ち主との話になります。

持分があるから承諾書は要らない、と先に決めずに、建てる会社と工事を受け付ける事業者に、承諾書が要るかを確かめましょう。自分の工事にどこまで同意が要るかは、工事の中身しだいなので、迷ったら弁護士に確かめてください。

私道の掘削承諾書は、誰から、何を書いてもらうか

私道の掘削承諾書は、誰から、何を書いてもらうか

承諾書が要ると分かったら、もらう相手と、書いてもらう中身を決めます。相手が一人でも欠けたり、書く範囲が足りなかったりすると、次の工事や売却のときに頼み直すことになりかねません。

もらう相手は、掘る場所と通る道の持ち主

法務局で公図を取り、前の道に地番があるかを見ます。地番があれば、その登記事項証明書で持ち主と持分を確かめましょう。掘る場所に加えて、工事の車が公道から入ってくるまでの道に、何人の持ち主がいるかを並べておきます。

持ち主が亡くなっていて名義がそのままなら、話す相手はその相続人です。相続人が2人以上いれば、遺産を分ける前の私道は、その相続人たちの共有になっています(民法898条1項)。前の道の地番が公図で分かりにくいときの探し方は、私道の共有持分は、売る前に承諾の範囲を確かめるの2章にまとめています。

書いてもらう中身は、工事の範囲と承継まで

承諾書には、少なくとも次の6つがそろっているかを見ましょう。

  • 対象の土地:私道の所在・地番と、承諾を受ける自分の土地の所在・地番
  • 通行:歩いて通るだけか、車や工事の車も通れるか
  • 掘削:上下水道・ガスの管を新しく置く・引き込むことに加え、取り替えや修繕も含むか。掘った後に道を元に戻すのは誰か
  • 承諾料:無償か、払うならいくらか
  • 承継:自分の土地を相続した人や買った人にも、私道を相続した人にも効くか
  • 日付と、持ち主の署名・押印(出す先から持ち主全員の分を求められることもあるので、全員分をそろえられるかを先に確かめる。印鑑の種類や、本人を確かめる書類の添付も、出す先に確かめる)

この中で、承継と、取り替え・修繕が抜けていると、次の建て替えや売却のときに、もう一度頼むことになりかねません。

ただし、承諾書は当事者どうしの約束なので、私道を買った人に、書いたとおり効くとは限りません。長く確かにしておきたいなら、通行や管のために他人の土地を使う権利(地役権。民法280条)を決めて、登記する方法もあります(不動産登記法3条4号)。どちらにするかは、司法書士か弁護士に相談しましょう。

承諾料に決まった額は無い。償金とは別のもの

承諾料(「ハンコ代」と呼ばれることもあります)には、法律で決まった額がありません。民法には承諾料についての決まりが無く、213条の2で払うことになっているのは、設備を置いたことでその土地に生じた損害に対する償金です。償金は、承諾をもらうお礼とは別のものです。

承諾料を求められたら、その場で決めずに、何に対しての額かと、承諾書に書く範囲を並べて考えましょう。額で折り合わず承諾をもらえないときの進め方は、4章の2番目の節で書きます。

私道の側で建て替えるなら、掘削承諾書と一緒にセットバックを確かめる

私道の側で建て替えるなら、掘削承諾書と一緒にセットバックを確かめる

前の道が私道でも、幅が4mに足りない道なら、建て替えのときに敷地を下げる(セットバックする)必要があることがあります。承諾書の相談と同じ時期に、道の幅と道路の種類も確かめておきましょう。

当時、私道の側でセットバックも要った1件

1章で書いた当時の1件は、自宅の敷地を、自宅とアパートに建て替える計画で、自宅の側は通常の道路に面し、アパートの側は私道で、セットバックも要りました。セットバックが要ると分かった場面を挙げると、現地で道の幅を見たとき、役所の窓口で確かめたとき、設計や測量の段階の3つです。

手間がかかった、または話が止まりかけたのは、建てられる広さと、塀や門の扱いでした。広さの問題には、自宅とアパートの配置を変えることと、アパートの部屋数や間取りを変えることで対応しました。下げた部分の土地は名義を持ち主のままにして道として使い、そこにあった塀や門は位置を下げて作り直して、その費用は建築の工事費に含めた形です。

セットバックと私道の件で、計画の日程は延びませんでした。建物は、僕が把握している範囲で、計画に近い形で建ちました。どの件でも同じ形になるとは限らないので、ここからは、この1件をふまえた進め方の整理として読んでください。

道の幅と下げる線を、配置と間取りの案に入れて確かめる

建築基準法43条1項では、建物の敷地は、原則として道路に2m以上接していなければならないとされています。この道路は原則として幅4m以上のもので、私道でも、位置の指定を受けた道(位置指定道路)などは道路にあたります(42条1項)。ただし、建築基準法上の道路にあたるかは建物を建てられるかの決まりで、私道を掘ることを持ち主が認めたことにはなりません。幅4mに足りない道でも、特定行政庁が指定したもの(2項道路)は道路とみなされ、原則として道の中心線から2mの線が、道路との境界線とみなされます(42条2項。6mの区域として指定された区域内では原則3m)。その線より道の側は道路として扱われるので、下げた分だけ、建物を置ける場所は狭くなります。この部分は敷地面積にも入らないので(建築基準法施行令2条1項1号)、建ぺい率や容積率で建てられる広さを計算するもとの面積も減るわけです。

掘削承諾書の相談と同じ時期に、現地で道の幅を測り、役所の窓口で前の道が2項道路にあたるかと、下げる線の位置を聞いておきましょう。下げる線が分かったら、建てる会社に、その線を入れた配置と間取りの案を出してもらうと、計画をどこまで組み直すかが見えてきます。

当時の1件では、建てられる広さの問題に、配置と部屋数・間取りを変えることで対応しています。前の道が建築基準法上の道路にあたるかの調べ方は、再建築不可物件の売却は売り先で決まるで道路の種類ごとに説明しました。測量で隣の土地との境界を確かめる場面の進め方は、土地の境界立会いでトラブルになったらにまとめています。

下げた部分の土地を持ち主の名義のままにするか、自治体に寄付できるか、その手続きはどうなるかは、建てる前に自治体の窓口で確かめてください。

下げる部分の塀と門は、作り直しを工事の見積もりに入れる

建築基準法では、建物に附属する門や塀も建築物にあたり(2条1号)、道路の中に作ることはできません(44条1項)。建て替えで下げる線を引いたら、その線より道の側にある塀や門をどうするかを、建てる会社と決めておきましょう。

塀や門の作り直しが、建てる会社の見積もりと工程に入っているかを、契約の前に確かめてください。当時の1件では建築の工事費に含めましたが、これはその件の扱いなので、自分の見積もりでどう扱われているかを見ておくと安心です。ここからは一般の整理ですが、塀や門を作り直す工事の車が、前の私道を通ることもあります。その場合は、工事の車が通ることまで承諾の範囲に入っているかを、承諾書の中身とあわせて見ておきましょう。

高槻 翔太

当時の1件では、建てられる広さと塀や門の扱いが課題になりました。私道の側で建て替えるなら、掘削承諾書をもらう相談と一緒に、下げる線と塀や門の扱いまで確かめておいてくださいね。

私道の掘削承諾書がもらえないとき・売るときの進め方

私道の掘削承諾書がもらえないとき・売るときの進め方

持ち主に断られたり、連絡がつかなかったりすることもあるでしょう。売るのか建てるのかで、先に打てる手が変わります。

売るなら、承諾書を取れなかったときの扱いを契約で決める

承諾書が無いと、買う人がローンを組みにくくなったり、買い手が限られて値段に響いたりすることがあります。売る前に承諾書をそろえられれば、買う人も判断しやすいでしょう。間に合わないときは、引渡しまでに承諾書を取ることと、期日までに取れなかったら契約を解除できることを、売買契約に書いておく方法があります。どう書くかは、契約の前に不動産会社と決めておきましょう。承諾をもらう話を、仲介を頼む不動産会社に手伝ってもらえるかも、あわせて聞いておくとよいでしょう。

通る道が私道だけで公道に出られない土地なら、売り先の考え方は、袋地の売却は「通る権利」の中身で決まるにまとめています。

断られたら、通知で進められるかを工事の会社と弁護士に確かめる

承諾をもらえないときも、民法213条の2の要件に当たれば、前もって通知をしたうえで設備を置ける、というのが民法の決まりです。ただ、要件に当たるか、相手が工事に反対しているときにどう進めるかは、個別の判断になります。また、この決まりは設備のためのもので、人や車がふだん通ることまでは扱っていません。通ることについては、持ち主との取り決めや別の権利があるかを確かめる必要があります。通知の前に、工事を頼む会社と一緒に、どの場所をどう掘るかを図にしておきましょう。持ち主と話ができるなら、私道の持分の一部を譲ってもらえないか相談する方法もあります。持分を持っても、工事にどこまで同意が要るかは、1章のとおり工事の中身しだいです。

持ち主の所在が分からず、213条の2の前もっての通知を届けられないときは、相手に届けたことにする手続きとして、裁判所の掲示と官報への掲載などで行う公示による意思表示(民法98条)を使うことが考えられます。これは通知を届けるための手続きで、承諾の代わりになるものではありません。自分も私道の共有者で、ほかの共有者の一部の所在が分からないときは、裁判所の裁判を受けて、変更は残りの共有者全員の同意で加えられ(民法251条2項)、管理は残りの共有者の持分の価格の過半数で決められる手続きもあります(民法252条2項1号)。どちらを使うかは、弁護士に相談してください。

私道の持ち主との間で考えが分かれたまま話し合いが進まない場合、個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。その場合は、弁護士へ相談してください。

まとめ

まとめ

私道の掘削承諾書の確かめ方のまとめです。

  • 掘削承諾書は、私道を掘って管を通すことを持ち主が認める書面。民法が変わった今も、事業者・金融機関・買う人から求められることがある
  • 私道の持分があっても、承諾書が要らないとは限らない
  • もらう相手は、掘る場所と通る道の持ち主全員。登記で確かめ、亡くなっていれば相続人と話す
  • 書いてもらう中身は、対象の土地・通行・掘削(取り替えや修繕まで)・承諾料・承継・日付と署名押印の6つ
  • 私道の側で建て替えるなら、承諾書と同じ時期に、下げる線と、塀や門の作り直しまで確かめる
  • もらえないときは、売るなら契約の特約、建てるなら通知で進められるかを、工事の会社と弁護士に確かめる

まずは今日、前の道の公図を取ってみてください。地番と持ち主が分かれば、誰に何を頼むかが決まります。

よくある質問

よくある質問

質問1|私道の掘削承諾書の雛形は、どこで手に入りますか?

法律で決まった書式は無いので、工事を頼む会社や不動産会社に、事業者や金融機関が求める書き方があるかを先に聞きましょう。そのうえで、2章で挙げた6つがそろっているかを見ます。雛形をそのまま使うときも、対象の土地の地番と、掘削の範囲が自分の計画に合っているかを書き換えて確かめてください。

質問2|昔もらった承諾書は、建て替えのときにも使えますか?

使えるかどうかは書いてある中身しだいです。宛名が今の自分の土地の持ち主に当てはまるか、建て替えや管の取り替えまで書いてあるか、承継の文があるかを読みましょう。私道の持ち主が替わっているなら、今の持ち主に改めて頼むことも考えておいてください。

質問3|私道に面した実家を相続したばかりで、承諾書があるかも分かりません。

まず親の書類の中から、家を買ったときの売買契約書や重要事項説明書、承諾書の写しが無いかを探しましょう。見つからなければ、前の道の地番と持ち主を公図と登記事項証明書で確かめます。実家の名義が親のままなら、相続登記も進めておきましょう。相続登記は、相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり(不動産登記法76条の2)、2024年4月1日より前に相続で取得したことを知っていた不動産なら、2027年3月31日が期限です。相続登記を済ませる前に売る話が出たときの順番は、相続登記が未了の実家は売却できるかにまとめました。

出典

出典:e-Gov法令検索「民法」

出典:e-Gov法令検索「建築基準法」

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」

出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」

出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら