空き家の片付けは出口を決めてから始める|先に拾う4つのものと、売る・壊す・貸すで変わる範囲

空き家の片付けは出口を決めてから始める|先に拾う4つのものと、売る・壊す・貸すで変わる範囲

相続で実家が空き家になった。中には両親が使っていた家具も服も書類も、そのまま残っている。休みのたびに通って少しずつ運び出しているけれど、いつ終わるのか見当がつかない。そうした方に向けた記事です。

2016年から6年間、僕は大手の不動産・建築会社で、地主の方を相手に土地有効活用のコンサルティング営業をしていました。片付けの作業そのものを請け負ったことはありません。ただ、家の中の物を残したまま引き取れる相手がいること、そのときの契約をどう作るかは、実務をしていた当時の現場で扱っていました。

結論から書きますね。空き家の片付けは、出口を決めてから始めるものです。売るのか、壊すのか、貸すのか、当面は持ち続けるのか。これが決まっていないと、どこまで片付ければ終わりなのかも決まりません。

先に全部を空っぽにしてしまう方が、いちばん損をしやすいんです。買取で売るなら家財を残したまま引き渡せる場合がありますし、解体するなら建物と一緒に処理できる部分もあります。全部出したあとで「出さなくてよかった」と分かるのは、かなりつらい。

この記事でははじめに進める順番を3つに分けます。そのあとで先に拾い出すもの、相続放棄との関係、出口ごとの範囲、自分でやるかプロに任せるかの分かれ目、業者の見分け方、捨て方が決まっている物、費用の読み方、片付けのあとに来る期限の順に進めますね。

法令と制度は、e-Gov法令検索・国民生活センター・環境省・裁判所・国税庁で確認したものだけを載せました。2026年9月時点の内容としてお読みください。

空き家の片付けは、3つの順番で進める

空き家の片付けは、3つの順番で進める

片付けを「ひたすら物を減らす作業」だと思って始めると、終わりが見えなくなります。実際にやることは3つで、そのうち手を動かすのは最後の1つだけなんですね。

順番を先に置いておきます。拾い出す、出口を決める、範囲と頼み先を決める。この並びを崩すと、あとから取り返しがつかない場面が出てきます。

順番やることかかる時間の目安
1 拾い出す権利と手続きに要る物だけを抜き出す半日〜1日
2 出口を決める売る・壊す・貸す・持つのどれかを選ぶ数日〜数週間
3 範囲と頼み先を決めるどこまで片付けるかと、誰に頼むかを決める見積もりを取る期間

順番1|先に拾い出す

家の中には、捨ててしまうと再発行に時間と費用がかかる物が混ざっているものです。先にこの4つだけを抜き出してから、他の物に手を付けてください。中身は次の章で挙げますね。

この作業は業者に任せられません。何が大事な物なのかを判断できるのは、家族の側だからです。

順番2|出口を決める

売るのか壊すのかで、片付ける範囲は変わります。同じ家でも、出口が違えば「終わり」の位置が違うわけですね。

出口が決まらないうちに業者へ電話すると、たいていは「全部出す」前提の見積もりが返ってきます。その作業が不要だったと後から分かるのは、かなり惜しいですね。

順番3|範囲と頼み先を決める

範囲が決まると、頼む相手も決まります。全部出すのか、危ない物だけ出すのか、まったく出さないのか。ここまで決めてから初めて見積もりを取ると、金額を比べられる形になるんです。

範囲が曖昧なまま3社から見積もりを取っても、3社が違う前提で出してくるので比較になりません。

片付けが終わらないと不動産会社には見せられない。実務をしていた当時、そう考えておられる方に会いました。でも僕が先にうかがっていたのは、その家をどうしたいかのほうでした。物を出す前に決めておくことがあるからですね。

空き家の片付けを始める前に拾い出す4つのもの

空き家の片付けを始める前に拾い出す4つのもの

作業を始める前に抜き出しておく物は、4つに絞れます。どれも捨てられたあとで取り戻すのが難しいという共通点があるものです。

国民生活センターは、亡くなった父親の家の不用品処分を業者へ頼んだところ、大切な書類は残しておく約束だったのにアルバムや使用中の電話機まで処分され、処理場へ運ばれた後で取り戻せないと言われた事例を公表しています。

出典:国民生活センター「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」(2025年10月30日公表・見守り新鮮情報第525号)

もの1|登記識別情報通知または権利証

不動産の名義を動かすときに関わってくる書類です。再発行される仕組みがないので、紛失したときは別の手続きで代えることになります。

古い家だと、仏壇の引き出しや押し入れの奥の封筒に入っていることがあります。表紙に「登記済証」「登記識別情報通知」と書かれた薄い冊子や紙を探してください。

もの2|遺言書

自筆で書かれた遺言書が家の中から出てくる場合があります。封がされているものは、その場で開けないでください。家庭裁判所での検認という手続きが関わってくるためです。

片付けの途中で出てきた遺言書が、遺産の分け方を決め直す材料になる場合があります。見つけた時点で、他の相続人にも伝えておいてください。

もの3|通帳・保険証券・有価証券の書類

どこの金融機関に口座があるのかは、通帳や郵便物からしか分からない場合が多いものです。未開封の郵便物も、差出人を確認してから捨ててください。

保険証券は請求の期限に関わります。証券が見つからなくても契約は生きていますが、どの会社と契約していたのかが分からないと、そもそも請求に進めません。

もの4|実印と印鑑登録カード

相続の手続きでは、印鑑登録証明書を求められる場面が続きます。実印そのものよりも、どれが登録された印鑑なのかを特定できる状態にしておくことが大事です。

印鑑登録カードは財布や通帳と一緒に保管されていることが多く、家具の処分と一緒に流れてしまいやすい物になります。

実務をしていた当時は、空き家の名義を確かめるために登記事項証明書を取りにいっていました。登記の記録は法務局に残っているので、手元の権利証が見つからなくても、名義そのものは確かめられます。慌てて家中をひっくり返す前に、まず記録を取り寄せるほうが早い場合があるんですね。

相続放棄を考えているなら、空き家の片付けに手を付けてはいけない

相続放棄を考えているなら、空き家の片付けに手を付けてはいけない

借金の有無が分からない、家そのものを引き受けたくない。そうした事情で相続放棄を検討している段階なら、片付けは止めてください。家の中の物に手を付けたことが、相続を承認したものとして扱われる場面があるためです。

片付けが「処分」と見られると、単純承認とみなされる

民法は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めています。ただし保存行為は、この限りではないという但し書きも付いているんですね。

家財を売る、譲る、捨てる。これらが「処分」に当たるかどうかで、その後の選択肢が変わるということです。どこまでが保存行為なのかは事情によって分かれるので、放棄を考えているなら家庭裁判所や弁護士へ先に確認してください。

出典:e-Gov法令検索「民法」

相続人が複数なら、家の中の物も全員の共有になる

民法は、相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属すると定めています。家具も家電も、分け方が決まるまでは全員の物という扱いになるわけです。

片付けを引き受けた人が「自分がやったのだから」と判断で捨てていくと、あとから揉める材料になります。兄弟で相続した家の進め方は、空き家を兄弟で相続したら?揉めない分け方と3,000万円控除を人数分使う条件にまとめました。

3か月の期限は、片付けを待ってくれない

裁判所は、相続放棄の申述は自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと案内しています。申述に必要な費用は、申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手です。

片付けに何か月もかけていると、この3か月が先に終わります。放棄を選ぶ可能性が少しでもあるなら、片付けより先に期限のほうを確かめてください。相続の各手続きの期限は、不動産の相続で手続きが遅れるとどうなる?4つの期限とペナルティに整理しています。

出典:裁判所「相続の放棄の申述」

空き家の片付けは、出口によって範囲が変わる|4つの出口

空き家の片付けは、出口によって範囲が変わる|4つの出口

ここからが本題になります。出口が違えば、片付けるべき範囲そのものが違います。全部出すのが正解になるのは4つのうち1つだけなんですね。

出口片付けの範囲先に確かめること
買取で売る現状のまま引き渡せる場合がある家財を残したまま買えるか
仲介で個人に売る原則は空にする買主が受け入れる状態
解体して更地にする家電と危険物は先に出す解体費に含まれる範囲
当面は持ち続ける傷むものと危ないものだけ通える頻度と近隣への影響

出口1|買取で売る(現状のままで引き渡せる場合がある)

買取業者が買う場合、家財が残っていても取引が成り立つことがあります。業者の側で片付けと解体をまとめて手配するほうが、結果として安く収まる形があるためです。

ただし残した分は買取価格に反映されます。自分で片付けた場合の費用と、引かれる額を比べて選ぶ話になりますね。

出口2|仲介で個人に売る

個人の買主に売る場合は、原則として家の中を空にします。住むために買う人は、前の持ち主の物が残った家を見ると判断が止まるからです。

ただし古家付き土地として売り、買主が解体する前提なら、扱いが変わる場合があります。売り方を決めてから範囲を決めてください。

出口3|解体して更地にする

解体するなら、家の中の物を全部出す必要はありません。ただし家電リサイクル法の対象品と、危険物だけは先に出します。建物の材料と家庭から出た物では、処理の道筋が違うためです。

解体業者の見積書に「残置物処分」の行があるかどうかは、必ず確認してください。含まれていないまま当日を迎えると、その場で追加になります。

出口4|当面は持ち続ける

すぐに手放さない場合でも、放置はできません。傷んで周りに影響が出る物と、火が出る原因になる物だけは先に処理します。

具体的には、生ものと液体、灯油、スプレー缶、古い電池。これらを残したまま閉めると、次に開けたときの作業量が増えるんですね。田舎の物件で手放す先が見つからないときの考え方は、田舎の土地が売れないときは、買い手から逆算する|地目で変わる5つの壁と、当てる相手の決め方にも書いています。

実務をしていた当時、家の中の物を残したままで引き取れる相手は実際にいました。その代わり「これは残してほしい」という線引きは、必ず書面に落とすようにしていたんです。口約束だと、当日になって話が食い違うからですね。どの出口を選ぶかの整理からご相談されたい場合は、お問い合わせからどうぞ。

空き家の片付けを自分でやるか、業者に任せるか|分かれ目は3つ

空き家の片付けを自分でやるか、業者に任せるか|分かれ目は3つ

出口が決まったら、次は誰がやるかです。判断の材料は3つあります。費用の多寡だけで決めると、途中で止まってしまう場合があるんですね。

分かれ目1|まとまった時間が取れるか

片付けは、少しずつ通って進めると想像以上に長引きます。1回の訪問で運び出せる量は、車1台分が上限になるからです。

自治体の粗大ごみは収集日が決まっていて、申し込んでから数週間待つ地域もあります。月に1回しか通えないなら、年単位の作業になると考えておいてください。

分かれ目2|救い出したい物が家の中にあるか

アルバム、手紙、家族の記録。これらを自分の手で確かめたいなら、その部分だけは自分でやる価値があります。業者には、どれが大事な物なのかの判断がつきません。

とはいえ、全部を自分でやる必要はないんですね。大事な物だけを抜き出して、残りを任せるという分け方ができます。

分かれ目3|運び出した先の処分ルートを持っているか

軽トラックを借りて運び出しても、受け入れ先が決まっていないと家の前に積み替えるだけになります。自治体の処理施設へ持ち込むには、事前の予約と身分証が要る地域が多いんです。

持ち込みの可否と料金は市区町村ごとに違います。ここを調べるのが面倒だと感じたなら、任せるほうが早く済みますね。

自分で片付ける意味は、費用の節約よりも感情の整理のほうにあると考えています。形見分けや、アルバムのような記録を見つけ出す作業は、手を動かした人にしかできないからですね。大事な物だけ救い出して、残りは任せる。この分け方で進める場合の段取りも、お問い合わせからご相談いただけます。

空き家の片付けを頼む業者は、3つの確認で見分ける

空き家の片付けを頼む業者は、3つの確認で見分ける

業者選びには、料金の比較より先にやることがあるんです。確かめるのは許可と書面の2つですね。ここを飛ばすと、安く頼んだつもりが高くつく形になります。

確認1|一般廃棄物処理業の許可か、市区町村からの委託か

廃棄物処理法は、一般廃棄物の収集または運搬を業として行おうとする者は、その区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならないと定めています。家庭から出た物を運ぶには、この許可か市区町村からの委託が要るということです。

環境省も、家庭の廃棄物を回収するには市区町村の一般廃棄物処理業許可や委託が必要で、産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可では回収できないと明示しています。産業廃棄物処理業の許可は工場や企業の廃棄物のためのもので、古物商の許可は中古品の売買のためのものだからです。

出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」/環境省「廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!」

確認2|買取を伴うなら古物商の許可証

家財の一部を買い取ってもらうなら、別の許可も関わってくるんですね。国民生活センターは、遺品を買い取る事業者には古物商の許可が必要なので、買い取ってもらう際には古物商許可証や行商従業者証を確認するよう案内しています。

片付けと買取を1社にまとめて頼むなら、2つの許可の両方を確かめることになります。片方だけの業者が両方を請けている形もあるので、書類で見せてもらってください。

確認3|作業範囲と料金が書面になっているか

見積もりは複数の事業者から取って、契約内容と料金を比べてください。国民生活センターは、契約時に作業日・具体的な作業内容・料金・支払方法・解約料を確認するよう助言しています。残す物と処分する物を明確に分けて、作業時にはできるだけ立ち会うことも勧められているんですね。

先ほど挙げた事例2は、まさにここが書面になっていなかった形でした。何を残すかを言葉で伝えただけでは、当日の作業者に届きません。

片付けと買取をセットで請ける形は便利な反面、費用がどちらに乗っているのかが見えにくくなると考えています。長く閉められていた家だと、中に何があるのかを持ち主自身も把握できていないものです。だからこそ、残す物と買い取ってもらう物の目録を先に作って、書面に残しておくほうが安全ですね。

空き家の片付けでは、捨て方が決まっている3種類に先に手を打つ

空き家の片付けでは、捨て方が決まっている3種類に先に手を打つ

家の中の物は、普通のごみとして出せる物とそうでない物に分かれます。この線引きを知らないまま当日を迎えると、そこで作業が止まるんですね。

種類1|家電リサイクル法の4品目

政令は、家電リサイクル法の対象となる機器を4つ定めています。ユニット形エアコン、テレビ(ブラウン管式・液晶式・有機EL式・プラズマ式)、電気冷蔵庫および電気冷凍庫、電気洗濯機および衣類乾燥機の4つです。液晶式と有機EL式のテレビには、電池を電源とするものや建築物に組み込む設計のものを除くという条件が付いています。

この4品目は、粗大ごみとして出せません。引き渡すときにはリサイクル料金と収集運搬料金がかかり、支払うと家電リサイクル券が発行されます。券に記載された番号で、自分の廃家電がメーカーに引き渡されたかを確認できます。

出典:e-Gov法令検索「特定家庭用機器再商品化法施行令」/環境省「廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!」

種類2|粗大ごみ

家具や布団は、市区町村の粗大ごみとして出すことになりますね。申し込みから収集日までの日数と、1回に出せる点数の上限は地域ごとに違います。

空き家の片付けでは点数が多くなるので、上限に当たる場合があります。処理施設への持ち込みができる地域なら、そちらのほうが早く終わりますよ。

種類3|自治体が引き取らない物

消火器、ガスボンベ、塗料、農薬、バッテリー、ピアノ、金庫。これらは家庭ごみの収集では扱われない地域が多く、専門の引き取り先を探すことになります。

古い家ほど、こうした物が物置や床下に残っています。片付けの日程を組む前に、家の外回りも一度見ておいてください。

捨て方の答えは、市区町村の窓口に集まっています。業者に聞く前に自治体へ聞くと、その地域のルールが先に分かるんですね。「この物はどう出すのか」を役所に確かめてから見積もりを取ると、業者の説明が正しいかどうかも判断できるようになります。

空き家の片付け費用が、見積もりでしか分からない理由

空き家の片付け費用が、見積もりでしか分からない理由

費用の相場を知りたい方が多いところですが、片付け費用には公的な統計がありません。業者が自社のサイトに載せている金額は、その業者の料金であって相場ではないんです。

金額が動く要素が多すぎる

物の量、種類、間取り、階数、家の前の道幅、処理施設までの距離、作業人数。これらが1つ変わるだけで金額が動きます。同じ4部屋の家でも、2階に大型の家具が残っているかどうかで作業量が変わるわけですね。

だから金額は、現地を見てもらったうえでの見積もりでしか決まりません。電話だけで確定額を言ってくる相手は、そこを確かめていないことになります。

定額パック・詰め放題で起きているトラブル

国民生活センターは2022年11月、不用品回収サービスに関する相談が増えていると公表しました。全国の消費生活センター等に寄せられた相談件数は、2018年度1,354件、2019年度1,457件、2020年度1,788件と増え、2021年度には2,231件になっています。

挙げられているのは、安価な定額パックを申し込んだつもりが作業終了後に高額な料金を請求された、トラック詰め放題で依頼したのに当日は荷台の囲いの高さまでしか載せられないと言われた、といった形です。広告を大きく出している事業者が、必ずしも一般廃棄物処理業の許可業者とは限らないとも注意されています。

出典:国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル-市区町村から一般廃棄物処理業の許可を受けず、違法に回収を行う事業者に注意!-」(2022年11月2日公表)

見積書のどこを見るか

金額の総額より先に見るのは、作業範囲の記載と、追加料金が発生する条件の2つです。総額だけが安い見積書は、範囲が狭く切られている場合があります。

見るべき行は決まっているんですね。運び出す部屋と場所、対象から外れる物、車両と人員の数、処分先、当日の追加が発生する条件。この5つが書かれていれば、他社と比べられる形になります。

空き家の片付けが終わったあとに来る4つの期限

空き家の片付けが終わったあとに来る4つの期限

片付けが終われば一段落ですが、そのあとに期限のあるものが控えています。先に知っておくと、動く時期を選べるようになります。

期限内容いつから数えるか
1か月建物滅失登記の申請建物が滅失した日
7日前解体工事の届出工事に着手する日
1月1日固定資産税の賦課期日毎年
3年目の年末空き家の特別控除相続開始日

期限1|解体したら1か月以内に建物滅失登記

不動産登記法は、建物が滅失したときは表題部所有者または所有権の登記名義人が、滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならないと定めています。

壊して終わりではなく、記録を消す手続きまでが1セットです。必要な書類と進め方は、滅失登記の必要書類は?相続した家を解体したときの手続きと1か月の期限にまとめてあります。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」

期限2|一定規模以上の解体は着手7日前までに届出

建設リサイクル法では、対象建設工事の発注者または自主施工者が、工事に着手する日の7日前までに都道府県知事へ届け出なければならないとされているんですね。届け出るのは解体する建築物の構造、工事着手の時期と工程の概要、分別解体等の計画などです。

この届出をするのは工事をする業者ではなく、発注者である所有者の側です。実務では業者が代行する形が一般的ですが、義務の所在は所有者にあります。

出典:e-Gov法令検索「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」

期限3|1月1日をまたぐと固定資産税の扱いが変わる

地方税法は、固定資産税の賦課期日は当該年度の初日の属する年の1月1日とすると定めています。つまりその年の税額は、1月1日時点でどうなっていたかで決まるということです。

建物を壊す時期を年内にするか年明けにするかで、翌年の扱いが変わってきます。空き家を処分する順番そのものは、田舎の空き家処分はどの順番で動くか|値段が付かない4つの理由と、7つの出口の当たり方に詳しく書きました。

出典:e-Gov法令検索「地方税法」

期限4|相続した空き家を売るなら3年目の年末

相続した空き家を売るときに使える特別控除には、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限があります。片付けに時間をかけているうちに、この期限が近づいてくる形になります。

要件は細かく分かれているので、空き家の3,000万円控除は何が変わった?|2026年8月の要望での変更点と対象外の5つの出口を解説で確認してください。なお家財の処分費用については、国税庁が挙げる譲渡費用の中に列挙されていません。

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」/国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」

解体の時期は、税だけで決めないほうが良い場面もあります。実務をしていた当時、解体でいちばん揉めたのは隣地との境界でした。杭が埋まっていて掘って探したこともありますし、測量に立ち会ったこともあります。時期を急ぐあまり境界の確認を飛ばすと、そちらで止まってしまうんですね。

空き家の片付けに関してのよくある質問

空き家の片付けに関してのよくある質問

空き家の片付けは、どのくらいの期間がかかりますか?

自分で進める場合は、通える頻度でほぼ決まってきます。粗大ごみの収集日と1回に出せる点数に上限があるため、月1回の訪問なら年単位になると考えておいてください。業者に任せる場合は、見積もりから作業完了までが数週間という形が多くなります。

家の中の物を残したまま売ることはできますか?

買取で売るなら、家財が残った状態でも取引が成り立つ場合があるんですね。ただし残した分の処分費は買取価格に反映されるので、自分で片付けた場合の費用と比べて選ぶ話になります。個人の買主に仲介で売るなら、原則として空にする前提になりますね。

業者に頼むとき、立ち会わなくても大丈夫ですか?

国民生活センターは、残しておく遺品と処分する遺品を明確に分けて、作業時にはできるだけ立ち会うよう助言しています。立ち会えない日程を組むなら、残す物の目録を写真付きで渡して、書面で確認を取っておいてください。処理場へ運ばれた後では取り戻せません。

まとめ

まとめ

空き家の片付けは、出口を決めてから始めるものです。売る、壊す、貸す、持ち続ける。どれを選ぶかで、片付ける範囲そのものが変わってきます。

手を動かす前にやることも決まっているんですね。権利証、遺言書、通帳や保険証券、実印と印鑑登録カード。この4つだけを先に抜き出してください。相続放棄を考えているなら、家財に手を付ける前に3か月の期限を確かめるほうが先になります。

任せる相手は、料金より先に許可と書面で見てください。家庭から出た物を運ぶには一般廃棄物処理業の許可か市区町村からの委託が要りますし、買取が付くなら古物商の許可も関わります。残す物と処分する物の線引きは、口頭ではなく書面に落としてください。

片付けが終わったあとにも、解体後1か月の滅失登記、着手7日前までの届出、1月1日の賦課期日、相続から3年目の年末という期限が控えています。時期を選べる余地があるうちに、先の日程まで並べておきましょう。

揉めたくて揉める方はいませんし、手元に少しでもお金が残るほうが良いに決まっています。片付けをどこまでやるべきか迷われたら、お問い合わせからご相談ください。家の状態と出口をうかがったうえで、範囲を決めるところからお手伝いします。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがありますので、その場合は弁護士におつなぎしますね。

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら