実家を売るかどうかで迷っている方、売ると決めたものの後悔しないか気がかりな方に向けて、実家の売却で残る後悔を「取り返せるもの」と「戻らないもの」に分け、契約の前に決めておくことを整理した記事です。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用の営業をしていました。アパートやマンションの建築を提案するのが本業で、グループ会社の窓口として、売買の仲介や駐車場の運営、建物の管理の相談もつないでいたんです。
実家の売却で後悔する理由は、検索で上位に出る解説を読むと、似た項目が並んでいます。そこでこの記事では、理由を並べ直すのではなく、その後悔がいつまでなら取り返せるのかと、売らずに置いた場合に残る後悔を中心にまとめました。
先に結論を書いておきますね。実家の売却で残る後悔には、動く前に決めておけば防げるものがあります。値段と家族との話は売買契約の前なら決め直せますが、過ぎた特例の期限、処分した物、引き渡した家は戻りません。売らずに置く道を選ぶ場合も、手入れを誰が続けるかを決めておかないと、近所との関係という別の後悔が残ることになるでしょう。
扱うのは、後悔の仕分け、動く前に決めること、契約した後に戻れる期限、売らずに置いた場合の後悔、契約前の確かめ方です。税金の特例の細かい条件や片付けの進め方は、それぞれの記事に任せています。
法令と制度の記述は、国税庁の案内と、e-Gov法令検索の条文で確かめました。2026年10月時点の内容としてお読みください。
実家の売却で後悔するのはどんなとき?取り返せるものと戻らないもの

実家の売却で後悔が残る場面は、値段、税金、残したかった物、家族との関係、売ったことへの寂しさなどです。このうち契約の前に手を打てるものと、過ぎてからでは戻らないものを先に分けておくと、どこに時間を使うかが決まります。
| 後悔の中身 | 取り返せるか | 手を打てる時期 |
|---|---|---|
| 値段が安かった | 売買契約の前なら決め直せる | 査定を受けてから契約の前まで |
| 税金の特例を使えなかった | 期限を過ぎると使えない | 売る時期を決める前 |
| 形見や写真を処分してしまった | 戻らない | 片付けを頼む前 |
| 家族との関係がこじれた | 契約の前なら話し直せる | 査定を頼む前 |
| 売ったこと自体が寂しい | 家は戻らない | 引き渡しの前(写真や形見を残す) |
| 売らずに置いて家が傷み、近所に迷惑をかけた | 傷みは戻らないが、手入れは今から始められる | 迷っている間 |
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取り返せる後悔は、売買契約の前なら決め直せる
値段、売り方、片付けの範囲、売る時期は、買主と売買契約を結ぶ前であれば、考え直して構いません。査定を受けたことや、不動産会社に相談したことだけで、売る義務が生じるわけではないからです。
迷いが残っているうちは、契約の日取りを先に決めないでください。日取りが決まると、残りの準備をその日に合わせて急ぐことになり、決め直す余裕がなくなっていきます。
戻らないのは、引き渡した家・処分した物・過ぎた期限
引き渡しを終えた家は、手元に戻りません。片付けで処分した写真や形見も同じです。税金の特例のように期限が決まっているものは、過ぎた後で知っても使えなくなります。
実家の売却で後悔を減らしたいなら、この戻らない側に当たることから先に確かめていきましょう。次の章では、動く前に決めておくことを4点に分けて見ていきます。
実家の売却で後悔しないために、動く前に決めておくこと

実家の売却で後悔を残さないために効くのは、売り出す前の準備です。僕は、税金の特例や補助金の制度を知らないまま売却を進めて、損をする場面があるのではないかと考えています。
だからこそ、制度は動き出す前に確かめておきたいところです。僕が営業をしていたのは数年前で、当時の知識のままでは今の制度を語れません。そのため、この記事に書いた税金の特例と契約の決まりは、今の条文と国税庁の案内に沿った内容です。
税金の特例は、売る前に条件と期限を確かめる
相続した実家を売るときに使える税金の特例には、売る期限が決まっているものがあります。空き家の3,000万円控除は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の一つで、制度そのものも2027年12月31日までの売却が対象です。
相続税を払った方が使える取得費の特例にも、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売るという期限が置かれています。この2つの特例は、同じ家に重ねて使うことができません。
建物を残して売るのか、壊して売るのかでも条件は変わります。条件の全体は空き家の3,000万円控除は何が変わった?|2026年8月の要望での変更点と対象外の5つの出口を解説で確かめ、自分の場合にどちらが使えるかは税理士に相談してください。
値段は、相場を自分で持ってから査定を聞く
査定額のほかに比べる数字を持っていないと、安く売ってしまったのではないかという思いが後に残ります。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、実際の取引価格や地価公示を地図から調べることが可能です。
不動産会社に仲介を頼む場合、会社が売り出しの価格について意見を述べるときは、その根拠を明らかにする決まりになっています。査定額を聞いたら、金額の大小より先に「その根拠は何ですか」と聞いてください。
買取は話が長引かない代わりに、値段の交渉がすべてになります。相場をつかまず、交渉のやり方も分からないまま席につくと、言われた額のまま決めて終わるのではないか、と僕は考えています。
残す物は、片付けを頼む前に家族で書き出す
片付けを急ぐと、形見分けができなかったという後悔につながりかねません。処分した物は、後から探しても戻らないからです。
片付けを業者に頼む前に、残す物を家族で紙に書き出しておきましょう。写真、手紙、仏具、権利証などの書類は、家具や家電より先に探す物です。片付けの範囲の決め方は、空き家の片付けは出口を決めてから始める|先に拾う4つのものと、売る・壊す・貸すで変わる範囲にまとめました。
家族・相続人との話は、査定を頼む前に済ませる
相談しないまま話を進めると、売った後で家族との関係がこじれるおそれがあります。相続人が複数いる実家は、分け方が決まるまで相続人全員の共有になります。家をまるごと売る話は、全員がそろって決めなければ進みません。
査定を頼む前に、売ること、売る時期、残す物について、関わる家族の考えを聞いておいてください。兄弟で相続したときの分け方は、空き家を兄弟で相続したら?揉めない分け方と3,000万円控除を人数分使う条件で扱っています。
話がまとまらない場合、個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。その段階では弁護士にご相談ください。
実家の売却を契約した後に後悔したら、いつまで戻れるか

売るのをやめられるかどうかは、今どの段階にいるかで決まります。買主と売買契約を結ぶ前なら、やめて構いません。手付を受け取って契約を結んだ後は、相手が契約の履行に着手するまでなら、受け取った手付を返し、さらに同じ額を上乗せして差し出せば解除できる決まりです。引き渡した後は戻せません。
| 段階 | 売るのをやめられるか | そのときに負うもの |
|---|---|---|
| 査定を受けた・媒介契約を結んだ | やめられる(売買契約はまだ結んでいない) | 媒介契約の書面にある解除の定めによる |
| 売買契約を結んだ後、相手が履行に着手する前(手付を受け取っている場合) | 手付の倍額を買主に現実に提供すれば解除できる | 受け取った手付の返還と、同じ額の上乗せ(合わせて倍額) |
| 相手が履行に着手した後、引き渡しの前 | 手付による解除はできない | 相手との話し合いと、契約書の定めによる |
| 引き渡した後 | 戻せない | 買主から不具合について請求を受けることがある |
査定と媒介契約の段階なら、売るのをやめられる
査定を受けただけでは、売る約束にはなりません。不動産会社と結ぶ媒介契約も、買主を探してもらうための契約で、売買契約とは別のものです。
ほかの会社に重ねて頼めない専任の媒介契約は、有効期間が長くても3か月と決められています。媒介契約の書面には、有効期間と解除に関することを書く決まりなので、途中でやめる場合の扱いを署名の前に読んでおきましょう。
売買契約の後は、相手が履行に着手するまで手付の倍額で解除できる
買主から手付を受け取っている場合、売主は、その倍額を買主に現実に提供することで契約を解除できます。倍額といっても半分は受け取った手付の返還なので、売主が自分で用意するのは手付と同じ額です。ただし、この方法が使えるのは、相手が契約の履行に着手するまでになります。
どの行為が履行の着手に当たるかは、契約の中身と実際の動きで判断されます。契約書に手付で解除できる期日が書かれていることもあるため、その日付と、過ぎた後の違約金の定めを署名の前に確かめてください。期日を過ぎてからやめたい場合は、相手との話し合いと、契約書の定めに沿った解決になります。話がまとまらないときは、弁護士に相談しましょう。
家を売る側にクーリング・オフは無い
契約してから数日のうちなら取り消せる、という話を耳にしたことがあるかもしれません。宅地建物取引業法のクーリング・オフは、宅建業者が売主になる契約で、事務所など以外の場所で申し込んだ買主を守るために設けられています。
個人が実家を売る場合の売主には当てはまらないので、「契約してから考え直す」という進め方はできないと考えてください。考え直す時間は、署名の前に取るしかありません。
引き渡した後に来るのは、買主からの不具合の請求
引き渡した家が契約の内容に合っていないと分かると、買主は、直すこと、代金を下げること、損害の賠償、契約の解除を売主に求められる決まりです。買主は、不具合を知った時から1年以内に売主へ知らせる必要があり、この期間は契約で別に決めることもあります。ただし、売主が引き渡しの時に不具合を知っていた場合などには、この1年の区切りは当てはまりません。
契約で売主が責任を負わないと決めていても、知っていて伝えなかったことについては責任を免れない決まりです。雨漏りや設備の故障など、知っている不具合は契約の前に書面で買主に伝えておくことが、売った後の後悔を防ぐ手になります。
買主から請求を受けて対応に迷ったときは、弁護士に相談してください。
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実家を売却せずに置いた場合の後悔|近所の方から聞いた声

売らないと決めることも、一つの答えです。ただ、決めないまま置いた家には、建物の傷みと、近所との関係という、売った場合とは別の後悔が残ります。
僕が土地活用の営業をしていた当時、空き家の隣で暮らす方から聞いたのが、子の代になって家の手入れがされなくなり、こういう問題になってしまうのは悲しい、という趣旨の声です。実家であれば、親の代にはご近所付き合いがあったと考えられます。
実家を売るかどうかで迷うとき、持ち主の側は家を手放す寂しさに目が向くものです。一方で、隣で暮らす方は、手入れの止まった家と毎日向き合うことになります。
手入れが止まった実家で、近所に起きること
庭木や草が伸びて隣の敷地にかかる、郵便物がたまる、建物が古びていく。こうした変化は、離れて暮らす持ち主より先に、隣で暮らす方が受け止めることになります。火事や虫、不法投棄への心配を抱かせることにもつながるでしょう。
持ち続けるあいだにかかる費用は、空き家の維持費はいくら?削ってよい費用と相続後に払う人で出し方をまとめました。売らずに置く場合は、費用と一緒に、手入れに通う人も決めてください。
売らずに置くなら、手入れをする人と決め直す時期を決める
置くと決めたなら、誰が、どれくらいの間隔で手入れに通うのかを先に決めます。通えない場合は、管理を頼む先を探すことになるでしょう。
あわせて「売るかどうかを次に考え直す時期」を決めておくと、迷ったまま年数だけが過ぎることを防げます。相続から3年を経過する年の年末や、3,000万円控除の制度の期限である2027年12月31日のように、税金の特例の期限が近づく時期を、その節目にするのも一つの方法です。

手入れの止まった家は、親御さんの代に築かれた近所との関係を、子の代で壊してしまうことになりかねない、と僕は考えています。売るか置くかを決めないままにしないことが、近所の方への一番の配慮になるでしょう。迷っている間も、草刈りと郵便物の片付けだけは止めないでくださいね。
実家の売却で後悔しないための確かめ方|契約前のチェック表

ここまでの内容を、売買契約に署名する前に確かめる表にまとめました。上から埋めていき、空欄が残っているうちは契約の日を決めない、という使い方をしてください。
| 確かめること | 見るもの・聞く相手 | 済んだ状態 |
|---|---|---|
| 名義と相続人 | 登記事項証明書、相続人どうしの話 | 誰が売主になるかが決まり、全員が売ることを知っている |
| 税金の特例の条件と期限 | 国税庁の案内、税理士 | 使える特例と、売る期限の日付が分かっている |
| 相場 | 不動産情報ライブラリ、査定の根拠 | 自分で調べた額と査定額を並べて説明できる |
| 残す物 | 家族で書き出した紙 | 残す物を家から運び出した |
| 契約書の解除の定め | 手付で解除できる期日、違約金 | やめられる最後の日を言える |
| 知っている不具合 | 雨漏り、設備の故障、境界のこと | 書面で買主に伝えた |
売る・貸す・住むのどれにするかから考えたい方は、一人っ子の実家は売却すべき?貸す・住むとの分かれ目と動く時期で判断の進め方を確かめられます。兄弟がいる方にも当てはまる内容です。
表を埋めるなかで、値段の目安や、決めるまでの家の管理で手が止まったら、無料査定と0円空き家管理をご利用ください。お問い合わせからお受けしています。

買取の話は、長引かない代わりに、値段の交渉で決まるものです。相場を自分で持たずに席につくと、根拠の示されない数字を出されても比べる物がない、というのが僕の見方です。査定額を聞いたら、同じ地域の取引価格を自分でも調べて、数字を2つ並べてから返事をしてください。
まとめ

実家の売却で残る後悔には、動く前に決めておけば防げるものがあります。値段と家族との話は、売買契約の前なら決め直せるものです。税金の特例の期限と処分した物は、過ぎてからでは戻らないので、先に確かめてください。
売買契約を結んだ後は、手付を受け取っている場合は、相手が履行に着手するまでなら手付の倍額を差し出して解除できますが、家を売る側にクーリング・オフはありません。引き渡した家も戻らないため、考え直す時間は署名の前に取りましょう。
売らずに置く道を選ぶなら、手入れをする人と、次に考え直す時期を決めておいてください。決めないまま置くと、建物の傷みと近所との関係という別の後悔が残ります。
実家の売却で後悔しないために必要なのは、急いで売ることでも、売らずに先送りすることでもありません。戻らないものを先に確かめ、自分で決めた日に署名することです。
よくある質問

質問1|実家の売買契約を結んだ後でも、売るのをやめられますか?
手付を受け取っている契約なら、相手が契約の履行に着手するまでは、受け取った手付を返し、同じ額を上乗せして買主に差し出すことで解除が可能です。着手した後は手付による解除ができず、相手との話し合いと、契約書の定めに沿った解決になります。契約書に手付で解除できる期日が書かれているかを、署名の前に確かめてください。
質問2|実家を売らずに空き家のまま置いておくと後悔しますか?
手入れを続けられるなら、置いておくことも選択肢です。気をつけたいのは、誰が手入れをするかと、いつ決め直すかを決めないまま置く場合になります。建物の傷みは戻らず、近所の方に心配をかけることにもなるため、置くと決めた日に手入れの担当と次に考える時期を決めましょう。
質問3|実家の売却で税金の特例を使うには、いつまでに売ればいいですか?
空き家の3,000万円控除は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の一つで、制度そのものも現行では2027年12月31日までの売却が対象です。取得費の特例は、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの売却が対象で、2つを重ねて使うことはできません。ほかにも条件があるので、自分が使えるかどうかは税理士に確かめましょう。
出典
出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
税額の個別の計算は税理士に、登記の手続きは司法書士や土地家屋調査士に、相続をめぐる争いについての判断は弁護士にご確認ください。








税金の特例や補助金の制度は、知らないまま進めると損につながるのではないか、と僕は見ています。使える制度があるかどうかは、売り出す前に一度調べておいてください。僕が営業をしていた当時の知識はもう古くなっているので、この記事の制度の部分は、今の条文と国税庁の案内をもとにしました。