一人っ子の実家は売却すべき?貸す・住むとの分かれ目と動く時期

一人っ子の実家は売却すべき?貸す・住むとの分かれ目と動く時期

一人っ子で、親の家をこの先1人で引き受ける方、あるいはすでに相続した方に向けて、実家を売るか貸すか、いつ動くかの決め方をまとめた記事です。

僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社に勤めていました。本業は地主の方にアパートやマンションを建てる提案をすることで、借り手が付くかどうかや、建てる費用を何年で取り戻せるかの試算もその仕事の一部でした。

当時のお客さまは地主の方が中心で、一人っ子として実家を引き受ける方とは立場が少し違うんです。そこでこの記事では、借り手の需要と費用を取り戻す年数を試算していた本業の物差しや、家族信託が間に合わなかった事例を、一人っ子の実家の売却に当てはめて使います。

先に結論を書いておきますね。住む予定のない実家なら、貸すかどうかは借り手の需要と、かけた費用を取り戻せる年数で決め、合わなければ売却に寄せてください。そして名義が親のうちは、売主は親本人です。親が自分で判断できなくなると親本人では売れなくなるため、施設に入ったら家をどうするかを、親が自分で決められるうちに決め、親自身が売るか、家族信託や任意後見の契約を結ぶところまで済ませておけるかどうかが、動く時期の分かれ目になります。

扱うのは、売るか貸すかの分かれ目、親の状態ごとの動く時期、一人っ子でも1人で決められない場面、お金の面で一人っ子に関わる点、遠方からの進め方、親が元気なうちに確かめることの6つです。相続登記の手続きや税額の計算、業者選びの詳しい話は、それぞれの記事に任せています。

法令と制度は、国税庁・法務省・法務局・裁判所・国土交通省の資料で確認したものだけを載せました。2026年10月時点の内容としてお読みください。

一人っ子の実家は売却か賃貸か|住まないなら借り手と費用の回収で決める

一人っ子の実家は売却か賃貸か|住まないなら借り手と費用の回収で決める

実家の扱い方は、住む・貸す・売る・決めずに持つのどれかです。自分の住まいが別にあって住む予定がないなら、売る・貸す・決めずに持つの中から選ぶことになります。貸すかどうかは、借り手が付く場所か、家賃を上げる工夫が利くか、かけた費用を何年で取り戻せるかで決め、どれかが合わなければ売却に寄せるのが、一人っ子の実家でも基本の考え方です。

選び方向く条件先に確かめること相続後に選んだときの空き家の3,000万円控除
住む自分や家族が移り住む予定がある移り住む時期、直す費用使えない(自分のマイホームとして売る特例の対象になり得る)
貸す借り手が付き、費用を取り戻せる近くの賃貸の募集状況、改修費と家賃の見込み使えない
売る住む予定も、貸す見込みもない名義、相続人、控除の期限要件を満たせば使える
決めずに持つ売るか貸すかを決める材料がまだそろっていないいつまでに決めるか、管理の手間と費用使わずに置くだけなら外れない(ほかの要件は同じ)。期限を過ぎると使えない

うちでは、無料査定と、すぐに決めないあいだの0円空き家管理をお受けしています。お問い合わせからご相談ください。

自分や家族が住む予定があるかを、最初に決める

住むかどうかが決まらないうちは、貸すか売るかを比べる土台ができません。定年後に移り住む、家族の誰かが使うといった予定があるなら、その時期までどう持つかを考える話に変わります。

住む気にはなれないけれど手放すのもためらう、という迷い方もあるでしょう。その場合は、いつまでに決めるかの期限だけ先に置いておくと、決めずに持つ状態が長引きにくくなります。相続した後で、空き家の3,000万円控除の要件に当てはまる家なら、目安にしやすいのは控除が使える期限でしょう。

なお、相続した実家に自分が移り住んでから売るなら、使える候補は空き家の3,000万円控除ではなく、自分のマイホームを売るときの特例(国税庁No.3302)のほうです。ただし、特例を受けることだけを目的に入居した家は対象になりません。

貸すなら、借り手が付く場所かを先に確かめる

貸す話は、借りたい人がいる場所であってこそ成り立ちます。近くで同じような広さの賃貸がどれくらい募集に出ているか、地元の管理会社がどんな借り手を見込むかを、改修の見積もりより先に確かめてください。

駅からの距離や周りの施設によって、実際に集まる借り手の顔ぶれは変わってきます。管理会社に聞くときは、家賃の見込みに加えて、募集を出してから決まるまでの期間の感覚も聞いておきましょう。

家賃を上げる工夫と、費用を何年で取り戻せるかまで計算する

借り手がいそうでも、それだけで貸すとは決められません。実家をリフォームしてそのまま貸すのか、建て替えて貸すのかで、かかる費用は大きく変わるからです。

かける費用を、家賃から管理費や固定資産税などを引いて1年で手元に残る額で割ると、取り戻すまでのおおよその年数が見えてきます。ほかの貸家にない条件を付けて家賃を上げられないかも、この計算の中で考えましょう。

出てきた年数は、その家を貸し続けるつもりの年数と比べてください。取り戻す前に屋根や水回りなどの大きな修繕がまた要りそうなら、計算は合っていないと見たほうが安全です。また、相続した後に貸した家は、あとで売るときに空き家の3,000万円控除が使えなくなります。控除の要件に当てはまる家なら、その分も貸すことで手放すものとして比べておきましょう。

数字の出し方は家ごとに違うので、見積もりと家賃の見込みがそろった段階で、管理会社や税理士と一緒に確かめてください。

計算が合わないなら、決めずに持つより売却に寄せる

借り手の需要か、費用を取り戻す計算のどちらかが合わないなら、貸すためにお金をかける理由はありません。決めずに持ち続けると、固定資産税や草木の手入れといった負担が続き、相続した後なら空き家の3,000万円控除の期限も近づいていく一方です。

貸せない、住まないと分かった時点で、実家の売却に向けた準備に切り替えるほうが、負担が積み上がる前に区切りをつけられます。

僕が土地活用の営業をしていた当時、建てる提案をするときは、借り手の需要に加えて、家賃を上げる工夫と、建築費を何年で回収できるかの資金計画まで試算していました。その物差しを実家に当てるなら、別に自宅があって住むことのない家は、借り手の需要がある地域かどうかで、貸すかを考える余地があります。駅から遠い場所なら、戸建てにしてペットと暮らせるようにする、少し広めにするといった工夫も考えられるでしょう。それでも貸し方の形が描けない家なら、手放したほうが早い。僕ならそう判断します。

一人っ子が実家の売却に動くのはいつか|親の状態で売る人が変わる

一人っ子が実家の売却に動くのはいつか|親の状態で売る人が変わる

実家が親の名義のうちは、売るかどうかを決めて契約するのは親本人で、一人っ子が売主になれるのは、生前に名義を移した場合を除けば相続で名義を受け継いだ後になります。そのあいだにある「親の判断能力が落ちてきた時期」は、実家の売却が止まりかねない時期です。

不動産・建築会社に勤めていたころは、グループの窓口として、信託の会社や証券会社、税理士と組んだ家族信託もお客さまに案内できる立場にいました。そのころに知った事例があります。認知症に備えて家族信託の準備を進めていた所有者の方が、準備の途中で認知症と診断され、そこから先の手続きに進めなくなりました。

その方は高齢者施設に入り、入所の費用は家族が手元のお金から出すことになったんです。家のほうは、誰も住んでいない空き家の状態になりました。親が判断できなくなってからでは、家族信託のように親自身が結ぶ契約はもう選べません。一人っ子にとっての「動く時期」は、親が亡くなった後ではなく、親がまだ自分で決められるうちから始まっていると考えてください。

親の状態実家を売る人一人っ子が今すること
両親とも健在で、自分で判断できる名義人である親親の希望を聞き、書類のありかを一緒に確かめる
施設に入ったが、自分で判断できる名義人である親施設の費用と家の扱いを、親と同じ話し合いで決める
自分で判断できなくなった成年後見人(家庭裁判所の許可を得て)司法書士・弁護士に相談する
片方の親が亡くなった名義を受け継いだ人(残った親・一人っ子)残った親と名義の分け方を決める
両親とも亡くなった相続した一人っ子戸籍で相続人を確かめ、相続登記を済ませる

親が元気なうちは、売るかどうかを決めるのは親本人

名義が親のままなら、売主になるのは親です。子が手続きを手伝うことはできても、売ると決めるのは親になります。

一人っ子にできるのは、親がどうしたいかを聞き、売るときに要る書類のありかを一緒に確かめておくことです。親が住まなくなった家を親自身が売るなら、親の側で使える税の特例もあるので、売る時期は親と一緒に決めてください。特例の中身は、このあとの「お金の面で判断が変わる点」の章にまとめました。

親が自分で判断できなくなると、親本人では売れず家庭裁判所の許可が要る道に変わる

民法は、意思能力(判断能力)がないままでした契約を無効と定めています。親が認知症などで判断できなくなれば、親本人が売買契約を結ぶことはできません。

その後に家を売るなら、家庭裁判所が選んだ成年後見人が、親に代わって手続きをする形になります。成年後見人が親の住まいだった家を売る・貸す・取り壊すには家庭裁判所の許可が要り、許可を得ないでした処分は無効です。施設に入る前に住んでいた家も、この許可の対象に含まれます。

今の成年後見の制度は、本人の判断能力が回復しない限り、途中で利用をやめられません。家を売るために使い始めた場合も、売り終えたところでやめることはできないわけです。仕組みを見直す改正法は2026年6月に成立・公布されましたが、施行日(公布の日から2年6か月以内に政令で定める日)は、法務省のページでまだ示されていません。

親が判断できるうちなら、家族信託や任意後見のように、親自身が家の扱いを家族に託しておく方法も選べます。どの方法が合うかは、司法書士や弁護士に相談して決めることになります。

ただし家族信託には、売るときの税金に関わる注意点もあるんです。国土交通省の令和9年度の税制改正要望の資料によると、信託が終わって家を受け取る形は、今の制度では相続・遺贈に当たらないとされています。そのため空き家の3,000万円控除の対象外で、対象に加える要望は出ているものの、2026年10月時点では決まっていません。家族信託を選ぶなら、あとで売るときの税金の扱いも税理士に確かめておいてください。

先ほどの事例でも、家の扱いを決める権限を家族に渡せていれば、施設に入ったあとで実家を売り、お金が入るまで少し時間はかかっても、入所しているあいだの費用に充てる道があったはずです。その段取りが、診断が先に来たことで組めなくなりました。話し合って決めるだけでは足りず、親が判断できるうちに、決めたことを実行できる形まで済ませておいてください。

親が亡くなったあとは、相続した人が売主になる

片方の親が亡くなった段階なら、残った親と一人っ子の2人で、家の名義をどう受け継ぐかを決めることになります。詳しくは次の章で扱います。

両親とも亡くなっていれば、売主は相続した一人っ子です。戸籍で相続人が自分だけだと確かめ、相続登記を済ませてから売る流れになります。

一人っ子でも実家の売却を1人で決められない場面

一人っ子でも実家の売却を1人で決められない場面

「一人っ子だから、実家のことは自分1人で決められる」と言えるのは、両親とも亡くなり、ほかに相続人がいない場合だけです。親の家族関係や登記の状態によっては、一人っ子でも話し合う相手が出てきます。遺言がある場合は、その内容も先に確かめてください。

場面一人っ子のほかに関わる人確かめ方
片方の親が健在残った親名義をどう受け継ぐかを親と話し合う
親に前の結婚の子・認知した子・養子がいるその人たち親の出生から死亡までの戸籍をさかのぼる
登記が祖父母の名義のまま親のきょうだいやその子など法務局で登記事項証明書を取る

片方の親が健在なら、相続人は残った親と自分の2人

亡くなった人の配偶者は、常に相続人になります。父が先に亡くなり母が健在なら、相続人は母と一人っ子の2人で、法定相続分は2分の1ずつです。ただ、法定相続分は話し合いがまとまらないときの目安で、2人で別の分け方を決めることもできます。

家を母の名義にするか、子の名義にするか、2人で持つかを決めるのが、最初の話し合いになります。母の名義にすれば、母が亡くなったときにもう一度相続の手続きが要ることも頭に入れておきましょう。名義の分け方は、あとで売るときに空き家の3,000万円控除が使えるかにも関わるので、決める前にこのあとの「お金の面で判断が変わる点」の章もあわせて読んでおいてください。

売って代金を分ける形を選ぶなら、換価分割とは?実家を売って分けるときの手順と贈与税を避ける書き方で進め方を確かめておきましょう。

親に前の結婚の子・認知した子・養子がいれば、その人も相続人になる

子は全員が第1順位の相続人です。親が以前に結婚していて子がいた場合や、認知した子、養子がいる場合は、その人たちも一人っ子と同じ立場の相続人になります。法務省の案内のとおり、結婚していない男女のあいだに生まれた子の相続分も、2013年の民法改正で結婚している夫婦の子と同じになりました。

法務局の案内でも、相続登記では亡くなった親の出生から死亡までの戸籍をさかのぼり、ほかに相続人がいないことを確かめるよう求めています。会ったことのない相続人がいると分かったら、家の話し合いはその人とも進めなければなりません。

個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。話し合いがこじれそうなときは、早めに弁護士へ相談してください。

登記が祖父母の名義のままなら、親のきょうだいやその子まで関わることがある

実家の登記が祖父母の名義で止まっていると、祖父母の相続までさかのぼって手続きをすることになります。祖父母の遺産の分け方が決まっていなければ、親のきょうだいや、亡くなっていればその子なども話し合いに加わります。相続登記は、相続で取得したと知った日から3年以内の申請が義務になり、2024年4月1日より前に相続したと知っていて登記されていないものは2027年3月31日が期限です。

正当な理由がないまま登記をしないと、10万円以下の過料の対象になります。名義をたどる段取りと期限までの動き方は、相続登記が未了の実家は売却できるか|2027年3月の期限までに動く順番と、決めきれない人の5つの出口にまとめました。

一人っ子の実家を売却するとき、お金の面で判断が変わる点

一人っ子の実家を売却するとき、お金の面で判断が変わる点

税額の計算は税理士の領域なので、ここでは一人っ子の実家で判断が変わる点だけを扱います。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、両親とも亡くなって相続人が一人っ子だけなら3,600万円、片方の親と2人なら4,200万円です。一人っ子の実家で差がつきやすいのは、空き家の3,000万円控除が使えるかどうかと、その期限になります。

片方の親が住み続けていた家は、その相続では空き家の3,000万円控除が使えない

空き家の3,000万円控除は、亡くなった人が住んでいた家を相続して売るときの特例です。国税庁は、1981年5月31日以前に建てられた家であることなどに加えて、相続の直前に亡くなった人以外が住んでいなかったことを要件に挙げています。

父が亡くなったとき母が同じ家に住んでいたなら、その相続で受け継いだ分にこの特例は使えません。一人っ子が親と一緒に暮らしていた家も、同じ扱いです。使える見込みがあるのは、残った親が1人で住み、その親から相続したときになります。

なお、2024年1月1日以後に売る場合、その家を相続した人が3人以上なら、控除の上限は1人あたり2,000万円になります。

また、相続した後に誰かへ貸したり、自分が住んだりした家も、あとで売るときには対象外です。どの相続で誰が名義を受け継ぐかによって結果が変わるため、名義を決める前に税理士に確かめておきましょう。

親が施設にいるあいだに家を貸すと、相続後に空き家の控除が使えなくなる

親が老人ホームなどに入ったまま亡くなった家も、要介護認定を受けていたなどの条件を満たせば、空き家の3,000万円控除の対象に入る仕組みです。ただし国税庁No.3307は、施設に入ってから亡くなるまでのあいだ、その家を貸していないことなどを条件にしています。施設の費用の足しにと親の家を貸すと、その後の相続で空き家の控除は使えなくなるんです。

一方で、親が自分で家を売るときのマイホームの特例(No.3302)は、住まなくなった後の家の使い道を問いません。住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の1つで、親子など特別の関係がある人に売った場合は対象外です。

貸すか売るかで使える特例が変わるので、施設の費用をどう工面するかは、親の判断能力があるうちに税理士へ確かめておいてください。

空き家の控除は、売る期限が2つ重なっている

1つ目は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることです。2026年中に親が亡くなった場合なら、2029年12月31日がこの期限になります。

2つ目は制度そのものの期限で、対象は2027年12月31日までの売却とされています。2026年に相続した家なら、先に来るのは2027年12月31日のほうです。延長は国土交通省が要望している段階で、2026年10月時点では決まっていません。

親が健在のうちは、相続した後にこの控除が残っているとは限らない前提で考えておきましょう。要望の中身は、空き家の3,000万円控除は何が変わった?|2026年8月の要望での変更点と対象外の5つの出口を解説で確かめてください。

買ったときの契約書がないと、取得費が売った金額の5%相当額になりかねない

家を売ったときの税金は、売った金額から取得費と売るための費用を引いた利益にかかります。相続した家の取得費は、親が買ったときの購入代金などをもとに計算し、親が買った時期もそのまま引き継ぐ決まりです。

買ったときの契約書や領収書がなく取得費が分からないと、売った金額の5%相当額を取得費とする方法に頼ることになります。実際に払った代金がもっと大きくても、それを示せる資料がなければ、その金額で計算するのは難しくなります。一人っ子は兄弟と手分けして探すこともできないため、親が元気なうちに書類のありかを聞いておくと安心です。

売るとき売主見ておく特例注意すること
親が住まなくなった家を親が売る親マイホームを売ったときの特例(No.3302)住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで。親子間の売買は対象外
片方の親が亡くなった後に売る名義を受け継いだ人名義の分け方ごとに税理士へ残った親が住んでいた家に、空き家の3,000万円控除は使えない
両親とも亡くなった後に売る一人っ子空き家の3,000万円控除(No.3306)相続後に貸す・住む、施設入所中に貸していた、期限を過ぎる、などで使えない

親が元気なうちに売るか、相続の後に売るかで迷う段階でも、家の値段の目安を先につかんでおくと比べやすくなります。無料査定と、決めるまでのあいだの0円空き家管理は、うちでお手伝いできる内容です。お問い合わせからどうぞ。

実家から遠くて通えないときは、どう決めてどう売るか

実家から遠くて通えないときは、どう決めてどう売るか

一人っ子の実家が住まいから遠いと、貸すにも売るにも、現地にほとんど通えないことが前提になります。貸すなら任せたあとも様子をつかみ続けられるか、売るなら通える回数に合った売り方と片付けの段取りを組めるかが、決め手です。

遠くから貸すなら、任せたあとも様子をつかみ続けられるか

賃貸の管理は管理会社に頼めますが、修繕をするか、家賃を見直すかといった判断は持ち主に回ってきます。報告を受けて、提案に自分の考えを返せる時間と距離があるかを、貸す前に考えておきましょう。管理会社の定期的な報告や写真に目を通す、帰省のついでに自分の目でも確かめる、近くに様子を見てくれる親族や知人がいる、といった手段を1つでも持てるかが目安になります。

通えず、報告にも目を通せないなら、貸すより売るほうに寄せて考えるのが自然です。

営業をしていたころの僕は、こちらの提案に別の考えを返してくるオーナーを、正直なところ面倒に感じていました。ただ今振り返ると、建物の状態を自分でつかみ、管理会社に任せきりにしないオーナーの物件ほど、状態の差が大きかったと感じるんです。そうした物件は入居者も決まりやすく、長く住んでもらいやすいと僕は見ています。遠くから貸すなら、任せきりにせず様子を知る手段を持てるかを先に考えてください。

仲介か買取かは、家の状態と通える回数で決める

実家の売却を決めたら、不動産会社に買主を探してもらう仲介か、会社に直接買い取ってもらう買取かを選びます。仲介は買主が見つかるまでの期間が読めず、そのあいだの家の管理も続くことになります。

傷みが大きい家や、片付けに通えない家なら、買取も比べる候補に入れてください。仲介との分かれ目は、空き家の買取業者はどう選ぶ?仲介との分かれ目と3つの種類で整理しています。

片付けは、売り方が決まってから手を付ける

家財ごと引き取る買取会社もあるので、売り方を決める前に片付けを済ませると、払った費用が生きない場合もあるわけです。売り方を決めてから、手元に残したい物だけを先に持ち出す形にすると、遠方でも負担を抑えられます。

立ち会えない前提で片付けを頼むときの選び方は、空き家の片付け業者は立ち会えない前提で選ぶ|鍵・探し物・掃除を参考にしてください。

実家の売却で後悔しないために、一人っ子が親の元気なうちに確かめること

実家の売却で後悔しないために、一人っ子が親の元気なうちに確かめること

一人っ子の実家の売却で後悔を残さないためには、親に聞けば分かることを、決める前に親本人から聞いておくことが欠かせません。親が判断できるうちに、名義と書類と親の希望を一緒に確かめておけば、どの時期に動くことになっても慌てずに済みます。

確かめることどこで・何でなぜ要るか
登記の名義法務局の登記事項証明書親か、祖父母のままかで動き方が変わる
親名義の不動産の一覧法務局の所有不動産記録証明書実家以外の土地の見落としを防ぐ
買ったときの契約書・領収書親の手元の書類取得費が売った金額の5%相当額になるのを避ける
権利証(登記識別情報)親の保管場所親が自分で売るときの手続きに使う
親の希望親との話し合い住み続けたいか、施設に入ったら家をどうするか
遺言の有無と保管場所親本人誰が家を受け継ぐかが変わる
判断能力に不安が出たときの相談先司法書士・弁護士親が判断できるうちにしか選べない方法がある

書類で何を確かめるか|名義・不動産の一覧・買ったときの書類

まず登記事項証明書で、実家の名義が親か、祖父母のままかを確かめてください。相続人が自分1人で遺言もなければ、実家以外の土地も含めて、親の不動産はすべて自分が受け継ぐ立場になります。親名義の不動産を一覧で知りたいときは、2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度が使えます。

所有不動産記録証明制度とは、登記の名義人ごとに不動産を一覧にして証明してもらう制度で、親本人が請求でき、委任状があれば子が代理で請求することも可能です。手数料は検索条件1件・1通あたり1,470〜1,600円で、書面かオンラインかと受け取り方によって金額が変わります。

旧住所や旧姓で登記された不動産は、その氏名・住所も検索条件に入れないと一覧に出てきません。検索条件1件ごとに手数料がかかる点も含めて、親と一緒に条件を決めましょう。買ったときの売買契約書や領収書、権利証の保管場所も、このときに聞いておくと後が楽になります。

親の気持ちで何を確かめるか|住まいの希望と遺言

書類よりも聞きにくいのが、親自身の希望です。このまま住み続けたいのか、施設に入ったら家をどうしてほしいのか、残してほしい物はあるのかを、親の言葉で聞いておきましょう。

遺言を書いているかどうかと、その保管場所もあわせて聞いておくと安心です。実家をどうするか、実家じまいをいつ始めるかの話は、こうした親の希望が分かってから組み立てるほうが、あとで迷いが残りにくくなります。

判断能力に不安が出てきたら、誰に何を聞くか

物忘れが増えてきたなど、親の判断能力に不安を感じたら、早めに司法書士や弁護士に相談してください。家族信託や任意後見を選べるのは、親が自分で中身を理解して契約できるあいだだけです。

相談に行くときは、上の表で確かめた名義・不動産の一覧・親の希望をまとめて持っていくと、話が早く進みます。

まだ売ると決めていない段階でもかまいません。うちでは無料査定と、決めるまでのあいだの0円空き家管理をお受けしています。お問い合わせからご連絡ください。

まとめ

まとめ

一人っ子の実家を売るかどうかと、動く時期の決め方を整理しておきます。

  1. 住まないなら、貸すかどうかは借り手の需要と費用を取り戻す年数で決め、合わなければ売却に寄せる
  2. 名義が親のうちは売主は親。親が自分で判断できなくなると、親本人では売れず家庭裁判所の許可が要る道に変わる
  3. 一人っ子でも、片方の親が健在なとき、親に前の結婚の子や養子がいるとき、登記が祖父母の名義のときは、1人では決められない
  4. 空き家の3,000万円控除は、もう片方の親が住み続けていた家をその相続で受け継いだときや、相続後・施設入所中に貸した家では使えない。期限も2つ重なる
  5. 遠方なら、様子をつかみ続けられるかで貸すか売るかを決め、片付けは売り方を決めてからにする
  6. 親が元気なうちに、名義・書類・親の希望を一緒に確かめる

親が亡くなったあとも名義が親や祖父母のまま止まっている実家なら、相続登記が未了の実家は売却できるか|2027年3月の期限までに動く順番と、決めきれない人の5つの出口で期限までの動き方を確かめてから、売るか貸すかの判断に戻ってきてください。

実家をどうするかを決める材料には、親が元気なうちにしか集められないものがあります。

よくある質問

よくある質問

質問1|一人っ子なら、遺産分割協議はしなくていいですか?

両親とも亡くなり、遺言がなく、戸籍でほかに相続人がいないと確かめられたなら、相続人は1人なので、遺産を分ける話し合いそのものが起きません。片方の親が健在なら相続人は残った親との2人になり、家の名義をどうするかの話し合いが要ります。親に前の結婚の子や養子がいる場合も、考え方は同じになります。

質問2|親が施設に入ったら、実家は誰が売れますか?

親が自分で判断できるなら、名義人である親が売主です。自分で判断できない状態なら、家庭裁判所が選んだ成年後見人が、家庭裁判所の許可を得て売ることになります。施設に入る前に暮らしていた家も許可の対象なので、後見人が付いていても許可なしでは売れません。

質問3|親が施設にいるあいだ、空いた実家を貸してもいいですか?

貸すこと自体はできますが、親が判断できない状態で成年後見人が貸すなら、その賃貸借の契約も家庭裁判所の許可が要る処分に入ります。施設に入ってから亡くなるまでのあいだに貸していた家は、相続した後に売っても空き家の3,000万円控除が使えません。施設の費用をまかなう目的なら、貸す場合と、親が自分で売って親の側の特例を使う場合とを、税理士に比べてもらうと判断しやすくなります。

出典

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

出典:国税庁「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」

出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

出典:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」

出典:国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」

出典:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」

出典:国税庁「No.4152 相続税の計算」

出典:法務省「民法の一部が改正されました」(嫡出でない子の相続分)

出典:裁判所「成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可」

出典:法務省「民法等の一部を改正する法律案」

出典:法務省「Q21~Q25「制度の利用について」|成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A」(Q25)

出典:法務省「民法(債権関係)の見直し ~「民法の一部を改正する法律」の概要~」(意思能力)

出典:法務局「登記申請手続のご案内(相続登記②/法定相続編)」

出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

出典:法務省「相続登記の申請義務化について」(所有不動産記録証明制度の施行日)

出典:法務省「所有不動産記録証明制度について」

出典:財務省「令和9年度税制改正要望(国土交通省)空き家の発生を抑制するための特例措置の拡充及び延長」

個別の売却の進め方や税額の計算、登記の手続きは税理士・司法書士などの専門家に、相続をめぐる争いに関する判断は弁護士にご確認ください。

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら