相続した実家など、誰も住んでいない家を持っていて、この先どうするかを決めたい方に向けた記事です。空き家の5つの道と選ぶ順番、選ぶ前に確かめておきたいことを順に整理します。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用の営業をしていました。この記事には、当時、共有名義の土地や家、登記されていない建物に関わった経験も入れています。
先に結論を書いておきますね。空き家の道は、住む・貸す・売る・壊す・手放すの5つです。使う予定があるか、建物と場所の条件、期限のある制度の順で絞ると選びやすくなります。ただ、どの道を選んでも、決める人がそろわなければ話は進みません。選ぶ前に登記簿を取り、名義が誰か、共有者がいるか、登記されていない建物が無いかを確かめておきましょう。
なお、条文(民法・不動産登記法・空家法・地方税法・相続土地国庫帰属法)はe-Gov法令検索で、空き家の特例は国税庁、空き家の相談先は国土交通省の案内で確かめました。2026年11月時点の内容としてお読みください。
空き家をどうするかは、使う予定と建物と期限で絞る

空き家の行き先は、大きく分けると5つです。どれが合うかは家ごとに違うので、使う予定、建物と場所、期限の順に絞っていきましょう。
空き家の5つの道とは?それぞれに向く家
空き家の道を、向く家と先に知っておくことで並べました。
| 道 | 中身 | 向く家・場面 | 先に知っておくこと |
|---|---|---|---|
| 住む | 自分や家族が住む | 住む予定の人がいる | 住むと空き家の特例が使えなくなる。管理と修繕は持ち主が受け持つ |
| 貸す | 家のまま人に貸す。用途を変えて店などに活かす道もある | 建物がそのまま使え、借り手が見込める | 貸したり事業に使ったりすると空き家の特例が使えなくなる |
| 売る | 仲介や買取で、建物が建ったまま売る | 使う予定が無い | 特例を使うなら売る期限がある |
| 壊す | 解体して、跡地を駐車場や新しい建物の敷地に使う、または更地で売る | 建物が傷んでいて使えない | 土地の固定資産税の軽減が外れる |
| 手放す | 国や、隣の人・自治体に土地を引き取ってもらう | 売れず、使う予定も無い土地 | 国の制度は建物があると申請できず、負担金が要る |
表の「先に知っておくこと」には、後から取り消しにくいものもあります。住宅用地の固定資産税の軽減は、人が住むための家の敷地に付くもので、住宅用地の面積のうち住宅1戸あたり200㎡までの部分は、課税標準が価格の6分の1、それを超える部分は3分の1になります(地方税法349条の3の2)。壊した後は、この軽減の対象から外れます。固定資産税は毎年1月1日の状態で課税されるので(同法359条)、壊す時期によって外れる年が変わります。壊す時期と税の関係は、空き家の解体で固定資産税はいつ上がる?で説明しています。
「壊す」の行の跡地の使い方と、「貸す」の行の用途を変えて活かす道は、国土交通省の空き家対策の案内にも挙がっています。隣の人や自治体に引き取ってもらう道は、相手が受けるかどうか次第です。自治体が寄付を受けるかどうかは、空き家がある市区町村の窓口で確かめましょう。
使う予定、建物と場所、期限の順で絞る
5つの道は、次の順で絞ると決めやすくなります。
- 使う予定:家族の誰かが住む、使う予定はあるか。あるなら、住むか、それまで管理して持つ
- 建物と場所:建物はそのまま使えるか。借り手や買い手が見込める場所か。建物が使えないなら、壊すか、建物ごと売るかを比べる
- 期限:売るなら、空き家の特例の期限から逆算する。相続登記の期限も同時に進む
この順で絞ると、「いつか使うかもしれない」で止まったままの時間を減らせます。使う予定が無く、建物も使えない家を持ち続けると、管理の手間と税は続くからです。実家が空き家になったときに何から決めるかは、実家が空き家になったら、貸す前に確かめることでも整理しました。
売る・貸す・壊すのどれでも、家の中の物をどうするかは決めておかなければなりません。物を残したまま引き受ける買取の会社もありますが、その場合も残したい物は先に家族で決めておくと、進めやすくなります。片付けの順番は、空き家の片付けは出口を決めてから始めるにまとめました。売ると決めたら、不動産会社に仲介を頼むか、買取の会社に売るかも選びます。売り方の見直し方は、実家が売れないときは頼み先と売り方を見直すで書きました。
売るなら、空き家の特例の期限から逆算する
相続した家を売るなら、期限のある税の特例を先に確かめましょう。国税庁の案内では、亡くなった方が住んでいた家とその敷地を相続して売ると、一定の要件に当てはまるとき、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できます。
主な要件は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること、相続の直前に亡くなった方のほかに住んでいた人がいないこと、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることです。家は、耐震の基準を満たした状態で売るか、全部を取り壊してから土地を売る必要があります。2024年1月1日以後の売却なら、売った年の翌年2月15日までに耐震の基準を満たすようにするか、取り壊す形でも当てはまる場合があるので、国税庁の案内で確かめましょう。対象は2027年12月31日までの売却で、2024年1月1日以後の売却で家と敷地を相続した相続人が3人以上なら、控除は2,000万円までになります。相続の時から売るまでの間に、人に貸したり、住んだり、事業に使ったりすると、この特例は使えません。マンションの一室のような区分所有の登記がされた建物も、対象外です。
貸すか売るかで迷っているなら、先にこの特例が使えるかを確かめてから選ぶほうがよいでしょう。使えるかどうかと税額は、税務署か税理士に確かめてください。要件のくわしい説明は、空き家の3,000万円控除は何が変わった?にまとめています。
空き家をどうするか決める人を、登記簿で先に確かめる

どの道を選ぶにしても、決める人がそろっていなければ進みません。登記簿(登記事項証明書)を取り、名義が誰か、共有者がいるかを確かめるところから始めましょう。
名義が亡くなった方のままなら、相続登記から始める
不動産登記法76条の2は、相続で不動産を取得した人は、相続の開始と取得を知った日から3年以内に、相続による登記を申請しなければならないと定めています。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です(同法164条1項)。2024年4月1日より前に始まった相続は、取得を知った日か2024年4月1日の遅いほうから3年です(令和3年の改正法の附則5条6項)。2024年4月1日より前から知っていた場合の期限は、2027年3月31日です。
名義が亡くなった方のままの家を売るなら、買い手に名義を移す登記の前に、相続登記が必要です。遺産を分ける前の家は、相続人みんなの共有です(民法898条1項)。登記の手続きは司法書士に相談できます。名義が亡くなった方のままの家を売る順番は、相続登記が未了の実家は売却できるかで説明しています。
共有なら、壊すにも丸ごと売るにも全員の同意が要る
共有の空き家は、どの道を選ぶかで、決めるのに必要な人数が違う点に気をつけたいところです。民法251条1項は、共有物に変更(形や効用の著しい変更を伴わないものを除く)を加えるには、ほかの共有者全員の同意が要ると定めています。建物を壊すような大きな変更は、この全員の同意が要る側です。家と土地を丸ごと売るときも、共有者全員がそれぞれの持分を売ることになるので、全員がそろう必要があります。
貸す場合も、普通の賃貸借か、期間が来たら終わる契約かなど、貸し方で必要な同意が変わります。共有の家を貸す前に、弁護士に確かめましょう。共有の土地の売り方と、反対されたときの出口は、共有名義の土地売却は何から始めるかにまとめました。
共有者の所在が分からないときは、裁判所の手続きがあります。ほかの共有者の同意で変更を加えられるとする裁判(民法251条2項)や、所在の分からない共有者の持分を取得する裁判(民法262条の2)、ほかの共有者が全員で持分を売るときに、所在の分からない共有者の持分もあわせて売る権限を与える裁判(民法262条の3)です。ただし、遺産を分ける前の相続人どうしの共有で、相続の開始から10年たっていないときは、持分を取得する裁判も、持分を売る権限の裁判もできません(民法262条の2第3項・262条の3第2項)。申し立てるかどうかは、弁護士か司法書士に相談してください。
当時、共有名義の土地や家は、全員の同意がそろってから進んだ
土地活用の営業をしていた当時、建築の提案先や、売却・処分の相談、相続の相談の中で、共有名義の土地や家に担当として関わりました。件数は2〜3件です。共有の形を挙げると、兄弟姉妹、親と子、夫婦、親戚や他人を含むものです。
関わった件の中には、共有者の一人が反対する、または決めきれない、共有者と連絡がつかない、持分やお金の分け方で手間がかかる、共有者が亡くなって相続人が増える、という場面もありましたが、担当した件で共有者どうしが対立したわけではなく、最終的には全員の同意がそろって、売る・活用する話を進めました。
この経験をふまえて、ここからは進め方を整理します。空き家をどうするかは、5つの道を比べる前に、共有者全員で決める段取りを先に作っておくと、話を進めやすくなるはずです。共有者が分かったら、話の窓口になる人と、売ったお金や費用の分け方を先に決めておきましょう。連絡のつきにくい人がいるなら、連絡先を早めに探しておくと、話が止まりにくくなるはずです。共有者が亡くなると相続人が加わるので、決めずに置く時間が長いほど、話す相手が増えることがあります。誰が決めるかが変わる時点は、実家をどうする?決める人が変わる時点と、遺言で行き先を残す方法にまとめました。
共有者の間で考えが分かれたまま話し合いが進まない場合、個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。その場合は、弁護士へ相談してください。
空き家をどうするかの前に、登記されていない建物と抵当権を見る

決める人がそろっても、建物や権利の側で話が止まることがあります。登記簿の建物の欄と権利の欄も、道を選ぶ前に見ておきましょう。土地の境界がはっきりしているかも、売る前に確かめておきたい点です。境界が明らかでない土地は、国に引き取ってもらう制度にも申請できません(相続土地国庫帰属法2条3項5号)。
当時、増築や離れが未登記で、費用と手間の持ち方で止まった件があった
当時、所有者から売却・処分の相談を受けた件や、相続の相談の中で関わった件に、増築した部分や、離れ・物置・車庫が登記されていないものがありました。件数は2〜3件です。登記されていないと分かったのは、登記簿に載っている建物と、現地の建物を見比べたときでした。登記の費用と手間を誰が持つかで決まらず、話が止まった件がありました。
ここからは、その経験をふまえた進め方の整理です。空き家をどうするか家族で決める前に、登記簿の建物の欄と現地の建物を見比べておきましょう。建物の場所、種類、床面積が合わない建物があれば、売る・貸すの話を持ちかける前に、登記の費用と手間を誰が持つかを決めておくと、話が止まりにくくなるはずです。登記の手続きは、土地家屋調査士や司法書士に相談してください。増築部分の登記の進め方は、増築未登記は費用と手間の持ち方を先に決めるで書きました。
抵当権が残っていないかも、登記簿の権利の欄で見る
登記簿の権利の欄には、抵当権が付いているかも載っています。借入がまだ残っているのか、返し終えたのに抹消されていないだけなのかで、することは変わるので、まずそこを分けましょう。借入の残りは金融機関に、抹消の手続きは司法書士に確かめるのが確実です。
国に土地を引き取ってもらう道を考えているなら、担保権が付いた土地は申請できない点にも注意してください(相続土地国庫帰属法2条3項2号)。親のローンが残ったまま相続した家の進め方は、住宅ローンの相続は、売る前に値段と残高を並べるで説明しています。
決めるまで空き家で持つなら、管理を続ける

すぐに決められないなら、決めるまでの間は管理を続けましょう。持ち主には、周りの生活環境に悪い影響を与えないよう、空き家を適切に管理する努力義務があります(空家法5条)。
管理しないと、勧告で土地の固定資産税の軽減が外れることがある
放っておけば特定空家等になるおそれのある空き家は「管理不全空家等」とされ、市町村長は持ち主に指導をし、それでも改善されないときは勧告ができます(空家法13条)。勧告を受けた空き家の敷地は、住宅用地の固定資産税の軽減の対象から外れます(地方税法349条の3の2第1項)。
さらに状態が悪い「特定空家等」になると、助言・指導と勧告のあとに、命令が出ることがあります。命令に違反すると50万円以下の過料の対象で、それでも措置がされないときは、市町村が代わりに解体などをする代執行もあり(空家法22条・30条1項)、特定空家等も勧告を受けると、敷地が住宅用地の軽減から外れます(地方税法349条の3の2第1項)。
管理を人に頼むか、自分で通うかは、費用と距離で決めましょう。空き家を持つ間にかかるお金の内訳は、空き家の維持費はいくら?にまとめました。
塀や屋根が崩れて人にけがをさせると、持ち主が責任を負うことがある
民法717条1項は、建物や塀などの設置や保存に欠陥があって他人に損害を与えたとき、まず占有者が賠償の責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償すると定めています。誰も住んでいない家でも、塀や屋根の傷みは、持ち主が見ておきましょう。
遠くに住んでいて見に行けないなら、近くに住む親族や、管理を受ける会社に見回りを頼む方法もあります。
迷ったら、空き家がある市区町村の窓口に相談する
国土交通省の空き家対策の案内が勧めているのは、空き家をどうするか迷ったときに、空き家がある市区町村の窓口や、不動産事業者などの専門家に相談することです。解体や改修に、補助金などの制度を使える場合もあるので、まず市区町村のウェブサイトか窓口で確かめましょう。
同じ案内によれば、市区町村と連携するNPO法人などが、空き家の相談や、買いたい人・借りたい人とのマッチングを手伝っていることもあります。
まとめ

空き家をどうするかの選び方のまとめです。
- 空き家の道は、住む・貸す・売る・壊す・手放すの5つ
- 使う予定、建物と場所、期限の順に絞る
- 売るなら、空き家の特例の期限と要件を先に確かめる。貸すと特例は使えなくなる
- 名義が亡くなった方のままなら、相続登記から始める
- 共有なら、壊すにも丸ごと売るにも全員の同意が要る。貸すなら、貸し方で必要な同意を専門家に確かめる
- 共有者全員で決める段取りと、登記されていない建物が無いかを、道を選ぶ前に確かめる
- 決めるまで持つなら、管理を続ける。迷ったら市区町村の窓口に相談する
まずは今日、空き家の登記簿を取ってみてください。名義と共有者、建物の欄を見て、現地の建物と合うかを家族で確かめるところが出発点です。
よくある質問

質問1|空き家をどうするか決めずに、しばらく置いておいてもよいですか?
置いておくこと自体はできますが、その間も管理は続ける必要があります。決めずに置いている間も、相続登記の期限と、空き家の特例の売る期限は進んでいく点に注意してください。どの期限がいつ来るかを、先に書き出しておきましょう。
質問2|共有している兄弟の1人が、売ることに反対しています。どうすればよいですか?
家と土地を丸ごと売るには、共有者全員がそろう必要があります。まずは反対している理由を聞き、値段、時期、売ったお金の分け方のどこで考えが違うのかを分けてみましょう。共有者の間で考えが分かれたまま話し合いが進まない場合、個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。その場合は、弁護士へ相談してください。自分の持分だけを手放す方法もあり、進め方は共有持分の処分は自分の分だけで動かせるにまとめています。
質問3|家が建ったままの土地を、国に引き取ってもらえますか?
建物が建ったままでは、申請できません(相続土地国庫帰属法2条3項1号)。申請できるのは、相続や、相続人への遺贈で取得した土地で(同法2条1項・1条)、境界が明らかでない土地も対象外です(同法2条3項5号)。建物を壊して更地にしたうえで申請し、承認されたら、10年分の管理の費用を考えて決められた負担金を納めます(同法10条1項)。申請には審査の手数料がかかり(同法3条2項)、管理に過分の費用がかかる崖がある土地や、管理や処分の妨げになる物が地上や地下にある土地など、同法5条1項に当たる土地は承認されません。共有の土地は、共有者全員で申請する決まりです(同法2条2項)。
出典
出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」
出典:e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」








空き家の道を選ぶ前に、登記簿で共有者と、登記されていない建物が無いかを確かめておいてくださいね。