住宅ローンの相続は、売る前に値段と残高を並べる

住宅ローンの相続は、売る前に値段と残高を並べる

住宅ローンが残ったまま親が亡くなり、その家を相続する方に向けた記事です。ローンをどうすればよいのか、家を売ってよいのか、迷っている場面を思い浮かべて書いています。

僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用の営業をしていました。当時、売却・処分や相続の相談の中で、親のローンが残ったまま相続した家に関わったことがあります。

住宅ローンの相続を調べると、上位は、団体信用生命保険(団信)の仕組みと、相続税・相続放棄・抵当権の抹消の説明が中心です。この記事では、その説明は短くしました。重心を置いたのは、団信で返されないローンが残ったときに、売るか・払い続けるか・放棄するかを決める順番と、売って返す日の段取りのほうです。

先に結論を書いておきますね。住宅ローンが残った家を相続したら、まず団信で返されるかを借入先に確かめましょう。残るなら、売れる値段とローンの残高を並べてから決めます。家を売ると相続放棄ができなくなるおそれがあるので、売る契約は、放棄や限定承認をしないと決めた後です。売って返すなら、決済の日に返済と抵当権の抹消をそろえます。

この記事で扱うのは、売却代金で返す道・売るか放棄かを決める順番・売って返す日の段取りの3つです。

なお、条文はe-Gov法令検索で、相続放棄・相続登記・団信の手続きは裁判所・法務省・住宅金融支援機構の案内で確かめました。決済の日の段取りは、売却の一般的な流れとして書いています。2026年10月時点の内容としてお読みください。

住宅ローンが残った家の相続は、団信の次に売って返す道を並べる

住宅ローンが残った家の相続は、団信の次に売って返す道を並べる

親の住宅ローンは、団信で返されなければ、家と一緒に相続人が引き継ぎます。団信を確かめた後に、売却代金で返す道も並べて考えましょう。

当時関わった1件は、売却代金でローンを返した

僕が土地活用の営業をしていた当時に、売却・処分や相続の相談の中で、親のローンが残ったまま相続した家に担当として関わったのは、1件です。その家は、売却代金でローンを返しました。

この経験から、この記事では、親のローンが残る家は相続した子が払い続けるしかない、という前提を置いていません。払い続ける道のほかに、売って返す道と、相続放棄の道があります(相続で得た財産の範囲で借金を返す限定承認という方法もあります)。どれを選ぶかで変わるのが、先に確かめることと、してはいけないことの順番です。

団信の次に、残るローンと売れる値段を確かめる

最初に、亡くなった親が団信に入っていたかを確かめます。住宅金融支援機構の案内では、団信は、加入者が亡くなった場合などに、以後のローンの返済が要らなくなる生命保険です。機構の団信では、保険金を受け取るのは機構で、その保険金がローンの返済に充てられます。借入先の金融機関に、団信に入っていたか、保険金で返されるかを確かめましょう。

団信で返されないローンは、家などの財産と一緒に相続人が引き継ぎます(民法896条)。相続人が複数なら、それぞれの相続分に応じて引き継ぐのが原則です(民法899条)。

団信で返されないとわかったら、ローンの残高と、家が売れる値段の見当を並べます。売れる値段が残高を上回るのか、下回るのかで、考える道が変わるからです。

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高槻 翔太

当時関わった1件は、売却代金でローンを返しました。この記事では、団信の次に、売れる値段と残高を並べる順番をおすすめします。

住宅ローンの相続は、売る前に放棄するかを決める

住宅ローンの相続は、売る前に放棄するかを決める

売却代金で住宅ローンを返す道を選ぶと、相続放棄ができなくなるおそれがあります。売る契約を結ぶ前に、売れる値段と残高を並べて、放棄や限定承認をするかどうかを決めましょう。

家を売ると、相続放棄ができなくなるおそれがある

民法921条1号は、相続人が相続財産の全部か一部を処分したときは、単純承認(財産も借金もそのまま引き継ぐこと)をしたものとみなす、と定めています。相続した家を売ることは、この処分にあたるものと考えておきましょう。ただし、保存行為(財産の現状を保つための行い)と、法律で決められた短い期間の賃貸は除かれています。どの行いが処分にあたるかの判断は、弁護士や司法書士に確かめてください。

単純承認をしたものとみなされると、そのあとで相続放棄はできないのが原則です。売却代金でローンを返しきれなくても、残りは相続人が引き継ぐことになります。だから売る契約を結ぶのは、放棄や限定承認をしないと決めた後にしましょう。

3か月の中で、値段の見当と残高をそろえる

相続放棄をするかどうかは、自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内に決めます(民法915条1項)。放棄は、家庭裁判所に申述して行います(民法938条)。相続で得た財産の範囲でだけ借金を返す限定承認も、同じ3か月の中で家庭裁判所に申述して選べる方法です(民法922条・924条。相続人が複数なら全員そろって行う=民法923条)。何もしないまま3か月が過ぎると、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。

この3か月の中で、借入先に聞くローンの残高と、家が売れる値段の見当をそろえておくと、決めやすくなるでしょう。財産や借金の全体が見えないまま期限が近いときは、家庭裁判所に期間を延ばしてもらう申立てもできます(民法915条1項)。延ばす申立ても、3か月の中で行います(裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。くわしくは相続した土地が売れないのは、土地のせいとは限らないの「相続放棄を選ぶ前に確かめる3つのこと」の章で解説しました。

団信・値段・残高で、考える道を分ける

団信の結果と、売れる値段・残高の関係で、考える道を分けると次のとおりです。

団信の結果売れる値段とローンの残高考える道
保険金でローンが返される—ローンは残らない。家を売るか持つかは、ローンと別に考える
返されないローンが残る売れる値段が残高を上回るほかの借金も含めて全体を見たうえで、売却代金で返す道か、相続して払い続ける道
返されないローンが残る売れる値段が残高を下回る差額を自分で用意できるかを確かめ、借入先とも相談する。放棄や限定承認も含めて、3か月の中で専門家に相談する
入っていたかがまだ分からない—借入先の答えが出るまで、売る契約を結ばない

相続して払い続ける道を選ぶ場合も、借入先との手続きは欠かせません。借入先が住宅金融支援機構(【フラット35】など)の場合、機構の案内では、団信に途中から加入できるのは3つの場合に限られ、その1つに「契約者本人が亡くなり相続する場合」が挙がっています。銀行などのローンは、借入先に確かめてください。

放棄をすると、家のほか、預貯金などの財産も受け取れません。放棄した人は、初めから相続人でなかったものとみなされるからです(民法939条)。表は考える順番の目安で、自分の場合にどうなるかは、家庭裁判所の案内や弁護士・司法書士に確かめてください。

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住宅ローンを売却代金で返す相続は、決済の日に返済と抹消をそろえる

住宅ローンを売却代金で返す相続は、決済の日に返済と抹消をそろえる

売却代金で住宅ローンを返すときは、買主から受け取った代金で、その日のうちに残りを返します。決済の日に、返済と抵当権の抹消を同じ日にそろえる段取りで進めましょう。

売る前に、相続登記で名義を相続人に変える

親が亡くなっても、登記簿の名義が自動で変わることはなく、親のままです。名義が親のままでは、買主へ名義を移す登記ができません。買主へ名義を移す前に必要なのが、親の名義から家を相続した人の名義に変える相続登記です。相続登記には、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内という期限が付いています。2024年4月1日より前に相続したと知った不動産で、まだ相続登記をしていないものは、2027年3月31日までです(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。

相続登記の流れは、相続登記が未了の実家は売却できるかにまとめました。

決済の予定日で、一括で返す額を出してもらう

売却代金で返すときに借入先へ頼むのは、決済の予定日に一括で返す場合の額の計算です。返す額は日によって変わるので、決済の日を決めてから確かめましょう。

売れる値段がこの額を下回るときは、原則として、差額を自分で用意して返すことになります。用意できないときに抵当権を外してもらえるかは、借入先との相談しだいです。外してもらえても、返しきれなかった残りの借金は相続人が引き継ぎます。2章の表の「売れる値段が残高を下回る」に当たるときは、売る前に、差額をどうするかを借入先と相談しておきましょう。

決済の日に、返済と抵当権の抹消をそろえる

決済の日には、買主から代金を受け取り、その代金で借入先に残りを返します。返済が済むと、借入先から抵当権を消すための書類を受け取る流れです。買主への名義変更と抵当権の抹消は、同じ日に申請してもらう段取りにしましょう。登記の申請は、司法書士に頼むことができます。

相続人が複数で、売った代金を分ける場合は、ローンを返した後の残りを分けることになります。分け方は換価分割とは?実家を売って分けるときの手順を参考にしてください。

売って返す道を考えているなら、値段の見当を早めに出しておくと、借入先との相談も進めやすくなります。無料査定で値段の見当をお出しし、売るまで空く家の見回りは0円空き家管理で受け付けているので、お問い合わせからご連絡ください。

まとめ

まとめ

住宅ローンが残った家を相続したときの順番を振り返りましょう。

  • 団信で返されるかを、借入先に確かめる。返されないローンが残っても、売却代金で返す道がある
  • 家を売ると相続放棄ができなくなるおそれがある。売る契約の前に、売れる値段と残高を並べて、3か月の中で放棄や限定承認をするかを決める
  • 売却代金で返すなら、相続登記で名義を相続人に変え、決済の日に返済と抵当権の抹消をそろえる

団信の次に値段と残高を並べておけば、売るか払い続けるか放棄するかを、期限の前に落ち着いて選べるはずです。

よくある質問

よくある質問

質問1|相続放棄を考えている間に、家の値段を調べてもよいですか?

売れる値段の見当を確かめることは、家を売ることとは別です。民法915条2項は、相続人が承認や放棄をする前に、相続財産を調べることができると定めています。気をつけたいのは、売る契約を結ぶことです。家を売ると、相続財産の処分として単純承認をしたものとみなされるおそれがあります(民法921条1号)。

質問2|団信に入っていたかは、どこで分かりますか?

親が住宅ローンを借りていた金融機関に聞くのが確実です。住宅金融支援機構のローンなら、機構の団信の専用の窓口があります。団信で返されるかが分かるまでは、売る契約を結ばないようにしましょう。

質問3|売っても住宅ローンが残るときは、どうなりますか?

売れる値段が残高を下回ると、原則として、差額を自分で用意して返すことになります。用意できないときに抵当権を外してもらえるかは、借入先との相談しだいで、外してもらえても、返しきれなかった残りの借金は相続人に残ります。用意できない見込みなら、放棄や限定承認も含めて、3か月の中で弁護士や司法書士に相談しましょう。家を売った後は、相続放棄ができなくなるおそれがあるからです(民法921条1号)。

出典

出典:e-Gov法令検索「民法」

出典:裁判所「相続の放棄の申述」

出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

出典:裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」

出典:住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険制度」

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら