共有名義の不動産で、共有者の一人が亡くなった方に向けた記事です。亡くなったのが親でも、兄弟姉妹や配偶者でも、そのまま読み進めてください。亡くなった方の持分を受け継ぐ相続人の方と、残った共有者の方の両方に関わる話になります。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用の営業をしていました。当時、共有名義の土地や家に、担当として関わったことがあります。
不動産の共有名義人が死亡したときの記事を調べると、上位は、相続の手続きと登記の説明が中心です。そこでこの記事では、手続きは要点にとどめました。重心を置いたのは、売る・活かす話を止めないために、先にそろえておくことです。
先に結論を書いておきますね。共有名義人が死亡すると、相続人がいて、遺言で行き先が決まっていなければ、その持分は相続人に移り、売る・活かすときに同意が要る相手が相続人に替わります(人数が増えることもあります)。そしてその場合、相続人が2人以上なら、亡くなってから10年の間は、残った共有者との間の共有は共有物の分割で解消できても、相続人どうしの分け方は遺産分割で決める必要があります。このとき、遺産分割が済んでいなければ、居場所の分からない相続人の持分を取る裁判も、10年たつまでは使えません。だから、相続人の確認・相続人の側の窓口・お金の分け方の案を先にそろえて、相続人の間の遺産分割を先に済ませるのが近道です。
この記事で扱うのは、持分の行方・手間がかかるところと先にそろえること・10年の区切りの3つです。
なお、条文はe-Gov法令検索で、相続登記の期限と改正の中身は法務省の案内と説明資料で確かめています。2026年10月時点の内容としてお読みください。
共有名義人が死亡すると、持分はどうなるのか

共有名義人が死亡すると、相続人がいて、遺言で行き先が決まっていなければ、亡くなった人の持分は相続人に移ります。ほかの共有者に、自動で移ることはありません。売る・活かす話で同意が要る相手も、亡くなった人から相続人に替わり、人数が増えることがあります。
亡くなった人の持分は、誰が受け継ぐのか
相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利と義務を受け継ぐ、と民法は定めています(896条)。共有名義の不動産の持分も、この財産の一つです。残った共有者がその持分を持つには、遺言で譲り受けるか、自分も相続人として分け方の話し合いで取るか、相続人から買い取るといった形をとることになります。残った共有者と相続人の間で話がまとまらないときは、裁判所に共有物の分割を求め、代わりのお金を払って取得する方法もあります(民法258条2項2号)。
相続人がいないときは、別の決まり(民法255条など)で扱いが決まるため、この記事では、相続人がいる場合に絞りました。
分け方が決まるまでは、相続人全員で持分を持つ
相続人が2人以上いるときは、相続財産は相続人の共有になります(民法898条1項)。遺産分割とは、相続人の間で、亡くなった人の財産を誰がどう受け継ぐかを決めることです。遺言で行き先が決まっていなければ、亡くなった人の持分は、この遺産分割が済むまで、相続人全員で持っている状態が続きます。
例を挙げると、兄弟2人の共有だった家で兄が亡くなり、兄の相続人が配偶者と子ども2人だったとします。兄の持分は、遺産分割が済むまで、この3人で持っている状態です。弟から見ると、家を売る話の相手が、兄1人から3人に増えることになります。
親と子の共有で親が亡くなった場合も、親の持分は、共有していた子だけのものにはなりません。親の配偶者やほかの子どもがいれば、その人たちも相続人です。
丸ごと売るにも建て替えるにも、相続人を含めた全員の同意が要る
共有物の形や働きを大きく変える変更には、ほかの共有者の同意が要る、というのが民法の決まりです(251条1項)。家を取り壊して建て替えることも、この変更の一つに数えられます。家と土地を丸ごと売るときは、共有者それぞれが自分の持分を売る形になるため、全員がそろわなければ進みません。共有名義人が死亡した後は、この「全員」に、亡くなった人の相続人が加わります。全員の同意が要る場面と、反対されたときの出口は、共有名義の土地売却は何から始めるか|全員の同意が要る場面と、反対されたときの4つの出口で整理しました。
一方で、大きな変更に当たらない修繕のような管理は、持分の価格の過半数で決められます(民法252条1項)。ただし、家を貸すときは注意が必要です。更新のある普通の建物の賃貸は、基本的に全員の同意が要り、過半数で決められるのは、一時使用の賃貸や、期間3年以内の定期建物賃貸借などに限られる、と法務省は説明しています。
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共有名義の話で手間がかかるのは、どこなのか

共有名義の土地や家の話は、反対・連絡・お金の分け方・相続人の増加の4つのところで、手間がかかることがあります。共有名義人が死亡したときは、話し合いの相手が相続人に替わり、人数や連絡先まで一度に変わることもあるわけです。
僕が関わった共有名義の件で、手間がかかった4つのところ
僕が土地活用の営業をしていた当時、共有名義の土地や家に、担当として関わりました。共有者の一人に建て替えや土地活用を提案した件や、売却・処分の相談を受けた中、相続の相談の中で出会った件です。件数でいえば、2〜3件になります。共有の形は、兄弟姉妹、親と子、夫婦、それに親戚や他人を含むものまでありました。
話を進めるうえで、手間がかかったのは、次の4つです。関わった件の中に、それぞれがありました。
- 共有者の一人が反対した、または決められなかった
- 共有者と連絡がつかなかった(遠方・疎遠など)
- 持分やお金の分け方
- 共有者が亡くなり、相続人が増えた
結末は、共有者全員の同意で話を進める形でした。共有名義の土地や家でも、全員の同意がそろえば、売ることも活かすこともできます。
共有名義人が死亡すると、何が変わるのか
共有者が亡くなると、それまで話していた相手の代わりに、相続人が話し合いの相手になります。相続人の中には、遠くに住んでいる人や、これまで付き合いの無かった人がいることもあるでしょう。誰が相続人で、どこに連絡すればよいかを確かめるところから、話し合いを組み直すことになるわけです。
相続人が誰かは、亡くなった人の戸籍をたどって確かめます。残った共有者が相続人でないときは、相続人の側で確かめてもらうのが近道です。
話を持ちかける前に、何をそろえるか
共有名義人が死亡した後に、売る・活かす話を持ちかけるなら、先に次の5つをそろえておくと、4つのつまずきに備えやすくなります。
| そろえること | 確かめ方・決め方 | そろえないまま進むと起こりうること |
|---|---|---|
| 1 相続人と人数 | 亡くなった人の戸籍と、遺言があるか | 話を持ちかける相手が漏れる |
| 2 名義と持分 | 登記事項証明書の権利部 | 誰が何割を持つかで食い違う |
| 3 相続人の側の窓口 | 相続人の中で、連絡を受けて取りまとめる人を1人決めてもらう | 相続人ごとに伝わる話が違い、話し合いが振り出しに戻る |
| 4 お金の分け方の案 | 売った代金、売るまでの費用、それまでの固定資産税を、持分でどう分けるか | 分け方の話で止まる |
| 5 期限 | 相続放棄は3か月、相続登記は3年 | 期限が先に来て、選べる道が減る |
中でも窓口は、相続人の側で決めてもらうものです。残った共有者が相続人でないときは、亡くなった人の持分の分け方の話し合いには加わりません。窓口を通して、売る・持ち続ける・持分を買い取るといった希望を、早めに伝えておきましょう。
期限のうち、相続放棄は、家庭裁判所への申述でするもので、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内という期限があります(民法915条1項・938条)。相続登記は、相続が始まったことと、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法76条の2第1項)。2024年4月1日より前に始まった相続も対象で、その場合は2027年3月31日まで(取得を知った日が2024年4月以降なら、その日から3年以内)が期限です。また、法定相続分での相続登記をした後に遺産分割がまとまったときは法定相続分より多く取得した人が、相続人申告登記をした人がその後の遺産分割で取得したときはその人が、まとまった日から3年以内に登記を申請する義務を負います(同条2項・76条の3第4項)。手続きの順番は、相続登記が未了の実家は売却できるか|2027年3月の期限までに動く順番と、決めきれない人の5つの出口で整理しました。
共有者の一人が反対している、相続人の間で考えが分かれているといった場面もあるでしょう。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。そうした場面は、弁護士に相談してください。
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共有名義人の死亡から10年は、どの手続きが使えるのか

共有名義人が死亡してから10年の間は、遺言で行き先が決まっていなければ、残った共有者と相続人との間の共有は、共有物の分割の手続きで解消できますが、相続人どうしの分け方は、遺産分割で別に決めることになります。遺産分割が済んでいなければ、居場所の分からない相続人の持分を取る裁判も、10年たつまでは使えません。
10年の間は、共有物の分割と遺産分割が別々になる
共有者の話し合いがまとまらないとき、裁判所に共有物の分割を求める手続きがあります(民法258条)。ただし、亡くなった人の持分が、相続人の間で遺産分割をすべき相続財産なら、その持分を相続人どうしで分けることは、この手続きではできません(258条の2第1項)。法務省の説明では、10年の間は、残った共有者と相続人との間は共有物の分割で、相続人どうしの間は遺産分割で、別々に手続きをとる必要があります。
相続が始まってから10年を過ぎると、相続人どうしの分け方も含めて、共有物の分割の手続きでまとめて分けられるようになります(同条2項)。ただし、家庭裁判所に遺産分割の請求があり、相続人が、共有物の分割の請求があったという裁判所からの通知を受けた日から2か月以内に異議を申し出たときは、この限りではありません(同条2項・3項)。
居場所の分からない相続人の持分は、いつから裁判で取れるか
共有者の中に、必要な調査を尽くしても氏名や居場所が分からない人がいるときは、裁判所の手続きで、その人の持分を取得する道があります(民法262条の2)。ほかの共有者全員とまとめて、特定の相手に売る権限を得る道も、2023年4月施行の民法改正で設けられました(262条の3)。ただし、その持分が、相続人の間で遺産分割をすべき相続財産なら、相続が始まってから10年を過ぎるまで、どちらの手続きも使えません。
10年の前でも、裁判所の決定を得て、居場所の分からない人以外の共有者で、変更や管理を決める手続きもあります(民法251条2項・252条2項1号)。ただし、居場所の分からない人が持分を失うことになる行為(抵当権の設定など)には使えない、と法務省は説明しています。居場所の分からない相続人の持分について、所有者不明土地・建物管理人を選ぶことも10年の前からできる、というのが法務省の説明です。持分を取る・まとめて売る裁判の中身は、相続した土地が売れないのは、土地のせいとは限らない|先に片付ける相続側の4つの状態と5つの期限で整理しました。裁判の手続きを使うかどうかは、弁護士に相談してください。
10年を待たずに動くには、何を先に決めるか
10年の間でも、相続人の間で遺産分割が済めば、亡くなった人の持分は、それを取った人の持分になります。相続財産ではなくなるので、残った共有者との間の共有を、共有物の分割の手続き1本で扱える形になるわけです。相続人の中に居場所の分からない人がいるときは、家庭裁判所に不在者財産管理人を選んでもらい、その管理人が家庭裁判所の許可を得て遺産分割に加わる形になります(民法25条1項・28条)。時期ごとの違いを、次の表にまとめました。
| 時期 | 亡くなった人の持分を持っている人 | 共有をなくす手続き | 居場所の分からない相続人の持分を取る・まとめて売る裁判 |
|---|---|---|---|
| 亡くなってから遺産分割まで(10年以内) | 相続人全員(遺言で行き先が決まっていなければ) | 残った共有者と相続人の間は共有物の分割、相続人どうしは遺産分割(別々に行う) | 使えない(変更・管理を決める手続きや、管理人を選ぶ手続きは別にある) |
| 遺産分割の後 | 遺産分割で持分を取った人 | 共有物の分割 | 条件に当たれば使える |
| 遺産分割をしないまま10年を過ぎた後 | 相続人全員 | 共有物の分割でまとめて扱える(遺産分割の請求があり、相続人が異議を申し出たときは別々) | 条件に当たれば使える |
遺産分割をしないまま10年を過ぎると、原則として、生前の贈与や、介護などで財産の維持に特に貢献したことを相続分に反映させる決まり(特別受益・寄与分)も使えなくなります(民法904条の3)。10年たつ前に相続人が家庭裁判所へ遺産分割を求めていたときなどは、例外です。また、10年を過ぎた後でも、相続人全員が合意すれば反映させて分けられる、と法務省は説明しています。2023年4月1日より前に始まった相続では、家庭裁判所へ求める期限が、相続開始から10年か2028年3月31日の遅いほうになります(民法等の一部を改正する法律〈令和3年法律第24号〉附則3条)。10年を待つより、遺産分割を先に済ませるほうが、手続きを1本にまとめやすく、その後に選べる道も広がっていきます。
遺産分割の前でも、売った場合の値段の目安があると、分け方の話し合いが具体的になります。無料査定と0円空き家管理で、ご相談を受け付けています。お問い合わせからどうぞ。
まとめ

共有名義人が死亡したときに、先にすることを振り返りましょう。
- 共有名義人が死亡すると、相続人がいて、遺言で行き先が決まっていなければ、持分は相続人に移り、相続人が2人以上なら、遺産分割が済むまで相続人全員で持つ。家と土地を丸ごと売る・建て替えるには、相続人を含めた全員の同意が要る
- 手間がかかることがあるのは、反対・連絡・お金の分け方・相続人の増加の4つのところ。相続人と人数、名義と持分、相続人の側の窓口、お金の分け方の案、期限の5つを先にそろえる
- 遺言で行き先が決まっていなければ、亡くなってから10年の間は、残った共有者と相続人の間は共有物の分割、相続人どうしは遺産分割と、手続きが別々になる。遺産分割が済んでいなければ、居場所の分からない相続人の持分を取る裁判も、10年たつまでは使えない。遺産分割を先に済ませると、その後に選べる道が広がる
窓口と分け方の案を先にそろえておけば、共有名義人が死亡した後も、売る・活かす話を前に進めやすくなるわけです。
よくある質問

質問1|残った共有者は、亡くなった人の持分の分け方の話し合いに加われますか?
残った共有者が、亡くなった人の相続人でなければ、遺産分割の話し合いの当事者にはなりません。遺産分割は、相続人どうしの話し合いで決めるものだからです(民法907条1項)。遺産分割が済む前は相続人全員と、済んだ後は持分を取った人と、売る・買い取るといった話をすることになります。残った共有者が配偶者や子どもとして相続人でもある場合は、当事者として加わります。
質問2|亡くなった人の持分だけを、相続放棄することはできますか?
できません。相続放棄をした人は、その相続について、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。持分だけではなく、ほかの財産も受け継がないことになるので、放棄するかどうかは財産の全体を見て決めてください。相続放棄は、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申し述べる必要があります(民法915条1項・938条)。持分だけを手放す方法との違いは、共有持分の処分は自分の分だけで動かせる|4つの出口と、手放す前に確かめる4つのことで整理しました。
質問3|共有名義人が死亡した後、固定資産税は誰が払いますか?
地方税法では、共有物にかかる税金を、共有者が連帯して納める決まりです(10条の2第1項)。亡くなった人が納めるはずだった分は、同法9条1項により、相続人が受け継ぎます。残った共有者に、まとめて請求が来ることもあるので、誰がどの割合で負担するかを、相続人の側の窓口と早めに決めておきましょう。
出典








当時、手間がかかったのは、反対・連絡・お金の分け方・相続人が増えたところでした。共有名義人が死亡したら、相続人と窓口、お金の分け方の案を先にそろえておきましょう。