家族に成年後見人がついている方、これからつく見込みの方に向けた記事です。その家族の家を売る話が出てきて、家族として何をすればよいのか迷っている場面を思い浮かべて書いています。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用の営業をしていました。当時、売却や相続の相談の中で、成年後見人がついた方の家に関わったことがあります。
成年後見の不動産売却を調べると、上位は、成年後見人が家庭裁判所の許可を取って売るまでの流れと必要な書類が中心です。この記事では、その流れは短くしました。重心を置いたのは、後見人ではない家族の側で、先にそろえておけることのほうです。
先に結論を書いておきますね。成年後見人がついた家を売るとき、契約を結ぶのは後見人で、進め方も後見人との話で決まります。家族は、後見人と最初に話す前に、伝えたいことを1枚にそろえておきましょう。手続きに時間がかかる間に本人が亡くなると、売る人は相続人に変わるので、相続人と家の書類も先に確かめておくと安心です。
この記事で扱うのは、成年後見の不動産売却で、だれが売ってだれが許すのか・後見人との話で決まる進め方・途中で本人が亡くなったときの3つです。
なお、条文はe-Gov法令検索で、居住用不動産の許可は裁判所の案内で確かめました。2026年10月時点の内容としてお読みください。
成年後見人がついた家の不動産売却は、だれが決めるのか

成年後見人がついた方の家を売るとき、契約をするのは成年後見人で、家族は売主になりません。住んでいた家なら家庭裁判所の許可が、後見監督人がいればその同意も要ります。
契約を結ぶのは成年後見人で、家族は売主にならない
民法は、後見人が本人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について本人を代表すると定めています(859条1項)。家の売買の契約も、成年後見人が本人に代わって結ぶ形になります。
成年後見の不動産売却では、子どもやきょうだいであっても、後見人でなければ、家族の判断で家を売ることはできません。家族が不動産会社に相談しに行っても、売るかどうか、いつどう売るかを決める相手は、成年後見人です。
成年後見の申立てから後見人が選ばれるまでの流れ・費用・期間は、認知症の親の不動産売却はできる?売れる条件と代金が入るまでの流れにまとめました。ここでは、後見人が選ばれた後の話を進めます。
住んでいた家なら、家庭裁判所の許可が要る
成年後見人が、本人の住まいとして使う建物や敷地を売るには、家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法859条の3)。
裁判所の案内では、この住まいには、今住んでいる家に限らず、病院や施設に入っていて今は住んでいなくても、将来住む可能性がある家や、入る前に住んでいた家なども含まれます。許可を得ないでした売却は無効になります。
申立ての標準的な添付書類には、契約書の写しや、売却する場合の不動産業者作成の査定書が挙がっています。そのため、買い手と条件をある程度決めてから申し立てる段取りになります。
成年後見の決まりを見直す改正法が、2026年6月24日に公布されています。成年後見に関わる部分の施行は、公布の日から2年6か月を超えない範囲の政令で定める日とされ、2026年10月時点ではまだ施行されていません。施行の後は制度の形も変わり、この記事で挙げた成年後見の条文は、番号や中身が変わるので、売る時期に今の制度のままかを確かめてください。この記事の条文は、施行前の今の民法によるものです。
後見監督人がいれば、その同意も要る
家庭裁判所が、後見人を見守る後見監督人を選んでいることがあります。その場合、後見人が本人に代わって不動産を売るには、後見監督人の同意も要ります(民法864条・13条1項3号)。同意を得ないでした売却は、取り消すことができる決まりです(865条1項)。
住んでいた家なら、監督人の同意と家庭裁判所の許可の両方がそろって、売る段取りが進みます。監督人がいるかどうかは、後見人に確かめておきましょう。
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成年後見の不動産売却は、後見人との話で進め方が決まる

成年後見人がついた家は、家族が段取りを組むのではなく、後見人と話して進め方を決めることになります。家族の側では、後見人が判断するための材料を、先にそろえて渡しておきましょう。
当時関わった件には、後見人との話で進め方が決まったことがあった
僕が土地活用の営業をしていた当時に、売却・処分や相続の相談の中で、成年後見人がついた方の家に関わったのは、2〜3件です。当時関わった件の中に、後見人との話で進め方が決まったことも、手続きに時間がかかったこともありました。
この経験と、後見人が本人を代表するという民法の決まり(859条1項)から、この記事では、家族の考えを伝える相手は後見人であり、時間がかかる前提で日程を組む、という順番で書いています。
後見人と最初に話す前に、家族がそろえること
民法は、成年後見人が、本人の意思を尊重し、心身の状態と生活の状況に配慮して事務を行うよう定めています(858条)。成年後見の不動産売却でも、家族が知っている本人の様子や家のことは、後見人にとって判断の材料になります。
| そろえること | 中身 |
|---|---|
| 本人が家に戻る見込み | 施設や病院での様子と、家について本人が話していたこと |
| 売る理由になるお金 | 施設や病院の費用など、家族が知っている本人の暮らしのお金 |
| 家の中で残してほしい物 | 写真・手紙・位牌など、家族が残してほしい物の一覧 |
| 売るまでの管理 | 鍵のありか、見回りと郵便の確認をだれがしているか |
| 家族の考え | 売ることへの家族の考えを、先に家族の間でそろえておく |
| 窓口と連絡の仕方 | 家族の窓口を1人に決め、何をいつ知らせてもらうか |
この表を1枚にして、後見人と最初に話す日に渡してください。残すかどうか、どう管理するかを決めるのは後見人なので、家族の希望は早めに伝えておくと、伝える機会を逃さずに済みます。持ち続ける間の費用の内訳は、空き家の維持費はいくら?削ってよい費用と相続後に払う人で確かめられます。
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家族の考えが割れているときは、そのまま伝える
売ることに家族のだれかが反対している場合も、決めるのは後見人です。住んでいた家なら家庭裁判所の許可が、後見監督人がいればその同意も要ります。まずは、だれがどう考えているかを、後見人にそのまま伝えましょう。
家族の間で意見が分かれるときの話し合いの中身には、この記事では踏み込みません。個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。弁護士に相談してください。
手続きの途中で本人が亡くなったら、売る人が変わる

当時関わった件の中に、手続きに時間がかかったことがありました。ここからは、その件の話ではなく、制度の決まりの話になります。成年後見の不動産売却では、住んでいた家なら家庭裁判所の許可、後見監督人がいればその同意の段取りが入るのが決まりです。手続きの途中で本人が亡くなると、売る手続きをする人が、本人の代わりの後見人から、家を引き継ぐ相続人に変わります。
本人が亡くなると、後見人は売る契約を結べなくなる
成年後見人が家の売買の契約を結べるのは、本人の代わりに契約をする権限(代理権)があるからです。民法は、代理権は本人の死亡によって消えると定めています(111条1項1号)。
本人が亡くなった後に成年後見人ができることについて、民法の主な決まりは次のとおりです。必要があり、相続人の意思に反することが明らかでないときに、相続人が財産を管理できるようになるまでの間の、財産を保存するための行為・支払期限の来た債務の支払い・火葬や埋葬の契約などができる、という決まりです(873条の2。火葬や埋葬の契約などには家庭裁判所の許可が要る)。家を売る契約を結ぶことは、ここに挙げられていません。
家は相続人が引き継ぎ、売るなら相続人の側で進める
亡くなった方の財産は、亡くなった時から相続人が引き継ぎます(民法896条)。家も同じで、売るかどうかは、相続人の側で決めることになります。後見人は、任務が終わってから2か月以内(家庭裁判所が延ばすこともあります)に、管理していた財産の計算をする決まりです(870条)。
買い手との売買の契約を結ぶ前に亡くなった場合、売るなら、相続人の側で改めて進めることになります。相続で家を取得した人には、相続の開始があったことを知り、かつ家を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務もあります(不動産登記法76条の2第1項)。登記が済んでいない家を売るときの順番は、相続登記が未了の実家は売却できるかで解説しました。
許可の申立ての途中や、許可が出た後で代金を受け取る前に亡くなった場合は、契約をいつ・どの形で結んでいたかで扱いが変わります。売主の立場が相続人に引き継がれる場面もあるので(896条)、契約の扱いは弁護士に、登記の進め方は司法書士に確かめてください。
売る人が変わっても進めやすいように、先にそろえておくもの
手続きに時間がかかる前提なら、売る人が相続人に変わる場合も考えておくと、相続人の側で話を始めやすくなります。家族の側で、相続人になる人がだれかと、家の登記事項証明書を、先に確かめておきましょう。固定資産税の通知書は後見人のもとに届いていることがあるので、写しを見せてもらえるかを、後見人に聞いておくと安心です。
相続人が家を引き継いだ後に、売るか貸すかを考えるときの分かれ目は、一人っ子の実家は売却すべき?貸す・住むとの分かれ目と動く時期で整理しています。
後見人が契約を結ぶ場合も、相続人が売る場合も、家の値段の見当が先に付いていると、決めるまでが早く進むはずです。無料査定と0円空き家管理の窓口で、どちらの場面のご相談も伺いますので、お問い合わせからご連絡ください。
まとめ

成年後見の不動産売却で、家族がそろえることを振り返りましょう。
- 成年後見人がついた家の契約を結ぶのは後見人で、家族は売主にならない。住んでいた家には家庭裁判所の許可が要り、後見監督人がいればその同意も要る
- 進め方は後見人との話で決まる。家族は、本人が家に戻る見込み・売る理由になるお金・家の中で残してほしい物・売るまでの管理・家族の考え・連絡の仕方を1枚にそろえて、最初に話す日に渡す
- 手続きの途中で本人が亡くなると、後見人の代理権は消え、売る人は相続人に変わる。相続人がだれかと家の書類を先に確かめておく
家族の側の材料を先にそろえておけば、時間がかかる手続きでも、後見人との話を早く進められるはずです。
よくある質問

質問1|家族が成年後見人なら、家族の考えで売れますか?
成年後見の不動産売却は、家族が後見人でも、家族の都合で進められるわけではありません。後見人は、本人の意思を尊重し、本人の心身の状態と生活の状況に配慮して事務を行う決まりです(民法858条)。本人が住んでいた家なら、家族が後見人のときも家庭裁判所の許可が要り、後見監督人がいればその同意も要ります。売る理由は、本人の暮らしのためかどうかで考えましょう。
質問2|後見人をしている家族が、その家を買うことはできますか?
後見人をしている家族でも、特別代理人か後見監督人が本人の代わりになる形なら、買う話を進める道はあります。後見人と本人の利益が相反するので、後見人がそのまま本人の代わりに売ることはできないからです。後見監督人がいない場合は、家庭裁判所に特別代理人を選んでもらう必要があります(民法860条・826条1項)。後見監督人がいる場合は、監督人が本人の代わりになります(851条4号)。監督人が代わりになるときも、住んでいた家なら家庭裁判所の許可が要ります(852条による859条の3の準用)。特別代理人が選ばれる場合の手続きは、家庭裁判所に確かめてください。
質問3|本人が住んだことのない家も、家庭裁判所の許可は要りますか?
家庭裁判所の許可が要るのは、本人の住まいとして使う建物や敷地です(民法859条の3)。本人が住んだことがなく、住む可能性もない貸家などは、この許可の対象ではありません。当たるか迷うときは、家庭裁判所に確かめてください。ただし、後見監督人がいれば、売るには監督人の同意が要ります(864条)。後見人は、本人のために注意を尽くして事務を行う義務を負っているので(869条による644条の準用)、許可が要らない家も、後見人が本人のためになるかで判断します。
出典








当時関わった件の中には、手続きに時間がかかったこともありました。後見人と話す日の前から、時間がかかる前提で日程を組んでおきましょう。