空き家を買取で売ろうか迷っている方に向けて、買取のデメリットを、契約の前に減らせるものと残るものに分けて整理した記事です。
僕は2016年から6年間、大手の不動産・建築会社で土地活用の営業をしていました。アパートやマンションの建築の提案が本業で、グループの売買や賃貸の会社への窓口も務めた立場です。
空き家買取のデメリットを調べると、「仲介より安くなる」という説明が並びます。ただ、安くなる分の中身と、契約書に残る責任まで踏み込んだ解説は、ほとんど見当たりませんでした。
先に結論を書いておきますね。空き家買取のデメリットには、契約の前に小さくできるものと、買取を選ぶ以上は残るものがあります。小さくできるのは、値段の比べ方と、売った後の責任にかかわる部分です。契約した後にやめにくいことと、買い取れないと言われる場合があることは、残るものとして先に知っておいてください。
この記事で扱うのは、デメリットの全体、値段の比べ方、契約書で確かめる点、空き家の状況ごとの見方、進め方の5つです。買取価格の相場の割合は、物件ごとの差が大きいため載せていません。
法律と制度の記述は、e-Gov法令検索の条文と、国土交通省・国税庁の案内で確かめました。2026年10月時点の内容としてお読みください。
空き家買取のデメリットは何?契約前に減らせるもの・残るもの

空き家買取のデメリットは、5つに分けて考えると整理しやすくなります。このうち3つは、契約の前の聞き方と書面の確認で小さくできるものです。
| デメリット | 中身 | 契約前に減らせるか | 手当て |
|---|---|---|---|
| 値段が、仲介で売れた場合より下がる | 買取会社が、売り直すまでの費用と利益を見込む | 一部は減らせる | 仲介の査定を先に受け、買取額の内訳を聞く |
| 提示額の根拠を示す決まりが無い | 提示額は、買主としての申し出にあたる | 減らせる | 項目を決めて尋ね、2社以上を並べる |
| 売った後の責任が残る場合がある | 免責は特約があって成り立ち、知っていて告げなかった不具合は別扱い | 減らせる | 不具合を書面で伝え、契約書の文言を読む |
| 契約した後は、やめるのにお金がかかる | 売る側にクーリング・オフは無い | 減らせない | 契約書の案を持ち帰り、署名の前に決める |
| 買い取れないと言われる空き家がある | 売り直す見込みが立たない | 減らせない | 種類の違う会社や、別の出口を当たる |
買取にするか仲介にするかを決める前の段階でも、無料査定はお受けしています。0円空き家管理のご相談も同じ窓口なので、空き家の状況をそのまま書いてお問い合わせからご連絡ください。
値段が下がるのは、買取の仕組みによるもの
買取では、不動産会社が買主になります。会社は買った空き家を直したり壊したりして売り直すので、その費用と利益を見込んだ値段を出してくるわけです。
つまり、値段が下がること自体は、交渉しても無くせません。小さくできるのは、見込まれた費用が自分の空き家に合っているかを確かめる部分です。聞き方は次の章でお伝えしますね。
買い取れないと言われる空き家もある
買取会社は、売り直す見込みが立たない空き家を買いません。1社に断られても、空き家そのものに値段が付かないと決まったわけではない点を覚えておいてください。
買取会社には、住宅として売り直す会社、訳ありの物件を専門にする会社、地元で仲介も扱う会社といった違いがあります。会社の種類ごとの得意分野は、空き家の買取業者はどう選ぶ?仲介との分かれ目と3つの種類で整理しました。
空き家買取のデメリット「安くなる」の正体|値段の比べ方

値段のデメリットを小さくする方法は、買取額を1社の数字だけで判断しないことです。仲介の査定額を物差しにして、買取額の内訳を項目で聞いてください。
買取は、買主を探す期間が要らないので、話が長引きにくい売り方です。そのかわり、残るのは値段の話し合いだけになる、と僕は見ています。
相場の見当も、話し合いの進め方も持たないままだと、下げられた値段がそのまま決まってしまうのではないでしょうか。値段のデメリットは、仕組みの分と、比べなかった分の2つでできているんです。
仲介の査定額には根拠を示す決まりがあり、買取の提示額には無い
仲介を頼むときに不動産会社が示す査定額には、法律の決まりがあります。宅地建物取引業法は、売り出す値段について会社が意見を述べるとき、その根拠を明らかにするよう求めているんです。
買取の提示額は、会社が買主として示す値段なので、この決まりの対象ではありません。根拠の説明が付いてこなくても、法律に反しているわけではないということです。
だからこそ、買取では売る側から尋ねる必要があります。仲介の査定額の読み方は、実家の査定は誰が頼める?名義別の進め方と査定額の読み方の2章と3章にまとめました。
買取額は、内訳を項目で聞く
買取額を示されたら、合計の数字だけで返事をしないでください。何がいくら見込まれているのかを、下の項目で尋ねましょう。
| 聞く項目 | 尋ね方の例 | 分かること |
|---|---|---|
| 売り直す形 | 建物を直して売るのか、壊して土地で売るのか | 建物に値段が付いているかどうか |
| 工事の費用 | 修繕や解体にいくら見込んでいるか | 自分で取った見積もりとの差 |
| 家財の片付け | 残した物の処分にいくら見込んでいるか | 自分で片付けた場合に値段が変わるか |
| 測量や登記の費用 | どちらが負担する前提か | 手元に残る額 |
| 提示額の期限と条件 | いつまで有効か、値段が変わる条件は何か | 契約の直前に下がるおそれ |
項目ごとの答えが2社分そろうと、値段の差がどこから来ているのかが見えてきます。答えをはぐらかす会社かどうかも、同じ質問で分かるはずです。
「仲介なら相場で売れる」とは限らない
買取のデメリットは、仲介で売れた場合の値段との差として語られます。ただし、仲介に出せば相場の値段で売れる、と決まっているわけではありません。
仲介会社が受け取る手数料は、売れた値段に応じて上限が決まる仕組みです。値段の低い空き家は、手間に対して手数料が小さくなります。
国土交通省も、空き家の仲介を「業務負担と比較して収益性が低く」課題のある業務と位置づけました。そのうえで2024年7月から、800万円以下の宅地や建物の仲介では、原則の上限を超えて、30万円の1.1倍までの手数料を受け取れる特例を設けています。この特例を使う場合は、仲介を頼むときにあらかじめ金額を合意しておくことが大切です。
仲介を選ぶなら、引き受けてくれる会社があるか、売れるまでの維持費がいくらかかるかも合わせて見てください。買取額と比べる相手は、仲介の査定額そのものではなく、仲介で売れたときに手元に残る見込みの額になります。
空き家買取の「売った後の責任なし」は本当か|契約に残るデメリット

買取の利点として、売った後の責任を負わなくてよい点が挙げられます。これは買取という売り方に自動で付いてくるものではなく、責任を負わないという特約を結んで初めて成り立つものです。
免責は、特約があって初めて成り立つ
民法は、引き渡した物が契約の内容に合わないとき、買主が売主に修理や代金の減額などを求められると定めています。買主が不動産会社であっても、この原則は変わりません。
責任を負わないという約束は、特約として合意しておく必要があります。口頭で「責任は問いません」と言われただけでは、後で確かめる手段が残りません。特約は契約書に書いてもらいましょう。
契約書の案をもらったら、責任を負わない旨の条文があるかを探してください。建物だけが対象なのか、土地の地中の物や境界のことまで含むのかも読み取りましょう。
知っていて告げなかった不具合は、免責されない
特約があっても、外れない責任があります。民法は、売主が知りながら告げなかった事実については、責任を負わない特約をしていても責任を免れないと定めているんです。
雨漏り、シロアリの被害、傾き、隣の敷地への越境など、知っていることは紙に書いて渡してください。値段が下がるのではと心配になる方もいるでしょう。
それでも、告げたうえで決めた値段なら、その不具合を理由に後から請求を受ける心配は小さくなります。分からないことは、分からないと正直に書いてください。
売る側にクーリング・オフは無い
契約を結んだ後で気が変わっても、無条件でやめられる仕組みは売る側にありません。宅地建物取引業法のクーリング・オフは、不動産会社が売主のときに買主を守る制度だからです。
手付を受け取っている契約なら、売主は、受け取った手付を返し、さらに同じ額を上乗せして差し出すことで契約をやめられます。それも、相手が契約の実行に取りかかるまでの間に限られた話です。この方法を使える期日が、契約書に書かれていることもあります。
買取は話が早く進むぶん、考える時間は短くなりがちです。契約の後に戻れる期限の全体は、実家の売却で後悔する前に|取り返せる後悔と戻れない期限の3章をお読みください。
家財・境界・引き渡しの条件は、書面に残す
「現状のまま買います」という言葉の範囲は、会社によって違います。家財を残してよい範囲、測量をするかどうか、引き渡しの日は、契約書か覚書に書いてもらいましょう。
残した家財の中に、後から取り出したい物が見つかることもあります。先に拾っておく物の考え方は、空き家の片付けは出口を決めてから始める|先に拾う4つのものと、売る・壊す・貸すで変わる範囲を参考にしてください。
買取と仲介のどちらに寄せるか、決めかねている方もいるはずです。無料査定と0円空き家管理をご用意していますので、お問い合わせからご相談ください。
空き家買取のデメリットが大きい空き家・小さい空き家

同じ買取でも、デメリットの出方は空き家の状況で変わります。自分の空き家がどちらに近いのかを、下の表で確かめてください。
| 空き家の状況 | 買取のデメリットの出方 | 先にすること |
|---|---|---|
| 手を入れずに住める | 大きく出やすい | 仲介の査定を先に受ける |
| 建物の傷みが大きい、家財が残っている | 小さくなりやすい | 買取額の内訳で工事費と片付け費を確かめる |
| 遠方で通えない、管理を続けられない | 小さくなりやすい | 売れるまでの維持費を足して比べる |
| 値段が低く、仲介を引き受ける会社が見つからない | 比べる相手がいない | 種類の違う買取会社を当たる |
| 相続した実家で、税金の特例を使いたい | 契約の中身しだい | 買主の工事の予定を契約の前に確かめる |
デメリットが大きく出る空き家
そのまま住める状態で、買いたい人が見込める場所にある空き家は、仲介で売れる見込みがあります。この場合は、買取会社が見込む費用と利益の分が、そのまま差として出やすくなるんです。
急ぐ理由が無いなら、仲介で売り出す期間を先に決め、売れなかったときに買取へ切り替える順番も考えられます。期間の目安は、仲介を頼む会社と相談して決めましょう。
デメリットが小さくなる空き家
建物の傷みが大きい空き家は、仲介で売る場合でも、買う人から修繕や解体の費用分の値引きを求められることがあります。買取会社が見込む工事費は、仲介でも形を変えて値段に表れるため、差は縮まりやすいんです。
遠方にあって通えない空き家では、売れるまでの期間が長いほど、維持費と手間が積み上がっていくものです。持ち続けたときにかかる費用は、空き家の維持費はいくら?削ってよい費用と相続後に払う人で扱いました。
税金の特例を使うなら、買主の工事の予定を確かめる
相続した実家を売るときの3,000万円の特別控除は、買取会社に売った場合でも対象になり得ます。いまの耐震基準を満たしていない建物を残したまま売る形では、売った年の翌年2月15日までに、建物が耐震基準を満たすか、すべて取り壊されることが要件の1つです。
引き渡した後の工事には買主の協力が要るため、買取会社の予定が期限に間に合わなければ、特例は使えません。国土交通省も、買主の協力が不可欠だとして、売買契約にこの特例に関する特約があるかを確認事項にしています。相続から3年を経過する日の属する年の年末までに売ることも要件なので、日程は契約の前に確かめましょう。
要件の全体は、空き家の3,000万円控除は何が変わった?|2026年8月の要望での変更点と対象外の5つの出口を解説で確かめてください。自分が使えるかどうかは、契約の前に税理士か税務署へ相談するのが確実です。

特例や補助金は、知らないまま進めて損をする方がいるのではないか、と僕は考えています。買取の話が進んでいても、契約の前に一度、税理士へ相談する時間を取ってください。買主の工事の予定も、署名の前に確かめておくと安心です。
空き家買取のデメリットを減らす進め方

ここまでの内容を、動く順番に並べ直しましょう。査定、買取額の聞き取り、契約書の確認の順に進めれば、減らせるデメリットを取りこぼしません。
先に仲介の査定を受けて、物差しを持つ
買取で売るつもりでも、仲介の査定を先に受けてください。仲介の査定額は、根拠を尋ねれば説明を受けられるので、買取額を読むときの物差しになります。
査定を受けたからといって、その会社に仲介を頼む義務は生まれません。売り出すならいくらで、どのくらいの期間を見込むのかを聞いておけば、買取額との差を考える材料がそろいます。
種類の違う買取会社に、同じ条件で聞く
買取額は、2社以上に同じ資料を渡して聞きましょう。会社によって売り直す形が違うため、同じ空き家でも値段に差が出るからです。
聞くときは、2章の表の項目をそのまま使えます。買取会社の種類と当たる順番は、空き家の買取業者はどう選ぶ?仲介との分かれ目と3つの種類で詳しく扱いました。
契約書の案を持ち帰って読む
値段に納得したら、署名の前に契約書の案をもらってください。その場で署名を求められても、持ち帰って読む時間をもらいましょう。
読むところは、責任を負わない特約の範囲、手付の額、引き渡しの日、家財と測量の扱いの4点になります。分からない条文があれば、会社に意味を尋ね、答えを書面に残してもらうと安心です。
買取額を受け取ったものの、売るかどうかを決めきれない段階でもかまいません。無料査定と0円空き家管理でお手伝いできますので、お問い合わせから、いまの状況をお知らせください。

知識がないまま「とりあえず」で話を進めると、もう少し高く売れたはずの空き家を、下げられた値段で手放すことになるのではないか。これが僕の見立てです。買取は早く終わる売り方ですが、返事まで急ぐ必要はありません。聞くことを紙に書いてから、会社と会ってくださいね。
まとめ

空き家買取のデメリットには、契約の前に小さくできるものと、残るものがあります。値段が下がる仕組みは変えられませんが、見込まれた費用が妥当かどうかは確かめられるものです。
仲介の査定を先に受けて物差しを持ち、買取額は内訳を項目で聞きましょう。売った後の責任は、特約があるかどうかと、不具合を伝えたかどうかで決まります。
契約した後は、無条件ではやめられません。契約書の案を持ち帰り、署名の前に読む時間を取ってください。1社に買い取れないと言われたときは、種類の違う会社を当たりましょう。
空き家買取のデメリットを減らす鍵は、買取を避けることではありません。比べる相手を持ち、聞くことを決め、契約書を読んでから返事をすることです。
よくある質問

質問1|空き家を買取で売ると、仲介よりどのくらい安くなりますか?
決まった割合はありません。買取会社が見込む工事費、片付けの費用、利益によって変わるため、割合の目安より、自分の空き家の内訳を聞くほうが確かです。仲介の査定額と買取額の両方を取り、差が何の分なのかを会社に尋ねてください。
質問2|買取なら、売った後に不具合が見つかっても責任はありませんか?
責任を負わない旨の特約を結んでいることが前提で、その特約は契約書に書いてもらうのが基本です。特約があっても、知っていて告げなかった不具合については責任を免れない、と民法が定めています。知っている不具合は、契約の前に書面で伝えましょう。
質問3|買取の契約を結んだ後で、やめることはできますか?
売る側には、クーリング・オフの仕組みがありません。やめる場合は、受け取った手付を返したうえで同じ額を上乗せして差し出すことになり、相手が契約の実行に取りかかった後はこの方法も使えなくなります。迷いが残っているなら、署名の前に時間をもらいましょう。
出典
出典:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
出典:国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」
契約書の読み方と責任の範囲は弁護士か宅地建物取引士に、税金の特例が使えるかどうかは税理士に、それぞれ確かめてください。








相場を知らない相手には、根拠のはっきりしない数字が「相場です」と示されることもあるのではないか。僕はそう見ています。「相場はこのくらいです」と言われたら、何をもとにした数字なのかを尋ねてください。尋ねて困る質問ではありませんよ。