田舎の土地がいらない時の手放し方|相続の前・とき・後で変わる

田舎の土地がいらない時の手放し方|相続の前・とき・後で変わる

田舎にある土地を、使う予定も売れる見込みもないまま持っている。あるいは、親が持っている田舎の土地を、いずれ自分が引き継ぐことになりそう。そうした方に向けた記事です。

2016年から6年間、僕は大手の不動産・建築会社で、地主の方を相手に土地有効活用のコンサルティング営業をしていました。田舎の土地を自分で手放した経験はありません。この記事は、民法と相続土地国庫帰属法の条文を土台に、実務で見てきたことを添えて整理したものです。

結論から書きますね。田舎の土地がいらないとき、所有権だけを放り出す手続きは法律にありません。手放すには、受け取る相手を見つけるか、国に引き取ってもらうかのどちらかが必要になります。

そして、選べる手段は「いつ手放すか」で変わります。親が持っているうち、相続が始まってから3か月のうち、相続して自分の名義になった後。この3つの時点で、使える道と動くお金がまったく違うんです。

この記事では、最初に知っておく2つの事実から入り、3つの時点、時点ごとの動き方、最後に持ち続けるお金と手放すお金の比べ方の順に進みます。

法令はe-Gov法令検索で条文を確かめました。2026年9月時点の内容としてお読みください。

田舎の土地がいらないと思ったら、先に知っておく2つの事実

田舎の土地がいらないと思ったら、先に知っておく2つの事実

いらない土地の話は、「どうすれば手放せるか」から入りがちです。ただ、その前に2つの事実を押さえておくと、選ぶ手段を取り違えにくくなりますよ。

事実1|土地の所有権だけを放り出す手続きはない

民法には、持ち主のいない不動産は国庫に帰属するという規定があります。けれども、持ち主が自分の意思で土地を手放して「持ち主のいない土地」にする手続きは、民法のどこにも書かれていません。

この穴を埋めるために作られたのが、2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度です。法律の第1条は、相続などで土地を取得した人が、その所有権を国庫に帰属させる制度を創設すると定めています。

裏を返すと、国に引き取ってもらう道は、この法律の要件を満たしたときにだけ開くわけですね。要件に当てはまらない土地は、誰かに受け取ってもらうまで、自分の土地のまま残ります。

事実2|手放すときに、こちらがお金を払う場面がある

土地を手放すというと、代金を受け取る場面を思い浮かべる方が多いはずです。田舎の土地がいらないときは、逆に、こちらが払って引き取ってもらう場面が出てきます。

国庫帰属なら、申請の段階で1筆ごとに手数料がかかり、承認されれば負担金を納めます。隣の方に無償で譲る場合でも、名義を移す登記の費用をどちらが持つかを決めなければいけません。

「手放す=お金が入る」という前提を外すと、比べるべき数字が見えてきます。持ち続けて毎年出ていくお金と、手放すときに一度だけ出ていくお金。この2つを並べる話は、6章で扱いますね。

僕は、いらない土地は自分の代で片付けておくほうがいいと考えています。手放すのを先に延ばすと、判断と費用がそのまま次の世代に移るからです。持ち主が亡くなるたびに相続人の数は増え、話をまとめる手間も重くなっていきます。いま手放すのが難しくても、手放す時期の目安だけは家族の間で決めておいてください。

いらない田舎の土地を手放せる時点は3つある

いらない田舎の土地を手放せる時点は3つある

同じ土地でも、誰が持っているかによって使える手段は別物です。先に、今の自分がどの時点にいるのかを確かめておきましょう。

時点土地の持ち主主な手段気をつけること
時点1親が売る・譲る親の判断能力が要る
時点2相続人全員(共有)相続放棄・遺産分割3か月の期限がある
時点3自分売る・譲る・寄付・国庫帰属国庫帰属は相続で取得した人だけ

時点1|親が土地を持っているうち

いちばん選択肢が広いのが、この時点です。親が売主になって売る、親から隣の方へ譲る、といった動きを、親自身の判断で進められます。

ただし、親が契約の内容を理解できる状態であることが前提になります。判断能力が落ちてからでは、親の名義のままでは売ることも譲ることも難しくなってしまいますよ。

時点2|相続が始まってから3か月のうち

親が亡くなると、土地は相続人全員のものとして扱われます。この時点でだけ選べるのが、相続放棄という道です。

民法は、相続があったことを知った時から3か月以内に、承認か放棄かを選ぶよう定めています。3か月を過ぎると、放棄という選択肢は原則として閉じてしまうんです。

時点3|相続して、自分の名義になった後

遺産分割が終わり、名義が自分に移った後は、所有者として手放す方法を選ぶことになります。相続土地国庫帰属制度を使えるのは、相続または相続人に対する遺贈で土地を取得した人に限られます。

自分で買った土地や、生前に贈与を受けた土地は、この制度の対象になりません。親から生前にもらうか、相続で受け継ぐかで、後から使える道が変わるわけです。

相続の前にしておける3つのこと

相続の前にしておける3つのこと

時点1のうちに動けると、選べる幅がいちばん広く残ります。親が元気なうちにできることを3つに絞っておきますね。

準備1|親が持っている土地を、漏れなく書き出す

田舎の土地は、親自身も全部を覚えていないことがあります。山林や畑、道路の一部になっている細い土地が、固定資産税の通知に載らないまま残っている場合もあるんです。

市区町村の役所では、その市区町村内で親が持っている土地と建物を一覧にした名寄帳を請求できます。土地が複数の市区町村にまたがるなら、それぞれの役所で取り寄せてください。一覧ができると、「いらない土地」がどれなのかを家族で同じ紙を見ながら話せるようになりますよ。

実務をしていた当時は、空き家を見つけると登記事項証明書を取り、持ち主が誰なのかをたどってから提案に動いていました。名義が何世代も前のまま動いていない土地だと、話を届ける相手を探すところで止まってしまいます。名寄帳で一覧を作ったら、あわせて登記の名義が親本人になっているかも確かめておいてください。親より前の世代の名前が出てきたら、その土地は手放す前に名義を整える手間が一段増えますね。

準備2|親が所有者のうちに、売るか譲るかを決めて動く

いらない土地を親の名義のまま売れれば、相続人が複数いる状態で話をまとめる必要がなくなります。買い手や受け取り手が見つかるなら、親が所有者のうちに動くのがいちばん手続きが少ない順番です。

親族や隣の方に相場より安く譲る場合、贈与として税金がかかることもあるので注意してください。安く譲るときの税金の扱いは低廉譲渡とは?親族間で安く売ったときの税金で整理しています。

準備3|誰がその土地を引き取るのかを、家族で話しておく

生前に手放せなかった土地は、相続のときに誰かが引き取ることになります。「いらない土地を誰が持つか」を決めないまま相続を迎えると、遺産分割の話し合いがその1点で止まりがちです。

引き取る人を先に決め、その人がほかの財産で調整を受ける。こうした形を親が元気なうちに話しておくと、相続の後に揉める余地が小さくなります。

実務をしていた当時、グループに家族信託を扱う会社がありました。手続きを進めている途中で親御さんの診断が確定し、間に合わなかった事例を知っています。判断能力が落ちたあとは、親の名義の土地を売ることも譲ることも止まってしまうわけですね。いらない土地の話は、親が元気なうちにしか始められない話だと思っておいてください。

相続が始まったときに選べる2つの道

相続が始まったときに選べる2つの道

時点2で選べるのは、財産ごと手放すか、誰かが引き取ると決めるかのどちらかです。どちらを選ぶかで、その後の負担がまるごと入れ替わりますよ。

道1|相続放棄で、財産をまるごと手放す

相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。ただし、放棄はいらない土地だけを選んで手放す仕組みではありません。預貯金や自宅も含めて、その相続の財産すべてを受け取らないことになります。

もう1つ、放棄の時にその財産を現に占有していた人には、次に引き継ぐ人へ渡すまで保存する義務が残る決まりです。放棄を選ぶ前に確かめておくことは相続した土地が売れないのは土地のせいとは限らないにまとめてあります。

道2|遺産分割で、土地を引き取る人と条件を決める

放棄をしない場合、相続人の話し合いで、いらない土地を誰が持つのかを決めます。引き取る人が損をしないよう、預貯金を多めに分けるなどの調整を組み合わせるのが一般的な形です。

土地を売って代金を分ける方法もあります。売れる見込みがあるなら、換価分割の手順と贈与税を避ける書き方が参考になるはずです。話し合いがまとまらない場合、個別の争いに関するご相談は、法律上、弁護士以外がお答えできない決まりがあります。弁護士にご確認ください。

相続した後に田舎の土地を手放す4つの方法と、動くお金

相続した後に田舎の土地を手放す4つの方法と、動くお金

時点3に入ったら、所有者として手放す方法を選びます。方法ごとに、お金がこちらに入るのか、こちらから出ていくのかを先に確かめておきましょう。

方法お金の向き前提になること
方法1 売る入る(価格が付けば)買い手か買取業者が見つかる
方法2 隣の方などに譲る登記費用などが出ていく受け取る相手がいる
方法3 自治体などへ寄付する登記費用などが出ていく相手が受け入れる
方法4 国庫帰属手数料と負担金が出ていく法律の要件を満たす

方法1|売る

価格が付く見込みがあるなら、まず売る道を確かめます。仲介で買い手を探すか、買取業者に直接買い取ってもらうかで、かかる時間と手取りが変わりますね。

田舎の土地は、地目や区域によって買える人が限られるのが特徴です。買い手の当て方は田舎の土地が売れないときは、買い手から逆算するで扱っています。「引き取ります」という話でも、費用をこちらが払う形なら売買とは別物なので、売れない土地の買取業者の見分け方で中身を確かめてから進めてください。

実務をしていた当時、グループの売買部門と一緒に動く場面がありました。不動産会社の収入は仲介手数料なので、価格の安い田舎の土地は手間のわりに収入が少ない案件になりがちです。同じ会社の中でも、手伝ってくれる担当者と、最初から引き受けない担当者がいました。1社に断られても、それが土地の最終的な評価とは限りません。相手を変えて聞いてみる価値は残っていますよ。

方法2|隣の土地の所有者や地元の人に譲る

代金がほとんど付かない土地でも、隣の方にとっては敷地が広がる意味を持つことがあります。無償や低い価格で譲る場合、名義を移す登記の費用をどちらが負担するかを先に決めておくと、話が進めやすくなりますよ。

民法上、贈与は、渡す側の意思と受け取る側の受諾がそろって成り立つ契約です。こちらがいくら譲りたくても、相手が受け取ると言わなければ成立しません。

方法3|自治体や地元の団体に寄付を打診する

自治体に寄付を申し出る方法もあります。ただ、自治体が受け入れるのは、道路や公園の予定地など、使い道がはっきりしている土地に限られることが多いです。

受け入れの基準は自治体ごとに違うため、土地のある市区町村の担当課へ直接問い合わせるのが確実ですね。断られた場合も、地元の自治会や土地を使う事業者に声をかける余地は残ります。

方法4|相続土地国庫帰属制度で、国に引き取ってもらう

要件を満たせば、受け取る相手を探さなくても手放せるのがこの制度の強みです。その代わり、お金は2段階で出ていきます。

段階金額戻るかどうか
申請するとき1筆ごとに14,000円却下・不承認でも戻らない
承認されたとき負担金(原則20万円)納めた時点で国に所有権が移る

負担金の額は、国が管理する10年分の標準的な費用を考えて政令で決める決まりです。市街化区域の宅地や一部の農地、森林では、面積に応じて額が上がっていきます。建物が残っている土地は申請自体ができないため、建物があるなら解体費用も手放すお金に加わる点に注意してください。

承認通知を受けてから30日以内に負担金を納めないと、承認は効力を失います。却下と不承認の分かれ目は、田舎の土地が売れないときの出口で整理しました。

どの方法が現実的かは、土地の場所や状態しだいですね。うちでは、田舎の土地や空き家の状況をうかがったうえで、無料査定と、手放す場合の出口のご案内をしています。お問い合わせからどうぞ。

持ち続けるお金と手放すお金を、同じ物差しで比べる3つの手順

持ち続けるお金と手放すお金を、同じ物差しで比べる3つの手順

いらない土地を手放すかどうか迷うのは、手放すお金だけが目に入りやすいからです。持ち続けるお金も同じ形に並べると、判断の材料がそろいます。

手順1|持ち続けた場合の1年分を書き出す

最初に、その土地のために毎年出ていくお金を書き出します。固定資産税、草刈りや見回りを頼む費用、現地へ通う交通費の3つが主な項目です。

固定資産税には免税点があり、同じ市区町村の中で持っている土地の課税標準額の合計が30万円に満たなければ課税されません。田舎の土地では、納税通知書が届かず、税金が0円という場合もあります。ただし、税金がかからなくても、草木や境界の管理をする責任は持ち主に残る点は変わりません。

手順2|1年分を10年分に延ばす

書き出した1年分を、10年分に掛け合わせます。10年という長さには理由があって、国庫帰属の負担金も、国が管理する10年分の費用を考えて決められているんです。

同じ10年の物差しで並べると、自分で持ち続けた場合と、国に負担金を払って引き渡した場合を、ほぼ同じ条件で比べられます。見回りの交通費は、自分の時間も含めて考えてみてください。

手順3|手放す方法ごとの支払いと並べる

最後に、5章の4つの方法で出ていくお金を、10年分の数字の隣に並べます。売れば手取りが入り、譲るなら登記費用、国庫帰属なら手数料と負担金、建物があれば解体費が加わりますね。

項目持ち続ける(10年)手放す(一度だけ)
税金固定資産税×10年売れた場合は譲渡の税金
管理草刈り・見回り×10年なし
手続きなし登記費用・手数料・負担金
建物修繕・保険×10年解体費(国庫帰属の場合)

この表の右側の合計が左側を下回るなら、いま手放す理由がはっきりします。上回る場合でも、次の相続で相続人が増える手間は表に載らないので、その分も頭に置いておいてください。

数字の出し方が分からない場合も、ご相談いただければ一緒に整理できます。建物が残っている土地なら、手放すと決めるまでの間を0円空き家管理でつなぐこともできますよ。お問い合わせからご連絡ください。

実務をしていた当時、土地を活かすか手放すかは、借りる人や使う人がいる立地か、かけたお金を回収できる見込みがあるかで線を引いていました。使う人の見えない土地にお金をかけても、持ち続ける負担が大きくなるだけです。田舎の土地がいらないと感じているなら、その感覚は立地の条件から見ても筋の通った判断だと思いますよ。あとは10年の物差しで、手放すお金が見合うかを確かめるだけです。

まとめ

まとめ

田舎の土地がいらないときの動き方を、順番に整理しておきますね。

  1. 所有権だけを放り出す手続きはないと知っておく。受け取る相手を見つけるか、国庫帰属の要件を満たすかが必要
  2. 今の自分が3つの時点のどこにいるかを確かめる。親が持っているうちか、相続から3か月のうちか、相続した後か
  3. 親が元気なうちは、土地を書き出し、手放すか誰が引き取るかを話しておく。判断能力が落ちると止まる
  4. 相続が始まったら、放棄か遺産分割かを3か月のうちに選ぶ。放棄は土地だけを選べない
  5. 相続した後は、売る・譲る・寄付・国庫帰属の4つを、お金の向きで並べる
  6. 持ち続ける10年分と、手放す一度分を同じ表に並べて決める

田舎の空き家も含めて手放し方の全体を見たい方は、田舎の空き家処分はどの順番で動くかを先にお読みいただくと、次にやることが決めやすくなるはずです。

いらない土地は、持ち主が亡くなるたびに引き継ぐ人が増えていきます。手放す時期を決めるのは、早いほど選べる道が多く残りますよ。

うちでは、田舎の土地や空き家の状況をうかがったうえで、無料査定と手放す場合の出口のご案内をしています。どの時点にいるのかの整理だけでもかまいません。お問い合わせからどうぞ。

よくある質問

よくある質問

質問1|いらない田舎の土地だけを、相続放棄することはできますか

できません。相続放棄は、その相続で受け取る財産をすべて受け取らない手続きなので、土地だけを選んで放棄することはできない決まりです。預貯金など受け取りたい財産があるなら、遺産分割でいらない土地の引き取り方を決めるか、相続した後に国庫帰属などで手放す道を考えることになります。

質問2|固定資産税がかからない土地なら、持ったままでも問題ありませんか

税金がかからないことと、持ち主の責任がなくなることは別の話です。免税点を下回って税金が0円でも、木の枝が隣の土地へ越えたり、塀が傷んで崩れたりしたときの責任は持ち主に及びます。持ち続けるなら、少なくとも年に一度は現地の状態を確かめる手配をしておいてください。税金をすでに滞納している場合の動き方は固定資産税が払えないときは期限の前と後で打つ手が変わるにまとめています。

質問3|建物が残っている土地も、国に引き取ってもらえますか

そのままでは引き取ってもらえません。建物がある土地は、相続土地国庫帰属制度の申請自体ができない決まりです。建物を解体してから申請することになるため、解体費を含めて手放すお金を見積もってください。解体の前に家の中の物を片付ける必要もあるので、その費用も合わせて考えておくと安心ですね。

出典

個別の相続の進め方、税額の計算、相続人どうしの争いに関する判断は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご確認ください。

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高槻 翔太
元・土地活用コンサルタント。宅地建物取引士(試験合格) ・FP2級保有 。 2016年より、大手不動産・建築会社で、土地有効活用のコンサルティング営業を6年間しており、地主様の資産運用・相続税対策を支援 。 現在は不動産特化の専門家として、SUUMOや朝日新聞社「相続会議」など大手メディアを中心に累計1,500記事以上を執筆・監修 。 現場で見てきた「放置空き家の悲劇」や「兄弟間の相続トラブル」を防ぐため、綺麗事抜きで「1円でも多くお金を残し、ご縁を守る」ための本音のノウハウを発信中。 >> 詳しいプロフィールと当サイトの理念はこちら